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中谷楓

 中谷楓は「やまと喫茶」に入ることを躊躇していた。

 人伝で聞いた喫茶店はどんな相談事にも乗ってくれるそうで、自身も相談をしにやってきた。

 思っていたよりも住宅地で、閑散としている場所に立つ喫茶店。古そうな外観で、いかにも年配が経営していそうな、センスのない看板。こんな店に入って大丈夫だろうか。

 確かに悩みがあってここにきた。相談したいことがあった。誰にも言えない相談事が。

 しかし、外観を見るに気難しそうな年配男性が待ち構えていそうだ。きっと相談をしても、「けしからん!」の一言で片付いてしまう。容易に想像できる。


 引き返そうか、そう思ったが、中に入りたい気持ちもある。

 少し、中を覗いてみて、気難しそうな人が相談相手ならすぐに帰ろう。そうしよう。すぐに帰ることができなくても、別の相談をしてさっさと帰ればいいんだ。


 そう思い、小さな声で「すみませーん」と言いながら扉を開ける。

 カランと扉についていた鐘が鳴り、扉を閉める。


 店内を見ると客は一人も見当たらない。

 カウンターに人影があった。背が高く、体格からして男性だ。

 店員は彼一人のようで安堵した。


「いらっしゃいませ。こちらのお席へどうぞ」


 人がいないからか、カウンター席を案内されたので着席した。

 店員の顔をよく見ると整っており、額を出す髪型も似合っている。

 年配を想像していたのだが、三十代前半の男でまた安堵する。


「ご注文は?」

「ホットコーヒーを一つ。砂糖は二つで、スプーンは不要です」

「かしこまりました」


 この合言葉で相談を始めるらしい。

 店員はコーヒーを作り始める。


「出来上がるまでに時間がありますので、お話でもいかがでしょう」

「あ、はい。あの、相談があって」

「ほう、なんでしょう」


 店員はじっと楓を見つめ、さてどんな相談事かと予測する。

 前髪は長く、ショートカット。目の周りが黒く見えるのは、睫毛が多量にありどれも長いからか。唇は桜色のリップを塗っているようで、赤いというより淡いピンク。服装は確か、体のラインが出るような短いワンピースだった。

全体的に薄化粧とは言い難く、肌を露出しているこの女性は、なんというか、言葉を選ばずに言うならば浮気相手にぴったりな女性だ。

店員は浮気経験などないが、男性が浮気に走るならばこういう女性なのだろう。

相談というのは浮気に関することだろうか。

完全なる偏見で推測した。


「あの、相談なんですけど、その」

「はい」

「自分でもよくないこととは分かっているのですが、でも、その」

「ここは私とお客様の二人だけですので、御気兼ねなく話してくださって構いませんよ。業務上知り得たお客様の情報は口外いたしません」


 もごもごと語尾が小さくなる楓を見て、安心させるように言った。

 誰にも言わない、と言質がとれたからか、目に見えて安堵する楓は息を吐いて語り始めた。


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