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黒岩由衣その二

 私は大学を卒業した後、新卒で企業の事務に就職した。

 どこにでもある一般企業だった。特に資格を持っているわけでもなかったので、事務職に就くのは当然だった。しかし、入社二年目にして営業へ異動になり、社内で毎日パソコンと向き合っていた一年目とは異なり外出ばかりの毎日になった。最初は特に問題なかったのだが、取引先に理不尽な事を言われ、それを会社に持ち帰ると今度は会社から無理を言われることに耐えきれなくなった。板挟みで双方に叱責をされることが多々あり、体調を崩して退職した。これが三年目のことだった。


 退職した後、転職も考えたが資格のない私を正社員として雇ってくれるところはなかった。三十社受けてすべて落ちてから、正社員は諦めてアルバイトを始めた。

 よく聞く話だと思う。友達でも似たような境遇の子がいたので、珍しくはない。


 ただ、アルバイトだと稼げない。金銭面で苦労した。

 一人暮らしをするには金が足りないため、実家に住みながら働いている。


 アルバイトをし始めて半年経過した頃、高校時代の友達である麗奈から連絡があった。

 高校時代仲が良かったが、高校卒業後は疎遠になっていた。高校以来の連絡だった。

 懐かしくて連絡を取り合い、何度かご飯を食べに行った。


「この前彼氏と喧嘩してさー」

「彼氏いたんだ」

「そうそう、言わなかった?付き合って一年半になるんだけどー」


 彼氏の話は三回目の食事で知った。

 彼氏がいるからといって、羨ましいと思わなかったし、ただの雑談だった。

 悩み始めたのは、彼氏の話があって一か月後のことだった。


 実家のポストに入っていた手紙。宛先は私だった。

 私宛に届く書類なんて役場から年に数回あるくらい。珍しいな、なんだろうと思い封を開けると、麗奈からだった。

 用があるならメールで言ってくれればいいのに。

 中身を出して、驚いた。

 結婚式の招待状だったからだ。

 驚いたのは、麗奈が結婚するからではない。結婚式の招待状が届いたからだ。

 高校時代の友達だが、卒業後はまったく連絡はしていなかった。最近になって連絡を取り合うようになったが、招待されるとは思わなかったからだ。


 結婚式に参加したとして、麗奈以外に友達はいない。

 高校時代の友達と言えど、最早知り合い程度の関係になっている。今更会ったところで久しぶりー、と懐かしむような関係性ではない。当時、そこまで仲が良かったわけではないからだ。麗奈以外、あまり関わらなかった。


 悩みというのは、結婚式に参加するかどうか。

 参加すればいいじゃん、と思われるかもしれないが、新婦以外仲が良い人はいないため参加しても気まずい思いで居座るだけだろう。

 それに、参加を迷う一番の理由は、ご祝儀だった。


 今、私は実家に暮らしてアルバイトをしている。

 月に約十万程度の稼ぎしかない。その内の三万は実家に入れて、残りは七万円。携帯代や車の維持費などで消え、月に仕えるお金は五万円もない。そこから化粧品や洋服代、交際費で減っていく。貯金なんてそんなにできない。


 更に、二十代後半になってから周囲が結婚し始めた。大学時代からの友人が続々と式を挙げていく。一人当たり三万円の祝儀を渡すと、収支がマイナスになる月もあった。

 更に子どもが生まれた友人にはベビーグッズのお祝い品を購入する。貯金を切り崩すようにまでになって、とにかくお金を稼ぐのに必死な状況だ。

 アルバイトを増やしてみたものの、心身の疲労が大きく結局掛け持ちは二つに留めた。


 ケチくさいと思われそうで、人に相談はしなかった。

 友情はお金に変えられない。

 最近になって会うようになった麗奈のために三万円を惜しんでいる自分に嫌気がさした。

 麗奈が式を挙げる月は、他の友人も結婚式を行う予定だ。今から必死に稼げば問題はないが、三万円の出費は大きい。

 どうしたものかと、麗奈に返事ができずにいた。


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