66話 いざ!修学旅行へ!
こんにちは!作者です!
今回から長編の『修学旅行編』が始まります!
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
夏休みが終わり、学校は2学期が始まった。龍空高校2年生は2学期が始まるとすぐ、特大な学校行事がある。
──それは『修学旅行』である。
龍空高校は毎年行き先が変わり、今年はアトティスラン大陸の南を統治する自然が溢れる国──『シュッドサウス』に3泊4日の旅に決定した。
シュッドサウス最大の観光地は、全長50メートル以上の大樹──『千年桜』。名の通り、1000年前からその地に咲き続けていると伝えられており、その壮大で幻想的な外見は、たちまち人々を魅了し、自然の雄大さを感じさせてくれた。
とある大きな駅の一角。そこに龍空高校の教員及び生徒が待機していた。皆大きなリュックやキャリーバッグを所持し、ワクワクの気持ちが溢れまくっている。
「あ〜楽しみだなぁ〜!私シュッドサウスに行くの初めてなんだよね〜!」
身長162cm、オレンジ色のショートヘアーに赤色の瞳をもつ少女──エアル・フィン・ダイヤモンドが、己の内から溢れるワクワクを抑えられずソワソワしている。
「あんた、一国の女王なのにそんなホイホイと他国の国境を跨いで大丈夫なの?」
身長158cm、金髪のショートヘアーに金色の瞳、前髪を赤色でシンプルなデザインのヘアピンで留めている少女──サナ・クリスタルが、自分のキャリーバッグに座ったまま尋ねる。
「えっ?大丈夫なんじゃない?だって既にメソンミドルの地に私立ってるもん。」
エアルが何も考えていない顔で答えるので、
「いや…もうちょっと政治的な……ま、いいわ…」
サナは政治的側面から警告しようとしたが、今のワクワク状態のエアルに何を言っても無意味と判断し、流れに身を任せることにした。因みに『メソンミドル』とは、シャイン達が暮らすアトティスラン大陸の中央に位置する国名である。
「シャインは夏休み中何していたの?」
身長160cm 、紺色のロングヘアに青色の瞳をもつ少女──レビィ・サファイアが尋ねる。
「あ〜…縛りプレイをしていた。」
身長175cm、黒色のメッシュの如く混じっているセミロングの黒髪に黄緑色のメッシュが入り、黄緑色の瞳をもつ少年──シャイン・エメラルドが、意味深な返答をする。
「えっ……」
レビィがドン引きする。
「シャイン…間違ってはないけど、表現がアウトだね。」
身長170cm、うなじまで伸びた緋色の髪を三つ編み一つ結びし、灰色の瞳のもつ少年──アレン・ルビーが苦笑いしながらツッコミをいれた。
「では、スノウとエアルはザーパトウェストに帰っていたのですね。」
身長181cm、綺麗に手入れされた茶色のロングヘアーに琥珀色の瞳をもち、黒縁眼鏡をかける少年──ヒューズ・クオーツが確認するように訊く。
「ああ。それに、ニクスのお陰で面白い戦い方を編み出したしな。」
身長180cm、銀色のウルカットされた髪に茶色の瞳をもつ少年──スノウ・シルバーが得意気に告げる。
「ほう。それはどのような戦い方なのです?」
「へへ、その時がくれば披露してやるよ。──そういうお前は何やってたんだ?」
スノウがヒューズに訊き返す。
「特別なことはしていませんよ。暑いのでエアコンが効いた部屋でゆっくり読書するのが殆どでした。たまに鈍らない程度に弓を射ていましたが。」
「ふ〜ん。あんま面白そうな事してねぇんだな。」
「私にとっては有意義な夏休みでしたよ。娯楽というのは人それぞれですから。」
「……ま、それもそうか。」
スノウは納得すると、他の生徒に話しかけに行った。ヒューズは1人になると、少し離れた所でレビィ、アレンと話すシャインに視線を向けた。
生徒達がワクワクの中待っていると、男性教師が生徒達の前でこれからの予定を話し始めた。要約すると、貸切列車に乗ってシュッドサウスに入国し、現地の駅に到着したら、バスに乗ってホテルに向かうようだ。
「貸切って、龍空高校って意外とお金持ちだったのね。」
レビィが資金力に驚いていると、
「だって私が全面バックアップしたからね。」
と、隣にいるエアルがさも当然のことように告げた。
「えっ…それって、どういう……?」
大体察しはついているが、一応意味を訊いてみるレビィ。
「だから、今回の修学旅行の資金、ダイヤモンド家が全面バックアップしてるから、全体的に豪華な旅が楽しめるよ。」
エアルが笑顔でグッと親指を立てる。
「それって、職権濫用の域を超えているんじゃ…」
「でも、学校側は快く受け取ってくれたよ。」
エアルがあっけらかんに答えるので、
「……ああ、そう。」
レビィは苦笑いして、現状を受け入れることにした。
教師達の指示のもと、龍空高校一同は貸切列車へと乗っていく。そして全員が乗ったことを確認すると、シュッドサウスに向けて発進した。
貸切の列車内はルールを守った上で生徒達が自由に動いており、友達と話したりトランプをしたりと、楽しく過ごしていた。
「レビィ、ちょっといい?」
1人でくつろいでいたレビィの隣にサナが座ってきた。
「なに?」
レビィが用件を訊くと、サナがポケットから、中で青白い光が灯され、消しゴムほどの大きさ、水晶で作られた砥石を取り出してレビィに渡した。
「夏休みにNELIで頼んできたでしょ。『刀に夜と錯覚させる方法はないか。』って。それのアンサーの品よ。」
「わぁ!ありがとう!──でもこれって、透明だけど砥石だよね?」
レビィがまじまじと受け取った砥石を観察する。
「そ。それは特殊な方法で『月の光』を閉じ込めた砥石。名前は……『月灯石』、ってところかしら。ま、厳密には月の光が持つエネルギーを利用しているんだけどね。」
「流石はサナだね。それで、どうやって使うの?」
「その月灯石であんたの夜桜の刃をサッと研けばいいだけ。そうすれば刀に月の光が纏うことになり、夜になったと錯覚して、昼間でも本来の力を発揮できるって感じ。ま、実際に試してないからあくまで理論上の話だけど。」
「それでもスゴいよ。本当にありがとうサナ。」
レビィがニコッと笑って礼を言うと、サナは急に照れ臭くなり、そっぽを向いて返事をした。サナの反応が可愛いと感じたレビィはクスクスと笑うのであった。
貸切列車は問題なく走り続け、遂に目的地であるシュッドサウスの駅に到着した。
駅を出た龍空高校一同。目の前に広がるのは、ビルにマンション、デパートにホテルなど、大型人工建築物が建ち並び、長く複雑に引かれた道路には多くの車が走り、様々な人が行き交う光景であった。これだけの情報だと、他の都市部とさほど変わらない光景である。
しかし、他国の都市と絶対的に違う部分がある。
それは自然と共存しているところである。例えば大型デパートの中には川が流れていたり、マンションの一部は大木を避けて建造されていたりしている。
つまり、人工の建築物は全て元々あった自然を可能な限り潰すことなく、上手く共存するように建てられているのだ。
「なんかこの景色を見ていると、脳がバグるな。」
シャインが目の前に広がる人工と自然が混じり合う都市を眺めながら呟く。
「ここがシュッドサウスの首都『チュラルナ』。ネットとかで見たことあるけど、やっぱり肉眼で見ると迫力がスゴいね。」
シャインの隣に立つレビィも、眼前の不可思議な光景に少し圧倒されていた。
「お待ちしておりました。龍空高校の皆様。今からホテルへとご案内させて頂きます。こちらへどうぞ。」
龍空高校一同の前に現れたのは、今回お世話になるホテルの従業員であった。クラスごとに1人従業員が付き、円滑にバスへと案内され、乗車していく。
そして全員が乗り終えると、ホテルへ向けてバスが出発した。
バスは順調に進んでいき、緩やかに丘を登っていくと、今回宿泊するホテル──『チェリーブロッサム』に到着した。外桜をイメージしたピンク色の外装で、自然に生える桜の木や竹藪を避けるように建築されているが、不自然さはなく、むしろ芸術的な光景となっていた。
バスから下りた龍空高校一同は、約200メートル先に聳え立つ50メートル以上の大樹──千年桜の壮大さに思わず息を呑んだ。
「おかしいですね。あの桜、開花しているように見えますが。」
ヒューズの言う通り、千年桜はこの距離でも目視できるくらい、綺麗に花が開いているのだ。
「どうやら千年桜は数年に一度、年に2回開花することがあるんだって。その2回目が今の季節らしいわ。」
サナがスマートフォンで調べた情報を教える。
「へぇ〜。何で2回も開花するの?」
エアルが当然の疑問を口にする。
「土地、気候、魔法…オカルトや天文まで、あらゆる分野から議論をされているっぽいけど、未だそれは解明されていないみたいよ。」
サナがネットの情報をそのまま伝えていると、とある情報が目に止まった。
「予定では明後日が満開になるみたい。で、それに伴って満開記念の祭りが開催されるって。」
サナは『千年桜満開祭』というホームページを開き、開催日時を他のメンバーに見せる。
「成る程、だから旅のしおりの3日目が自由行動になっているんだね。実質、その千年桜満開祭を楽しんでってことだろう。」
アレンが学校が用意した『旅のしおり』という名のスケジュール表を取り出して確認する。
「私達お祭り行けるの!?今からめっちゃ楽しみなんですけど!」
エアルのテンションが一気に上がる。
「ほら!エアルさん達!早く付いて来て!」
担任であるナナリーが付いてくるように促す。エアル達は素直に従い、最後尾で付いていく。
(────。)
その時、レビィの耳にノイズような声が聴こえた。
「えっ?」
レビィは反射的に振り返ったが、そこには当然誰もいず、遠くで千年桜が煌びやかに咲いているだけであった。
「どしたのレビィ〜?早く行くよ〜。」
立ち止まるレビィに対してエアルが声をかける。レビィは少しモヤモヤしながらも、エアル達に合流するのであった。
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
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今回の長編はどこまで長くなるのか私にも分かりませんが、気長に待って下さい!
それではまたお会いしましょう!次回をお楽しみに!




