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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
92/187

92、もう一つの人格

リトルメティオの威力で地面にはクレーターができていた。

そのクレーターの真ん中にウラヌスは半分土に埋もれて横たわっている。

皮膚の大半は焼け爛れている。

遠目から見ても意識は無いように見えたが、生死まではここからではわからなかった。


リムは凛として立っているが、大魔法を放った後ということもあり、疲労の色は隠せていない。


ウラヌスはピクリとも動かない。


「リムやったのか?」

と僕はリムに聞いた。


するとリムは表情を曇らせながら言った。

「まだなのよ。一度はウラヌスの生命エネルギーが途絶えたと思ったのよ。でも、今生命エネルギーが増大しているのよ。以前よりも大きくなっているのよ」

と答えた。


「どういうことなの?回復しているということなの?」

と姫乃先輩もリムに聞く。


「リムにもわからないのよ。ただ、回復しているというより生まれ変わっているという感じなのよ」

とリムは答えた。

ウラヌスとの戦闘が終わっていないことは、間違いなさそうだ。


「月魔法 ライトニング」

リムはピクリとも動かないウラヌスに対して追い討ちをかけた。


黄色い光がウラヌスに向かって放たれる。


ライトニングは倒れているウラヌスに向かって一直線に飛んでいく。

その時、ウラヌスは急に起き上がり、右手を前に出した。


「なっ」

攻撃を仕掛けたリムが声を上げる。

ライトニングはウラヌスの掌で防がれていた。


「ふひゃひゃ、、、」

ウラヌスが声を発する。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」


下品な笑い声。

ウラヌスは今まで紳士的な話し方であったが、今のウラヌスの笑い方は別人のようだった。


「お前は何なのよ」

とリムもウラヌスの異質さを感じ取って言った。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。俺かぁ。俺はカイルス。閉じ込められたもうひとつの人格。お前のおかげで数10年ぶりに出て来れたぜ。ありがとよ。ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

とカイルスと名乗る者は言った。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。久しぶりに出てこれたんだ。お前たち楽しませてくれよぉ。ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

とカイルスはいながら、指から何か透明な物を放った。

ピンポン玉くらいの大きさの丸い何かである。

透明ではあるが密度が高いのか、何かがあることはわかる。


リムはそれに気付いて、後方にジャンプしてわかした。

透明な物はリムに当たることはなく、地面に着弾した。


すると、バシュっと音がして、地面が抉れた。


「なっ!?」

どういう原理になっているのかは、全くわからないが危険な物であることだけはわかった。


瞬時に地面を抉り取る威力。

リムもまともに当たればただでは済まないだろう。

「リム気をつけろ」

と僕はリムに言った。


「わかっているのよ。リムに任せてお前はそこに寝ていればいいのよ」

とリムは言った。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。余裕だな」

と言いながら、透明な球をカイルスは再び放った。


「月魔法 クレセントムーン」

とリムは透明な球に向けて魔法の斬撃を放った。

クレセントムーンの斬撃は透明な球を両断し、透明な球は消滅した。


「ふん。その技に魔法は有効である事はわかったのよ。だったらリムには何の問題もないのよ」

とリムは言った。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

と気味の悪い笑い声を上げながら、カイルスは透明な球を複数放つ。


「月魔法 クレセントムーン」

リムは、魔法を放ち、次々と魔法でかき消していった。


「無駄な事なのよ」

大魔法を使用した後ではあるものの、リムの衰えは感じられない。


リムは攻撃の合間の隙をついて、カイルスに向けて魔法を放った。

「月魔法 ライトニング」


カイルスは先ほどと同じように右手を前に出すと、右手の前の空間が歪みライトニングを防いだ。

透明な球と似たような原理なのだろうか?歪んでいるところは空間の密度が高くなっているように感じた。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。危ない。危ない」

とカイルスは余裕を見せながら言う。


「それは足止めなのよ」

リムはボソッと言うと、

「月魔法 ライトニングピラー」

と魔法を唱えた。


すると、カイルスの足元が光出して、一気に光が上空に向けて発せられた。

光はカイルスを飲み込み、その光景はまるで光の柱のようだった。


「グガァァァァ」

と光に飲まれたカイルスは悲鳴を上げる。


ドサッ

徐々に光が弱くなり、全身にダメージを受けたカイルスが地面に倒れた。


「ふん。リムを舐めるからこうなるのよ」

とリムは腕を組んで、カイルスを見下ろしながら言った。


「ヒャヒャ、、、」

倒れているカイルスから、声が聞こえた。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

とカイルスは気味の悪い笑い声を上げながら、何事もなかったかのように起き上がった。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。いいよ。いいよ。この痛み。出てきたことが実感できる。閉じ込められていると味わえないもんなぁ?ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

とカイルスは言った。


「こいつ不死身なのか」

と僕が言うと、


「不死身??不死身なもんか。ちゃんと痛いし、ちゃんと死ぬぜ。ただ今はこの痛みが心地いい。ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

とカイルスは言った。


「気味が悪いのよこいつ。早く終わらせるのよ」

とリムは言いながら、

「月魔法 クレセントムーン」

と魔法を唱えて、斬撃を放つ。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。これ以上は本当に死んじまうからなぁ」

と笑いながら斬撃を交わすカイルス。


「うざったいのよ」

と言って、リムはライトニングを放つ。

今度はカイルスを捉えたように思えたが、またしても不可思議な防御でライトニングを防いでいた。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

とカイルスが再び透明な球を放った。

今までよりもスピードが速いが一発だけだ。


「こんなの無駄なのよ。月魔法 クレセント、、、」

リムが魔法で消し飛ばそうとした。

しかし、透明な球はリムに向かっている途中で急激に軌道を変えた。

透明な球は軌道を変えて、真っ直ぐに僕に向かって飛んでくる。


「なっお前の相手はリムなのよ」

慌てて叫ぶリム。


僕は動きを封じられていて、逃げることができない。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

カイルスの笑い声が響く。


透明な球が僕に迫ってくる。


「勇くん!」

と姫乃先輩の声が聞こえる。

僕は拘束を解こうともがくが、煙の拘束を解くことはできない。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」

とカイルスの笑い声を聞きながら、僕は覚悟して目をつぶった。


バシュ

と音が聞こえたが、一向に痛みを感じない。

僕は恐る恐る目を開けた。


すると、目の前にはお腹に大きな風穴の空いたリムが立っていた。


「リム!!」

僕が叫び声を上げると、


「お前が無事でよかったのよ。少し甘く見すぎたのよ」

とリムは苦しそうな声で言った。


「リム!」

僕は涙を溜めながらリムを呼ぶ。


「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ。精霊は血が出ないんだなぁ」

と言いながら、カイルスは透明な球を複数放った。


バシュ

バシュ

バシュ


とリムがどんどん削られていく。


すると、リムの体が光が放ちはじめた。


「口惜しいのよ」

とリムは言うと、


ポンッ


と光の粒になって消滅した。


「リムーーーーーー!」

僕の悲鳴のような声が響き渡った。

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