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始まりは魔法科高校から  作者: 眼鏡 純
5章:西の国
37/71

37話 大作戦前の一時

こんにちは!作者です!ザーパトウェスト編10話です!

そしてクリスマスイブですね。明日の朝、枕元にプレゼントが……あったらいいのにな。


──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。

 シャイン達がワープした場所は、自然の洞窟を利用したSFと自然が混じり合った部屋であった。

「ふーん、自然の洞窟を改造してワープ施設にしているのね。」

サナが周囲の環境を見渡す。

「皆、こっち。」

アレンが苔に見せかけた認証板にカードキーをかざす。すると目の前の積まれた岩が規則的な動きをして扉を出現させた。



 扉からワープ施設を出ると、人気がない森が広がっていた。

「なんかここ…すっげぇ見覚えがある。」

森を見渡すスノウが告げると、目的地を決めたように歩き出した。

「おい、何処に行くんだよ?」

シャイン達が迷いなく歩くスノウの後ろを追いかけていくと、森を出て小川に到着した。

「やっぱりここ、昔俺とエアルが話していた川だ。つまりここは…ボウビンの近くか。」

スノウが見覚えのある理由が判明する。

「ボウビンって確か、スノウの故郷だよね?」

レビィが訊くと、スノウが頷いた。

「ああ。──そっか、帰ってきたのか。」

スノウがボウビンがある方角を見ながら思い出に浸っていると、何者かが近付いてくるのを発見した。全員が警戒態勢をとるが、正体が分かった時、スノウが警戒を解くように指示をした。

「何だか人の気配がするなと思って見に来てみれば、お前だったかスノウ。」

年齢24歳、身長175cm、金髪のロングヘアーに金色の瞳をもつ男──『ニクス』がニッと笑った。

「4年ぶりだな、ニクス。」

スノウもニッと笑い返すと、2人は拳を合わせた。





 「このバカ野郎がーーーー!!!」

ニクスの家からニクスの怒号が響いた。同時にスノウの頭に拳骨が振り下ろされた。

「いっっってぇぇぇぇ!!!感動な再会をした後に拳骨はねぇだろ!!なんか色々台無しじゃねぇか!!」

殴られた箇所を押さえながらスノウが怒鳴り返す。

「殴られて当然だバカ野郎!!あんな大事件起こしやがって!!俺がどれほど心配を…!!」

怒りや喜びなど色々な感情で頭がグチャグチャになってきたニクスは、取り敢えずスノウをもう一度殴って落ち着かせた。

「いってぇぇぇぇぇ!!!」

スノウの叫びが家の外までこだました。



 ニクスの家は狭いため、スノウ以外のメンバーは広間で住民達とドラム缶の焚き火を囲みながら待っていた。

「何だか盛り上がってんな。」

シャインがニクスの家から聞こえていくる声を聴いて告げる。

「4年ぶりの再会だもん。もう少し2人で話をさせてあげましょう。」

レビィは2人に気を遣い、邪魔しないように告げる。

「あんちゃんら、スノウの友達か?」

老人がヒューズに尋ねる。

「友達と言いますか、変な縁の集団です。」

「成る程。そりゃあなかなか離れられんのう。」

老人がワハハと笑う。

「おーい!火が消えかけてるぞー!薪はもうないのかー?」

皆が囲むドラム缶の焚き火の火力が弱まっており、全員周囲を探すが、燃料になるようなものが見当たらない。

「仕方がないわね。」

見兼ねたサナがパチンと指を鳴らすと、焚き火の火力が戻った。それにより周囲からおお〜!と歓声が上がる。

「ねーちゃんやるな!」

「ありがとう!」

周りから礼を言われたサナは照れ臭くなり、反射的に顔を背けた。その反応を見て、ソノはクスッと笑うであった。



 「それで、お前は何で戻ってきたんだ?」

一通り暴れ回ったニクスとスノウ。ニクスが戻ってきた理由を尋ねる。

「エアルがヨロパに戻ってきているのは知ってるか?」

「それは本当か?」

「ん?知らなかったのか。」

「ああ。でも変だな。そんな大ニュースがあったら流石の貧民(俺達)の耳にも入ってくると思うけど。」

「まぁ今はどうでもいいことだ。そのエアル帰還の裏側は、エアルの意思を無視して無理矢理連れ戻してやがる。エアルが同意して戻ったのなら俺達に口出しをする権利はねぇが、無理矢理なら話は違う。俺達はエアルを連れ戻すために来たんだ。」

「おまっ…!!本格的に国を相手にする気か!?っっっざけんな!!」

ニクスが怒りに任せた拳をスノウに振り下ろすが、スノウは手首を掴んでピタリと止めた。

「悪いなニクス。もう止まる気はねぇ。どうしても止めるっつうなら、4年前と同様、お前をぶん殴ってでも行く。」

もう曲がることがない真っ直ぐな瞳を向けられたニクスは、大きくため息をついて拳を引いた。

「外にいる奴ら、お前の友達だろ?あいつ等も喧嘩売る気満々なのか?」

ニクスがシャイン達に視線を向ける。

「じゃなきゃこんな所まで来ねぇよ。」

「それは確かに。類は友を呼ぶってやつか。」

ニクスは全てを諦めたような顔をしてアハハと笑った。

「たく……でもやるんだったら、絶対連れ戻せよ。」

「ああ。当然だ。」

ニクスとスノウがニッと笑い合う。

「それで、実行はいつなんだ?」

「今日の夜0時だ。」

「今日の0時?『クリスマスパーティ』開催と同時に喧嘩売る気なのか!?」

そう。シャイン達がザーパトウェストに来た日は12月24日。次の日の25日0時から、首都ヨロパでクリスマスパーティが開催されるのである。

「ああ。パーティが始まると騎士団の連中も警備とかで駆り出されて城の中が手薄になるし、仮に戦闘になっても、住民がいたら下手に大きな攻撃も出来ないしな。俺らはその隙を突いて城に侵入し、エアルを連れておさらばよ。」

「そんな上手くいくものか?」

「上手くいかなくてもやるしかねぇんだ。」

「……そうかよ。」

「で、ちょっと相談なんだが、夜までボウビンに待機させてくれねぇか?」

「成る程。なら、今日の晩飯くらいは豪盛にしねぇとな。」

「いや、別にそこまでしなくても……」

「バカ野郎。一世一代の大勝負をすんだろ?その直前の飯が貧相じゃ気合いも入らないだろうが。」

ニクスが笑った時、家の中にひょこっとシャインが入ってきた。

「同じ考えで良かったぜニクスさんよ。」

「どういうことだシャイン?」

スノウがシャインの言葉の意味を尋ねると、シャインは2人に家から出て広間に行くように促す。2人は素直に家を出ると、その足で広間に向かう。そして到着した広間には豚や鳥、牛などの魔物が大量に倒れていた。

「どうしたんだこの魔物?」

ニクスがシャインに尋ねる。

「決まってんだろ。バーベキュー用の食料だ。」

シャインが悪そうな笑みを浮かべる。

「バーベキュー…だと?」

ニクスが状況に困惑していると、

「おーい!野菜も採ってきたよー!」

森の方からレビィとソノが現れ、背負っている籠には沢山の野菜が入っている。

「ヒューズがボウビンに来る道中で、食べれる魔物や野菜が森の中に生息していることを確認していたんだ。で、こっちでも戦の前は派手な飯って話になったな、いっそ全員でバーベキューと洒落込もうってことになったんだ。」

器用に魔物を捌いていくシャインが状況を説明する。

「マジかよ…そんなの……最高じゃねぇか!」

スノウは一瞬にしてバーベキュー計画に乗り、ノリノリで準備に参加する。ニクスはスノウが笑いながらシャイン達と準備を進める姿を見て、

(良かったな、笑い合える仲間ができて。)

と、心の中で呟くのであった。




 時は流れ、太陽が半分地平線に隠れた頃。空は夕焼けに染まり、世界を朱く照らす。

貧民街ボウビンでは絶賛バーベキューパーティが開催されていた。最初は周囲の住民だけだったが、匂いと噂がすぐにボウビン中を駆け巡り、今はボウビンの殆どの住民が参加している状況である。

「おらー!肉の追加だー!」

スノウが大皿に乗った肉を出してくると、周囲から大歓声が上がる。

「いつの間にか宴になってるし…」

宴の中心部から少し離れた所で皿に取り分けた肉を食べるサナが苦笑いする。

「変に緊張した空気で戦に向かうより良いではないか。」

サナの隣で笑うのは、瞳が赤に、髪が漆黒になったレビィ─つまりナイトであった。

「何であんたが出てきてるのよ?レビィはどうしたの?」

「レビィが緊張して食事が喉を通らないというのでな、代わりに我が食べてやっているのだ。」

「成る程、メンタルが別だからこそ出来る芸当ね。」

サナが笑った後、ナイトが話題を変えた。

「ところでサナよ。お主はいつになったら()()()()()()のだ?」

サナの肉を食べる動作がピタッと止まる。

「……遠足の時ぶりね。その話を持ちかけてくるのは。」

「なかなか2人だけになるタイミングがなかったからのう。──ああ、案ずるな。今のレビィの力では外界の様子を聴くことも視ることも出来ぬ。安心して正体を言って良いぞ。」

「それなら安心ね。って、そんな事で口を滑らすわけないでしょ。」

「やはりか。勢いで話してくれれば面白かったのになう。」

ナイトがハハハと笑う。

「そもそもあんた、私の正体を知ってどうするつもりなの?」

「今のところはどうもしない。ただ、近くにずっと正体が分からぬ者がいるというのは…落ち着かないものだからな。」

ナイトから僅かな威圧を感じたサナ。

「……悪いけど、よっぽどな状況にならない限り、私の口から正体を明かすことはない。だからこれ以上掘り下げようとしても無駄よ。」

サナがキッパリと言わない宣言をする。

「そうか。お主の正体が味方であることを願うよ。」

ナイトは小さく笑みを浮かべると、その場から去っていくのであった。

「……味方、か。」

サナはポツリと呟きながら、暗くなる空を見上げた。




 楽しい時間はあっという間に過ぎ、ボウビン中を巻き込んだバーベキューパーティは終了し、空には綺麗な月が昇り、輝く星々が夜の空を彩っている。

 時刻は23時30分。残り30分で首都ヨロパで大規模なクリスマスパーティが開催される。

シャイン達は今、ニクスの家の前に集合していた。

「さて、そろそろ時間だ。アレン、()()()の準備って出来てるか?」

シャインがアレンにとある物を要求する。

「出来てはいるけど、本当に着るのかい?」

「俺達は今から城に行くんだぜ。ドレスコードは必要だろ?」

「はぁ…無駄なところを拘るね。まぁ今着てる服より断然頑丈だから賛成ではあるけど。」

アレンは異空間から人数分のアタッシュケースを取り出すと、全員に渡していく。

「なにこれ?」

レビィがアレンに中身を訊く。

「シャインからの要望で作成した完全オーダーメイドの『スーツ』さ。」

「わぁ…!カッコいいです!」

アタッシュケースを開けたソノが、黒を基調としたスーツを取り出して目を輝かせていた。

「これは…鋼糸(こうし)を縫い込んでいる上に、地属性による防御魔法の加護もかけている。かなり丈夫なスーツですね。」

ヒューズがタキシードを手に取って分析する。因みに鋼糸(こうし)とは、この世界の特殊技術により生み出された鋼を性質を保ったまま糸状に加工した物である。

スーツが行き渡ると、男性陣はその場で着替え始め、女性陣はニクスの家を借りて中で着替えた。


 数分後。タキシードを身に纏ったシャイン達がボウビンの出入り口で横一列に並んでいた。

「ネクタイやハンカチまで用意する必要はあったの?」

サナがネクタイを結びながらアレンに尋ねる。

「やるなら完璧に。だよ。」

革靴をトントンとして具合を確かめるアレンが答える。

「今更だけどソノちゃんは本当に一緒に来て良かったの?」

レビィがソノに訊く。

「今更仲間外れは嫌です。──それに…悲しいお別れはもっと嫌です。」

ソノの決意が籠った強い言葉に、他のメンバーはニッと笑い合った。

「よっしゃあ!ぜってぇエアルを連れ戻すぞ!」

スノウの気合いの元、シャイン達は首都ヨロパへ移動を開始した。

本日はお読み下さり誠にありがとうございます!

少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!


ここでご報告です。2023年12月4日から始まった連続投稿も明日が最後となります。

ザーパトウェスト編の完結ではなく、ようやく戦いが始まろうとした時に連続投稿が終了…人によったら何となく理由が分かったかもしれませんね。理由は明日の投稿で。



それではまた明日、お会いしましょう!お楽しみに!

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