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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
93/187

93、怒りに身を任せて

「リムーーーーーーー!」

僕の悲鳴のような声が響き渡った。


リムからの返事はない。


「リム。リム。リム。リム。リム」

僕は何度もリムの名前を呼ぶ。

リムとは長い付き合いというわけではない。

しかし、付き合いの長い短いではない。

リムは封印の中で何百年も待っていたんだ。

ようやく封印から出て、これから楽しい経験を沢山積むはずだったんだ。

それにリムは僕を、僕たちを守ってくれた。

僕にもっと力があれば、リムはあんな奴に負ける事は無かった。


「リム。リム。リム。リム。リム」

と僕は何度もリムの名前を呼ぶ。

名前を呼んでもリムが戻ってくる訳ではない。

そんな事はわかっている。

しかし、どうすることもできない僕には名前を連呼することしか出来なかった。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

カイルスの下品な笑いが聞こえる。


カイルスの笑い声が無性に腹ただしく感じた。

何であいつは笑っているんだ?

何であいつはあんなに楽しそうなんだ?

何であいつはあんなに平然としていられるんだ?

リムが死んだのに。。。

リムを殺したのに。。。

リムはもういないのに。。。

何であいつは!!


「ウォォォォ」

僕は怒りに身を任せて、全身に力を入れる。

怒りのせいか、いつもよりも身体に力が入る感覚があった。


「ウォォォォ」

そして、僕を拘束していた煙を引きちぎった。


「よくも。よくもリムを」

僕はカイルスを睨みながら言った。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

カイルスは笑う。


僕は月刀を持ち、月刀に力を流し込んだ。

月刀に青白い光が灯り出す。


「ウォォォォ」

と叫びながら、カイルスに突進する。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

カイルスは笑いながら、透明な球を何発も僕に向けて放った。


シャシャシャ

僕は透明な球を瞬時に斬り、透明な球は消滅した。


「ヒャヒャヒャ?」

僕の動きにカイルスは驚くが、すかさず次の球を放つ動きを取る。

しかし、その間に距離を詰めた僕はカイルスに斬りかかった。


カイルスは持ち前の俊敏な動きで僕の斬撃をかわし、バックステップで距離を取ろうとする。

僕はカイルスに猶予を与えずに再度距離を詰めて刀を振る。


「ヒャヒャ」

とカイルスは何とか僕の斬撃をかわすが、僕は振り下ろした刀を返して斬り上げた。


「ヒャ」

カイルスは驚きバランスを崩す。

それが功を奏して、僕の斬撃はカイルスの頬を掠めるに留まった。

そのままカイルスは僕を突き放すための蹴りを放つ。

僕は腕でガードをするが、蹴りの勢いを全て殺す事はできず、後方に飛ばされた。


後方に飛ばされながらも僕は溜めていた力を足に移す。

そして、着地と同時に


「飛神!」

と叫び、地面を蹴った。


瞬時に僕はカイルスの後方まで移動して、刀を振り切った。

僕の静止から少し遅れて、


カイルスの左手の肘から先が体から離れて宙を飛ぶ。

「ギャアアァァァ」

とカイルスの叫び声が聞こえた。


カイルスは腕を抑えるが、止めどなく血が流れ出す。

このまま倒れてくれるかと、僕は思ったがそうは甘くは無かった。


カイルスは残った右手から透明な球を出すと、左手に押し当てた。

透明な球が蓋の役割を果たし、これ以上の出血を防ぐ。


「ヒャヒャヒャ」

しかし、左手が戻るわけではなく、あくまでも応急処置。

痛みもあるだろう。

それでもカイルスは笑った。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。痛い。痛い。いいぞ。いいぞ。俺は外に出ていると実感できる。ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

カイルスは痛みを感じる事で、喜びを感じている。

僕はカイルスの悍ましさにゾッとして一歩引いた。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。さぁ続けようぜ。俺たちの戦いをよぉ」

とカイルスは言うと、両手を前に出した。

両手?と僕はカイルスの左手を見る。すると、先程押し当てたとうめの球が腕について手の形を作り出していた。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

と言う笑い声と共にカイルスは透明な球をどんどん作り出す。

10、20、30、、、、作り出される数は止まらない。


「なっ」

これが一斉に僕に向かって飛んでくるのだろう。

一発でも当たれば致命傷は免れない。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。いくぜぇ」

100以上の透明の球を宙に浮かべながらカイルスは言った。


「勇くん!!」

姫乃先輩の心配する声が聞こえる。

避けようにもこれだけの数を避けきることはできないだろう。


全部叩き斬るしかない。

と僕は覚悟を決めた。


その時、

「グワァァァァ」

とカイルスが右手で頭を押さえて苦しみ出した。


「俺をぉ。俺をぉ。また閉じ込めるのかぁーー」

と叫びながら苦しんでいる。


これはチャンスなのか?

と思い僕はカイルスに向かって突進する。

一気に距離を詰めて、刀を横一閃に振り切った。


しかし、振り切った刀に手応えは無く、目の前にいたはずのカイルスも消えた。


「グガガガ」

とカイルスの呻き声が上から聞こえる。

すぐに反応して上を見ると、カイルスが浮かびながら頭を抑えて苦しんでいる。


「私の意識が、、、俺の意識が、、、抑えられる、、、」

「あの人が、、、あいつが、、、出てきてしまう、、、」

「私は、、、俺はぁ、、、私は、、、俺はぁ、、、」


カイルスの意識が混雑しているように感じる。

ウラヌスとカイルスの意識なのだろうか。


「ふふふふふふふふふ、、、ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、、、ふふふふふふふふふ、、、ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、、、ふふふふふふふふふ、、、ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」


「何なんだ」

苦しんでいたからと思ったら、突然カイルスが笑い出す。

気味が悪すぎて、僕は一歩も動くことができなかった。


「ふふふふふふふふふ、、、ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、、、ふふふふふふふふふ、、、ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、、、ふふふふふふふふふ、、、ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」


「・・・・・・・・」


突如カイルスの笑い声が止まった。


「わはは」


「わはははははははははははは」


今度は今までとまた違った笑い声が響き渡った。

笑い終えるとカイルス??は辺りを見回す。


「久しぶりに出てきてやったと思えば、なんだ?」


カイルス??は自分の無くなった左手を見た。


「ふんっ」

と左手などどうでもいい事ように鼻を鳴らす。


すると、カイルス??の左腕が光に包まれて、何ごとも無かったかのように左手が修復された。


そして、カイルス??は僕を見て、

「頭が高い」

と言うと、僕の全身が重くなった。

まるで大気が僕を押し潰すような感触。


「ぐぐぐ」

僕は立っていることができずに地面に倒れ込んだ。


「それでいい」

とカイルス??は言うと、


「我はガイア。本来であればお前たちのような者が俺を拝むこと事態が万死に値する」

と言うと、ガイアと名乗る者がカッと目を見開く。

それだけで重たいプレッシャーが発せられた。

やばい。どうする事もできない。

何とか姫乃先輩だけでも逃す事はできないか。

僕は何とか動こうと体に力を入れるが、依然大気の重みがのしかかり動くことができない。


ふとガイアから発せられるプレッシャーが弱まった。

「だが喜べ。我は今気分がいい。お前たちを罰するのはやめておいてやろう」

そう言うと、ガイアは何処かへ飛び立とうとする。

しかし、すぐに停止すると、

「おっそうであった。これを回収するのであったな」

と研究成果の入った鞄を手も使わずに持ち上げると、


「我を働かせるとは、あやつも偉くなったものよ」

と言いながら、何処かへ飛び立っていった。


すると、僕にのしかかっていた重みも無くなり起き上がれるように

なった。


「勇くん!大丈夫?」

と煙の拘束も解けた姫乃先輩が駆け寄ってきてくれた。


「リムが、、、リムが、、、」

「・・・・・」

僕が消えてしまったリムの名前を出すと、姫乃先輩は重い顔をした。


「リム。リム。リム。リムーーーー」

と僕が叫ぶと、


「騒々しいのよ」

と声が聞こえた。

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