23話 ORDER GUARDIAN
こんにちは!作者です!文化祭編6話目です!
完全に文化祭関係なくなってしまいましたが、今回合わせて残り2話なので文化祭編として押し通します。
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
アレンの指示に従い、7人は学生寮の中にあるアレンの部屋の前まで到着した。
「この人数で話すなら、寮の部屋はちと狭いんじゃねぇか?」
スノウがアレンに尋ねる。
「大丈夫。もっと広い場所に案内するから。」
アレンは意味深な返答をしながら鍵を取り出すと、ガチャリとドアを開ける。部屋はワンルームとなっており、小さいテーブルに小さい冷蔵庫、布団、クローゼットの中に数着の服と、必要最低限の物しか置いていなかった。
「うわっ、面白くない部屋。」
エアルがズバッと辛辣な言葉を口にする。
「ちょっと豪華な牢獄だろ。」
シャインが鼻で笑う。
「ミニマリストの可能性もありますよ。」
ヒューズが茶化すように告げる。
「もしかしてアレンって苦学生?」
いつの間にかナイトから戻っているレビィが検討の違いの心配をする。
「言いたい放題だね、君達……」
アレンが苦笑いしながらも、全員を部屋に招き入れる。
「この部屋はただのフェイクだよ。僕の本当の部屋はこっち。」
アレンは徐ろに取り出したカードキーをクローゼットにかざした。するとピピッと音が鳴り、何かを認証したようだ。
「さっ、入って。」
アレンがクローゼットを開けると、そこには光る空間が広がっていた。突然の出来事にシャイン達は少し警戒しながらも、アレンに従い光る空間に入っていった。
光る空間の先に広がっていたのは、サイバー的な壁に囲まれた小部屋であった。正面に扉があるだけで、それ以外は一切何もない。
「付いてきて。」
アレンは正面の扉をカードキーで開くと、シャイン達に付いてくるように告げる。シャイン達は素直に従って小部屋から出ると、SF映画の研究所のそうな真っ白な壁の通路であった。シャイン達が出てきた扉以外にも扉が等間隔に設置している。
「こっちだよ。」
アレンに連れられ、シャイン達は通路を歩いていく。その途中、白を基調とした軍服を身に纏った30代ほどの男性が前から歩いてきた。男性はアレンに気が付くと、通路の端に寄って道を譲り、敬礼をした。
「お疲れ様です!アレン隊長!」
「お疲れ。今、会議室は空いているかい?」
アレンは男性の前で止まって訊く。
「会議室ですか?確か第2会議室が空いているかと思います。」
「第2だね。ありがとう。」
アレンは男性に礼を言うと、再び歩き始める。どんどんと謎が増えていくが、とにかく付いていくしかないシャイン達は同じように歩いていくのであった。
歩いて数分後、到着したのは20人ほど入れる第2会議室と呼ばれる部屋で、中央に大きな白い長方形のテーブルと椅子が20人分設置されており、奥の壁には巨大モニターが埋め込まれていた。アレンは巨大モニターの前に立つと、シャイン達に近くの椅子に座るよう促す。シャイン達が全員座り終えると、アレンが話し始めた。
「さて、まずはここが何処だかを説明しないとね。ここは秘密組織─『ORDER GUARDIAN。通称『OG』と呼ばれている政府直属の秘密組織さ。凶悪な魔物を討伐したり、国や政府において悪しきものとなる組織を壊滅したりと、世の中に無駄な恐怖を与える前に水面下で解決するのが主な仕事さ。そして僕はそんなOGの『第三戦闘部隊隊長』をやらせてもらっているんだ。あとはそうだな…使える魔法の名前は『改造魔法』。異空間に様々な部品を内蔵しておき、魔法を発動することによって分解、組立、改造を瞬時に行う魔法さ。」
アレンが今いる施設の説明と、自身の正体と魔法を明かす。
「オーダーガーディアン…『秩序の守護者』ですか。」
ヒューズが名前の意味を告げると、アレンが頷く。
「そう。OGは世界の秩序を守るべく秘密裏に解決することが目的だからね。こういう名前になったって聞いているよ。」
「でも何で秘密組織のアレンがさ、龍空高校に転入してきたの?」
エアルがアレンの転入理由を尋ねる。
「それは絶滅魔法持ちのシャインとレビィを革命軍から保護するためさ。」
「保護?」
レビィが首を傾げながら聞き返す。
「うん。革命軍は絶滅魔法持ちの人間の魔力を狙っているんだ。だから僕達OGは、二人をいつでも守れるように潜入していたのさ。」
「そうだったんだ。ありがとう。」
レビィは礼を言うが、シャインはどこか腑に落ちない顔をしていた。
「なぁアレン、本当に保護だけが目的か?」
シャインが疑いの目をアレンに向ける。
「どういう意味?」
「確かに俺等を守るという目的もあっただろう。だがそれ以上に、革命軍をおびき寄せる為の餌にしたんじゃねぇのか?」
「それは違うよ。革命軍が龍空高校に襲撃してくる可能性が一番高かったから、僕は君達の近くにいたのさ。」
「どうして龍空高校への襲撃が一番可能性が高いって分かったの?」
レビィが理由を尋ねる。
「絶滅魔法の魔力の質であれば、虎神高校のダクネスや、蛇帝高校のトワイラの神力種の方が上だ。だけど、それ以上に狙われる要因となったのが、シャインが能力解放になれるようになったことだ。」
「能力解放になれることがそんなに凄いなのか?」
シャインの疑問に対し、答えたのはサナであった。
「能力解放になりたいだけで、生涯を捧げる者もいれば、命を落とす者もいる。これであんたが得た力が、どれ程のものか大体理解出来たんじゃない?」
「へぇ…そんな大層な力だったのか。」
シャインが自分の掌を見詰める。
「能力解放をした魔力はかなり貴重だ。しかもそれが絶滅魔法ときた。革命軍が黙って見過ごすわけがないと踏んで、龍空高校に潜入したんだ。」
アレンが潜入理由を話し終えたところで、話が一度途切れた。
そして次の話題を振ったのはヒューズであった。
「さて、アレンの事とOGの事とは大体理解出来ました。あとは革命軍の事について教えてほしいですね。」
「そうだね。何から話そうか?」
「そうですね…先程までの話の繋がりで、革命軍の計画が知りたいです。何故革命軍は絶滅魔法の魔力を狙い、そして回収した魔力で何をしようとしているのか。」
ヒューズが質問する。
「『創世計画』、これが革命軍が実行しようとしている計画さ。」
「創世計画…神にでもなって世界を作り直そうってこと?」
サナが尋ねると、アレンが答える。
「明確な目的は僕達もまだ完全に掴めていない。でもその計画を実行する為に、革命軍は膨大な魔力を集めていることは突き止めた。加えて絶滅魔法の魔力を中心に集めていることも判明した。そこから僕達は世界中の絶滅魔法の使い手達の場所を徹底的に調べた後、革命軍より先に使い手達の護衛という形で周囲に潜伏し、奴等が使い手達を狙って現れたところを防いでいるんだ。」
「ねーねー、明確な詳細が分かっていないんなら、なんか壮大な名前なだけで、計画自体は大したことないって可能性はないの?」
エアルが質問すると、アレンは首を横に振った。
「それだけはあり得ない。革命軍のボスであるフォーグ・ジュエール。彼の性格上、本当に世界を変えるレベルの計画を企てているに違いない。しかもそれを実行出来る力も知識も持っている。だから絶対に放置は出来ない。」
「なんかさっきからフォーグの事を知ってる口ぶりだけどよ、もしかして知り合いってわけじゃないよな?」
スノウが冗談混じりで訊くと、アレンが答える。
「知り合いどころじゃない。彼は『元OG第一戦闘部隊隊長』、かつての仲間だ。」
衝撃な事実にシャイン達が驚いている中、アレンは話を続ける。
「彼は周囲から絶大な信頼を得るほど素晴らしい人物だった。だけど3年前、とある任務から帰還した時をさかいに、まるで別人のようになってしまった。そこから数日後、彼はOGを裏切るような形で脱隊した。研究員の中で最も優秀だったイルファと共にね。」
「イルファも元OGだったのね。」
サナの言葉にアレンが頷く。
「うん。彼女はOGにいた頃からフォーグのことを随分と慕っていた。だからフォーグが脱隊する時、イルファは自分の意志でフォーグに付いていったんだ。脱隊した後、2人はアンダーグランドで羽振りを利かせていたパンロックを仲間に加えることによって、アンダーグラウンドの者達を一気に戦力にしたことによって革命軍を結成した。」
「私…というかナイトと戦ったムサシって人はどうして革命軍にいるの?」
レビィが質問する。
「ムサシ・ミヤモトについてはまだ謎が多い。いつの間にか革命軍に加わっていたから、加入理由は不明だ。彼自身の情報を得ようとしてもどこにも情報が見つからない。唯一得た情報は、彼は魔法が使えないということだけ。」
「じゃあムサシは自身の剣術だけでナイトと渡り合ってこと!?」
「そういうことになるね。ある意味彼が革命軍で一番恐ろしい人物かもしれない。」
「でも、残りの幹部とフォーグは魔法を使えるんだろ?」
シャインの質問にアレンが頷く。
「うん。パンロックの魔法は爆弾は力。爆発の力を操る魔法だ。イルファはサナと同様、多種多様な魔法を扱える。その種類はOGの中でも随一なほどにね。そしてフォーグの魔法の名前は…『黒穴魔法』。闇属性と地属性が混じり生まれた重力を操る魔法だ。」
アレンの説明にいち早く反応したのはサナであった。
「混合属性は雷と氷以外に存在しない。てことはその黒穴魔法、絶滅魔法ね?」
サナからの問いにアレンが頷く。
「その通り。その力は皆も体感している。奴等が撤退する際に発生した霧、あれはフォーグが雲を黒穴魔法の力で地上まで落下させたのさ。」
「じゃあ戦っていた時の謎の衝撃波みたいなのは何だったんだ?」
シャインが訊く。
「あれは重力で大気を圧縮させ、大気の塊を生成して放っていたんだ。だからぶつけられた時、とてつもない衝撃を受けるという仕組みだ。まぁその大気を、重力ごと真っ二つにした人がここにいるけどね。」
アレンが視線をレビィに向けると、他の全員もレビィに視線を集める。
「そ、そんなに見詰められても困るんだけど……」
レビィが照れ臭そうに顔を少し赤らめた。
ここでアレンがパンと両手を合わせて区切りをつけた。
「さて、これで僕から話せる情報は話した。そろそろ戻らないと先生達や他の学生達に怪しませるから戻ろうか。」
「でも今回の騒動、OG的にはヤバいんじゃない?ここまで派手に襲撃されたら、警察やマスコミとかが嗅ぎ回るでしょ。」
サナが席を立ちながら尋ねる。
「その心配はいらないよ。今、現場を調べているのはOGの存在を知っている警察のみだから、全員口裏合わせてOGの事は一切表には出さない。だからマスコミを通じて世間に認知されることはないさ。」
「用意周到ってことね。いらない心配したわ。」
「ねぇアレン、OGはそれで良いかもしれないけど、私達はどうするの?真正面から革命軍と戦っているけど。」
レビィが尋ねる。
「それに関しては、僕含め皆には英雄になってもらう予定だ。」
「英雄?」
スノウが訊き返す。
「うん。警察に追われていた謎のテロリスト達が籠城する為、龍空高校を占拠したってことにする。そして勇気ある生徒達が抵抗したことにより、籠城を内部から崩壊させる。その勇気ある生徒達を僕達にするのさ。するとマスコミも、命を顧みずテロリストと戦った高校生、なんて充分に注目記事が書けるから、それ以上に深い所までは嗅ぎ回ってこない。──筋書きはこんな感じ。だからちょっとの間、皆には勇気ある生徒を演じてもらうから協力よろしくね。」
アレンがニコッと微笑んだ後、会議室の扉を開ける。
「さ、英雄になりに行くよ。」
シャイン達がOG本部から高校に戻ってくると、警察達が現場を調べていたり、事情聴取をしていた。記者達は校門の前で警察達に止められている。
「あっ!彼らだ!彼らを取材させてくれ!」
記者の1人がシャイン達の存在に気付き、校門前を警備する警察に交渉を始める。
「さ、皆さん。演技の時間だよ。」
アレンはシャイン達に微笑んでから、記者達の元へと歩いていく。シャイン達も後に続いて記者達の元に近寄ると、全員で上手く口裏を合わせ、アレンの筋書き通り、テロリストに立ち向かった英雄となった。
OGの存在を知っている警察達は形だけの現場検証を終えて帰っていき、記者達もシャイン達への取材で満足し、その場から去っていった。
滅茶苦茶になってしまった龍空祭は、校内の復旧が終わり次第3日目が開催されることが決定し、大乱闘となった龍空祭2日目は幕を閉じたのであった。
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!
こういう説明回というのが出来てしまうのは、私の執筆能力が低いせいなのでしょうね…。本当は自然な会話の中で説明出来たらいいのですが…。
少しでも皆様が理解されていれば幸いです。
それではまた明日、お会いしましょう!お楽しみに!




