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始まりは魔法科高校から  作者: 眼鏡 純
5章:西の国
34/71

34話 2人の大恩人

こんにちは!作者です!エアル&スノウ編7話目でございます!


今回で過去パートは終了となります!



──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。

 「ん……」

スノウが目を覚ます。美味しそうな匂いによって。

(なんだ…?すげぇ良い匂い…)

上半身を起こし、寝ぼけた状態で辺りを見渡す。まず気付いたのは、自分は今、フカフカなベッドの上にいること。次に気付いたのは、隣に気持ち良さそうな寝顔を浮かべるエアルが寝ていること。そして最後に気が付いたのは、ここが何処かの家の寝室だということであった。

「どこだ…ここ…!?」

だんだんと頭が冴えてきたスノウが自分の身に起きていることを理解してきた時、開いていた寝室のドアがコンコンと叩かれた。スノウが反射的に視線を向けると、そこには白衣を着た男性が立っていた。

「誰だてめぇ!!」

スノウはベッドから出ると、すぐに拳を構える。すると白衣の男性は両手を上げて敵意がないことを示した。

「僕の名前は『ルイス』。魔法の研究をしている学者だ。」

身長178cm。年齢30代後半。しっかりとセットされた茶色の髪に青色の瞳をもつこの男性はルイスと名乗った。

「学者?ここはお前の家…なのか?」

一切敵意を見せないルイスに対し、スノウは自然と拳をほどいた。

「ああ。僕の家だ。──取り敢えず、まずはご飯にしないかい?お腹減っているだろ?」

ルイスが両手を上げたまま提案すると、スノウの腹がグゥゥゥ〜と音を鳴らして応えた。

「ははは、正直でよろしい。僕は先に準備しておくから、君は彼女を起こしてリビングに来てくれ。」

ルイスは笑った後、先にリビングへと向かった。置いていかれたスノウは、ベッドの上で未だスヤスヤと気持ち良さそうに眠るエアルの寝顔を見て少し呆れるのであった。




 白を基調とした内装。シンプルな形をした家具。余計な物が置かれておらず、全体的にスタイリッシュでシンプルな印象を受けるルイスの家。

 そんなルイスの家のリビングの椅子に座るスノウは、ルイスから渡されたジャージに着替えていた。リビングから見えるキッチンではルイスが料理の盛り付けに取り掛かっている。

 「ルイスさん!ルイスさん!本当にこれ貰っていいの?」

別の部屋で着替えを済ませてきたエアルが、目を輝かせて尋ねる。モコモコしたセーターに長めスカートを身に着ける今のエアルは、何処にでもいる普通の元気な女の子であった。

「ああ。娘のプレゼントに用意していた服なんだが、そこまで喜んでくれるなら娘も許してくれるだろう。」

「ありがとう!ルイスさんの娘さん!」

エアルは両手を合わせ、天井に向かって礼を告げる。

「いや…娘は死んでいないからね…」

ルイスは苦笑いしながら料理を持ってリビングに移動する。そしてスノウの前に丸皿に入ったホワイトシチューを置いた。

「わ〜!シチューだ〜!」

エアルがすぐにスノウの隣の席に座ると、ルイスはエアルの前にもホワイトシチューを置いた。

「もっとガッツリしたものが良かったけどな。」

スノウが少し残念がる。

「君達を発見した時、魔法の力で防寒対策をしていたけど、かなり体温が下がって衰弱していた。今は低体温状態から平温に戻っているとはいえ、内蔵はまだ衰弱している。そこにいきなりステーキみたいな物を食べてしまうと、逆に体に負担をかけてしまう。そんな時、シチューという料理は、体も温めるし消化器官にも優しい。加えて栄養を余すことなく摂取できる。君達の現状に一番最適な料理なのさ。」

スノウとエアルの前に座るルイスはうんちくを話した後、2人に食べるように促す。スノウとエアルはスプーンを手に取り、同時にシチューを口にした。味は一般家庭レベルではあるが、空腹のスノウとエアルには十分過ぎるほど美味な料理であった。2人は一口、また一口とシチューを食べていき、最終的におかわり分も全て平らげた。

「さ、お腹がいっぱいになったすぐで申し訳ないが訊かせてもらおう。──君達は何者だ?」

ルイスからの問いに、スノウとエアルがピクンと反応する。

「え、えっと……」

露骨に口籠るエアル。スノウもどう答えていいか分からないようだ。

「いや、こちらの質問が悪かったね。質問を変えよう。──まずは君達の名前を知りたいな。」

ルイスが質問内容を変える。

「……スノウ・シルバーだ。」

スノウが名乗る。

「私はエアル・フィ──……」

ここでエアルは口を閉じ、

「エ、『エアル・ダイヤモンド』です。」

と、改めて名乗った。エアルの中でフルネームはマズいと咄嗟に思ったのだろう。

「ダイヤモンド…確かザーパトウェストの国王も名字はダイヤモンドだったね?」

「そ、そうなんですよ!たまたま名字が同じで!だから昔っから色々と勘違いされて大変なんです!」

エアルがアハハと笑って誤魔化す。

「そうか。では、改めてよろしく。スノウ君、エアル君。──じゃあ次の質問だ。君達は何故、貨物列車の中に忍び込んでいた?」

「「自由を手に入れるため。」」

スノウとエアルは同時に即答する。

「成る程。じゃあ自由を手に入れる為、今後の計画を立ててあるのかい?」

「ない。だけど前までいた環境だと自由になりたいなんて考える機会すらなかった。そんな状況より数億倍マシだ。」

スノウが言い切る。

(つまりこの2人は劣悪な環境の生まれってことか?ザーパトウェストの貨物列車内にいたことに、あの国の劣悪な環境と言えば…この子達は貧民街の子なのか?いや、だとしたらエアル君のドレスはどう説明する?彼女が着ていたドレスはボロボロではあったが間違いなく高級なドレス。そんなドレスを貧民の子が購入できるわけがない。ということは、エアル君の生まれは貴族以上。そして名字が王族と同じとなると、この子は恐らく……)

ルイスは数秒の間に思考を巡らせ、2人の素性を推理する。しかし、辿り着いた答えを口には出さず、別の話題に変えた。

「そうか。君達の事は大体理解した。──では、今からは君達の今後の行動について話そう。選択肢はいくつかある。」

ルイスが人差し指を立てる。

「1つ目。君達だけ生きていく。僕から離れ、2人だけで生きていくんだ。大丈夫、君達の事は他言無用することを約束しよう。」

1つ目の提案に、スノウとエアルは乗る様子はなかった。ルイスは2人の反応を見て、2本目の指を立てる。

「2つ目は君達の身柄を警察に預ける。そうなると警察は君達の素性を調査し、最終的に故郷へと強制帰還させるだろうね。」

「それだけはダメだ!」

「それだけはダメ!」

スノウとエアルが同時に却下する。よほど帰りたくないのだろうと察するルイスは3本目の指を立てる。

「では3つ目。君達を孤児院に入れる。僕の知り合いに孤児院をしている人がいるんだ。その人は訪れた子供達から生い立ちを一切訊かないし、裏で調べたりしない。だから君達がその孤児院に訪れても、その人は2人を優しく迎え入れるだろう。だけど絶対的なルールが1つだけある。それは孤児院に入れられるのは成人、つまり二十歳まで。君達は見る限り12歳くらいだろ?なら、最大8年間は衣食住に困ることはない。」

3つ目の提案に対し、スノウとエアルは微妙な反応を示す。ルイスは2人の反応を見て、4本目の指を立てた。

「最後に4つ目。この家で暮らす。」

最後の提案が、スノウとエアルが最も反応を見せた。

「この家でって…あんたの子になってことか?」

スノウの問いに、ルイスは首を横に振る。

「養子になれとまでは言わない。そうだなぁ…所謂居候にならないか?ってニュアンスかな。」

「良いんですか?」

エアルの問いに、ルイスは笑顔で応える。

「今の僕の生活は、殆どを研究所で過ごしていてね、この家に全然帰っていないんだ。だけどこの家の家賃はしっかり払われている。そんなの勿体ないだろ?だから君達がこの家を使ってくれるなら有難いなと思ってね。」

「はい!是非とも!」

エアルが食い入るように提案に乗る。しかし、スノウは疑った目でルイスを見詰めていた。

「なぁ、どうして見ず知らずの俺等にここまで親切にするんだ?」

「うん、当然の疑問だね。その疑問に対しての答えはシンプル。──親心だ。」

ルイスがニコッと笑う。

「親心?」

「ああ。さっき少し言ったけど、僕には君達と同い年くらいの娘がいるんだ。」

ルイスがテレビの横に視線を向ける。そこにはルイスとルイスの妻、そして間に7歳くらいの女の子が写っている家族写真が飾られていた。

「娘は母親似でね、紺色の髪と青色の瞳がとても似合う自慢の娘だ。そんな娘がいるからこそ、貨物列車に荷物の確認をしていた昨日、衰弱した君達を発見した時、守らなきゃって自然と思ったのさ。」

「捨て犬を拾ってくるガキみたいなもんか?」

「ははは、まぁ言い方を悪くしたらそうなるかもね。──でも、そんな軽い気持ちで君達を保護したつもりはない。僕は本気だよ?──さ、僕の提案に乗る?乗らない?」

ルイスが笑顔でスノウに手を伸ばす。

「……へっ、乗らないわけないだろ。よろしく頼むぜ。ルイスのおっさん。」

スノウがルイスを信じ、伸ばされた手を握る。そこにエアルも加わり、3人は固い握手を交わすのであった。








 「──っていうのが、俺とエアルの過去だ。」

スノウの長き過去の話が終わった。指導室に漂っていた緊張感がなくなり、各々体を休ませる。そんな中、サナがレビィだけ周囲とは違うリアクションをしていることに気が付いた。

「レビィ、どうしたの?」

サナの言葉により、皆の視線がレビィに集まった。レビィは少し間を空けた後、スノウに尋ねる。

「ねぇスノウ、そのルイスさんとは最近会った?」

「いや、高校に入学してからは寮暮らしになったから会えてねぇな。」

「そっか。じゃあさ、ルイスさんに結構簡単に会えるって言ったら、会いたい?」

レビィの問いかけに、他の全員がざわめく。

「レビィ、お前ルイスって人を知ってんのか?」

シャインがレビィに尋ねる。

「知ってるも何も……だってその人、私の『お父さん』だもん。」

レビィが衝撃的な回答をする。

「お父さん!?」

レビィ以外の全員が揃って驚く。

「うん。スノウとエアルの恩人にあたる『ルイスさん』のフルネームは、『ルイス・サファイア』。正真正銘、私のお父さん。だから私が連絡さえすれば、少し時間はかかるけど、確実に会うことは出来るよ。」

レビィの提案に対し、スノウは少し悩んだ後答える。

「いや、今はいいよ。どこかでちゃんと自分達で会いに行く。」

「そっか、分かった。──でも個人的に訊きたいことが沢山あるから、後で連絡はするね。」

レビィの瞳の奥に少し怒りが生まれたことを察したスノウは苦笑いをするしかなかった。


 「さてと、スノウ達の過去を知った今、これから俺達はどう動くかってことになるな。」

シャインが話題を変える。

「決まってんだろ。エアルを助けに行く。」

スノウが真剣な顔で告げる。

「はぁ…言うと思った。」

サナがやれやれと呆れてから続ける。

「あのね、相手は国よ国?その辺のチンピラ集団を相手にするとは訳が違うの。」

「僕もサナに同意見だ。流石に相手にする規模が大き過ぎる。」

サナとアレンがスノウの救出案を否定する。

「俺は一度、エアルをあの国から連れ出した!もう一度同じようにするだけだ!」

スノウはダン!と机を叩き、声を荒げる。突然の大きな声に、ソノがビクッと体を震わせ少し怖がった。

「奇跡に奇跡が重なり続けたことによる成功よ。そんな奇跡をもう一回起こせるわけないでしょうが。」

スノウの大声に一切怯むことなくサナが反論する。

「でも、このまま何もしないのは私も嫌。」

レビィがスノウの意見に乗る。

「だったらレビィはどうする気?まさか真正面から喧嘩売る、なんて言わないでしょうね?」

サナに訊かれ、レビィがう〜ん…と考える。

「それは…交渉する、とか?」

悩んだ末、レビィが目を背けながら答える。サナと目を合わせない様子から、レビィ自身も最適案とは思っていないのであろう。

「はぁ…ヒューズはどうなの?」

サナがヒューズにも話を振る。

「私はどちらでも。皆さんの決定に委ねます。」

ヒューズは傍観者宣言をする。

「あっそ。──で、シャインは?」

サナがシャインにも意見を求めると、全員の視線がシャインに集まる。

仲間(ダチ)が涙を流して連れて行かれたんだぞ?助けに行く理由としては充分だ。」

「たく…なにキザなこと言ってんのよ。」

サナが呆れた目でシャインを見詰める。

「はは。ですがこれで話し合いの答えが出たのではないですか?」

ヒューズが全員の顔を見ていくが、誰も反論する者はいなかった。

「サナとアレンも、いいんだな?」

シャインが反対していた2人に確かめる。

「ここで引いたら、後味が悪いからね。」

サナがワザとらしいため息をつき、仕方がないという顔をする。

「ちゃんと計画を立てないと、僕達はただの反逆者になってしまうことは忘れないで。」

アレンは警告をするものの、もう反対はしていないようだ。

「よし、行くぞ。エアルを助けに。」

シャインの一言に、他の全員が頷いた。



 いや、この指導室内で唯一、頷かなかった者がいた。

「ちょーーーーっと待ちなさい!綺麗に話がまとまったところ悪いけど、行かせるわけないでしょう!」

そう、シャイン達の担任のナナリーであった。

本日はお読み下さり誠にありがとうございます!

少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!


まさかの人物、レビィの父親が登場。今後の物語に彼は登場するのかしないのか。それは恐らく…私次第。



それではまた明日、お会いしましょう!お楽しみに!


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