54話 悪夢の終わり
こんにちは!作者です!
まさか3話に渡ってこの話をするとは思いませんでしたが、今回でカワルダケ回は完結です!
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
──7日目。
遂に解毒薬が完成する日となった。アレン曰く、夕方には完成するそうだ。
今日は休日。すっかり女性服を着こなしているシャインは1人で繁華街を散歩し、食べ歩きを楽しんでいた。
(次なに食べよっかな〜?)
3食目のクレープを食べ終えたシャインが、ルンルン気分で次の食べ物を物色する。
その時、人気がない裏路地で複数人の男に囲まれる女子2人を発見した。
(あの女子…隣のクラスの。)
話したことはないが同級生だと分かったシャインは、なんの躊躇いもなく歩みを路地へと変えた。
「止めなよ。」
シャインの威圧が乗った声が裏路地を通る。いかにも不良な男達と女子2人が同時にシャインへ視線を向けた。
「あん?誰だねーちゃん?」
金髪の男がガンを飛ばしながら問いかけるが、シャインは無視して女子2人に近寄る。
「早く行って。」
シャインは小声で女子2人に逃げるように促す。女子2人は素直に従い、そそくさとその場から逃げていく。
「おいおい、どこに行く気だよ。」
鼻ピアスの男が逃げる女子2人を止めようと手を伸ばすと、シャインが手首を掴んだ。
「いい加減にしろ。」
シャインがグッと掴む力を強めると、鼻ピアスの男は予想外の強さに驚きながら痛がっている。シャインがパッと手を離すと、鼻ピアスはシャインから遠ざかり、痛めた手を振る。
「いってーな、ねーちゃん!ちょっと力が強いからって調子乗んなよ!」
鼻ピアスの男が感情任せに殴りかかるが、シャインは軽々と避け、鳩尾に一撃を入れた。鼻ピアスの男は苦しみながらうつ伏せに倒れた。
「マジかよこのねーちゃん…」
他の男達はシャインの謎の強さに怯む。
「二度とウチの学校の生徒に手を出すなよ。」
シャインが睨みをきかせてからその場から去ろうとした時だった。
突如全身に電撃が走り、体の自由を失った。
(しまっ……た……!)
両膝をついてからうつ伏せに倒れるシャイン。横目で見えた光景は、金髪の男がスタンガンの如く二本の指の間に電気を走らせていた。
(くそっ…油断した……)
意識も朦朧とし始め、視界が暗闇に包まれた。
「シャインがいない?」
シャインの部屋の前。話しているのはアレンとソノであった。
「はい。女の子最後の日だからと言って散歩に出掛けました。」
ソノがシャインの行方を説明する。
「そっか。せっかく早めに薬が手に入ったから持ってきたのに。」
アレンは懐から小さいプラスチックケースを取り出す。中にはカプセル型の錠剤が入っていた。
「ホントですか!電話してみますね!」
ソノは自分のことかのように喜びながらスマートフォンを取り出すと、シャインに電話をかけた。しかし、着信音が鳴り続けるだけで、一向に繋がる気配がなかった。
「あれ?電話に出ませんね。」
ソノは不思議そうな顔をしながら数回電話をかけるが、向こうから反応はなかった。
「……嫌な予感がする。」
不審に思ったアレンはプラスチックケースを懐に戻すと、OGに連絡をしながらシャインの部屋を後にした。
廃墟ビルの一部屋。そこにはロープで手足を縛られたシャインの姿があった。体はまだ痺れており、思うように動けない。
「いや〜このねーちゃん妙に強くてビビったけどよ、ちゃんと見たらかなり上玉だよな。」
金髪の男がシャインの顎をグイッと上げ、いやらしい目で視姦する。
「さてと、誰から味わう?」
「よっしゃあ!トランプで決めようぜ!」
男達はシャインを置いてトランプを始めた。
(ヤバいヤバいヤバい!このままじゃ犯される…!)
万事休すなのは重々承知。しかし打開策は現状ゼロ。体の痺れと心身の乖離によって魔法も上手く発動することも出来ない。
焦りだけが募り続けるだけの時間が過ぎると、男達のトランプが終了していた。そして金髪の男が興奮気味にシャインへと近寄ってくる。
「ふっふっふ、たっぷり味わってやるからな。」
金髪の男がシャインの服を脱がそうと手を伸ばした時、シャインの視界にチカチカと赤い光がちらついた。シャインが赤い光の方向へ顔を向けた瞬間、銃声と共に勢いよく口の中に何かが入ってきて、反射的に飲み込んだ。
「な、何だ!?銃声!?」
銃声に驚いた男達は咄嗟にシャインから遠ざかった。
「これで戻ってくるかな。僕達が知っている彼が。」
シャインがいる廃墟ビルから数十メートル離れた建物の中でスナイパーライフルをリロードするのは、緋色の髪の少年──アレンであった。
心臓が鼓動し、全身に血が巡る。その血の流れに乗って、口から入ってきた解毒薬も全身を巡った。シャインを侵していたカワルダケの毒はみるみるなくなり、同時に魔力や筋力も回復してきた。
そして魔法が使えると感じたシャインは、風の斬撃で自分を縛るロープをいとも容易く切断すると、スタイリッシュに起き上がる。
「あ〜…ずっと悪夢を見ていた感じだぜ。」
声も体も男へと戻っていくシャインは、コキコキと首を鳴らす。
シャインを攫った男達は、目の前で上玉の女から女装の男へと変貌していく様を見て、分かりやすく混乱していた。
「ど、どういうことだ!?新手の女装か!?」
金髪の男が動揺した声で訊く。
「面倒だから説明する気はねぇ。そして、俺を犯そうとした罪、たっぷりその身に味わってもらおう。」
シャインは怒りに満ちた顔で拳を鳴らした。
数分後、廃墟ビルにはノックアウトされた男達が重なるように倒れていた。
「おかえり、シャイン。」
廃墟ビルの出入り口。ビルから出てくるシャインをアレンは出迎えた。
「もうちょっと良い飲ませ方なかったのかよ。喉ちんこ切れるかと思ったぞ。」
「あはは。でも、あの状況下で飲ませる方法としては最適解だったと思うけど。」
「……それもそうか。ま、とにかく男に戻れて良かったぜ。」
「そうだね。──じゃあ男に戻って最初にすることは着替えだね。」
と、言いながらアレンはスマートフォンを構え、パシャと女装状態のシャインを撮った。
「てめっ…!なに撮ってやがる!」
シャインはアレンからスマートフォンを取り上げようとする。
「あははは!記念だよ記念!」
アレンはシャインを避けながら楽しそうに笑った。
次の日の教室。いつものメンバーがシャインの席の周りに集まっていた。
「戻って本当に良かったよ。」
レビィが安堵した表情で告げる。
「あのままずっと放置していたらどうなっていたかは少し気になるけどね。」
エアルが笑いながら告げる。
「勘弁してくれ……」
椅子に座るシャインがげんなりした顔になる。その時、ヒューズがとある事に気付く。
「おや?シャイン、座り方が。」
ヒューズの言葉で全員の視線がシャインの足に集まった。今のシャインの座り方は可愛らしく内股になっていた。
「完全に癖化してるわね。」
サナが鼻で笑うと、レビィ達もアハハと笑った。
「あ〜〜…!もうキノコは懲り懲りだーー!」
シャインの嘆きの声が教室に響くのであった。
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
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では、3人目のキャラクタープロフィールは……『エアル・フィン・ダイヤモンド』です!
名前:エアル・フィン・ダイヤモンド
魔法名:なし。光属性魔法と治癒魔法を使う。
戦闘方法:杖/詠唱
身長:162cm
体重:48kg
髪:オレンジ色のショートヘア
瞳:赤色の瞳
誕生日:4月14日
血液型:AB型
バスト:Fカップ
好きな食べ物:フルーツ全般(中でも蜜柑が一番好き)
嫌いな食べ物:苦いもの全般(中でもピーマンが一番嫌い)
好きな教科:歴史
嫌いな教科:数学
キャラクターモデル:『FF13』の『ヲルバ=ダイア・ヴァニラ』
【名前の由来】
エアルは最初から回復役のポジションにしたかったという点と、キャラモデルがFFキャラという点から、FFの回復魔法『ケアル』からいただいています。あと、ミドルネームの『フィン』は『Fin』を表しており、『ザーパトウェストは始まりから終わりまでダイヤモンド一族が統治する。』という意味が込められています。ちょっとこじつけ過ぎなのは重々承知です…。
このキャラクタープロフィールで、少しでもキャラ達に愛着をもっていただけると幸いです!
それでは、次回をお楽しみに!




