18話 龍空祭
こんにちは!作者です!今回から数話かけて『文化祭編』が始まります!学園ものの定番ですね。
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
アレンが転校して少し時が流れ、龍空高校ではとある行事が始まろうとしていた。
「それでは今日からのホームルームは、3日間開催される『龍空祭』についてになります。」
担任のナナリーが告げると、教室内が盛り上がる。
「さて、噂とかで知っている子もいると思うけど、ウチの龍空祭はかなり力が入っています。その中でも各クラスの出し物は毎年凝ったものが多いです。その理由は──」
「はい!投票で上位になったクラスには賞金が出るんですよね!?」
1人の男子生徒が手を挙げて発言すると、生徒達が更に盛り上がる。
「はいはい静かに。──今、言ってくれたように龍空祭には『投票システム』というのがあります。1日1人1票で、最も良かった、面白かった、印象に残ったクラスの出し物に投票してもらい、3日間の集計で上位5クラスに入賞したところには金一封が贈呈されます。なので毎年、生徒達は出し物に対する力が凄いのです。」
「はい!その金一封でどれくらい貰えるんですか?」
1人の生徒が質問する。
「今年は羽振りがいいぞって校長先生が仰っていたから、期待しても良いんじゃないかしら。」
生徒達のテンションが更に上がる。
「じゃあここからの進行は私じゃなくて皆さんだけでしてもらいます。企画、役割分担、工作、会計…決める事はいっぱいあるから頑張って下さい。」
そう言ってナナリーは教室隅にある先生用の椅子に座る。
「よし!じゃあ私が進行役する!レビィはサポートね!」
「えっ!?」
先陣を切って進行役に立候補したエアルは、レビィを巻き込んで共に教卓に立つ。他の生徒達も特に異論はないため、2人に進行役を任せることにした。完全に巻き込まれたレビィは戸惑っていたが、断れる雰囲気でもないので、サポート役を承諾した。
「よーし!じゃあ皆!まず出し物の内容を決めよう!何したい?」
エアルがクラスメイトに問いかけると、色んな意見が飛び交い始めた。
「やっぱベタなのは模擬店だよな。」
「私、喫茶店が良い〜!」
「絶対被るだろ。」
「喫茶店でも差別化させたいけるんじゃね。」
「去年の1位のクラスはダンスやったらしいわよ。」
「ダンスが良いならバンドしようぜ!」
「準備期間的に無理じゃね?」
意外にも統率力があったエアルが、口々に飛び交う案を的確にまとめていく。レビィはエアルによってまとめられた案を黒板に書いていく。
「よーし!皆からの案をまとめて生まれた私達の出し物は…『脳殺!メロメロハスハス喫茶』だー!」
バァン!と黒板を叩き、エアルが意気揚々と告げると、レビィ、サナ、ヒューズ、シャイン、アレンの5人以外の生徒達がおおー!と歓声を上げた。
「却下!!」
盛り上がる空気をぶった切るように、ナナリーが即座に却下した。
「え〜〜〜!」
教室中からブーイングが飛ぶ。
「あのですね!龍空祭はあくまで学校で行われる行事の1つです!校則と風紀は守って下さい!」
ナナリーが正論を告げる。
「そんな…!私達のメロハス喫茶が…!」
エアルがガックリと肩を落とす。
((((………そりゃそうだ。))))
この結末が目に見えていたシャイン達5人は、心の中で納得するのであった。
「じゃ、じゃあ新しい案を………」
レビィが肩を落とすエアルの代わりに進行しようとしたが、お通夜の如く意気消沈状態のクラスメイト達からは何もレスポンスはなかった。
「どんだけしたかったよ…」
サナが大きくため息をつくのであった。
1回目のホームルームは結局決まらず、現在は2回目のホームルームである。
「他のクラス、他の学年が何をするか聞ける限り聞いて来た。その結果、喫茶店が多いというデータになった。で、喫茶店の内容をレビィに黒板に書き出してもらったんだけど、やっぱりメイド喫茶が多いわ。次いで女装、男装喫茶。その次はコスプレ喫茶って感じ。これを踏まえた上で、私達は何をする?」
エアルがクラスメイトに問いかけるが、1回目の時と違ってなかなか意見が出てこない。
「くっ…!やっぱり我々にはメロメロハスハス喫茶しかないかもしれない…!てなわけでナナリー先生!メロハス喫茶の許可を──!」
「却下!」
エアルが迫真な顔でナナリーに頼み込もうとしたが、食い気味にナナリーが却下した。
「ですよね〜……はぁ…ねぇ皆、ホントにどーする?このままだと準備とか間に合わなくなるよー。」
エアルが再度問いかけるが、なかなか案が出てこない。
その時、この行き詰まった空気を変えたのはレビィであった。
「『パジャマ喫茶』、なんてどう?」
レビィが意見を述べると、一斉にクラス中の視線を集めた。
「パジャマって、あの寝る時に着るあのパジャマ?」
エアルが確認するように尋ねる。
「うん。そのパジャマ。パジャマだったらコスプレよりも着るのに抵抗が少ないと思うし、可愛いものからコスプレっぽいものまで種類もある。少しエッチな感じなものでも、校則や風紀に反するレベルじゃないと思うし、実際接客とか料理とかするとなった時も動きやすいし。───どう、かな?」
レビィがクラスメイトに意見を訊くと、少しの沈黙があった後、それだー!と満場一致の声が上がった。
「凄いレビィ!ナイス発想力!」
エアルがレビィの両手を握ってブンブンと上下に振る。レビィは想像以上に称賛された為、少し照れ臭くなった。
「よっしゃー皆!方針は決まった!後は全力で突き進むぞー!」
エアルの号令に、他のクラスメイトもおおー!と気合いを入れた。
かくして、1年1組の出し物はパジャマ喫茶に決まり、放課後やホームルームの時間を使って着実に準備をしていくのであった。
そして数日が経過し、開催まで残り4日となった。本日はパジャマ喫茶のユニフォームとなるパジャマの試着会のようだ。現在、教室内には女子しかない。
「可愛い〜!」
エアルが目をキラキラさせて、デフォルメされた怪獣パジャマを着せられたレビィを見詰めてときめく。
「ねぇ…こういうのってエアルとかの方が似合うんじゃないの。」
怪獣パジャマには簡易的な尻尾が付いていたりと、パーカーを被ると簡単な着ぐるみ状態となる。レビィは恥ずかしいのか、尻尾を持ってイジイジしている。
「レビィは分かってないな〜!こういうお遊びパジャマは、レビィみたいな普段真面目な子が着る方が可愛いの!ギャップ萌えってやつ!」
エアルがウインクしながらグッ!と親指を立てる。
「むぅ~……てかこの色々あるパジャマは、どこで買ってきたの?」
観念したレビィは、話題をパジャマの仕入れ先に変えた。因みにパジャマの種類はかなり豊富で、オーソドックス系からモコモコ系、おもしろ系にセクシー系と、ざっと30種類くらいはある。
「あっ、ここにあるパジャマは全部私の私物だよ。」
エアルがさらっととんでもないことを告げ、周囲の生徒達が仰天する。
「数も種類も女子全員分あると思うからご心配なく。てなわけで会計サナ、女子の衣装費はゼロでよろしく。」
エアルがビシッとサナを指さして告げる。
「はいはい。」
タブレットを操作するサナが軽く返事をする。因みにサナは現在、エアルの手によって猫耳付きパーカー型パジャマを無理矢理着させられ、少し機嫌が悪い。
「さ〜さ〜!次は誰のコーディネートをしようかな〜?」
エアルが両手をワキワキさせて、次の着せ替え人形を探す。他の女子達はキャー!と楽しそうな悲鳴を上げながらエアルから逃げる。
「なんか楽しそうだな。」
教室の前の廊下に追い出された1年1組の男子陣。スノウは教室の中からのキャピキャピ声を聴いて呟く。
「これは長くなりそうですね。」
廊下に立ちながら装飾を作成しているヒューズがハハハと笑う。
「そう言えばアレンはどうした?」
缶ジュースを飲むシャインが、アレンの姿が見当たらないのに気付く。
「アレンならさっき先生に呼ばれてどっか行ったよ。」
モブの男子生徒が答える。
そんな話をしていると、アレンがシャイン達の所に戻ってきた。
「ごめん。少し先生に呼ばれてそっちを手伝ってた。」
アレンが謝る。
「気にすんな。まだまだ入れそうにねぇから。」
シャインが教室に目を向ける。
「あはは。確かに長くなりそうだ。」
女子達の楽しそうな声を聞き、アレンがアハハと笑った。その時、教室の窓がパン!と開き、羊モチーフのもこもこパジャマを着たエアルが姿を現した。
「アレン発見!貴方は…こっち!」
何か企んでいる笑みを浮かべるエアルが、窓から身を乗り出してアレンの腕を掴む。教室の中へと引きずり込むと、また窓をパン!と閉めた。
突然の出来事にシャイン達が呆然としていると、教室内からアレンの悲鳴が響いてきた。悲鳴は数分間続いた後、パッタリと止まり、そして次は『覗いたら殺す。』と貼り紙された扉がパン!と開き、もこもこパジャマエアルが現れた。
「おいエアル。アレンに何やったんだ?」
スノウが尋ねると、エアルがフッフッフッと笑う。
「ジャ~ン!♪」
エアルが横にズレると、後ろから可愛らしい赤色ワンピース型のパジャマを着させられたアレンが立っていた。三つ編み一結びにしていた緋色の髪はほどかれてストレートロングに、よく見ると化粧もされている。
完全に着せ替え人形化したアレン自身は、何かを悟ったような目で虚空を見詰めていた。
「どう?可愛いでしょ?」
エアルがニッと口角を上げる。すると数秒後、男子達から爆笑が溢れ出した。アレンの目は更に虚空を見詰めるのであった。
試着会は無事に終了し、黒歴史を刻まれたアレンは元の服に戻り、誰もいない屋上で一休みしていた。すると、ポケットに入れていたスマートフォンに着信が入る。画面に出ている着信相手の名前を確認してからアレンは出る。
「もしもし、『姉さん』?」
アレンが話しかけると、向こうから姉さんと呼ばれた女性の声が聴こえてきた。
「あ〜やっと出たぁ。何やってんの?」
姉さんからの質問に、アレンは先程までのパジャマ女装事件を思い出す。
「えっと、忘れたい事件…かな…」
「何それ、ちょ〜面白そうなんだけど。──まぁいいや。アレンにも伝えておくことが起きたの。」
「──!まさか……!」
「うん。『革命軍』が動き始めた。もっと警戒を頼むね。」
「分かった。」
「話はそれだけ。後で忘れたい事件のこと教えてね♪」
ここで姉さんとの着信が切れた。
(……せめて龍空祭中は何も起きないことを願うしかないな。)
アレンは雲行きの怪しい未来を心配しつつ、屋上を後にした。
本日はお読み下さり誠にありがとうございます!
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アニメや漫画、ラノベなどのフィクションの世界の文化祭ってホント大掛かりで楽しそうですよね。羨ましい限りです。
それではまた明日、お会いしましょう!お楽しみに!




