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始まりは魔法科高校から  作者: 眼鏡 純
2章:KING OF MAGIC
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16話 もう1人の神

こんにちは!作者です!

いよいよ本日の話をもってKOM編が終了です!8話というのもあっという間ですね。



──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。

 ダクネスに勝利したシャインは能力解放(アビリティリリース)が勝手に解除された。すると、ブシュッ!と刺された脇腹の傷口が開き、ボタボタと再び血が流れ始める。

「いって〜〜〜〜………」

シャインは傷を押さえながら片膝を立てて座り込むと、効果は薄いが治癒術をかける。そして燃える炎の壁の音を聴きながら、これからの動きをどうするか考える。

(………?)

その時、ふと疑問が生まれた。

(何で炎の壁が消えていない?)

そう。このフィールドを囲む炎の壁はダクネスが発動させたもの。発動者であるダクネスは今、気を失って倒れている。

(自立式の魔法なのか?それとも……!)

シャインが思考を巡らせている時だった。気を失っている筈のダクネスが、突然フラリと立ち上がった。だが、どこか様子がおかしい。直立不動で天を仰いだままピクリとも動かない。

シャインは警戒しながらゆっくり立ち上がる。

「……ダクネス?」

そして声をかけた瞬間、ダクネスの金色の瞳に突如光が戻り、シャインの方に顔を向けてきた。シャインは反射的に風砕牙を構えた。

「ダクネス!?………じゃねぇな。何者だお前?」

シャインはダクネスの雰囲気が一変したことを直感で感じ取り、尋ねる。

「汝か?我が器を痛めつけたのは。」

ダクネスの声ではない声で問われるシャイン。

「我が器?」

シャインが聞き返す。

「この人間のことだ。」

トントンと、ダクネスではない()()が、ダクネスのことを指差す。

「……だったらどうするんだよ?」

傷つけたのは事実であるため、シャインは否定はせずに質問で返した。瞬間、()()が一瞬にしてシャインの目の前まで接近した。シャインが気付いた時には、()()の拳がシャインの腹部を直撃していた。

「がはっ……!!」

シャインは血を吐きながら真っ直ぐ吹き飛び、炎の壁ギリギリで倒れる。

「汝は神の器を傷つけた。それは万死に値する。」

()()が炎の剣を形成し、倒れるシャインの心臓に刃先を向ける。

(クソ…もう体が……!)

体の限界が超えているシャインは、もう回避する力も残っていない。シャインの頭に死が過ぎる。



──その時、(とき)が重なった。



 「[暗円月(あんえんげつ)]!!」

シャイン達の頭上の炎の壁に、突如ぽっかりと真円の穴が空いた。そこから2つの影が飛び出してきた。

[師走(しわす)]!」

影の1つ──ナイトは両足に漆黒のオーラを纏うと、空中を蹴って落下速度を速め、()()に斬りかかった。()()は瞬時にバックステップを踏んで一気に距離を空け、ナイトからの一撃を回避する。

「逃さぬ!!」

ナイトは着地からすぐに地面を蹴って()()を追撃し、連続で斬りかかる。

「シャン!無事!?」

ナイトが引きつけている間、もう1つの影──トワイラが倒れているシャインに駆け寄って抱きかかえる。

「トワ…?」

シャインが意識が朦朧とする中、自分を抱きかかえた人物の名前を呟く。

「きゃーー!シャンがトワって呼んでくれたー!ちょー嬉しいー!」

トワイラがあだ名で呼んでくれたことに感激し、シャインをギュッと抱きしめる。

「……それどころじゃ…なくね…?」

シャインが弱々しいツッコミを入れる。

「ああ!そうだった!──シャン!これを飲んで!」

我に返ったトワイラは、掌の上に透き通った水を生成する。そしてシャインの口元に持っていき、ゆっくりと飲ませる。するとシャインの傷がみるみると回復していく。

「すげぇ回復力だな。」

シャインがどんどん傷が癒えていくのに少し驚く。

[命捧水(めいほうすい)]っていう魔法で、私の中で一番効果のある治癒術。まぁ生成する度にちょっと寿命が減るけど。」

さらっととんでもないことを告げるトワイラ。

「お前…そんな魔法を…!」

「大丈夫。減るっていっても大した量じゃないから。それに、私の寿命でシャンが助かるなら本望だよ。」

ニコッと微笑み、心配いらないと告げるトワイラ。シャインは内心心配しながらもそれ以上言うことはなく、動けるようになった体をアクロバティックに起こす。

「サンキュー、トワ。」

シャインは礼を言いながら視線をナイトと()()に向けた。

「シャン、この場は私に任せて。」

動き出そうとするシャインを止め、トワイラが前に出た。

「任せてって、あのダクネスはダクネスじゃねぇぞ。」

「うん、分かってる。()()の正体もね。」

そう言ってトワイラが2人の戦闘に近寄っていく。その時、ナイトがトワイラの近くまで吹き飛ばされ、隣で着地した。

「ナイト、交代。ここから私がやる。」

「何だと?3人で戦えばよかろう。」

「大丈夫。アレを止められるのは、アレと()()()()の私が1番手っ取り早いから。ナイトはシャンを守ってあげて。」

そう言ってトワイラは、単独で()()に近付いていく。


 ナイトはトワイラの言葉を信じ、シャインの元まで後退した。

「我が主、トワイラに任せても大丈夫なのか?」

「トワの魔法は水属性だ。相性としては良いが…。今はあいつを信じるが、いつでも動けるようにしておくぞ。」

シャインとナイトは、いつでも助けに行ける構えをする。


 「やっほー。」

トワイラが()()に手を振りながら挨拶する。

「……汝、まさか…」

「『ファカイア』でしょ?あなた。」

()()の言葉を聞き終える前に、トワイラが()()の正体をあっさり暴いた。

「如何にも。我が名は『ファカイア』。この気配、汝の中に『ウォースイター』がいるな。」

「ありゃりゃ、流石に気付くか。でもゴメン、()()()()の積もる話に付き合う気はないから。さっさとダクネスの中に戻ってもらうわよ。」

トワイラが戦闘態勢になり、魔力を高める。

「まさか数百年ぶりに会った同士が汝とはな……ウォースイターァァァァァ!!!」

()()の正体─ファカイアは目の色を変え、殺意を剥き出しにしてトワイラに炎の剣を振るった。トワイラはその一撃を見切って回避する。

「だ〜か〜ら〜!あなた達の因縁に付き合えないって言ったでしょ!もうダクネスの中に戻りなさい!」

トワイラは片足に水を纏う。

[水神華麗脚(すいじんかれいきゃく)]!!」

そして華麗なる回し蹴りでファカイアの顔を捉え、派手に水飛沫が弾け飛んだ。ファカイアは吹き飛ぶことはなかったが、その場でよろけ始め、最後には仰向けに倒れた。同時にフィールドを囲っていた炎の壁が消滅した。

「これは驚いた。まさか一撃で沈めるとは。」

ナイトが目を丸くして驚く。

「トワイラ、まさかその魔法…」

シャインが困惑した顔で訊くと、トワイラはくるっと振り向いて答える。

「うん、そう。私の今の魔法は、『絶滅魔法神力(じんりき)種』の1つ──『水神(すいじん)魔法』だよ。」

「お前、いつから神力種を?まさかずっと隠して……」

「ううん。シャン達と過ごしていた時は本当にただの水属性の魔法だったよ。私が水神魔法を使えるようになったのは1年前の中3の頃。引っ越しでシャン達と離れ離れになった後、ママから継承されたの。」

「継承とな?神力種の魔法は継承が出来るのか。」

ナイトが興味を持つ。

「うん。神力種の魔法は神様との交渉次第で誰かに魔法を継承することが出来るの。で、私達ターコイズ一族は代々水神魔法を継承している一族で、私の番が回ってきたってこと。」

「そんな一族だったの、お前から一度も聞いたことねぇぞ。」

シャインが告げると、トワイラが両手を合わせて申し訳ない顔をする。

「ゴメン!こればかりは一族の掟やら何やらでシャン達にも話せなかったの!」

「私の番が回ってきたと言ったな。なぜ順番が回ってきたのだ?」

ナイトが質問すると、トワイラは顔を曇らせてから応える。

「……ママが、重い病気にかかっちゃってね。引っ越しした理由も、ママの病気を治すためだった。いっぱいいっぱい、出来ることは全てした。だけど、ママの病気は治らなかった。だからママは、死ぬ前に私に水神魔法を継承したの。」

「そうだったのか。すまない、辛い話をさせてしまったな。」

ナイトが謝ると、トワイラが首を横に振って笑って見せた。

「ナイトは優しいね。私達良い友達になれそう。シャンは渡さないけど。」

「はっはっは!どんな状況でもブレないな君は!ああ、良い友達になれそうだ。」

ナイトとトワイラの間に友情が生まれた時、炎の壁の消滅によってスノウ達4人と担任であるナナリーがフィールドに入ってくると、そのままシャイン達に駆け寄ってきた。

「あれ?シャイン、なんかピンピンしてない?」

エアルが普通に立っているシャインを見て首を傾げる。

「トワイラの治癒術のお陰でこの通りさ。」

シャインがその場でピョンピョン跳ね、動けるアピールをすると、突然ガクッと片膝をついた。

「おいおい、全然大丈夫じゃないじゃねぇか。」

スノウがやれやれと呆れる。

「あっ、ごめんシャン。言い忘れていたけど、あくまで傷を回復させただけで、体力は回復していないの。」

「どおりでこんなに体が重いわけだ…」

グッと体を起こすシャインが納得する。

「一度、しっかり病院で診てもらって下さい。」

ナナリーに言われ、シャインはうっすと素直に返事をした。その時、担架で運ばれていくダクネスの姿が視界に入った。

「なぁナナリー先生。ダクネスはどうなるんだ?」

「そうね…大会を混乱させ、人々に迷惑をかけてしまったのは事実だから、厳重注意とはあるかもしれないわ。」

「何かしらの罪を背負ったりは?」

「私達は炎の壁のせいでフィールド内で何が起こっていたのか確認出来ていない。だからシャイン君の証言次第で、ダクネス君が罪に問われる可能性が一番高いわね。例えばシャイン君が殺されかけていたという証言をしたら、彼は殺人未遂の罪に問われることになるわ。」

「そっか……じゃあ先生、ちょっと口裏合わせしてもらっていいっすか?」

「口裏合わせ?」

「ああ。炎の壁の中で起きていたのはあくまで試合上の戦い。その勝者はシャイン・エメラルド。だから今大会の優勝校は龍空高校だって。」

「あくまで試合で勝っただけにしたいってことね?」

「そういうことっす。」

「本当にそれで良いの?」

「俺は別にダクネスを罪人にしたくて倒したんじゃない。俺はただダクネスに、少しでも昔のあいつに戻ってほしいだけなんで。その為にも、絶対にあいつに俺を殺させるわけにはいかなかった。この一線を越えさせていたら、ダクネスは戻ってこれなかった。」

「友達想いなのね。」

「そうでもないっすよ。トワイラとダクネスは、俺が心を開いた最初の2人ってだけです。」

シャインが照れ隠しか、ほんの少し笑みを浮かべる。

「てなわけでナナリー先生、口裏合わせ、よろしくっす。」

「……最善はするわ。」

ナナリーはシャインの想いを考慮し、口裏合わせを承諾した。

「はいじゃあ、シャイン君は病院へ。他の皆は学校に戻りましょう。」

ナナリーの言葉を最後に、シャイン達は全員フィールドを後にした。





 「ターゲット、確認致しました。」

観客席に隠れていた黒フードを被った男が、シャイン達が立ち去っていく姿を見ながら誰かにテレパシーで連絡を入れる。

「良くやった。時が来るまでそのまま監視を頼む。」

テレパシー先の人物が黒フードを被った男に命令を下す。

「畏まりました。」

黒フードを被った男はテレパシーを終えると、誰にも気付かれることなく観客席から姿を消した。

本日はお読み下さって本当にありがとうございます!

少しでも先が気になった方、面白かった方はブックマーク、☆の評価などをお願いします!


KOM編、これにて終了です!少しでも楽しんでいただけたでしょうか?そうであれば幸いです!

そして何気に続いていた毎日投稿も、こちらの勝手な都合により一旦中止となります。ストックはまだあるのですが、最新話の執筆状況や、現実との兼ね合いもありますので、投稿期間が空いてしまうことを先にご了承下さい。

なるべく早く投稿するよう努力はしますので、気長に待って頂けると嬉しいです。

それでは!次回をお楽しみ!

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