39話 希少な血統
こんにちは!作者です!
皆さん!明けましておめでとうございます!
………はい、3月ですね。もう春ですよ、春。
こんなに遅くなったのは、全部1月に発売された龍◯如く8が面白過ぎたのが悪いんです。
しかし!そんな他の誘惑に負けながらもなんとかザーパトウェスト編の完結まで書き終えたので、この39話から一気に投稿させていただきます!
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
城内の広い十字路。ここではパンロックとヒューズが戦いを繰り広げられていた。
「[チェーンボム]!!」
パンロックは自身の魔法──爆弾は力の力で小型爆弾が連なった鎖を生成すると、ヒューズの右腕に巻き付けた。ヒューズは左手に魔法の矢を生成すると、槍投げの如く投擲した。パンロックは魔法の矢を難なく回避すると、
「ゴートゥーヘル!」
と、掛け声と共に爆弾の鎖を爆発させた。そして立ち昇る爆煙により、ヒューズの姿が見えなくなってしまった。
「木っ端微塵だぜ!」
パンロックが上機嫌にポーズを決めていると、
「やれやれ、相手の状況を把握していないのに決めポーズとは呑気だな。」
背後からヒューズの呆れ声が聞こえてきた。パンロックが慌てて振り返ると、同時にヒューズの蹴りが腹部にヒットして吹き飛んだ。
「ぐっ…!youが何故背後に…!」
よろめきながら立ち上がるパンロックは困惑している。
「[ワープアロー]。魔法の矢が刺さった場所に瞬間転移が出来る技だ。お前に投げた矢の本来の目的は、この瞬間転移をする為さ。」
解説しながらヒューズが弓を構える。
「もう分かっただろ。お前ごときでは私に勝てないことを。」
「ヘイヘイ、なに勝手に決め付けてくれてやがる。俺様は革命三柱の1人だぜ。勝負はまだまだこれからだYO!」
パンロックは両手に爆弾を生成してヒューズに突進する。
ヒューズは全く怯むことなく、何も番えていない弓を引き、そして離した。次の瞬間、パンロックの右肩を何かが貫通した。
「ぐっ…!?」
パンロックは爆弾を消滅させると、唐突に風穴が空いた右肩を押さえる。
苦しむパンロックをゴミを見る目で見ながら、ヒューズは無慈悲に何度も弓を引いては離した。その行動回数分、パンロックの体に風穴が空いていく。
「[ゴーストアロー]だ。見ることも触れることも出来ない矢をお前では防ぐことは出来ない。」
淡々と不可視の矢で撃ち抜いていくヒューズ。そしてパンロックに両膝をつかせると、弓を異空間に納め、パンロックをドーム状に囲むように無数の魔法の矢を出現させた。
「次の一手でお前の命は絶えるが、遺言くらいは聞いてやる。」
ヒューズの煽りが混じる慈悲を聞いたパンロックが、ギロリと睨み付ける。
「you……ろくな死をしないよ…」
最後の力を使って悪態をつくパンロック。
「使い古された脅し文句だ。──[無双幻矢]。」
ヒューズがパチンと指を鳴らした瞬間、パンロックを囲む魔法の矢が一斉に体を貫いた。
パンロックは断末魔を上げる力もなく、糸が切れた操り人形のようにパタリとその場に倒れ、二度と動くことはなかった。
「ろくな死に方をしないなんて、あなたに言われなくとも重々承知しておりますよ。ですから私は、今の立場と生活を堪能することにしたのです。」
いつもの口調に戻ったヒューズが独り言のように呟いた。そして何事もなかったような態度で、その場を去っていくのであった。
サッカーコートくらいある広さがある図書室。ここではサナとイルファが戦闘を繰り広げていた。
互いに攻撃方法が多種多様の属性魔法のため、周囲が燃えていたり、濡れていたり、切り刻まれていたり、潰れていたりと、天変地異が起きたのかと錯覚する状況であった。
「[フレイムスター]!!」
イルファが唱えると、星の形をした炎がサナに向かって放たれた。
(さっきから何だろ…あいつの魔法に違和感が…)
サナは頭の片隅で違うことを考えつつ、防御魔法を唱える。
「[フルムーンガード]!!」
サナが唱えると、前方に満月型の光の壁が展開され、星形の炎を防いだ。しかし威力が強く、光の壁が硝子の如く砕け散った。
「[ソニックウインド]!」
サナは光の壁の破片を斬撃の風に変化させると、超スピードで放った。
(速い…!)
回避も防御魔法も間に合わないと判断したイルファは、咄嗟に魔導書で顔を隠すように防御した。しかし、斬撃の風はイルファの体を数カ所傷つけただけであった。
「……今の攻撃、ちゃんと当てていたら致命傷だったのに。わざと外したわね。」
イルファは回復魔法で傷口を塞ぎながら告げる。
「致命傷にしたらあんたから情報を聞き出せないでしょ。」
「どうしても聞き出したいのね。」
「当たり前よ。だからさっさと話しなさい。じゃなきゃ次は本当に致命傷の一撃を喰らわすわよ。」
サナが片腕にパリッと雷を走らせる。
「脅しても同じ。話したところで私にメリットがないもの。」
イルファは断固として話そうとはしない。
「なら…次は容赦しない。」
サナが魔力を高めた時、
「待って下さいサナさん…!」
背後からソノに止められ、サナは魔力を高めるのを中止して振り返った。
「私、思い…出した…んです…」
弱々しい声で告げるソノが、その場にストンと座り込んでしまう。
「ソノ!安全なところで休んでなさい!」
サナがすぐにソノに元に駆け寄り、座り込むソノの肩を優しく抱く。
「サナさん…さっき…白衣を着た…イルファが頭の中に…現れたんです…。」
「白衣を着たイルファ…」
サナは優しくソノを抱いたまま話を聞く。
「私は…あの人の所で…何かの実験をされて…いました…」
「実験?」
「……多分、私の魔法は…あの人によって…入れられた…ま、ほう……」
ここでソノはまた気を失ってしまい、サナによって支えられた。サナはソノを抱きかかえると、安全な所に移動させ、優しく寝かせた。
「分かったわ。あんたがソノにした事。」
キッとイルファを睨み付けながら、ソノを巻き込まないように移動する。
「あんた、『人体実験』をしていたわね?内容は『人工魔法の移植』ってところかしら。」
サナからの問いに対し、イルファは諦めた表情を浮かべてから話し出した。
「ええそうよ。私は革命軍に入る前はとある研究施設の研究員。行なっていた研究はあなたの推測通り。そしてソノは、そんな実験の数少ない成功作よ。」
ようやく白状したイルファ。サナは心の内から込み上げる怒りをグッと抑える。
「口が軽くなったついでに答えなさい。何でソノを被験者にした?」
「たまたま、としか言いようがないわ。ソノは毎日何処からか集められる被験者の中にいて、そしてたまたま実験が成功したの。」
「何でソノは成功したかは調べたの?」
「当然調べたわよ。分かったのはソノは希少な血統だったということ。それ以外は他の被験者と大差なかったわ。」
「希少な血統者ね……どういう血が流れていたの?」
「………そこまで話す義理はないわ。」
少しイルファが答えるのを躊躇したのを見て、サナは鼻で笑った。
「はっ、別に隠す必要はないわよ。だって私はその血の正体を知っているもの。」
「何ですって…!?」
イルファはここまでで一番の反応を見せる。
「なんたって、私は────」
ここでバランスが悪くなっていた本棚が崩れ、図書室内にガラガラと崩れた音が響き渡った。
「成る程。それならあなたが知っているのも頷けるし、個人的な感情を抱くのも納得だわ。」
イルファはサナから告げられた言葉に納得する。
「そーいうこと。だからソノを実験体にしたあんたは絶対に許さないし、ソノを渡す気も1ミリもないから。」
サナが再度戦闘態勢となる。
「さっきのあなたの言葉を聞いて少しは同情はするけど、ソノの存在はとても重要なの。同じ境遇なら理解出来るでしょ?」
「知ったことないわ。」
イルファが僅かな希望で説得しようとしたが、サナは真顔で一蹴する。イルファはサナと睨み合いながら思考を巡らせると、
「分かったわ。今回は引き上げましょう。」
と、戦わない意思を見せた。
「どういうつもり?」
「このままあなたと戦い続けると、本当の目的に支障をきたすと判断したまでよ。」
イルファは魔導書を異空間に戻す。
「でも勘違いしないでね。ソノは諦めてないから。」
そう言い残したイルファは図書室を後にした。
「……はぁ。」
サナは大きくため息をついて体を緊張感から解放すると、トコトコとソノの元へと歩いていく。そして気を失っているソノの近くで腰を下ろす。
「世界がどうなろうと、あんただけは絶対に守るから。」
サナは優しい顔でソノの頬を触りながら、心の中に固い決意をした。
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!
前書きでもお伝えましたが、このままザーパトウェスト編は完結へと一気に投稿させていただきます!
それでは次回をお楽しみに!




