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始まりは魔法科高校から  作者: 眼鏡 純
5章:西の国

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41話 剣豪

こんにちは!作者です!ザーパトウェスト編14話目です!


今回のメインはムサシ戦でございます!




──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。

 城の中腹辺りの屋根の上。かなりの広さはあるが斜面となっており、加えて滑りやすい材質となっているため、常人は滑り落ちないようにするのでやっとである。

 そんな屋根の上を戦場とし、ナイト・サファイアとムサシ・ミヤモトが刃を交えていた。



 「くっ…!」

ムサシからの重い一撃を防御したナイト。しかし威力は弱められず、大きく後ろに吹き飛んだ。空中で一回転してから体勢を戻して着地すると、透かさず(夜桜)を構えてムサシの動きを伺う。

(話では聞いていたがこの男、本当に魔法が使えないのだな。だが、そんなハンデが霞むほどの剣術の使い手だ。一体どれ程の鍛錬を積み重ねてきたというのだ。)

「なんや、攻めてこーへんのか?もしかして怖気づいたか?」

警戒をしているだけで攻撃を仕掛けてこないナイトに対し、ムサシが煽る笑みを浮かべる。

「いや、お主の強さに少し感心してしまっていただけだ。」

「ほ〜嬉しいこと言ってくれるやん。ちょっと照れるな。」

ムサシが照れ臭そうに笑う。

「嬢ちゃんもええ線いっとるよ。()()()以来やで。こんなに斬りたいと思った相手は。」

「あの男?」

「ああ。拙者が故郷に居た頃、とある島で一度だけ戦った男や。あの男との戦いはほんま最高やった。今でも思い出したら体の底から血が滾ってくる。」

ムサシが活き活きと思い出を語る。

「……そうか。」

「なんや薄い反応やのう。あ〜あ、なんか冷めてもうたわ。さっさと戦いの続きしようや。」

ムサシが改めて二本の刀を構える。

(とにかくまずは一太刀、確実に決める。)

ナイトは夜桜を握る力を強める。

 数秒の静寂の後、先に動いたのはムサシであった。一息でナイトとの間合いを詰めて連撃を放つ。ナイトは紙一重で防御をするが、反撃には転じられない。

その時、ムサシは一瞬の隙をついて二本の刀でナイトの(夜桜)をロックすると、そのまま器用に弾き飛ばした。

(武器弾き…!?)

武器を奪われ丸腰となったナイト。その隙をムサシが逃すわけがなく、技を繰り出した。

[回転斬(かいてんぎり)]!!」

ムサシは高速で一回転すると、遠心力を乗せた強烈な一撃を放つ。ナイトは紙一重で漆黒のオーラの刀を形成して防御するが、無情にもスッパリと斬られ、体に深い二つの刀傷を負わされた。

「がはっ…!」

ナイトは失いかけた意識をギリギリで繋ぎ止めたが、片膝をついてしまった。

「黒い刀によって刃の軌道を変え、致命傷は逃れたか。あの一瞬でよーやるわ。でも、これで終いや。」

ムサシは止めを刺すべく刀を振り上げた。


 次の瞬間、ムサシが何かを察知し、振り上げた刀を全く別の方向に振り下ろした。すると魔法の矢が真っ二つに切れ、ムサシの頬をかすめてから消滅した。

 続け様に違う気配を感じたムサシはその場からすぐにバックステップを踏んだ。すると、先程まで立っていた場所から鋭利な氷柱が出現した。氷柱は膝をつくナイトの周囲にも出現し、ムサシから守るように壁を形成した。

 ムサシがバックステップした方向は屋根の(きわ)。次の瞬間、屋根の下からフックショットによって緋色髪の少年が現れた。

[改造(リモデル)]。」

緋色髪の少年──アレン・ルビーは空中でフックショットからショットガンに換装すると、ムサシに向けて発砲する。

ムサシはカッ!と見開くと同時に二刀を高速で振り回し、散弾を全て打ち落とした。そして即座に反撃しようとした瞬間、脇腹目掛けて飛んできた魔法の矢を跳んで回避する。

「鬱陶しいなぁ…!」

少し苛ついているムサシは、着地と同時に室内から窓を挟んで矢を放つ茶色のロングヘアーの少年──ヒューズ・クオーツの元まで一息で間合いを詰めて刀を振るった。すると、窓や壁が瞬時に切り刻まれた。ヒューズは回避はしたが数カ所斬られてしまいダメージを受けた。

ムサシがヒューズに追撃を仕掛けようとした時、背後から殺気を感じ、振り向くと同時に刀を振るい、迫っていた火の玉を切り裂くと、そのまま火の玉を放った金髪ショートヘアーの少女──サナ・クリスタルに斬りかかる。

その動きを読んでいたサナは、ほくそ笑みながらその場で屈んだ。すると背後から飛び越えるように、紫色のミディアムヘアーの少女──ソノ・アメシストが現れた。

「[幽鬼の蛇(ファントムスネーク)]!!」

ソノが放った青き炎の蛇はムサシの首筋に噛み付くと、そのまま巻き付いて拘束した。

最初(ハナ)からこの一撃が狙いか…!)

アレン達の目論見を理解したムサシは、全身を焼かれる痛み以外にも、不思議な感覚に襲われる。それはまるで命そのものを燃やされるような感覚であった。

サナ、ヒューズ、アレン、ソノに見られる中、青き炎の蛇に燃やされ続けるムサシ。勝負あったと4人が思った瞬間、

「はっ!!!!」

ムサシが大声を発した。すると青き炎の蛇がムサシから弾かれるように離れ、青き炎が霧状となって消滅した。

「今のは…?」

想定外の出来事にアレンは困惑する。

「恐らくですが、気合や覇気と呼ばれる類でしょう。まさかそれで幽鬼の炎を掻き消すとは思いませんでしたが。」

ヒューズが目の前で起きた摩訶不思議な現象を冷静に告げる。

「やってくれたなぁ…!童ども…!」

ムサシがビリビリと肌に刺さるような殺気を放ち、アレン達の動きを鈍らせる。

とてつもない緊迫感が辺りを包みかけた時、ムサシがハハハ!と高笑いした。

「あははははは!!いや〜!今回は一本取られたわ!敵ながら見事な連携やったで!」

一頻り上機嫌に笑ったムサシは納刀する。

「さてと、流石にこの状況は不利過ぎるわ。拙者はここでドロンさせてもらいましょか。そろそろウチの大将の計画も上手くいってる頃やろ。」

ムサシはうーんと伸びをしながら屋根の際まで歩いていく。

「じゃあな童ども。次も楽しい戦いしようや。」

背を向けたままヒラヒラと手を振った後、何の躊躇いもなく屋根から飛び降り、その場から姿を消したのであった。

 ムサシがいなくなると、アレン達はすぐにナイトの元へと駆け寄った。サナがパチンと指を鳴らすと、ナイトを守っていた氷柱の檻は綺麗に砕け消滅する。ナイトは安堵からか力が抜けて倒れそうになる。それをサナがギリギリで抱きかかえた。

「無事……ではない傷ね。」

サナはゆっくり寝かすと、ナイトの傷の具合を見る。

「応急手当だけど治療するよ。」

アレンは異空間から救急箱を取り出すと、手慣れたように手当てを始める。

「思った以上に…ダメージが大きいな…」

手当てを受けるナイトが呟く。

「弱音を吐かないで。今、ネガティブな思考は危険よ。」

サナが冷静に警告する。

「自身の現状を…分析しただけだ…」

「それでもダメ。」

「はは…手厳しいな。だが、すまない…私の意識と…魔力はここまでのようだ…」

「しっかりして下さい!ナイトさん!」

ソノが必死に呼びかける。

「案ずるな…我は消えはせぬ…。その代わり、暫しレビィと替わることとなる…。奴はまだ、戦いというものに抵抗がある…。故にお主ら、しっかり…支えてやって…くれ……」

ナイトは最後に少し笑うと力尽き、瞼を閉じた。すると漆黒の髪は紺色へと変わっていく。そして数秒後、開いた瞼から覗いた瞳の色は赤から青に変化していた。

「あれ?私が…何で…?」

突然ナイトと入れ替わったことに驚きを隠せないレビィだが、そんな驚きが吹き飛ぶほどの痛みが襲った。

「いっっっったぁぁ〜〜〜!!!」

経験したことがない痛みにレビィが悲鳴を上げる。

「もう少しだけ耐えてレビィ。」

アレンが宥めながら手当てを進め、そして最後の包帯を巻き終えた。

「これで終わり。応急手当てだけど痛みは和らぐ筈だよ。」

アレンはニコッと微笑んで安心させる。

「では、レビィに気を遣いながら移動しましょう。我々の目的は革命軍との戦いではなくエアルの奪還です。それにエアルの回復魔法は強力です。レビィや我々の傷も癒せるでしょう。」

ヒューズが移動を促す。

「そうだね。動けるかなレビィ?」

アレンがレビィに尋ねる。

「ま、待って…。想像を絶する痛みで立てる気がしない…。」

これまでの人生で味わったことない痛みにレビィはなかなか立ち上がれない。

「……仕方がないわね。」

サナはレビィの額に人差し指を当て、金色の瞳の中に魔法陣を展開させると、

「[フィーリングオブリビオン]。」

と、魔法を唱えた。するとレビィは瞬く間に痛みを感じなくなり、すくっと立ち上がることが出来た。

「えっ?痛みが引いた…」

自身に起きた不可解な現象にレビィは困惑していると、サナが解説する。

「あんたは今、痛みという感覚を『忘却』しているの。だから痛みを感じない。でもこれだけは肝に銘じてほしいんだけど、痛みという概念を忘れているだけであって、体や脳はしっかりと痛みを感じているの。だから無茶はしないでね。」

「わ、分かった。」

レビィはサナからの警告に頷いた。

「「…………」」

アレンとヒューズは、サナが唱えた魔法に少し興味を持つが、特に問いかけることはなかった。

「じゃ、エアルを探すわよ。あとシャインとスノウもどっかで合流出来たらいいけど。」

サナを先頭にレビィ達は屋根の上から移動を開始した。




 広々とした空間。高い天井には煌びやかなシャンデリアがぶら下がり、部屋の隅にあるグランドピアノは見るからに高価で上品。

 ここはダンスホール。今はシャインと騎士団長パランディアの戦場と化している。


 能力解放(アビリティリリース)により、髪、瞳共に純白と変化しているパランディア。その力は騎士団長という肩書きに恥じないものである。

 そんなパランディアが今、肩で息をし、純白の髪を自身の血で染めて片膝をついていた。

(くっ…これほどか…!これが…!『魔に憑依されし者』の力か…!)

パランディアが睨む先、そこには髪が深紫色に染まり、真っ赤に充血した瞳からは血が流れている少年が立っていた。

「まだ倒れるなよ。もっともっと…潰してやるからよぉ!」

悪魔のような姿へと変貌した少年──シャイン・エメラルドが、狂気に溺れた笑みを浮かべた。

本日はお読み下さり誠にありがとうございます!

少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!


ザーパトウェスト編も残り4話となりました。

一体シャインに何があったのか。次回をお楽しみに!

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