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始まりは魔法科高校から  作者: 眼鏡 純
5章:西の国
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29話 五つの国

こんにちは!作者です!エアル編2話目です!

今回は説明回みたいなものですが、一気に話が国レベルまで広がります。



──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。

 「あんた、ザーパトウェストの現国王─アルバーノ・フィン・ダイヤモンドの一人娘、『エアル・フィン・ダイヤモンド王女』ね?」

サナから告げられた衝撃の事実に、ナイトとソノはただ驚くしかなかった。エアルは否定も肯定もせず、ただ涙を流し続けた。

「さぁエアル様、帰りましょう。アルバーノ様がお待ちです。」

スマイリーマスクの隊長が空気を読まず口を挟む。エアルはゴシゴシと涙を拭き取ると、精一杯の笑顔を浮かべ、

「皆、ごめんね。」

と、見え見えのから元気で別れを告げる。

 エアルはナイト達に背を向けると、スマイリーマスクの隊長へと歩いていく。

「──!!まっ…!!」

少し放心状態だったナイトが我に返り、反射的に手を伸ばして連れ戻そうとする。


 瞬間、ナイトの真横を猛スピードで銀髪の少年──スノウ・シルバーが駆けていき、スマイリーマスクの隊長に殴りかかった。

 スマイリーマスクの隊長はスノウからの一撃をバックステップを踏んで回避する。スノウはすぐに距離を詰め、連続で拳を振るい、反撃の隙を与えない。

スマイリーマスクの隊長はスノウからの連続攻撃を全て回避しつつ、反撃のタイミングを伺う。そしてスノウの強めの一撃を受け流した瞬間の隙を突き、外套の裏に忍ばせていたダガーを取り出し、スノウの眉間を狙って振り下ろした。

スノウは最速の反応速度で両手を合わせると、振り下ろされたダガーを白刃取りした。

「どこの暴君が乱入してきたかと思えば、貧民街の『銀野良』ではないか。」

「その声…!やっぱてめぇ『ジェノ』か!あん時は見逃したくせに!今回は無理矢理連れ戻すのか!」

スノウが怒りの感情に任せて叫ぶ。

「昔は昔。今は今だ。」

ジェノと呼ばれたスマイリーマスクの隊長が振り下ろすダガーに力を入れる。

「ジェノ!そこまでです!」

エアルが声を上げて命令を下した。ジェノは笑顔の仮面で小さく舌打ちをすると、素早くダガーを納め、代わりにスノウを蹴飛ばして強制的に距離を空けた。

スノウがナイト達の近くで仰向けに倒れた時、シャイン、ヒューズ、アレンが遅れて合流した。

「我が主。何故ここに?」

ナイトが問いかける。

「いきなりスノウがこっちに走り出したから追いかけてきたんだ。──それより、この状況はなんだ?」

シャインが起き上がるスノウ、屋根の上の仮面達、そしてジェノに顔を曇らすエアルと視線を移していく。

「おいエアル!戻ってこい!そいつ等に付いていったらまた自由のない世界に逆戻りだぞ!」

スノウが喉が潰れるほどの声を上げると、エアルは少し沈黙を挟んだ後、口を開いた。

「ホントにゴメンね…。でも、こうなっちゃったらもう逃げられないから。だからせめて、皆には迷惑をかけないようにするから、それで許してね。」

エアルはニコッと笑って見せるが、目からはポロポロと涙が零れ落ちる。

「…………じゃあね、バイバイ。」

エアルが別れの言葉を告げた時、ジェノがスッと近寄り、2人の足元に魔法陣が展開させた。

「ふっっっっっっっざけんな!!!そんなんで納得できるかよ!!!」

スノウは一直線にエアルに駆け出す。しかし一歩及ばず、ジェノの魔法が発動し、影が2人を包み、一瞬にしてその場から姿を消した。そしていつの間にか他のスマイリーマスク達も姿を消しており、シャイン達がその場に残される形となった。


 まるで嵐が過ぎ去ったかのように、シャイン達の周りには静寂が広がる。スノウはエアルが消えた場所を見詰めたまま、爪が食い込むほど握る拳を強める。

そんな時、騒ぎを聞き付けた先生達が正門に集まってきた。

「騒がしいと思ったら、またあなた達なのね!」

黒色のショートヘアーに茶色の瞳をもち、黒縁眼鏡にキチッとしたスーツを身に纏うシャイン達の担任の女性──ナナリーが怒りながら駆け寄ってきた。

「あなた達!ホント良い加減に……!」

ナナリーが説教を始めようとしたが、シャイン達が漂わす重々しい空気を感じ取る。

「……何が遭ったの?」

「皆、混乱している。説明するには少し時間がいるだろう。」

ナイトが代表して答える。

「レビィさんがナイトさんになっていることは、只事ではない事があったことは理解したわ。」

ここでナナリーはパン!と手を叩き、重い空気に無理矢理区切りを作った。

「よし皆、まずは場所を変えるわよ。ここで佇んでいても仕方がないでしょ。」

ナナリーが提案すると、シャイン達は素直に従って校舎内へと移動をするのであった。




 指導室を書かれた部屋に集められたシャイン達。長机が複数並べられ、そこにパイプ椅子が人数分用意された。ナイトから戻ったレビィ、サナ、ソノが座り、反対側にスノウ、シャイン、ヒューズ、アレンが座る。そして最後にナナリーが座る。

「さて、まずは校門前で何があったのか話してもらうかしら?」

ナナリーがシャイン達に尋ねる。

「先生、あまり今回の事に関わらない方が身のためだと思うんですけど。」

サナが注意喚起をする。

「それはつまり、大人の私が関わらない方が良い事件に、子供であるあなた達が巻き込まれているとも言えるわね。なら、尚更話してくれる?じゃなきゃ私はあなた達を助けられない。」

ナナリーの真剣な眼差しに負け、サナはここまでの一連の出来事を報告した。


 「───ということが、ついさっき起きた出来事です。」

サナが報告を終えた時、想像の斜め上の展開を聞かされたナナリーは啞然としていたが、ハッと我に返る。

「嘘をついていないわよね?」

「こんな場面で嘘をつく意味がないですから。」

サナが皮肉っぽく返答すると、ナナリーは大きな溜め息をついた。

「はぁ〜〜……エアルさんは校長先生から少し複雑な家庭の子って聞いていたけど、どこが()()よ。私、一国の王女の担任してたってこと?どんだけ重圧な役割させられていたのよ。」

ナナリーが愚痴を零しつつ、また大きな溜め息をついた。

「あの、私よく国の場所とか分かっていないんですけど、エアルさんは何処にある国の王女さんですか?」

ソノが疑問を告げると、ナナリーが反応して教師スイッチが入る。

「あらそうなの?なら説明してあげる。」

ナナリーは席を立ち、部屋の奥に置いていたホワイトボードを用意し始める。

「おいおい…なんか始まりそうだぞ…」

シャインが呟くと、ピシッとナナリーが指差してきた。

「はいそこ、私語をしない。」

今のナナリーの発言で、シャイン達は心の中で(これは授業が始まる。)と察し、もう流れに任せることにした。


 「まずは私達いる大陸の名前は『アトティスラン大陸』。これは流石に分かるわね。」

ナナリーはそう言いながら、ホワイトボードに横向きの楕円を書く。

「アトティスラン大陸は世界地図で見ると楕円形となっていて、東西南北、そして中央で区切られるように『5つの国』が存在します。」

ナナリーが楕円の真ん中に円を書き、楕円と円の間の空間を4分割する。


 「まずは中央の国─『メソンミドル』。首都『セントラル』は今まさに私達が暮らしている都ね。4つの国に囲まれていることから、貿易の中継することで栄えた国よ。メソンミドル独自の文化はないけど、周囲4つの国の文化が入り混じった感じになっているわね。」

ナナリーは説明しながら中央の円の中にメソンミドルと書く。


 「次は北の国─『ノールノース』。機械の国と呼ばれるほど、機械技術がかなり発展した国ね。首都の『パンクイバーサ』はアンドロイドやロボットが共存しているみたいよ。」

ナナリーは4分割した上の部分にノールノースと名前を書き、空いたスペースにロボットっぽい絵を書き足した。


 「次は東の国─『オリエンスイースト』。この国はあまり隣国と貿易はせず、古の文化である『()の文化』を重んじている国よ。首都『アズマキョウ』にはエド城と呼ばれる立派なお城が建っているから、一度は見に行くことをお勧めするわ。」

ナナリーは4分割した右の部分にオリエンスイーストと名前を書き、空いたスペースには日本の城っぽい絵を書き足す。


 「次は南の国─『シュッドサウス』。ここは自然の国と言われるほど、大自然が広がる国ね。特に象徴的なのは首都『チュラルナ』に咲いている千年桜かな。巨大な桜の木で、どうやら千年前から咲いているらしいわ。」

ナナリーは4分割した下の部分にシュッドサウスと名前を書き、空いたスペースに桜の花弁の絵を書く。


 「そして最後の国が、今話題の中心になっている西の国─『ザーパトウェスト』。魔法を中心とした文化を築いている国ね。首都の名はヨロパ。機械技術の文化も当然あるけど、あくまで補足程度。基本的なことは魔法を使って生活をしている。だからザーパトウェストの国民の殆どが魔法を使うことが出来るわ。」

ここでナナリーが世界地図に三角形の図形を書いて中を四分割した。

「まぁ魔法文化に関しては何にも問題はないわ。この国の一番の問題は…『身分制度』。」

ナナリーは4分割した三角形の図形に、上から『王族』『貴族』『平民』『貧民』と記載していく。

「ザーパトウェストの国民の約80%は『平民』という身分に分類され、私達と特に変わることのない生活を送っているわ。そして平民の中でも周囲より豊かな生活をしている者達を『貴族』という身分に分類される。国民の約10%と言われていて、何かしらの組織のお偉いさんというのは全員貴族と考えていいでしょうね。」

ナナリーが図形の周りに情報を書き加えていく。

「そして豊かな生活をしている人達がいるのであれば、貧しい生活をしている人達もいる。それが『貧民』という身分に分類される人達。こちらも国民の約10%とされていて、かなり苦しい生活を強いられていると聞くわ。」

ナナリーが情報を書き足している時、スノウが口を挟んできた。

「かなり苦しい生活?そんな生易しいもんじゃねぇよ。実際は奴隷みたいな生活だ。貧民を雇う奴等は人を人として扱わず、ただの使い捨ての道具にしか思ってねぇ。ろくな報酬も与えず、潰れるまで労働させられる。これが貧民の奴等の現状だ。だが、誰もこの現状を咎めない。当然だ。身分が上の者が下の者を使うことを当たり前のことだと思っているからだ。呪いようになっているこの身分制度の歴史が、そう思い込ませているんだ。」

スノウから告げられた言葉には、とてつもない説得力があった。

「もしかしてスノウ、君は貧民の生まれのか?」

アレンが尋ねると、スノウは天井を仰ぎながら肯定した。

「ああそうだ。俺が生まれ育ったのはザーパトウェスト内で貧民街と呼ばれる街─『ボウビン』ってとこだ。」

「聞いたことがない街の名ですね。」

ヒューズが頭の中でザーパトウェスト全土の地図を広げるが、そこにボウビンという名前はなかった。

「ゴミ同然に扱っている奴等が集まっている場所を、貴族達がわざわざ地図に載せるわけねぇだろ。」

スノウがヒューズの方を見て自嘲する。

「酷い。それが人が人にする行動なの…」

レビィが呟く。

「でもよ、そんな貧民のお前と、貴族であるエアルがどうやって出会ったんだよ?」

シャインが率直な疑問を投げかけると、ナナリーが訂正に入ってきた。

「シャイン君、エアルさんの身分は貴族じゃない。更にその上よ。」

「その上?」

「ええ。ザーパトウェストは建国以降、とある一族が『王族』として君臨し、ずっと国の全てを決定してきた。」

ナナリーが三角形の図形の1番上を丸で囲む。

「その一族こそが、エアルさんの家族─『ダイヤモンド一族』よ。王族の身分を持つのはダイヤモンド一族のみ。代々ダイヤモンド家の血筋内で国王の座は継承され続け、現国王は『アルバーノ・フィン・ダイヤモンド』。エアルさんのお父さんにあたる人ね。」

「とんでもねぇ大物じゃないか。──てか、頭良い組のサナやレビィ達は、エアルの名字を初めて聞いた時に気付かなったのかよ?」

「当然疑ったわよ。ダイヤモンドなんて名字(ファミリーネーム)、そうそういないんだから。だけど私としたことが先入観が勝ってしまったのよ。まさか同級生が一国の王の娘なんて有り得ないってね。」

サナが最初に答えるとヒューズが続く。

「右に同じですね。まさかこんな身近に雲の上の存在である一族の身内がいるとは思いませんでした。」

「私もダイヤモンド家の名前は知っていたけど、エアルからその…良い意味で王族感というか、そういう上の人って感じがしなかったから、名字が同じの珍しい家系の子って認識しちゃったの。」

レビィが答えた後、シャインがアレンに視線を向ける。

「アレンはどうなんだ?」

「僕は………ごめん、隠すつもりはなかったんだけど、ずっと知っていた。」

予想外の返答に、周囲が少し驚いた。

「いつから知っていたのです?」

ヒューズが問う。

「龍空高校に転入してから数日後には知っていた。悪いとは思いながらも気になってしまってね、だから裏で調べさせてもらった。でも、そんな超特大級の大物が何で他国の高校に入学しているのかは分からなかった。だから機会を見て直接訊こうと思っていたんだけど、先にこのような状況になってしまったんだ。」

アレンが申し訳ないという顔を浮かべながら答える。

(この子達、本当に高校生よね?もうなんかその域を越えた会話をしてるように感じるんだけど……)

シャイン達の会話を聞いていたナナリーが心の中で呟く。

「成る程。つまり全員気にはなっていたんだな。なら、タイミング的には丁度良いだろ。そろそろ話してもらおうか。お前とエアルが隠している真実を。」

シャインがスノウに視線を向けると、他の全員も視線をスノウに集めた。

「……そうだな。ちょっと長くなるけど話しておくよ。俺とエアルの過去。」

スノウは自身とエアルの出会いから語り始めた。

本日はお読み下さり誠にありがとうございます!

少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!



29話にして判明する大陸や国々の名前。一気にこの小説の世界観が広がった気がします。この先の私はこんなにも風呂敷を広げて、ちゃんと回収出来るのでしょうか。今から不安ですが、精一杯頑張りますので応援お願いします。


それではまた明日、お会いしましょう!お楽しみに!

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