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始まりは魔法科高校から  作者: 眼鏡 純
9章:それぞれの夏休み

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62/72

62話 夜叉族

こんにちは!作者です!なんとか1ヶ月で投稿できました…。

今回もストックを作ってから一気に投稿する予定だったのですが、2025年2月には、『龍○如く8外伝』と『モ○ハンワイルズ』という時間が確実に持っていかれるゲームが発売されるということで、これはストックしていると、次の投稿が6月くらいになると察し、完成した時点で投稿しました。


と、裏話をしたところで、早速本編にいきましょう!今回はレビィの夏休みです。



──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。

 KOMが終わり、夏休みを満喫しているレビィ。今は自分の部屋で回転椅子に座り、宿題をしている。

(のう、レビィ。)

すると、心の中にいる夜叉魔法の化身──ナイトが話しかけてきた。

「なに?」

レビィは手を止めることなく応える。

(我等は修行なり鍛錬なりしなくて良いのか?)

「うーん…一応筋トレとかはしてるけど、やっぱりそれだけじゃダメかな?」

キリが良いところまで解き終えたレビィは、ペンを置いて背伸びをする。

(確かに筋肉や体力は付いているようじゃが、その程度で革命軍に勝てるとは到底思えぬ。)

「まぁ…そうだよね。どうしたら良いかな?」

(そうじゃのう…己の魔法について知見を深め、より効率的に使用する、というのもアリじゃの。)

「だったらナイトが教えてよ。貴女は夜叉魔法の化身でしょ?」

レビィが提案すると、ナイトがクスクスと笑った。

「笑ってないで教えてよ。」

(まぁまぁ。我からは時が来れば教えよう。)

「なにその誤魔化し方。じゃあどうやって知見を深めるのさ?」

(そうだな……)

ナイトが代案を考えていると、部屋の外からパタパタと急ぎ足の音が聴こえてきた。そしてガチャリとドアが開き、先端がカールした紺色の髪に青色の瞳をもつレビィの母親──フィリアが入ってきた。

「どうしたのお母さん?そんなに慌てて。」

レビィが回転椅子に乗ったままフィリアの方に体を向ける。

「聞いて聞いて!お父さん、今日帰って来るって!」

フィリアが嬉しそうな顔で伝えると、レビィは驚きで咄嗟に椅子から立ち上がるのであった。


 時は少し流れ、夕方。レビィとフィリアは暗いリビングで待機していた。玄関が開き、足音がリビングへと近付いてくる。そしてリビングの灯りが付いたと同時に、レビィとフィリアがクラッカーを鳴らした。

「うわっ!?なんだなんだ!?」

身長178cm、スーツを身に纏い、セットされた茶色の髪に青色の瞳をもつ男性──『ルイス・サファイア』は、突然なことに驚く。

「お帰りなさい!お父さん!」

レビィが満面の笑みで迎える。

「ルイスさんが好きな料理、いっぱい用意していますよ。」

フィリアがテーブルに乗る様々な料理に視線を誘導する。ルイスは家族からの最高の歓迎にただただ嬉しくなり、笑顔を浮かべた。


 数年ぶりの親子水入らずの夕食は大いに盛り上がった。今は料理を食べ終え、紅茶とデザートを嗜んでいる。

「そうだ、スノウ君とエアル君は元気かい?」

ルイスがレビィに尋ねる。ルイスは過去にスノウとエアルに出会っており、行き場のない2人の為に自分の家に居候させてあげていた。

「うん。とても元気だよ。今日お父さんが帰ってくることをNELI(ネリ)で教えたんだけど、どうやら今、実家に帰っているみたい。」

「実家って、ザーパトウェストかい?」

「うん。」

「やっぱりエアル君はダイヤモンド一族の子だったんだな。ニュースで見た時は驚いたよ。女王に即位したんだろ。あれって本当はどういう経緯でなったんだい?何か知らないのか?」

「えっと、それは…」

表向きではエアルの父親である──アルバーノ・フィン・ダイヤモンドは、革命軍(謎の組織)の襲撃による負傷と、病による体調不良が続いていることを理由に、王の座を娘であるエアルに継承したことになっている。

しかし真実は、自分達がエアルを取り戻すために城に殴り込みをし、女王となったエアルの権力によって絶対的な箝口令を敷いている状況である。流石のレビィもこの真実は家族にも話していない。

「ほ、殆どニュースとかで取り上げられていたのと一緒だよ。」

レビィはアハハと笑ってはぐらかした後、話題を無理矢理変えた。

「あっ、そうだ。お父さんにまだナイトを紹介していなかったよね?」

「ナイト?ああ、電話で話していたもう一人のレビィか。」

「そうそう。直接会ったほうが早いね。──ナイト、お願いできる?」

レビィは視線を自分の胸辺りにすると、いきなり独り言を始めた。その異様な光景にルイスは驚いているが、フィリアは見慣れているのか特にリアクションをしていない。

レビィは会話を終えると瞼を閉じた。すると髪の色が紺から漆黒に変わり、瞼を開けると、瞳の色が青から赤へと変わっていた。

「初めまして、ルイス殿。紹介に預かったナイトじゃ。」

頬杖をし、ニヤッと笑いながらナイトが自己紹介する。

「おお、本当に人格が変わるんだな。──いや、魂が変わったと言ったほうが正しいかい?」

ルイスからの返しに、ナイトは感心した顔をする。

「流石は魔法を研究して飯を食らう者じゃな。その発想に一発で辿り着くとは。」

「僕の仕事が魔法学なのを知っていたんだね。」

「ああ、お主の娘から聞いておる。」

ナイトは頬杖をやめ、トントンと自分の胸辺りを指差す。

「そうか。──フィリアは、この子の存在を知っていたのかい?」

ルイスがフィリアに問いかける。

「ええ。たまに入れ替わっているから。何だか不思議な感じだけど、私はもう一人娘が出来たみたいで嬉しいわ。」

フィリアはナイトの存在を良しとしており、寧ろ歓迎しているようだ。

「そうか。君が喜んでいるなら別に構わないが。──しかし、本当に君は興味深い存在だ。自我をもつ魔法か…」

ルイスのナイトを見る目が明らかに変わった。その視線を感じ取ったナイトはクスッと笑う。

「お主、目が学者のそれになっておるぞ。なんなら我の体を調べてみるか?愛娘の体を弄ることと同等になるが?」

ナイトは腕を組み、少しだけ胸を上げて挑発する。

「ルイスさん…?」

その時、フィリアが分かっているでしょと言わんばかりの低い声で呟くと、ルイスの背筋がゾクっと凍った。

「わ、分かっている。そんなことはしない。話し合いだけで済ませるよ。」

ルイスは引き攣った笑いをフィリアに見せた後、視線をナイトに戻した。

「ナイト君、レビィにも参加してもらいたいのだが、この会話が聴こえているのかい?」

「答えは否じゃ。今のレビィは心の中で眠っておる。」

「起こすことは?」

「無理じゃろうな。──じゃが、入れ替わったから両方聞くことは出来るぞ。我は心の中からでも眠らず、外の様子を見ることが出来るからのう。」

「──?その差異は何故生じているんだい?」

ルイスの問いに対し、ナイトは、知らん、の一言で答えた。

「ならばレビィと入れ替わってくれないか?レビィにも話し合いに参加してほしいからね。」

ルイスからの指示にナイトは二つ返事で了承すると、髪は紺色に、瞳は青色へと戻し、自分は心の中へと帰っていった。

レビィは体に戻ると、ハッと我に返ったかのようなリアクションをとった後、

「話、終わった?」

ルイスを見詰めながら首を傾げた。

「いや、寧ろ今からが本番さ。──フィリア、君も参加してほしいんだけど、大丈夫かな?」

「ええ。──紅茶、もう一度入れてくるわね。」

フィリアはポットを持って台所へと移動した。

「何の話をするの?」

レビィが話題について訊く。

「改めて、君の魔法──夜叉魔法について紐解こうかと思ってね。」




 フィリアが新しい紅茶を入れ、リビングは少し緊張した空気に包まれている。その状況下で最初に口を開いたのはルイスであった。

「さて、最初の話は、『なぜレビィが夜叉魔法の力に目覚めたのか?』になるかな。」

ルイスが話題を作る。

「私がお祖父(じい)ちゃんとお祖母(ばあ)ちゃんの家の蔵にあった刀──『夜桜』に触れたことよって、眠っていた夜叉魔法の魔力が呼び起こされた、じゃなかったっけ?」

レビィは昔ルイスに説明されたことを思い出す。

「では、『なぜレビィは(夜桜)に触れたことによって夜叉魔法が目覚めたのか?』その理由は?」

ルイスが次の疑問を投げかける。

「それは……」

レビィが回答を考えていると、

(『血統』と『触媒』、じゃな。)

心の中のナイトが先に答えた。

「ナイトが血筋と触媒だって。」

レビィがナイトの言葉を伝える。

「その通り。操れる魔法というのは血統によって決まるのが自然の摂理だ。この摂理は太古より受け継がれる可能性もあり、代々水属性の魔法を操る家系で、大昔に火属性を操る者がいたことにより、火属性の魔法を操る子供が生まれた事例もある。僕は魔法が使えない家系で生まれたから、レビィの魔法関連に一切の影響を与えていない。つまり、夜叉魔法は母親(フィリア)の──『サファイア家』からの血統によるものだ。」

「初めてそれを聞いた時、まさか私の家系にそんな凄い魔法を持つ人がいるなんてビックリしましたよ。」

フィリアが当初の記憶を思い出して感想を告げる。

「ただ、夜叉魔法の血が流れているだけで操れるわけではなく、魔力を目覚めさせる触媒──つまり『きっかけ』が必要となる。今回のそのきっかけとなったのが、『(夜桜)に触れること』だ。」

「夜桜がきっかけか…どうして夜桜なの?他の刀や物じゃダメだったのかな?」

レビィは近くの壁にかけていた愛刀を手に取って質問する。

「それは僕も疑問に思った。だから色々と調べてみた結果、理由が分かった。──その夜桜は、夜叉族の鍛冶屋が『夜叉魔法の力を最大限に発揮するために打たれた刀』みたいだ。加えて、どうやら夜桜には『対になるもう一振りの刀』が存在するみたいだ。名前は『日桜(ひざくら)』。残念ながらこっちの刀は現在どこにあるかは不明だ。──そして、この日桜と夜桜には互いに『より夜叉の力を引き出す条件』が組み込まれているみたいだ。」

「──!!その条件って!?」

力の伸び悩みをしていたレビィは、強化方法を知れるチャンスだと思い、今日一番に食いついた。ルイスは娘のいきなりの食いつきに少し驚きながらも答える。

「見つけた史料には、『日桜は太陽の下で。夜桜は月の下で。その刃に力が込められる。』と、記載されていた。つまり、『日桜には太陽光、夜桜には月光』を浴びせることにより、より力を引き出すことができると解釈できるだろう。」

「そっか…月の光で強くなるんだ、この刀。」

レビィは強くなる方法を知り、少し光明が見えて嬉しくなった。



 「さて、ここからはそんな夜叉魔法を使う一族──『夜叉族』について話していこうか。」

ルイスが話題を変える。

「夜叉族とは遥か昔、アトティスラン大陸の東を統治する国──オリエンスイーストで名を馳せた夜叉魔法を操る一族、というのは様々な史料に載っている情報だ。だけどずっと夜叉族について調べていたら、新たな仮説が生まれたんだ。恐らく夜叉族は、『別の大陸』から渡ってきた可能性が高い。」

「どうしてそう思ったの?」

レビィが理由を尋ねる。

「様々な史料を読み漁った結果、どこにも『夜叉族が誕生した瞬間』が載っていないんだ。主に残っている歴史は、オリエンスイースト内での戦に傭兵として参戦し、とてつもない戦果を上げている、というものだ。しかし、冒頭に述べたように、『夜叉族がここで誕生した』みたいな史料が一切なく、突然戦場に現れた最強の種族として記されているのが殆どなんだ。」

「でもそれは、他の国から来た、という可能性もあるんじゃ?」

フィリアが疑問を口にする。

「フィリアの言う通り、最初は僕もそう考えた。だから他国の史料も読み漁ったみたけど、有力な情報はなかった。──けど、様々な史料を読み漁り、そして照らし合わしたお陰で、『とある共通の人物』のことが記されていることに気付いた。」

「共通人物?」

レビィが復唱する。

「『紫鬼神(しきじん)』と呼ばれていた夜叉族の男だ。紫色の長髪と瞳が特徴で、複数の史料全てに共通して、『敵からも味方からも恐れられた鬼神』と比喩されるほど強かったらしい。」

「その人の存在が、何で別大陸から渡ってきたことに繋がるの?」

レビィが尋ねる。

「最後に見た史料が、オリエンスイーストの『デジマ地区』で別大陸と貿易していた人の日誌のようなものだった。そこに書かれていたんだ。後に紫鬼神と呼ばれる男と特徴が一致する人物が乗船していた、とね。しかも赤鬼神だけでなく、他にも見知らぬ人が数人乗っていたと記されていたことから、夜叉族は貿易船に乗ってこのアトティスラン大陸に渡ってきたと分かった。──これが、僕が調べた夜叉族についての情報だ。」

ルイスが夜叉族についての情報を話し終えた。

「ふぅ…なんか情報がいっぱい入って脳が疲れちゃった。なにか甘いお菓子持ってくるわね。」

そう言ってフィリアは台所へと向かう。

「──えっ?お父さんに訊きたいことがある?まぁ…いいけど。」

レビィが不意に独り言を呟くと、瞼をスッと閉じた。すると髪は漆黒に変化し、瞼を開けると瞳は赤へと変わり、ナイトに入れ替わった。

「ルイス殿、1つ訊いて良いか?」

「なんだい?」

「魔法を研究する者の視点から見て、我の存在をどう考える?」

「君は自分自身を『夜叉魔法の化身』と名乗っているのだろう?それが真実ではないのかい?」

「答えてくれ。」

ナイトが何かを求める瞳でルイスを見詰める。

「………魔法自体に意思が宿るという事例も、それに類似する事例も僕は聞いたことがない。だから率直な考えを述べると、『得体の知れない存在』、になるかな。」

ルイスが答えると、ナイトは少し落ち込んだ表情を浮かべた。

「………そうか、素直な意見を感謝する。」

「ナイト君、本当は君自身も分かっていないのではないのかい?自分がどのような存在なのか。」

ルイスからの問いに対し、ナイトは肯定も否定もせず、ただ少し哀しげな瞳でルイスを見詰めた後、髪は紺、瞳は青に戻った。

「あっ、戻ってきた。話は済んだの?」

レビィがルイスに尋ねると、ルイスはそうだな、と答えた。

「じゃあ私も少し疲れちゃったから先にお風呂入ってくるね。お母さーん、お菓子は後で貰うね。」

レビィは背伸びをしながら椅子から立ち上がると、リビングを後にした。

「私達、何だかあの子に大変なものを背負わせてしまったのかしら…」

お菓子が入った皿と、新しく淹れた紅茶を持って戻ってきたフィリアが心配した表情をする。

「とにかく、僕達は親としてレビィを見守ろう。」

「そうね。──でもまずは、疲れた脳をリフレッシュさせましょう。」

フィリアがニコッと微笑みながらテーブルにお菓子と紅茶を置く。

「そうだね、頂こうか。」

ルイスも笑顔で応え、置かれたお菓子に手を伸ばすのであった。

本日はお読み下さり誠にありがとうございます!

少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!


(おとこ)の世界と狩りの世界を全力で楽しみにながら、1日でも早く投稿できたらいいなと考えていますので、のんびり待っていただけると幸いです!


それではまたお会いしましょう!次回をお楽しみに!

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