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始まりは魔法科高校から  作者: 眼鏡 純
1章:ようこそ、魔法科高校へ
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5話 遠足サバイバル

こんにちは!作者です!本日から数話にかけてお送りするのは、学校ならではの行事、『遠足』です!タイトルが既に不穏ですが……



──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。

 時は流れて、6月。ジメジメとしたこの梅雨の時期と思えないほど快晴なこの日に、龍空高校1年でとある行事が行われる。

 それは──『親睦会』である。

 入学して2ヶ月が経過すると、ある程度のグループというのが形成される。そのグループの枠を超え、更に友達の輪を広めてもらおうというのが学校側の狙いである。

 親睦会の内容はクラスによって異なり、シャイン達のクラス1年1組が行うのは─『遠足』である。

 遠足内容は、龍空高校からバスで約2時間で到着する『天龍山(てんりゅうざん)』を少し登り、『魔高水(まこうすい)』と呼ばれる魔力を高めると言われている湧水を飲みに行くというものである。天龍山は観光地としても有名の為、老若男女が気軽に登山を楽しめる。

 ただ1つだけ注意することがある。それは『危険区域』と呼ばれるエリアには絶対に入ってはならないというものだ。理由は単純。危険区域には魔物が生息しているからである。この危険区域にさえ近付かなければ、この親睦会はとても楽しい思い出になることであろう。



 「……というわけで改めて説明をしましたが、何か質問とかありますか?」

いつものきちっとしたスーツ姿ではなく、動きやすい服装を身に纏うナナリーが、教卓で今日のスケジュールをおさらいしている。シャイン達生徒は学校指定の運動着を着ており、グラウンドには移動用のバスが停車している。

 「ではそろそろ移動の時間ですので、皆バスに移動して下さい。」

ナナリーがバスに移動するように指示すると、テンションがいつもより高い生徒達がバスへと移動していく。

「あれ?サナ、皆行っちゃうよ。」

皆が移動している中、自分の席で読書に夢中になっているサナをレビィが呼んだ。

(……!この本に書いていることが間違っていないのなら、レビィの夜叉魔法はまだ()()()()を解放していない…?)

本の解読に夢中のサナは、レビィの呼ぶ声が聞こえていないようだ。

「おーい、サナったら。」

レビィが近寄ってサナの肩をポンポンと叩くと、サナはようやく呼ばれていることに気が付いた。

「なに?」

「皆移動始めているよ。早く行こ。」

「ああそう。なら、行きましょう。」

サナは読んでいた本を机の中に直すと、レビィと共に教室を出る。

「凄い夢中で読んでいたけど、何の本だったの?」

廊下を歩いていると途中、レビィがサナに尋ねる。

「絶滅魔法についての本よ。」

「へぇ〜、そこに夜叉魔法のことも載っていた?」

「……ええ。」

「ホント!?じゃあ一度貸してよ。私、自分の魔法なのに夜叉魔法について全然知らないから。」

「別にいいわよ。古代語が読めるならね。」

「こ、古代語?」

「ええ。さっきの本は全て古代語で書かれているの。それを解読出来るなら貸してもいいわよ。」

「え、遠慮します……」

「賢明な判断ね。何も読めない本の前で無駄な時間を過ごすところだったわよ。」

そんな会話をしている間にバスの所に到着して、2人はそのまま乗車する。全員揃ったところで、1年1組は天龍山に向けて出発した。




 約2時間後。1年1組の一向は天龍山の麓に到着した。そこにはサービスエリアのような土産屋や食堂がある施設があり、他の観光客達で賑わっていた。 

「あ〜やっと着いたか。」

バスから降りたシャインが背伸びをする。

「あ〜…今からこれ登んのか…」

スノウが天龍山の頂上を見上げながらげんなりする。

「登頂を目指すわけではないので、そこまで疲れませんよ。」

げんなりするスノウの隣でヒューズが告げる。

「えっ、そうなの?私はてっきり山頂を目指すものだと思ってた。」

エアルがアハハと笑う。

「どんだけ話を聞いてないのよあんた達…。目当ての魔高水はこの山の中腹くらいよ。」

サナが呆れながら説明する。

「はーい!では皆さんはぐれないように付いてきて下さいねー!」

ナナリーを先頭に、1年1組の山登りが開始された。




 登山と言っても整備された道を歩くだけなので、生徒達は周りの景色を堪能しながら登山を楽しんでいた。

 そんな登山中、サナがレビィに話しかけた。

「ねぇレビィ、ちょっと訊いてもいい?」

「なに?」

「レビィって好きな奴いる?別に名前を言う必要はないけど。」

「………えっ!?」

余りにも突拍子もない質問に理解が遅れたレビィは、少し間を空けてから顔を赤らめた。

「な、ななななな何でいきなりそんなこと訊くの!?」

「ちょっとした調査よ。──で、いるの?いないの?」

(どんな調査よ!)

レビィが心の中でツッコミを入れる。しかし、サナの雰囲気からして茶化しているような感じではないと思ったレビィは、乱れた心を無理矢理落ち着かせてから答える。

「べ、別に今のところはいない……かな。」

「あっそ。ならいいわ。」

レビィの恥ずかしさと闘いながらの返答に対し、物凄いあっさりとした反応をするサナ。

「ちょっ…!折角答えたのにその反応はないんじゃない!──ていうか、何でいきなりそんな質問してきたの?」

レビィは少しムッとしてから、質問の意図を訊く。

「あんたの夜叉魔法に関する事なの。──じゃあ少し質問を変えるわ。レビィは異性の知り合いの中で、こいつはとても信頼できるなって思える奴はいる?」

「信頼できる異性ってこと?うーん……」

サナが何を考えているのか全く分からないレビィだが、取り敢えず考えてみた。すると真っ先にあの黒と黄緑髪の男が思い浮かんだ。

「まぁそれならいる…かな。」

「成程。だったらあんたの夜叉魔法、()()()()を解放できるかもしれないわね。」

意味深な事を言って、サナはそこで会話を終了された。

(ええ〜〜…どういうこと〜!?)

ただモヤモヤを植えつられたレビィは、全然スッキリしない状態のまま登山を続けるのであった。




 登山から1時間。休憩に最適な野原に到着した。休憩を想定しているため、トイレや給水場などが設置されている休憩所がある。奥は崖になっており、木製の柵で落下防止がされている。

「はーい!ここで少し休憩しまーす!柵の方にはあまり近付かないようにねー!」

ナナリーの指示により、休憩時間が始まった。生徒達は各々の場所を休憩をとる。

「おおー!こりゃ良い景色だ!」

ナナリーの警告を早速無視して、崖付近から景色を堪能するのはスノウであった。

「あんなに登る前はげんなりしてたくせに、すっかり楽しんでんじゃねぇか。」

シャインがスノウの隣に立ち、同じように眼前に広がる景色を眺める。

「始まったら楽しまなきゃ損じゃねぇか。」

スノウが反論すると、シャインはへいへいと軽くあしらった。

「ねぇあれ、魔物じゃない?」

エアルも合流し、何かを発見したようで崖下を指差す。

「あれは…マンモスピッグですね。マンモスの牙と力を得た豚と思っていただければ分かりやすいかと。意外とお肉は美味と聞きます。」

ヒューズも合流し、エアルが見つけた魔物について解説する。

「へぇ〜、ちょっと狩ってみるか。」

シャインが風砕牙の柄に手をかける。

「だめ!危ないでしょ!」

レビィが子を叱る母親のようにシャインの行動を止める。

「…冗談だっつうの。」

シャインがレビィに叱られる光景を見て、他の3人が笑う。


 シャイン達5人の光景を少し後ろで見守るサナは、レビィをジッと見ながら考え事をしている。

(夜叉魔法の本当の力、それを解放するキーパーソンは、やっぱり()()()か。)

その時、サナの耳に別の女子生徒2人の会話が聴こえてきて、反射的に視線を向けた。

「見てこれ。こんなところに花が咲いてる。」

ポニーテールの女子生徒が草だけの地面に咲く真っ赤な花を指差す。

「ホントだ。なんか映えそうだから撮ろうよ。」

友達の三つ編みの女子生徒が自身のスマホをリュックから撮り出そうとした時、持っていたペットボトルを落としてしまい、中の水が真っ赤な花にかかってしまった。

「あ〜あ、勿体ない。」

ポニーテール女子生徒が笑う。

「いや、ポジティブに考えよ。一本だけで健気に咲く花に水をやる私。的な感じで映えそうじゃない?」

「なにそれ!ウケる!」

女子生徒2人が楽しそうに笑い合っていると、

「そこの2人!早くその花から離れて!」

サナが2人に向けて叫んだ。女子生徒2人は突然叫ばれたことにビクッとなりながら、サナの方を向いて困惑している。

 次の瞬間、真っ赤な花が突如巨大化を始め、花の真ん中に鋭い牙を生やした口を出現させ、地面からは蛸足の如くウネウネを動く太い蔓を何本も生えてきて、ポニーテールと三つ編みの女子生徒に巻き付き拘束した。

 シャイン達も異変に気付き、巨大化物花に視線を集める。

「な、何だありゃ!?」

スノウが分かりやすい驚くリアクションをする。

「あれは植物系の魔物─『ミズギライ』よ!花のくせに水が嫌いで、かけられるとあんな風に凶暴化するのよ!」

サナが戦闘態勢になりながら巨大化物花の解説をする。

「てか!2人捕まっちゃってるよ!早く助けないと!」

エアルが杖を構えて救い出そうとするが、下手な攻撃をすると女子生徒達にも危険を及ぼしてしまう為、なかなか攻撃に転じれない。

 そんな全員が動けない中、シャインは一切の迷いなくミズギライに接近すると、目の前で跳び上がって風砕牙を構えた。

[隙間風(げっかんふう)]。」

シャインが風砕牙を振るうと、斬撃の風が蔓の隙間を通っていき、時間差で一斉に切断された。巧みな技によって女子生徒2人は無傷で救出される。

「早く離れな。危ねぇから。」

シャインが背を向けたまま、倒れる女子生徒2人に告げる。

「あ、ありがとう。」

女子生徒2人はシャインの逞しい背中に少しときめきつつ、急いでその場から離れた。

「凄い…動きに迷いがなかった。」

レビィがシャインの瞬時な判断に感心する。

「畳みかけるぞ!」

救出を確認したシャインがレビィ達に合図をだすと、5人はそれに応え戦闘態勢となった。

[閃風波(せんふうは)]!!」

シャインが三日月型の輝く風の斬撃を飛ばし、ミズギライの蔓を切り裂く。

[長月(ながづき)]!」

レビィは黒きオーラを愛刀─夜桜(よざくら)に纏わせ、擬似的に刃の長さを伸ばすと、薙ぎ払いで蔓を切断する。

「俺もいくぜ![ロックナックル]!!」

スノウが地面を殴ると、ミズギライの根元から拳の形をした岩が出現し、アッパーカットを喰らわした。

「[サンダーアロー]!」

スノウの攻撃で怯んだミズギライに、ヒューズは追い撃ちで雷の矢を喰らわし、痺れさせて動きを封じる。

「[ホーリーソード]!」

更に追い撃ちをかけるように、エアルが数十本の光の剣をミズギライに突き刺す。

「これで終わりよ![フレイムキャノン]!」

最後にサナが詠唱し、魔法陣から炎の大砲を発射した。直撃を受けたミズギライは瞬く間に全身を燃やされ、その姿を消滅させた。

「やったー!大勝利ー!」

「うん!」

レビィとエアルがハイタッチをして勝利を喜び合う。周囲の人々もシャイン達の勝利に歓声を上げた。

  喜びの中、誰も気付かないところで最悪なことが起きていた。それは女子生徒が落としたペットボトルが、少し水を残した状態で崖下に落ちてしまい、真っ赤な花に水をかけてしまったのだ。

 完全に油断しているシャイン達の背後の崖から、倒したミズギライより数倍大きいミズギライが姿を現した。シャイン達はすぐに戦闘態勢に戻るが、一手遅かった。シャイン達は全員蔓に捕まり、崖の方に放り投げられてしまったのだ。

「うあぁぁぁぁぁぁ!!」

「いやぁぁぁぁぁぁ!!」

シャイン達は悲鳴を上げながら、崖下に姿を消してしまった。




 崖下に落ちたシャイン達は、全員気絶していた。その中で最初に目を覚ましたのはシャインであった。

「いってぇ〜…」

痛めた後頭部を押さえながら起き上がり、辺りを見渡す。周囲は森林を通り越してジャングル並みに生い茂っていた。

 「ん……」

シャインの次に目を覚ましたのはレビィであった。

「あれ?シャイン、ここはどこ?」

レビィは痛めた腕を庇いつつシャインに尋ねる。

「さぁな。あの花の化物に投げられたところまでは覚えいるんだが。」

2人が会話していると、他の4人も目を覚まし、全員が動けるようになった。


 「周囲を調べましたが、どうやらここは天龍山の『危険区域』のようですね。」

周囲を偵察してきたヒューズが、自分達が居る場所を特定する。

「えっ!?ヤバいじゃん!危険区域ってことは……!」

エアルが焦っている時、近場の木々がバキバキと折れる音がした。全員が一斉に音が警戒態勢をとる。そして木々を薙ぎ倒して現したのは、虎に似た巨大な四足歩行の魔物であった。

「こ、これは……」

シャインが目の前の猛獣を見上げながら苦笑いする。

「逃走一択、ですね。」

ヒューズも苦笑いしながら提案をする。

「賛成だ!逃げるぞーー!」

スノウの言葉を合図に、6人は一目散にその場から逃げるであった。


 なんとか魔物から逃げ切れた6人であったが、ここで最悪なことに気が付く。

「はぁ…はぁ……これ…俺達やっちまったんじゃねぇか?」

スノウの問いに対して、サナが応える。

「そうね。これは完全に危険区域の奥地に入り込んでしまっているわ。」

「だよなぁ~…」

スノウがその場に片膝を立てて座り込む。

「しかも最悪なことに、弁当や飲み物が入っているリュックを全員落としているときた。」

シャインが自分達の背中にリュックがないことに気付く。

「あぁ…あのリュックお気に入りだったのに…」

エアルがガクッと項垂れる。

「でも全員が落とすなんてあり得るかな?」

レビィの言う通り、6人全員がリュックを落とすなんて低い確率である。

「キキー!!」

その時、木の上から獣の鳴き声が聴こえてきた。6人が一斉に上を見上げると、そこにはシャイン達のリュックを背負った猿の魔物が数匹いた。

「あっ!俺等のリュック!」

スノウが立ち上がって猿の魔物を指差す。

「どうやら気絶している間に奪われていたようですね。」

ヒューズが冷静に分析する。

「冷静に言ってる場合か!さっさと奪い返すぞ!」

シャインが風砕牙を構えたその時、先程まで自分達を追っていた虎の魔物が出現した

「なっ!?またこいつかよ!」

シャイン達の意識が虎の魔物なる。その間に猿の魔物達は危険区域の更に奥地へと逃げていった。

「お猿さん達が逃げる!」

エアルが叫ぶ。

「諦めなさい!今は逃げるわよ!」

サナの言葉を合図に、シャイン達は虎の魔物から逃走した。



 そこからシャイン達は様々な魔物に追われ、逃げ切った頃には夕方になっていた。

「はぁ…はぁ…はぁ…もうダメ…もう動けない…」

体力の限界がきたエアルがぺちゃんと座り込む。

「はぁ…はぁ…そうね。体力的にも時間的にも、これ以上動くのは危険だわ。」

サナが暗くなっていく空を見上げる。

「すぐに救助が来るとも思えない。これは、ちょっとしたサバイバルが始まりそうですね。」

ヒューズが空を見上げながら告げる。

「そうなるとまずは……」

サナが話そうとした時、ぐう〜〜と情けない音がエアルの腹から鳴った。

「えへへ〜、こんな時にごめん。」

エアルが照れ臭そうに笑う。

「はぁ…まずは食料調達からね。」

サナは少しほくそ笑みながら今後の動きを決定する。

「よし!そんじゃあいっちょサバイバルを生き抜きますか!」

シャインが掌と拳を合わせて気合いを入れた。




──こうしてシャイン達のサバイバル生活が始まった。

本日はお読み下さって本当にありがとうございます!

少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価をお願いします!


遠足サバイバル編が始まりました!シャイン達は無事に生き延びれるのか!次回をお楽しみに!

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