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沢田春奈その二

 高校卒業後は、共学の大学へ進学した。

 何故そこの大学にしたかというと、特に理由はないが、近くの共学で自分の行けるレベルの大学がここだったからだ。

 女子大には行きたくなかった。女子しかいない空間は耐えられない。


 大学は高校と違い、お洒落な男性が多く居た。

 先輩は同級生よりも輝いていて、染めた髪やピアスがたまらなく恰好よかった。


 卒業に必修な単位をとるために選択した講義で、一番前に座っている男性がいた。

 その男性がとても恰好よくて、いつもその男性の周囲に座って講義を受けていた。

 ある日、講義に出席するのが遅れて時間ぎりぎりに教室へ入った。その日は小テストがあったので、普段講義を休んでいる生徒たちが集まり席は埋まっていた。偶々その男性の隣が空いていたので、頭を下げて腰を下ろした。


 緊張した。

 何度も横顔を盗み見た。

 小テストといっても、隣の人と席は近いしカンニングし放題だった。カンニングをするつもりはなかったが、男性が書いている紙を眼球だけ動かして見てみると、氏名の欄に安井彰とあった。安井くんというのか。

 頭の中に漢字と読みを叩き入れる。

 小テストが回収され、講義が終わった後、机に置いていた筆箱を倒した。


「あ、ごめんなさい」


 安井くんの方へ倒れるように腕を当てたため、中に入っていたペンが安井くんの目の前に転がる。

 安井くんは転がるペンをとって、手渡してくれた。


「ありがとうございます」


 お礼を言うとそこから雑談をする流れになった。


「安井さん年上だったんですね」

「そうだよ、この単位落としたから再履修してるんだ。馬鹿だよねえ」

「大変ですね」


 一つ年上だった。同学年は皆単位を落とさなかったようで一人で履修しているらしい。

 それを聞いて、話せる相手が自分だけと知り嬉しさで胸がいっぱいだった。


 次の日から安井さんの隣に座るようになった。そして雑談をする。

 仲良くなった。


 教科書を忘れた時は見せてくれる。

 講義が終わると一緒に帰ることもある。

 学内で見かけたら手を振ってくれる。

 誕生日にはお菓子をくれた。

 夕飯を一緒に食べようと居酒屋へ行ったこともある。


 私のことが好きだというのは伝わってきた。

 だって好きでもない相手に誕生日プレゼントなんて渡さないし、二人きりでご飯を食べたりしないでしょう。

 誰かに相談はしなかった。私だけの安井さんだから。安井さんを見たら皆好きになると思ったから。


 バイト先は安井さんと同じ、スムージーの店にした。

 家から遠かったけれど、一緒に働くことができて嬉しかった。


 バイトを初めて分かったことだけれど、安井さんは人気者だった。

 バイト先には安井さん以外男性はいない。唯一の男性である安井さんに女子は群がっていた。

 誕生日をアピールして安井さんに祝ってもらおうとしていたり、彼氏と喧嘩したからと相談している女もいた。彼氏と喧嘩したからといって、普通男性に相談するだろうか。女友達がいないのだろうか。

 安井さんは嫌な顔せずに対応していて、大人だった。


 私がミスしたときはカバーしてくれて、怖い女の先輩に叱られて泣いた時は慰めてくれて、いつも傍にいてくれた。

 他の女とは楽しく喋るだけだが、私にだけは慰めてくれたりと別の対応もしれくれて優しかった。


 それでも、告白はまだされていない。


 自分から告白してしまおうかと思ったが、バイトを始めてからはなかなか時間がなく、良いタイミングがなかった。

 二人の時間も減ってしまい、バイトを始めたのは良くなかったかと後悔している。


 安井さんが他の女と楽しそうにしているところを見るのは嫌だ。彼女になれば嫌だと言えるけれど、私はまだ彼女ではない。

 いつまでこの関係が続くのだろうか。


 どうしたら早く彼女になれるのだろう。



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