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始まりは魔法科高校から  作者: 眼鏡 純
3章:龍空祭
19/71

19話 舞台に咲いた華

こんにちは!作者です!文化祭編2話目です!

舞台に咲いた華…一体誰のことなのでしょうか。是非とも読んでいって下さいませ!


──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。


 日は流れ、龍空祭当日。学校全体がお祭り会場のようになっており、各クラスが個性的な出し物を準備して、開催宣言をまだかまだかと待っていた。




 1年1組の出し物はパジャマ喫茶。教室内の装飾はメルヘンチックな女の子の部屋をコンセプトとしており、メインカラーを淡いピンク、オブジェにもこもこしたぬいぐるみ達、そしてまさかのお姫様ベッドまで完備している徹底ぶりである。


 「よーし!皆の者!準備は出来てるかー!」

羊モチーフのもこもこパジャマを身に着けるエアルがクラスメイトを鼓舞すると、おおー!と気合いが入った声が返ってきた。

「絶対賞金ゲット!目指すはナンバーワンだよ!」

エアルがクラスメイトを更に鼓舞し、1組の団結力をより固める。

「ねぇスノウ、確か2人って小さい頃からの知り合いなんだよね?エアルって昔からあんなにカリスマ性あったの?」

怪獣パジャマを身に着けるレビィが、隣にいる芋ジャージを着るスノウに尋ねる。

「いや、俺も初めて知ったよ。意外な才能ってやつだな。」

「そうなんだ。」

「………やっぱ血筋なのか。」

スノウが最後に小さく呟いた。

「えっ?なんか言った?」

レビィが訊き返すと、スノウは何でもねぇと誤魔化した。

「おーいそこの怪獣。向こうでサナが呼んでいたぞ。」

レビィとスノウの元に、甚平(じんべい)を着たシャインが呼びにきた。

「誰が怪獣よ。あっ、でも今はあながち間違ってないか。──まぁいいや、じゃあ私行くね。」

レビィはそう言い残し、別の所にいる猫耳パーカー型パジャマを身に着けるサナの元に向かった。

「なぁスノウ。」

2人だけになると、シャインがスノウに話しかける。

「何だよ?」

「『血筋』ってどういうことだ?」

シャインは先程までのレビィとスノウの会話が聴こえていたらしく、スノウが小さく呟いた言葉の意味を問う。

「はっ、マジで耳良いなお前は。最終的に蟻の足音でも聴こえんじゃねぇか。」

スノウがケラケラと笑って露骨にはぐらかす。

「……オッケー、これ以上は訊かねぇよ。」

察したシャインは追求を止めた。


──ピ〜ンポ〜ンパ〜ンポ〜ン


 ここで放送音が鳴り、校内スピーカーから放送部の女子生徒の元気な声が流れる。

「皆様お待たせしました!これより!龍宮祭1日目!開催です!」

開始宣言の放送が流れ、生徒達の歓声が校内中から響いた。




 開始宣言と共に来客者も沢山入場し、瞬く間に校内中が人で溢れ返った。どこも盛り上がりを見せる中、1年1組のパジャマ喫茶も例外なく繁盛していた。

「2番テーブルにコーヒー2つでーす!」

「オレンジジュース1つとリンゴジュース1つ、ショートケーキ2つですね?少々お待ち下さい♪」

「1番テーブルのサンドウィッチセット出来たぞー。誰か運んでくれー。」

様々な声が飛び交うパジャマ喫茶。シャイン達も例外なく入賞目指して勤しんでいた。

「はーい!3番テーブルにオムライス1つねー!」

教室の1番奥に作られた簡易キッチン。そこはカーテンで仕切られており、数名の料理担当が中で慌ただしく調理していた。そこにエアルがカーテン内に顔だけ入れてオーダーを飛ばす。

「たく…何で俺が料理をしなきゃなんねぇんだ。」

料理担当となったシャインが、ブツブツと文句を垂れながらも手際良くオムライスを作っていく。

「しかし驚きました。まさかシャインに料理の才能があるなんて。いやはや、人は見かけによりませんね。」

水色と白色のストライプパジャマを着るヒューズがハッハッハと口元だけで笑う。

「っるせぇ。一人暮らしが長いから自然に身に付いただけだ。」

ヒューズと話しながらも、シャインはオムライスを完成させる。

「ほら、3番テーブル用のオムライス。」

シャインはエアルの配膳用トレーにコトッとオムライスを乗せる。エアルはありがとー!と礼を言いながら3番テーブルに向かった。

「オーダーよ。オムライスとカルボナーラね。」

次に厨房に顔を出したのは、パーカー型の猫耳パジャマのサナであった。

「はぁ…へいへい。」

シャインはしぶしぶ料理を続けるのであった。




 龍空祭開催から数時間が経過。校内は更に盛り上がりを見せ、下手なテーマパークより混雑している。シャイン、スノウ、エアル、レビィの4人は交代の時間となり、一緒に校内を見て回っていた。因みに服は流石に制服に着替えている。

「いや〜!やっぱお祭りは楽しいね〜!」

フランクフルトを噛りながら、エアルは心から楽しんでいる笑みを浮かべる。

「エアル、さっきから食べてばっかり。太るよ。」

レビィが屋台の商品を片っ端から食べるエアルに忠告する。

「そんなの食べた分だけ動けば良いだけの話!折角これだけ美味しい店がいっぱい出てるんだよ!食べなきゃ損だよ!」

エアルがフランクフルトが刺さっていた串をレビィに向ける。

「はいはい。」

レビィがクスッと笑いながら返事をすると、エアルが次の標的を見つける。

「あそこに唐揚げ屋発見!買ってくるね!大丈夫!レビィ達も分も買ってくるから!」

エアルはそう言い残して、唐揚げの屋台へと走っていった。

「いや…大丈夫も何も、まず頼んでねぇんだけど…」

苦笑いするシャインの声が、エアルの耳の届くことはなかった。

「エアルって昔からお祭り好きなの?」

レビィがスノウに訊く。

「祭りが好きというより、こういう人が賑わっている場所が好きって感じかな。よーするに、大勢ではしゃぐのが好きなんだ。」

屋台で唐揚げを待っているエアルを見詰めながらスノウが答える。

「あはは、そうなんだ。エアルの小さい頃って、今のエアルを小さくしただけって感じだね。」

レビィがクスクス笑いながら告げる。

「あー…そうかもな。」

スノウのどこか歯切れの悪い返事をした時、両手に唐揚げが入った紙パックを持ったエアルが戻ってきた。

「お待たせー!はい、皆の分!」

エアルが1人1パックで唐揚げを渡していく。

「いや、だから食べるなんて一言も言ってねぇって……」

シャインがツッコミを入れながら取り敢えず1つ唐揚げを食べる。すると思いの外美味しかったのか、そこから文句も言わず食べ始めるのであった。

「あっ!いたー!エアルー!」

4人が唐揚げを堪能していると、金髪サイドテールの女子生徒がエアル目的で駆け寄ってきた。

「ん?どったの、ミュジー?」

エアルが唐揚げをモグモグしながら尋ねる。

「もう少ししたら演劇部の舞台があるんだけど、1人急に体調不良で早退しちゃったの!だから一生のお願い!その子の代わりに出てくれないかな!?」

ミュジーと呼ばれたエアルの知り合いの女子生徒が両手を合わせ、誠心誠意で頭を下げる。

「ええっ!?ぶ、舞台って…!そんなのいきなり言われてもなぁ〜…」

流石のエアルも即OKとは言えず、う〜んと困り顔になる。

「そこを何とか!他の子にも頼んだんだけど断られて、エアルが最後の砦なの!」

ミュジーが更に懇願する。

「う〜ん………私、台詞覚えるのか苦手だけど、それでもいいの?」

エアルは悩んだ結果、ミュジーの必死さに負け、出ることを承諾する。

「ホント!?マジでありがとー!役はヒロインの親友役ね!大丈夫!台詞も動きもそんなに難しくない役だから!じゃあ一緒に来て!」

ミュジーはエアルの手首を掴むと、そのまま舞台の会場となる体育館に走っていった。

「あ〜らら、連れていかれたよ。」

シャインが最後の唐揚げを食べる。

「折角だし観に行こうよ。」

レビィの提案により、残された3人は体育館に向かうのであった。




 シャイン、スノウ、レビィの3人が到着した体育館の中は、演劇部の舞台を観ようと大勢の人が集まっていた。前列は既に埋まっているため、中列くらいで見守ることにした。

 そして待つこと数十分。照明が暗くなり、演劇部の女子部員が舞台袖から現れ、スポットライトに当てられた。

「本日は我々演劇部の舞台にお集まり頂き、誠にありがとうございます。本日の物語の題名は『自由へ』です。演劇部オリジナルのストーリーとなっていますので、どうぞ楽しんでいって下さい。」

ペコリと一礼をして、女子部員は舞台裏にはける。そして幕が上がると、城の中をイメージしたセットが現れ、中央には綺麗なドレスを着たミュジーが立っていた。そして見事な演技ですぐに体育館中の人を物語へと引き込んだ。

 物語の内容を簡単に説明すると、貧民の男と王族の女が恋に落ち、身分の壁を乗り越えて自由を手に入れる、というものである。



 舞台は順調に進み、現在はミュジーが演じるヒロインが主人公と密かさに会っていたことが身内にバレてしまったというシーン中。

「まさかお前が、あのゴミのような男と密会していたとはな。」

ヒロインの父親役の男子生徒がなかなか圧のある演技を披露する。

「おい、直ちにあの男を消してこい。」

父親が近くの兵士に命令を下す。

「お待ち下さいお父様!あの方は何も悪くないのです!全ては私!私が始めた事なのです!」

迫真の演技をするヒロイン役のミュジー。

「どちらからなんぞ問題ではない。貧民風情が身の丈に合わぬ行動を起こしたことが問題なのだ。さぁ、行け。」

父親が再度兵士に命令する。その時、

「お、お待ちくだちゃい!」

誰が緊張を含んだ上ずった声で盛大に台詞を噛んだ。緊迫したシーンに起きたハプニングだっため、そのギャップに観客から少し笑い声が漏れる。

その台詞を噛んだ当人の声は、シャイン達3人にはとても馴染みのある声であった。

「見事に噛んだなエアルの奴。」

スノウが小さくケラケラと笑う。

「あっ、出てきたよ。」

レビィに言われ、舞台袖に注目する。

 髪色は同じのロングヘアーのウィッグを付け、オレンジを基調としたきらびやかなドレスを身に纏う。そしてカツン、カツンと、ヒールの音を響かせて現れたエアルの姿を見た瞬間、体育館にいる全員が一斉に息を呑んだ。


──その圧倒的な気品と美しさに。


普段の天真爛漫のエアルとは打って変わり、今の姿は気品さと美しさに溢れており、瞬く間に人々の視線を集めて魅了した。

「綺麗…」

レビィが無意識に口ずさむ。

「……エアル、やっぱりお前は…」

スノウは誰にも聴こえないほどの声量で呟く。しかしその呟きは、隣にいるシャインの耳だけにはしっかりと届いていた。

エアルの気品さに体育館中が魅了されている中、エアルは棒立ちで何もアクションを起こさない。そして数秒後、エアルは舞台袖の方に顔を向けて口を開く。

「ごめ〜ん!台詞忘れちゃった〜!」

エアルは申し訳なさそうに舞台袖に戻っていく。エアルのお茶目な行動によって幻だったかのように魅了状態は終え、体育館に笑い声が溢れた。



 ハプニングはあったものの、舞台は無事に終了し、今は女子更衣室である。

「いや〜!緊張した〜!」

衣装はそのままだが、完全にいつもの調子に戻っているエアルがうーんと伸びをする。

「凄く綺麗だったよエアル。」

エアルを迎えに来たレビィが褒める。

「ホント?えへへ、ありがと。」

レビィが照れ臭そうに笑いながらも礼を言う。そこに、ヒロイン役を演じたミュジーが入ってきた。

「あっ!ミュジーごめんね〜!台詞忘れちゃって〜!」

エアルが謝っていると、ミュジーは無言で近寄ってきて、ガッとエアルの両肩を掴んだ。そして真剣な眼差しで、

「入って!演劇部に!」

と、勧誘をした。

「ええ〜!?」

エアルは思わず後退りしようとするが、ミュジーがガッチリと掴んでいるため動けない。

「入ってよエアル〜!マジで入って〜!さっきの舞台、エアルの話で持ち切りなんだよ〜!」

ミュジーはそのまま抱き付いて泣きそうな顔で懇願する。

「え〜!そんな顔しないでよ〜!」

困り果てるエアルに懇願しまくるミュジー。その構図を見て周囲のレビィや女子達はアハハと楽しそうに笑うのであった。




 グラウンドに設置された簡易休憩所のベンチに座り、レビィとエアルを待つシャインとスノウ。互いに缶ジュースを持ち、ボーッと休憩所の前を歩いていく人々を眺めていた。

「なぁ、スノウ。」

ふいにシャインが話しかける。

「何だよ?」

「やっぱお前、エアルについて何か隠してるだろ?」

シャインからの唐突な問いに、スノウは黙ったまま缶ジュースを一口飲んだ後、

「また盗み聞きかよ。」

と、小さく笑いながら告げた。

「悪いな、耳が良くて。てか、お前も口に出過ぎだ。」

シャインは小指で耳の中をかきながら忠告する。

「普通の人間にはぜってぇ聴こえねぇ声量だったとは思うけどな。ま、気をつけるよ。」

スノウはジュースを飲み干し、クシャッと缶を潰す。

「で、話してくれんのか?」

シャインが尋ねるが、この問いに対してはスノウは口を閉じた。

「……そうかよ。なら、時がくれば教えろよ。友達(ダチ)なんだから。」

シャインもジュースを飲み干し、クシャリと缶を潰してノールックでゴミ箱に投げ入れた。

「……恩に着る。」

スノウは礼を言うと、同じようにノールックで缶を投げてゴミ箱に入れた。





──龍空祭1日目は、エアルの圧倒的気品と美しさをハイライトに、幕を閉じた。

本日はお読み下さり誠にありがとうございます!

少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!


天真爛漫キャラのエアルの意外な一面が見れた回でした。何やらスノウは知っているようですが……


それではまた明日、お会いしましょう!お楽しみに!

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