46話 魂が見えるお友達
こんにちは!作者です!お久しぶりです!
そして突然小説のタイトルを変えてしまい申し訳ないです!この小説は元『マジックハイスクール』で間違いないです!
小説のタイトルを変えた経緯としましては、少しでもタイトルから小説の雰囲気が伝わればな〜っと思っただけです。深い意味は、ないです。
てなわけで!心機一転したところで、そろそろ本編へ行きましょう!
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
ザーパトウェストで起きた大事件─ダイヤモンド城襲撃。このような大ニュースがザーパトウェスト内で止まることはなく、アトティスラン大陸全土に知れ渡った。
しかし、情報はエアルが命令したことによって操作されており、ドリームカムトゥルーの存在や革命軍の名前、シャイン達が関与していることは一切報じられることはなかった。故に表に報じられたのは『謎の組織によるダイヤモンド城襲撃』、『アルバーノ王が重症を原因に王の座を退く』、そして『エアルが女王に就く』の3つであった。
この3つの情報が報道されたことによって何が起きたか。
それは今の1年1組の教室を見れば一目瞭然であった。
「ねぇねぇ!エアルって女王様だったんだね!」
「ちょっと、相手は女王様よ。そんなフランクに話していいの?」
「え〜でもエアルはエアルだもん。今更改まってもね〜」
クラスメイトの女子達が席に座るエアルを取り囲んではしゃいでおり、廊下には女王を一目見ようとする生徒達でごった返していた。流石のエアルも大人数に囲まれてたじたじ状態で、どうしていいか分からず困っていた。
「一瞬にして時の人だね。」
囲まれるエアルを少し離れた所から見守っているレビィがクスッと笑う。
「まぁ一国の女王が同じ高校に通っているなんて事実、話題にならない方が変よ。」
レビィの隣にいるサナも戸惑うエアルの姿を見て鼻で笑った。
「そう言えばレビィ、ナイトはどうなの?前に全然目を覚まさないって言っていたけど。」
サナが話題を変える。
「うん…まだ目は覚めてない。どうしちゃったんだろ…」
レビィが心配そうな顔で自身の胸元に手をあてる。
「う〜ん…ナイトは魔力の化身みたいな存在。つまり、レビィの中でまだ魔力が安定していないのかもね。」
「魔力の安定?」
「そ。魔力だって心身の状況によって不安定になるものよ。体は治っているんでしょ?だったら安定していない理由は心の方なのかもね。」
「心……?」
レビィが心が安定しない理由を考えた時、とある言葉が引っかかった。
(『絶魔憑依』。絶滅魔法の魔力は人に憑依する可能性がある。もしかして私、無意識にナイトを怖がっている…?)
レビィが自身に対して疑念が生まれた時、教室の扉が開いてナナリーが入ってきた。
「ほら皆、もうチャイムが鳴るから席に座りなさい。廊下の生徒達は自分の教室に戻りなさい。」
先生からの言葉のため、エアルで盛り上がっていた生徒達は解散していく。やっと解放されたエアルはぐったりとした顔で机に倒れるのであった。
「ま、もう少し待ってみたら?レビィの状態でも夜叉魔法が発動しているってことは、あんたの中から夜叉魔法の魔力が消滅したわけじゃない。つまりナイトの存在も消えたわけじゃないんだから。ひょんな事で目が覚めるかもよ?」
最後にレビィにアドバイスをすると、サナも自分の席へと戻っていった。レビィも自身への疑念を抱いたまま、自分の席へと戻るのであった。
紫色のミディアムヘアーに紫色の瞳をもち、黒を基調としたゴスロリを身に纏う少女。名前は『ソノ・アメシスト』。
彼女はシャイン達が学校に通っている間、サナやレビィが用意してくれる勉強ドリルをしたり、本を読んだり、ゲームをしたりと、基本的に1人で何をして待っていることが多い。
今回彼女が選んだ行動は、龍空高校周辺の散歩であった。季節は冬なため、ダウンジャケットにマフラー、そして手袋と防寒対策バッチリな格好でトコトコと歩いていた。
「おう嬢ちゃん。昨日良い芋が採れたんだ。また焼き芋食って行くかい?」
ソノが歩いていると、畑仕事をしている老人に声をかけられた。
「本当ですか!ではまた寄らせてもらいます!」
ソノが笑顔で応える。
「そうかそうか。バァさんも待ってるからな。」
「はい!」
ソノはペコッとお辞儀してから老人と別れて散歩を再開した。
ソノは色々な場所で老若男女問わず声をかけられる。それもそのはず。ソノの私服は基本的にゴスロリであるため、否でも応でも目立つのだ。すると色々な人から声をかけられるようになり、今では龍空高校周辺のちょっとした有名人なのである。
いつもの散歩道を堪能中のソノ。十字路に差し掛かった時、ある生物がソノの興味を惹いた。
「わぁ〜!猫ちゃんです〜!」
この辺りで見たことがない黒猫が、十字路の角からジッとソノのことを見詰めていたのだ。
「おいで〜♪おいで〜♪」
ソノは少し近寄ると、屈んで黒猫を呼ぶ。すると黒猫は警戒することもなくトコトコとソノに近付き、ソノの差し出す手にスリスリと頬擦りをした。
ソノは黒猫の仕草にきゃ~♪とメロメロの声を上げながら、全身を撫で回した。その時、黒猫に首輪が付いていることに気が付いた。
「あら?飼い猫ちゃんでしたか。お名前は…『スキニオ』、ですね。」
ソノが首輪に掘られている名前を読み上げた時、スキニオこと黒猫はソノから徐ろに離れていく。
「あ〜もう行っちゃうのですか〜…」
ソノが残念そうな顔をして見送ろうとすると、スキニオはクルッとソノの方に振り返りジッと見詰め始めたのだ。
「もしかして、付いてきてほしいのですか?」
ソノがスキニオを追いかけると、スキニオは先導するように歩き始めた。
ソノはスキニオを追いかけ、普段通らない道を進んでいくのであった。
スキニオを追いかけて数分が経過。ソノが辿り着いたのは白を基調とした西洋風の屋敷であった。
「わぁ…綺麗な家ですね。」
ソノが屋敷を眺めていると、
「おや?ボクの家に何か用かな?」
突然誰かに声をかけられ、ビクッと体を反応させて声がした方を向いた。
そこには身長152cm、年齢はソノと同じくらいで白色のベリーショート、高級感のあるボーイッシュな服装を身に着け、両目は完全に閉じており、手には白杖を持った少女が立っていた。
隣には60代後半ほどで、執事服の上からでも分かるガッチリとした体格の老人が立っている。
「えっ…あっ…えっと…」
急に話しかけられたことにソノがあたふたしていると、スキニオがミャ〜と甘えた声で鳴きながら現れ、ソノの足にスリスリと頬擦りをした。
「はわわわわわ〜!」
スキニオの可愛さに魅了されたソノはすぐに屈み、スキニオの頭を撫でた。
「おや、人見知りするスキニオがそこまで懐くとは。どうやら君は悪い人ではないようだな。」
白髪の少女がクスッと笑う。
「あっ、もしかしてスキニオちゃんの飼い主さんですか?」
ソノが立ち上がりながら尋ねる。
「ああ。そしてそこの家の人間でもある。──っと、自己紹介がまだだったね。ボクの名前はゼーレ。『ゼーレ・ジルコン』だ。」
ゼーレと名乗った白髪の少女はニコッと笑みを浮かべた。
「あっ、えっと…ソノ・アメシストです。」
ソノもペコッとお辞儀をして名乗った後、気になっていたことを尋ねた。
「あの…もしかしてゼーレさん、目が見えないんですか?」
「ああ。病気によって物心ついた頃からね。」
ゼーレの顔色が少し曇ったのを見て、
「あっ…!ご、ごめんなさい…!」
ソノが慌てて謝った。
「ああすまない。変に気を回せてしまったね。でも案ずることない。ボクには君の姿は見えているから。」
「えっ?どういうことですか?」
「そうだな…立ち話も寒いし、私の家に上がっていってくれ。美味しい菓子を食べながら話そう。『バートラ』も良いだろう?」
ゼーレが隣で介抱をする老人──バートラに尋ねる。
「ええ。お嬢様が良ければ。」
バートラは優しい笑みを浮かべる。
「決まりだな。ではソノ、ようこそジルコン家へ。歓迎するよ。」
ゼーレのペースに乗せられてしまったソノは、あれよあれよとジルコン家の屋敷に入っていくのであった。
ソノはゼーレの部屋に案内された。部屋の中で目を引いたのは、様々な種類の植物と、大きな水槽の中で飼われる魚達であった。
部屋に1人のソノが落ち着かない様子で高級な椅子に座っていると、カチャリと扉が開いてゼーレとバートラ、そして黒猫のスキニオが入ってきた。
「待たせてすまない。どういう菓子が好きか訊くのを忘れていたから、色々と用意してきた。」
ゼーレが高級な円卓を挾み、ソノの前に座る。バートラは円卓の中央にはソノが見たことがない菓子が乗った皿を、ソノとゼーレの前にはティーカップを置き、紅茶の用意をする。
「さて、改めて自己紹介といこう。ボクはジルコン家の長女、ゼーレ・ジルコンだ。年はソノと同じ13歳さ。」
「──?あれ、私何歳かって言いましたでしょうか?」
名乗った覚えはあるが年齢を口にした記憶がないソノが首を傾げると、ゼーレがクスッと笑った。
「いや、言っていないよ。これはボクが君の姿が見えているのと関係しているのさ。」
「そう、なんですか?」
ソノは意味が分からず難しい顔をする。
「あははは!困らせてしまったね。タネ明かしといこう。君の姿が見えているのも、年齢が分かったのも、全てはボクの魔法──『魂を探る』の力なんだ。」
「魂を探る?」
「ああ。魂を見ることにより、対象のありとあらゆる情報を得ることが出来るんだ。」
ここでティーカップに紅茶が入ると、バートラがゼーレの手を取り、ティーカップの持ち手まで誘導する。
「情報、ですか?」
ソノもティーカップを持ち、一口飲んだ。そしてめちゃくちゃ美味しいことに内心驚くのであった。
「そうさ。魂にはそのモノの全ての情報が刻まれているんだ。ボクはその情報を読み取り、対象の容姿、思考、魔法、記憶などを見ることが出来る。だからボクは外で君と出会った時、魂を見させてもらったから、頭の中でしっかりと君の容姿をイメージすることが出来ている。」
「だから私のことが見えている、ということですか。」
ソノがゼーレの言葉の意味を理解する。
「そういうことさ。だが、この魔法には明確な弱点がある。それは魂を持たぬモノ、つまり『生物以外の物の情報は見ることが出来ない』、というものだ。例えば今座っている椅子、前に置いてあるティーカップ、ソノや私が着用している服など、そういう『物』に対しては魔法が発動しないんだ。だが、植物は例外で見ることが出来る。」
「だからゼーレさんの部屋にはお魚がいたり、植物を育てているのですね。」
ソノが部屋を見渡す。
「ああ。周囲が物ばかりだと、ボクの世界はただの暗闇の世界になってしまうからね。」
ゼーレは膝に乗ってきたスキニオを撫でながら哀愁を漂わせる。ソノはどう声をかけていいか分からず、少し気まずい空気が流れた。
「なぁソノ。君が良ければでいいのだが、ボクと友達になってくれないか?」
気まずい空気の後、ゼーレが訊いてきた。
「友達…ですか?」
「ああ。魂を探るがあるとしても、ボクが出来ることには制限がある。だから一番楽しい事となると、こうやって誰かと会話していることなんだ。だから時間がある時で良い。ボクの話し相手になってほしい。どうかな?」
「も、勿論!なりましょうお友達!」
ソノが目を輝かせて即承諾した。
「私、同い年のお友達なんて初めてです!感激です!」
「あははは!想像以上に喜んでくれて嬉しいよ。では、今日からよろしく頼む、ソノ。」
「はい!よろしくお願いします!」
はれて友達となったソノとゼーレはギュッと握手を交わした。そして時間が許すまで、2人は様々な会話をして過ごすのであった。
時は流れ、龍空高校で授業が終えた時間。
「あっ、もうこんな時間ですか。そろそろ夕食を作らないといけませんね。」
時計で時間を確認したソノが椅子から立ち上がる。
「ソノは料理が出来るのか?」
「はい。あっ、今度作りましょうか?」
「本当かい?それは嬉しいな。楽しみにしているよ。」
「はい!」
ソノとゼーレが自然とまた会う約束をする。
「ではソノ様、玄関までお送りします。」
バートラがソノをエスコートする。
「ゼーレさん、また明日です。」
「ああ、また明日。」
ゼーレはソノを笑顔で見送ると、真剣な顔となって思考を巡らせた。
(彼女の魔法…青幽鬼魔法。あの魔法はなんだ?まるで彼女に合っていない。まるで外から移植したような感じだ。それに記憶もだ。黄緑髪の人と出会う前までの記憶が曖昧すぎて全然見えなかった。)
ゼーレが考え込んでいると、スキニオがみゃ〜んと甘えた鳴き声を出して寄ってきた。ゼーレはスキニオを抱き抱える。
「スキニオ、もしかしたら君はとんでもない人を招いたかもしれないな。」
ゼーレはスキニオに語りかけるように呟くのであった。
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
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今回もキリの良いところまでババーン!と投稿していきますので、楽しみにして下さい!
それではまた、お会いしましょう!




