11話 幼馴染
こんにちは!作者です!
今回はシャインとダクネスの関係性が分かります!まぁ既にタイトルでネタバレしていますが……
何はともあれ!楽しんでいって下さると幸いです!
──それでは皆様に、少しでもワクワクできる時間を。
「火神魔法…つまり神様の火ってこと?」
エアルの問いに、ヒューズが答える。
「正確に言うと、神の力に匹敵するほどの力を持った火属性魔法です。」
「……!ヒューズも知っていたのか。」
シャインの言葉にヒューズが応える。
「まぁ知識として知ってはいましたが、本物を見るは初めてです。それに彼が火神魔法の使い手とは流石に知らなかったですよ。」
「てかさ、そんなヤバい力を使ったら、相手の人死ぬんじゃないの…?」
エアルが猪里高校代表選手の安否を心配する。
「流石のあいつも、その辺りの線引きはあると思っているが。」
シャインはフィールドで高らかに笑うダクネスを見ながら呟いた。
「クハハ!これで分かっただろ!貴様程度の水属性魔法では消せない理由が!」
ダクネスの圧倒的な力を前にして、猪里高校の選手の足が恐怖から無意識に震えている。
「そして光栄に思え。貴様は今から神の火で殺されるのだからな。」
ダクネスが嘲笑を浮かべながら代表選手を睨み付ける。恐怖が限界に達した猪里高校の代表選手は、叫びながら逃げ始めた。
「逃がすかよ…[火神鎖縛]!」
ダクネスが魔法を唱えると、相手選手の足元に魔法陣が展開され、火の鎖が何本も出現して捕縛した。
「貴様に本気を出す意味はねぇな。これで充分だ。[紅蓮烈柱]!」
ダクネスがパチンと指を鳴らすと、相手選手の足元から火の柱が発生し、相手選手の全身を飲み込んだ。そして火の柱が消えると、全身を燃やされた猪里高校の代表選手が倒れており、気を失っている。
「なんだ、まだ息があるじゃねぇか。」
ダクネスは火で剣を形成すると、気を失って倒れている相手選手の上で振り上げた。会場にいる誰もが、ダクネスが殺そうとしている事に気付き、観客席からは制止の叫びや嘆きの悲鳴が上がる。運営スタッフはダクネスを止めるべく動き出すが、ダクネスの行動が一手早かった。
ダクネスが火の剣を相手選手に振り下ろした瞬間、ダクネスの動きを読んでいたシャインが割って入り、風砕牙によって止められた。
「そこまでだダクネス。KOMは試合であって死闘じゃない。殺す意味はないだろう。」
「知ったことか。雑魚なんて生きている価値なんてねぇんだよ。」
「ここでこの人を殺したら、俺と戦うことは出来ねぇぞ?それでも良いのか?」
「……ふん。」
ダクネスは興が冷めた顔をすると、火の剣を消滅させてその場から立ち去っていった。ざわめく会場の中、シャインは観客席のレビィ達の元へ戻った。
「シャイン、大丈夫?」
レビィが心配する。
「ああ。」
「ちゃんと説明はしてくれるんでしょうね?」
サナが詳細を求める。
「ああ。速攻で次の試合を終わらすから、その後に説明するよ。」
シャインが承諾すると、6人はA会場へと戻っていった。
A会場にて、シャインの予選リーグ最終試合である天鼠高校戦は大会史上最速記録を叩き出して幕を閉じ、シャイン達6人は周囲に人気がない通路に集まっていた。
「取り敢えず、俺が知っているダクネスについて話そう。──ダクネスが火神魔法を使えることを知っていたのは、俺と『もう1人』のだけだ。」
「もう1人?」
エアルが首を傾げる。
「『幼馴染の女』だ。俺とダクネス、そしてそのもう1人の幼馴染は小学生時代に出会い、ずっと一緒にいた。……あの事件が起きるまではな。」
「何かあったの?」
レビィが尋ねる。
「あれは中学に入って半年くらい経ったある日、3人でいつも通り遊んでいる時、俺と幼馴染の女の前でダクネスが誘拐される事件があったんだ。ダクネスのアルシオン家は結構金持ちでよ、犯人達の狙いは身代金だった。俺達は必死に追跡して、ダクネスが監禁された倉庫を突き止めた。そこまでは良かったんだが、どうやら相手は有名な誘拐グループだったらしく、かなりの人数がいたんだ。」
「でもよ、虎神高校の頂点に立てるほどダクネスって強いんだろ?そんな簡単に捕まっちまうものか?」
スノウが尋ねる。
「昔のダクネスは今みたいな性格じゃなくて『気弱で真面目な性格』だったんだ。だけど、この誘拐事件でダクネスの性格は変貌した。その要因の1つが火神魔法だ。元々ダクネスの魔法は只の火属性魔法に過ぎなかったが、突然あいつの魔法は火神魔法に覚醒した。ダクネスはその力を使い、監禁されていた倉庫ごと、誘拐犯達を全員焼き殺した。炎上する倉庫の中から出てきたダクネスが残酷非道な顔で高らかに笑っている姿を見た時、俺達は今までのダクネスにはもう戻らないと直感で分かったよ。」
「待って。確か神力種の魔法を得るには、神と契約するのが条件だったはず。どうやってダクネスは神と会ったの?」
サナが尋ねる。
「流石に細かいところまでは知らねぇ。ダクネスが話してくれるわけなかったからな。」
「あの〜…話を割って申し訳ないんだけど、私、その神力種?っていうのがよく知らないんだけど。」
エアルがそ〜っと手を上げて訊くと、サナが答える。
「世界を創生したと伝えられている『地水火風』の4つの属性の総称─『創生属性』。火属性と風属性が混じり生まれた『雷属性』と、水属性と地属性が混じり生まれた『氷属性』、この2つの属性を合わせた総称─『混合属性』。世界に昼を生み出した『光属性』と、夜を生み出した『闇属性』、この2つを合わせた総称─『明暗属性』。この8つの属性にはそれぞれ神が存在すると伝えられているの。そして神々は気まぐれなのか、はたまた条件を作ってそれに合致した者なのかは分からないけど、人類の中から1人を選び、契約することによって自身の神の力が付与された魔法を与えるの。それが絶滅魔法神力種よ。」
「何で神様はそんな自分の力を配るみたいな事をするの?」
エアルが更に問う。
「それに関しては色々な説があるけど、一番有力なのは、神の存在は人々の認知と信仰によって保たれている。だから、自身の力を人類に与えることより、人々に己の存在の認知してもらい、そして信仰してもらうことが目的っていうのかしらね。」
「つまり、神様も定期的にバズらないと人気が落ちて、世間から忘れられて、存在が消えちゃうって感じか。意外と神様も大変だね。」
エアルが独自の解釈をして理解する。
「話を戻させてもらいますが、シャインは先程、ダクネスの魔法が神力種であることを知っていたのがあなたと幼馴染の女性のみと仰っていましたが、ダクネスのご家族や他の周囲の人は気付かなかったのですか?」
ヒューズが話題を戻す。
「どうだろうな。もしかしたら気付いていたかも知らないが、直接あいつの家族とかに聞いたわけじゃねぇから分からない。でも、少なくとも俺等の周りではダクネスの神力種の話を聞いたことはなかった。」
「じゃあ逆に、何でシャイン達はダクネスの魔法が神力種って分かったの?」
レビィが尋ねる。
「それはもう1人の幼馴染の女が気付いたからだ。何で気付いたのか訊いたら、乙女の勘とか適当なことを言ってはぐらかしたけどな。───っと、これで俺が知っている情報は大体教えたぜ。」
「待て待て。最後にその幼馴染の女ってどんな奴か教えてくれよ。」
スノウがもう1人の幼馴染の女について興味を示す。
「ん?別に関係ねぇと思うが?」
「ついでだよついで。」
「……まぁ良いが。名前は『トワイラ・ターコイズ』。特徴は水色の髪をポニーテールにしてて、瞳は銀色だ。背丈はレビィに近いかな。後は俺の事をあだ名で呼んでいた。確か──」
──瞬間、この場の誰でもない声がこだました。
「シャーーーーーーーーーーーーン!!!」
全員が一斉に声がした方向を向くと、誰かがウッキウキな足取りで駆け寄ってきていた。そして水色のポニーテールを揺らし、勢いそのままにシャインに抱きついた。
「ぶへっ!?」
シャインは唐突なタックルに変な声が出る。
「シャン!久し振り!ちょ〜〜会いたかった!」
シャインに抱きつく少女は、銀色の瞳を輝かせて見詰める。
「お前…もしかして『トワイラ』か!?」
シャインが自分に抱きつく少女の名前を言い当てる。
「もう!昔みたいにトワって呼んでよ〜!」
スリスリとシャインの胸に頬を擦り付けるトワイラ。
「お、おい!他の奴が見てんだろうが!止めろ!」
「他の奴ぅ?」
トワイラはようやく周囲にいるレビィ達の存在に気が付いた。
「誰、あなた達?」
トワイラはシャインに抱き付いたまま訊く。
「いや、どんだけ夢中だ!」
スノウが透かさずツッコミを入れた。
「えっと…貴女は?」
レビィが苦笑いしながら尋ねる。
「私は『トワイラ・ターコイズ』!シャンとは将来を誓い合った仲でーす♪」
トワイラの爆弾発言に、シャイン以外のメンバーに衝撃が走る。
「勝手に過去を捏造するな。」
シャインがトワイラにチョップを喰らわす。
「きゃう!も〜…あの日の夜の誓いを忘れたの〜?」
トワイラがわざとらしい泣き顔でシャインを見詰める。
「だから捏造すんなって。」
シャインは真顔でもう一度チョップをする。
「イチャイチャしているところ割って申し訳ないですが、シャイン、この方が仰っていた幼馴染の女性ですか?」
ヒューズがシャインに確認するように尋ねる。
「ああ。もう1人の幼馴染のトワイラだ。」
「なになに?私の話をしてたの?」
トワイラがワクワクした顔で訊く。
「違う。ダクネスの火神魔法の話をしていただけだ。」
「な〜んだ。──てか、話しちゃったんだ。」
「さっき派手に本人が公に告げたんだ。今更隠す必要もないと思ってな。」
「ふ〜ん………でも喋ったんだ。自分が関わる過去を。随分とこの人達に心を開いているんだね。」
トワイラは先程までのメロメロ状態からスッと真顔になると、シャインから離れて背を向けた。しかし、直ぐに振り返って満面の笑みを浮かべる。
「なーんてね♪シャンが私たち以外に心を開く友達ができてて嬉しいよ♪私は今、蛇帝高校に通っているの。寂しくなったらいつでも会いに来てね♪ま、勝手にこっちから会いに行くけどね♪じゃ、バイバイ♪」
トワイラはヒラヒラと胸の前で小さく手を振ると、背を向けてそのまま歩き去っていった。
シャイン達は嵐の如く去っていくトワイラを見送った後、A会場へと戻っていくのであった。
本日はお読み下さって本当にありがとうございます!
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次回は戦闘メインのお話です!それでは楽しみに!




