6話 契りのキス
こんにちは!作者です!6話して前書きに書くことがなくなってきました!どうしましょう!
書くことがないのなら、早速本編にいってもらいましょう!
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
サバイバルが始まったシャイン達は、拠点となる場所と食料を探すべく、夜で暗闇となった森の中を歩いていた。
「見てレビィ!めっちゃ空綺麗!」
エアルが隣を歩くレビィに空を見上げるよう促す。
「わぁ…ホントだ。周りに建物の光とかがないから、星がよく見えるのね。」
2人が見上げる空には満天の星が輝いていた。
「……もうちょっと緊張感持てよ。」
シャインが天体観測をする2人に対して静かにツッコミを入れる。
「ん?おいあれ、洞窟じゃねぇか?」
スノウが指差す方向には壁があり、そこにぽっかりと空いた洞窟の入り口があった。
「ああいう感じの洞窟って、漫画とかだと中に獣が住んでいるっていうオチが多いよね。」
エアルが過去に読んだ漫画のワンシーンを思い出す。
「だったら偵察だ。行くぞシャイン。」
「俺もかよ。まぁいいけど。」
スノウとシャインは、先陣を切って洞窟の様子を見に行った。
──数分後。
ひょこっと洞窟の入り口からスノウが姿を見せた。
「大丈夫そうだ!ここを拠点にしようぜー!」
スノウが安全だと伝えると、他の4人も洞窟に近付く。そして中を覗き込むと、明らかに戦闘があった痕跡と、鞘に刀を納めるシャインの姿があった。
「いや、絶対先客いたじゃん。奪い取った感が半端ないじゃん。」
エアルが思わずツッコミを入れた。
「拠点に出来そうなら何でもいいわ。取り敢えず今日はここで寝ましょう。」
サナは壁にもたれ掛かるように座る。
「ええ〜!こんなゴツゴツしたところで寝れないよ〜!」
エアルがブーブーと文句を言う。
「そう言うと思い、このようなものを用意しました。」
ヒューズが徐に取り出したのは、数枚の大きな葉っぱであった。
「これを敷くと、地面に直接寝るよりはマシだと思いますよ。」
ヒューズは大きな葉っぱを地面に敷き、原始的な寝床を作った。
「ええ〜…絶対寝れないよ〜。しかもお腹も減ってるし…」
エアルはブツブツと文句を呟きながら、試しに葉っぱの寝床に寝転んだ。
──数分後。
「すー…すー…」
エアルは可愛い寝息をたてながら気持ちよく眠っている。
「即寝じゃねぇか。」
スノウがエアルの寝顔を見ながらツッコミを入れる。
「あはは、よっぽど疲れていたんだね。」
レビィがクスクスと笑いながら、エアルの綺麗なオレンジ色の髪を撫でる。
「取り敢えず女性陣のは作っておきましたので、どうぞ使って下さい。」
ヒューズがレビィとサナの分の寝床も作成する。
「おい、俺等の分は?」
スノウが尋ねると、
「男は黙って地べたです。」
ヒューズが真顔で答える。
「ひでぇ。」
スノウが半目でヒューズを睨む。
「まぁ今は寝ようぜ。本格的に動くのは明日からだ。」
シャインの言葉を最後に、シャイン達は洞窟内で一晩を明かすことにした。
次の日。空は鉛色の雲に覆われ、今にも雨が降りそうな天候であった。
(うわ〜…雨降らなきゃいいけど…)
最初に目が覚めたレビィが、洞窟の入り口で空を見上げている。その背後から次に目を覚ましたシャインが話しかけた。
「早起きだな。」
「うーん…あまり寝付けなくって。」
「そうか。」
「そういうシャインも早いね。やっぱり寝付けなかったの?」
「いや、俺は元々眠りが浅いし朝も早い。」
「へぇ〜。でも朝が早いわりには遅刻するよね。授業中も寝てばっかだし。」
「それはそれだ。また話がちげぇ。」
「え〜結構関係あると思うけど。」
クスクスと笑うレビィの顔を見て、シャインも釣られてフッと小さく笑った。
──その時だった。
(ふむ…やはりその者と話している時が、一番高揚感があるな。)
突然レビィの耳に、知らない女性の声が聴こえてきたのだ。
「えっ!?」
レビィが思わず口に出して驚く。
「どうしたレビィ?」
シャインが尋ねる。
「う、ううん!何でもない!気にしないで!」
レビィが笑顔で必死に誤魔化す。シャインは疑問を抱きながらも、そこからの追求はしなかった。
そうこうしている内に他の4人も目を覚まし、今からの動きについての会議を始めた。そして会議の結果、食料調達にスノウとヒューズ、飲み水調達にエアルとサナ、そして洞窟の見張り番にシャインとレビィという役割になり、各々行動を開始した。
洞窟の見張りとなったシャインとレビィ。特に何か起きることも起こすこともないので、のんびりと待つことにした。レビィは入り口付近で座り、少し後ろでシャインが寝転んで眠っている。
(あの声、何だったんだろう?)
レビィは突然聴こえた女性の声を思い返す。
──その時。
(我を呼んだか?)
また例の女性の声が聴こえてきた。レビィはビクッと驚いてから周囲を見渡す。だが、居るのは寝ているシャインだけであった。
「誰なの?姿があるのなら見せなさい。」
レビィはシャインを起こさぬよう小声で警告しながらゆっくりと立ち上がる。
(落ち着け。どれだけ周りを警戒しようと我を見付けることは不可能だ。あと、姿を見せることも不可能。なんせ、お主の『心の中』から話しかけているからな。)
「心の…中から?」
レビィはスッと自身の胸に手をあてた。
(そうだ。我は…そうだな…『夜叉魔法の化身』、みたいなものだろうか。)
「夜叉魔法の…化身?」
理解が追い付かず、レビィはただ困惑する。
(やれやれ…お主がなかなか『契り』を交わさないから、我のような存在が生まれたのだぞ。)
夜叉魔法の化身が呆れた声色で告げる。
「どういうこと?契り?」
ますます困惑していくレビィ。
(はぁ…もう少し自分の魔法について調べるのだな。もう良い。少し体を借りるぞ。お主の『主』になれる者はいるからな。)
「えっ!?何を…!」
次の瞬間、レビィは意識が遠のき、気を失ってしまった。レビィの倒れる音を聴いたシャインは、ぱちっと目を覚ました。
「おい!どうしたレビィ!?」
気を失っているレビィに駆け寄り、シャインはレビィの体を抱き起こす。すると数秒後、レビィは目を覚まし、美しい青い瞳でシャインを見詰めた。
「大丈夫、ありがとう。」
礼を言いながら、レビィはシャインの頬に触れる。
「レ、レビィ…?」
ここでシャインは気付く。今のレビィが妙に艶かしいことに。
「ねぇシャイン…」
困惑するシャインを器用に押し倒し、レビィは馬乗り状態になる。
「レ、レレレレレレレレレビィ!?」
突然のレビィの妖艶さと大胆行動に、シャインの感情が困惑と羞恥、そして興奮でぐちゃぐちゃになる。
「ふふっ、大丈夫。すぐに終わるから。」
レビィはスッとシャインの顎に色っぽく指をあてる。そしてゆっくりと自身の唇をシャインの唇へと近付けていく。
──しかし次の瞬間。
「おやおやぁ〜?何をやっているのかなぁ〜お二人さん?」
スノウとヒューズが戻ってきており、すっごいニヤニヤした顔でスノウが尋ねてきた。
「おや、邪魔が入ってしまったか。仕方がない。続きはまたにしよう。」
レビィは色気のある笑みを浮かべた後、フッとシャインの上で気を失ってしまった。そしてすぐに目を覚ますと、目の前にシャインの顔があることに赤面すると、
「い、いやぁぁぁぁぁぁ!」
と、悲鳴を上げつつ立ち上がり、シャインの頬に思い切りビンタを喰らわした。
「ほべぇぇぇ!」
シャインは情けない声を上げながら転がるように吹き飛び、壁に激突する。
「な、なななな何しているの!?」
赤面状態のレビィが叫ぶ。
「それはこっちの台詞だ馬鹿野郎!」
鼻血を流すシャインが珍しく声を荒げる。
「……どういう状況?」
そこにサナとエアルも戻ってきて、カオスな状況になっている場面に冷静なツッコミを入れた。
全員が揃ったところで、洞窟で起きていた一連の出来事をシャインが説明した。
「な、何で私…そんなことを…」
身に覚えのない恥ずかし過ぎる行動をしてしまったレビィは、洞窟の奥で体育座りをして落ち込む。
「良いじゃん良いじゃん!最高じゃん!もうそのままブチュー!ってしたら良かったのに!あっ!なんらな今やる!?」
恋愛話にテンションが上がるエアルが、レビィとシャインにキスをするか尋ねると、
「「しない!!」」
口を揃えてシャインとレビィが拒否をした。
「生物は危機的場面になると本能的に子孫を残そうとします。それは人間も例外ではございません。なのでこのような状況ですから、レビィの本能がシャインと子孫を残そうとしたのでしょう。」
「そんな生物学的視点で解説しないでー!違うからー!」
ヒューズの分析に対して、レビィが耳を塞いで聴こえないふりをする。
「それより、お前等の成果はどうなんだよ?」
シャインが無理矢理話題を変えた。
「ん?ああ、食料の方は問題ねぇ。マンモスピッグを狩ってきた。」
スノウの言う通り、洞窟の入り口付近に3メートルはある1匹のマンモスピッグと呼ばれるマンモスの姿に似た豚の魔物がドスンと置かれていた。
「水も川を発見したら汲んできたわよ。近場に竹林があったから竹筒を作ってね。」
サナが人数分と予備の分の竹筒を並べる。
「よし、なら取り敢えず飯にするか。昨日の昼から何も食ってないしな。」
シャインの意見に全員が賛成し、6人はまず腹ごしらえをすることにした。
マンモスピッグの肉は噂通り美味で、食事を難なく終えたシャイン達は、日没まで周囲の探索をした。しかし危険区域脱出の為の情報は得れず、二度目の夜を迎えた。
シャイン達が寝ている中、レビィはなかなか寝付けず、洞窟から少し移動した所にあった岩の上に座って考え込んでいた。
「ねぇ、もしかしてだけど、あなたが勝手に私の体を操作した?」
レビィが自身の中にいる夜叉魔法の化身に話しかける。
(言ったではないか。体を借りると。)
「言ってたけど…。でも何で体を乗っ取ってまですることがキ…キスなのよ…?」
至近距離のシャインの顔を思い出し、レビィがまた赤面する。
(キスが契りを結ぶための最も単純で簡単な方法だからだ。それとも、もっと濃厚で妖艶な契りをしてほしかったか?所謂セック──)
「あー!分かった!分かったからそれ以上は言わないで!」
恥ずかしさで顔から火が出そうになったレビィが慌てて止める。
そんな2人?が会話していると、
「なに1人で騒いでいるの?」
背後から急に話しかけれ、レビィは心臓が飛び出るくらい驚きながら振り返った。そこにはサナの姿があった。
「えっ!?う、ううん!何でもない!ただの独り言だよ!」
レビィが必死に誤魔化そうとする。
「ふ〜ん…にしては誰かと会話しているような感じだったけど。」
サナが疑いの視線を浴びせる。
「えっ、えっと〜…それは〜…」
レビィが必死に言い訳を考えていると、
「いいわよ、隠さなくて。──出てきなさい。レビィの中にいる誰かさん。」
と、サナが見透かしたようなことを告げた。するとレビィはスッと瞼を閉じ、数秒後に開いた。すると纏う雰囲気が変化した。
「おや、我の存在に気付くとは驚いたな。」
「あんた何者?レビィのもう一つの人格?それとも取り憑いた幽霊的な存在?」
「我は夜叉魔法の化身というのが一番表現としては近い。」
「ふーん、魔法自体が自我をもつなんて聞いたことないけど。」
「細かいことは気にするな。──それで、我に何か用か?確か名は…サナ・クリスタルだったな。」
「特に用はないわ。只の興味本位よ。強いて言うのなら、自分の知識を増やすためってところかしら。」
「アハハハハ!面白い女だな!知識の幅を広げる為に得体の知れないモノに近付くとは!」
レビィがケラケラと笑いながら岩からぴょんと跳び降りる。そしてサナに近寄り、耳元で囁いた。
「だが、どうやら得体の知れないモノというのはお互い様のようだな。」
レビィの囁き、サナがピクッと小さく反応をした。
「案ずるな。勘付いているのは我だけ。レビィ・サファイアは知らない。」
「……あらそう。なら、そのまま黙っててもらうと有難いんだけど。」
サナがほんの少し苦い顔をすると、レビィがクスリと笑った。
「心配するな。黙るも何も、我はお主の正体までは分かっていない。あくまで得体の知れない者ということに勘付いただけだ。」
そう言ってレビィはサナから離れていく。
「さ、そろそろ我達も寝るとしよう。夜更かしは美容の敵だからな。」
レビィはクスッと妖艶な笑みを浮かべてから、洞窟へと戻っていった。サナはレビィの背中を眺めながら、
「はぁ…厄介なことになったかも。」
と、溜め息混じりで呟くであった。
サバイバル生活2日目の朝。鉛色の空からはシトシトと雨が降っている。そんな雨音の中に、獣の唸り声が混じっていることを、シャインの耳がいち早く聴き取った。
「全員起きろ!」
シャインは飛び起きながら風砕牙の柄に手をかける。他の5人はシャインの声に反応して目を覚まし、シャインと同じように警戒態勢となった。そしてシャインを先頭に洞窟から出ると、例の獣とご対面した。
それはこの危険区域に入って最初に遭遇した5メートルは裕に超える虎に似た巨大な獣の魔物であった。
「つくづくこいつと縁があるな、俺達。」
シャインが風砕牙を抜刀する。
「思い出した。こいつは『ライティグレ』と呼ばれる雷を操る虎に似た魔物よ。」
サナが知識を引き出しを開け、虎の魔物の正体を突き止める。
「──!!くるよ!」
エアルが叫んだ時には、ライティグレは右前足を振りかぶっていた。その右前足には雷が纏われている。
「避けろ!」
シャインの合図で一斉にその場から回避する6人。ライティグレは誰もいなくなった地面に右前足を振り下ろした。次の瞬間、右前足を伝って雷が地面を走った。その雷をエアルとスノウが受けてしまい、痺れて動けなくなってしまった。
「し、痺れる〜!」
「くそっ!体が動かねぇ…!」
エアルとスノウが必死に動こうとするが、体は言うことを聞いてくれない。ライティグレは次の標的として、シャインを睨み付ける。
「次は俺ってわけか。」
シャインが風砕牙を構えると同時に、ライティグレが常識離れした鋭い牙で噛み付いてきた。
「[爆風刃]!!」
シャインが風砕牙を振るうと、前方に爆風が発生し、ライティグレを吹き飛ばした。しかし、しなやかな動きによって空中で体勢を戻すと、地面に着地すると同時に再度突進し、カウンターで尻尾による薙ぎ払いでシャインを吹き飛ばした。まともに受けたシャインは壁に激突した。
「がはっ…!」
かなりダメージを受けたシャインは、口から血を吐いて地面に倒れる。止めを刺そうとするライティグレに対し、ヒューズとサナが攻撃を仕掛け、注意を自分達に向けた。
「シャイン!」
レビィが標的にされていない隙にシャインに駆け寄ろうとした時だった。
(待て!)
突然心の中から叫ばれ、ピタッと動きを止めた。
「えっ…!?まさか夜叉の化身!?こんな時に何!?」
(我に体を貸せ!この場を打破するには夜叉魔法の本当の力を解放するしかない!)
「えっ!?えっ!?」
完全困惑状態のレビィを置いて、夜叉魔法の化身が話を進める。
(説明している暇はない!とにかく体を借りるぞ!)
次の瞬間、レビィはスッと気を失った。しかし倒れる前に目を覚まし、すぐにシャインの元へと駆け寄った。
「大丈夫、シャイン?」
レビィが安否を心配すると、シャインはゲホッと血を吐いてからよろよろと立ち上がった。
「ああ…大丈夫だ。」
「そうには全く見えないな。だからお主はそのまま体を休めていろ。あの虎は我が仕留める。」
「……お前、レビィじゃねぇな。あの時俺を襲った方の奴か。」
「後で説明はする。今は…『我の主』となってもらう。」
──会話が終えると同時に、レビィとシャインの唇はゆっくりと交わされた。
次の瞬間、レビィから漆黒のオーラが発生し、青い瞳は薔薇の如く赤に変わり、紺色の髪は漆黒の髪へと変化した。
「なっ……!?」
シャインは戸惑ったままレビィを見詰める。
「待っていろ我が主。今から見事にあの獣を討伐してみせよう。」
レビィは唇についたシャインの血を指で拭った後、愛刀の夜桜を抜刀した。
本日はお読み下さって本当にありがとうございます!
少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価をお願いします!
キスでの覚醒。ベタかもしれませんが私は好きです。
では、次回をお楽しみに!