40話 あいつの笑顔のため
こんにちは!作者です!ザーパトウェスト編13話目です!
今回はスノウの戦いがメインでございます!
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
中庭。普段は色とりどりに咲いた花々を愛でたり、ベンチに座っていて風景を楽しむ場所ではあるが、今はスノウとジェノによる激闘のフィールドと化している。
「おらぁ!」
スノウが拳をジェノが被る不気味な笑みの仮面に迫る。しかし、直撃する寸前でジェノの体は漆黒の霧へと変わり、拳は虚空を殴ることとなった。ジェノはそのまま姿をくらました。
「あ〜くそ!さっきからこれの繰り返しじゃねぇか!まともに戦いやがれこのチキン野郎!」
どんな攻撃をしようと、全て回避されるスノウのイライラは頂点に達していた。
「猪突猛進の攻撃を、わざわざ正面から受ける馬鹿がどこにいる。」
漆黒の霧が集まり、中からジェノが姿を現す。
「うるせぇ!とっとと俺に殴られろ!」
あまりにも理不尽な要求をするスノウ。
「はぁ…お前と話していると頭が痛くなる。」
スノウの馬鹿さに加減にジェノは呆れながらダガーを構える。
「これ以上の頭痛は御免だ。俺の魔法──暗殺者の影の錆となれ。」
ジェノが地面を蹴ると、一瞬にしてスノウとの間合いを詰めた。
「ちっ…!」
スノウは反射的に拳で反撃する。ジェノは体を漆黒の霧と化して拳を回避すると、即座に背後に回り込んでスノウの首目掛けてダガーを振るった。
スノウは命の危機を感じ取ると、頭で考えるより先に体が動き、屈むことによってダガーの刃を回避した。
しかしジェノはスノウの動きを読んでおり、瞬時にダガーを逆手持ちすると、スノウの脳天に向けて振り下ろした。
「──!![ストーンヘッド]!!」
スノウもギリギリで反応すると、地属性の加護を頭に纏わせた。それによりダガーの刃はガキン!と金属音を立てて脳天で止まった。
(このガキ…反応速度はかなりのものだな。)
ジェノが少しばかり驚いていると、
「ふんぬ!!」
スノウは飛び跳ねてジェノの顎に頭突きを喰らわした。
「くっ…!」
頑丈な石の如く硬い頭で頭突きをされたジェノは少し怯んでしまう。
「そこだ!!」
怯んだ隙を逃さず、スノウはジェノの顔面に裏拳を喰らわして吹き飛ばした。
スノウは追撃を入れるためジェノに走り出そうとしたが、突如体が金縛りにあったかのようにピクリとも動かせなくなった。
「なっ…!動かねぇ…!」
必死に動かそうとするスノウ。しかし、体は無慈悲にも応えてくれない。
そうこうしている間に、吹き飛んだジェノが戻ってきた。不気味な笑みの仮面には少しヒビが入っている。
「[影縛り]。影の動きを縛ることにより、体の動きも縛れる技だ。」
ジェノは吹き飛ばされる瞬間、スノウの影にダガーを投げて突き刺しており、それによってスノウの動きを封じていた。
「こざかしい技ばっか使いやがって…!」
スノウが罵倒する。
「どんな手を使おうと標的を的確に、そして確実に殺すのが暗殺者だ。」
ジェノはもう一本ダガーを取り出し、スノウの心臓に刃先を向ける。
「呆気なく死ぬがいい。」
ジェノがダガーを引き、一突きする体勢をとる。スノウはまだ抗うが、好転する兆しは一切感じられない。
(ダメか…!)
ダガーが放たれ、流石のスノウも脳裏に死が過る。
──次の瞬間。
一発のライフル弾が何処からともなく飛来し、スノウの影を止めるダガーを的確に弾き飛ばしたのだ。動けると感じた瞬間、スノウは凄まじい反応速度でダガーを白刃取りした。
「なっ…!?」
流石のジェノも想定外な展開に動揺が走る。スノウはダガーの刃を挟んだまま勢いよく手を捻る。するとジェノの体勢が大きく崩れた。
(ここしかチャンスはねぇ…!)
スノウは奪ったダガーを投げ捨てると、両手に炎を纏って構えた。
「[ラッシュフレイム]!!」
スノウは炎を纏った拳で連続攻撃を喰らわす。
「これで…!終わりだ!」
最後に強力な一撃を喰らわし、ジェノを壁まで吹き飛ばした。壁に激突したことによって砂塵が発生し、ジェノの姿が見えなくなった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
スノウは呼吸を整えながら、動けるようになった原因を探る。すると屋根の上から視線を感じ、顔を上げた。そこには緋色の髪を風に靡かせ、スナイパーライフルを抱えたアレンの姿があった。
「アレンのやつ…!」
スノウはニヤッと笑いながら、アレンにグッ!と親指を立てた。アレンはニコッと微笑み返すと、別の場所へと向かった。
アレンを見送った直後、スノウは砂塵の方から殺気を感じた。瞬間、砂塵の中から影で形成されたダガーが無数に飛んできた。
「──っ!![グラウンドウォール]!!」
スノウが地面に踵下ろしをすると、地面が隆起して壁を形成し、影のダガーを防いだ。しかし、全ては防ぐことは出来ず、全身に切り傷、右太腿と左肩には影のダガーが突き刺さってしまった。
「いっっ…!!」
スノウが痛みで顔を歪ませていると、壁が豆腐の如く切り裂かれ、影の大鎌を所持したジェノが現れた。不気味な笑みの仮面は完全に割れて外れており、素顔が露になっていた。その顔には全体に酷い火傷跡があった。
「お前、その顔…」
流石のスノウも、ジェノの素顔を見て言葉に詰まった。
「この顔か?これは子供頃、親の虐待が原因によるものだ。ま、そんなクソみたいな親は俺がこの手で殺してやったがな。」
狂った笑みを浮かべるジェノがゆらりと影の大鎌を構える。
「なぁ…ムカつくお前を殺したら、親を殺した時の高揚感を超えてくれるか?」
「一瞬てめぇに同情した自分が馬鹿らしいぜ。てめぇは生粋のヤバい野郎だよ。」
スノウは突き刺さる二本の影のダガーを引っこ抜くと、スッと戦闘態勢をとった。
睨み合いの後、同時に地面を蹴った。そしてノーガードの攻防が繰り広げるが、そんな大味な戦いが長く続くわけもなく、数分後には互いに満身創痍状態であった。
「………分からないな。」
フラフラのジェノが唐突に話を切り出す。
「あぁ?何の話だ?」
全身から血を流すスノウが聞き返す。
「国を相手取り、ここまで傷付いても尚、お前があの王女様に執着する理由だ。金か?名誉か?一体何が目的だ?」
「あいつの笑顔のため。」
ジェノからの問いに、スノウは迷わず即答した。
「なに…?」
「あいつの笑顔は太陽みてぇに明るく、周りに元気をくれる。俺はあいつの笑顔を初めて見た時、何が何でもこの笑顔は守らなきゃなんねぇと思った。──だからあいつから笑顔を奪い、泣かせたてめぇ等を許さねぇ。理由は…それだけで十分だ。」
「とんだ感情論だ。到底理解が出来ない。」
「てめぇなんかに理解してもらおうなんて思っちゃいねぇよ。俺はただ、己が定めた筋を通させてもらうだけだ。」
スノウは残り少ない魔力を拳に込めていく。
「そうかよ。ならば俺も、己が欲望の為、お前の命を刈り取ってくれよう。」
ジェノが残る魔力を高めると、影の大鎌の刃が禍々しい形へと変貌した。
「[命刈刃]!!」
ジェノが禍々しい刃の大鎌を回し、遠心力を加えた渾身の一撃をスノウの首目掛け振るった。スノウはギリギリまで大鎌を引き付けた後、髪の毛が少し切られながらも、寸前で屈むことによって回避した。そして魔力を込めた右拳に光属性を付与すると、太陽のように光り輝いた。
「[ライジングサン]!!!」
全身全霊を込めた光の拳のアッパーが、ジェノの顎をとらえた。ジェノは上空に吹き飛び、力なく地面に落ちた。
スノウは一気に疲労に襲われて倒れそうになるもグッと堪え、気を失っているジェノに背を向ける。
「あいつの笑顔のためなら、俺は世界だって相手にしてやるよ。」
スノウはフラつきながらも、エアルを探すべく中庭を去っていくのであった。
本日はお読み下さって本当にありがとうございます!
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ザーパトウェスト編も今回を除いて残り5話となりました!
それでは次回もお楽しみに!