44話 ドリームカムトゥルー
こんにちは!作者です!ザーパトウェスト編16話目です!
今回を合わせて残り2話となりました。執筆にはめちゃ時間かかるのに、投稿となると一瞬ですね。
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
瞬く間にシャイン達を壊滅させたフォーグ。残されたヒューズは弓を構えてはいるが、勝機を感じられるわけがなかった。
「やるなら相手になるぞ?」
フォーグがパキッと指を鳴らす。ヒューズは弓を異空間に納め、戦いの意思はないことを示した。
その時、フォーグの近くの床に魔法陣が展開され、イルファが出現した。
「フォーグ様、発見しました。ドリームカムトゥルーの魔導書です。」
イルファが手に持っているのは、一冊の分厚いハードカバーの本で、表紙には『DREAM COME TRUE』と描かれている。
「良くやった。何処にあった?」
「アルバーノ様の亡き奥様─『カルラ・フィン・ダイヤモンド』様の部屋です。そこに飾られていた肖像画の裏手に隠し空間があり、その中に厳重に保管されておりました。」
「おい…!それは世界の理すらも破壊しかねない禁術だ…!貴様らのようなどこの馬の骨かも分からぬ者が唱えて良い代物ではない…!」
アルバーノが怒りを露わにして叫ぶ。
「では問うが、そのような禁術の魔導書をお前達ダイヤモンド一族は代々受け継いでいる?」
フォーグからの問いに、アルバーノは答えなかった。
「これは俺の憶測に過ぎないが、お前達ダイヤモンド一族は、その地位が何かしらをきっかけに危ぶまれた時、死守するための最終手段として使うつもりなのではないか?」
続けてフォーグが問うが、アルバーノは黙秘を貫いた。
「まぁいい。我々はこの魔導書すら手に入ればこの場所にもう用はない。──帰るぞイルファ。ムサシとパンロックにも連絡しろ。」
「ムサシは既に合流ポイントにいます。パンロックは連絡がとれなかった為、生体反応感知魔法を使用したところ、先程死亡を確認しています。」
「パンロックが死んだと?誰にやられた?」
「そこまでは不明です。現場に行けば判明するかもしれませんが。」
「……まぁいい。そんな時間はない。アンダーグラウンドのチンピラ風情ではこの程度だっただけだ。奴が空けた席についてはまた考えるとしよう。今はこの場を去るぞ。」
「承知致しました。」
イルファが自分達の足元に魔法陣を展開し、瞬間転移を行おうとする。
「まっ…!」
エアルが咄嗟に止めようとしたが、アルバーノが腕を掴んで止め、無言で首を横に振った。
最終的にエアル達は何もすることなく、フォーグとイルファが教会から姿を消すのを見送るのであった。
教会に静寂が訪れた時、教会の外へと吹き飛ばされたシャインとアレンがようやく戻ってきた。シャインの姿を見たソノは、今まで我慢していた涙腺が決壊し、ボロボロと泣きながらシャインに抱きついた。
「ご、ごわがった…です…!」
シャインに顔をうずめたままソノが震えた声を出す。シャインは震えるソノを頭をそっと優しく撫でてあげた。
「……いった〜…!」
ようやくレビィが目を覚まし、痛みが走る顎を摩りながら体を起こした。
スノウとサナは互いに肩を貸し、ゆっくりとした足取りでシャイン達に合流した。
「あ〜…もう二度とあいつと戦いたくない…」
サナが大きなため息と共に本音を漏らす。
「それで、これからどうするのですか?」
ヒューズが全員に問う。
「……まず最初は、あの方の治療からだ。」
アレンが向かったのは、限界が近付いているアルバーノの元であった。そして異空間から救急キットを出し、手慣れたように準備を始める。
「エアル、回復魔法の補助は任せたよ。」
「うん!分かった!」
アレンから助手を指名されたエアルが強く頷いた。そして準備が終えると、その場で硝子の除去手術が開始された。
アレンとエアルの頑張りにより、無事アルバーノの背中に刺さる硝子の除去手術が成功したので、シャイン達は場所を教会の奥にある神父などが使用する控え室に移動した。
「硝子の除去については素直に感謝する。」
ベッドに入り、上半身を起こした状態で安静にするアルバーノが、シャイン達に向けて少し頭を下げた。
「だが、城を襲撃したことがこれで有耶無耶になるとは思うなよ?」
アルバーノは威圧的な睨みでピリッと空気に緊張を走らせた後、アレンに視線を向ける。
「そこの緋色髪の君。アレン、と言ったな。君はあのフォーグという男との会話からドリームカムトゥルーを言い当てていたな。何故君があの禁術の事を知っていた?」
これは誤魔化しも有耶無耶も出来ない空気だと察したアレンは、正直に応えた。
「僕はORDER GUARDIANという名の秘密組織で第三戦闘部隊隊長をしている者です。」
「成る程、OGの人間だったか。」
「OGを知っているのですか?」
「無論だ。お前達の組織は各国の政府直属だぞ。王たる私が存在を知らないわけがない。」
「確かにそうですね…。」
アレンが苦笑いする。
「しかし、君のような少年が隊長とはな。よほど君に実力があるのか。はたまた単純に人員不足による穴埋めなのか。」
何かを測るような視線を送るアルバーノに対し、
「ははは、前者であることを信じたいですね。」
アレンは愛想笑いで返答した。
「話を割ってすまないが、そろそろ分からない組も仲間に入れてくれねぇか?その『ドリームカムトゥルー』って何なんだよ?」
シャインがアレンとアルバーノに訊く。
「それは…国家機密になるから…」
アレンが話していいかアルバーノの様子を伺うと、アルバーノが小さくため息をする。
「ここまで巻き込んでおいて、今更蚊帳の外には出来んだろう。」
アルバーノから許可を得ると、アレンは頭を下げてお礼をした後、説明を始めた。
「ドリームカムトゥルーとは、『如何なる夢も叶える魔法』なんだ。叶えられる数は1つという制限はあるけど、些細な夢から壮大な夢、幸せな夢から残酷な夢まで、どんな夢でも実現出来てしまうんだ。」
「残酷な夢っていうのは、例えば世界の消滅とかも叶えられるの?」
サナが質問すると、アレンが頷いた。
「じゃあ早く魔導書を取り返さないと!!」
ベッドの隣の椅子に座るエアルが立ち上がる。
「早まらないでエアル。奪われたからってすぐに発動出来る魔法じゃないから。」
アレンに止められ、エアルはストンと椅子に座った。
「ドリームカムトゥルーを発動させるには、膨大な魔力を必要とするんだ。その量は一朝一夕で集められるものじゃない。だからすぐに発動されることはな──!」
ここでアレンが何かに気付いた。
「そうか。奴等が絶滅魔法の魔力を狙っている理由は、ドリームカムトゥルーを発動させるためか。絶滅魔法の魔力は普通の魔力より強力だ。100人の一般魔法使いから魔力を奪うより、1人の絶滅魔法使いから魔力を奪った方が効率が良い。」
「あいつ等にとって俺達は燃料みたいなもんか。」
シャインが自分の扱いに少し腹を立てる。
「では革命軍はその夢を叶える魔法で何を叶えるつもりなのでしょうか?」
ヒューズからの問いかけに、アレンは首を横に振る。
「それはまだ分からない。でも少なからず、良い事に使われることはないだろうね。」
「でもよ、これでタイムリミットは分かったんじゃねぇか?あいつ等がドリームカムトゥルーの魔力を集め終えたら詰みってことだろ?」
スノウの言葉にアレンが頷く。
「確かにそうだね。この情報は後でOGに報告しておくよ。」
「よし、じゃあこれでドリームカムトゥルーについては一区切りがついたな。──ここからは俺等の本来の目的に終止符を打とうぜ。」
スノウがアルバーノの方を向きながら告げる。
「アルバーノ王、エアルは俺等の元に連れ戻させてもらうぞ。」
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
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遂に次回でザーパトウェスト編が完結です!是非とも読みにきて下さいませ!
では、次回もお楽しみに!