9、おおみみず討伐
僕たちはある村に来ていた。
そうおおみみず討伐の依頼を出していた村である。
村に入ると畑のあちらこちらに穴が空いていた。
おそらくおおみみずが開けた穴だろう。
こんなにたくさんの穴を開けるのかと僕は思った。
僕たちはまず村長に会いに行って依頼の詳細を確認する。
ちなみに空は他に予定があると言ってついては来てくれなかったので、この依頼は3人で行う。
少し不安だが仕方がない。
「こんにちは!」
僕は村長の家の前であいさつをする。
「だれじゃ?」
想像通りのお爺さんがドアから顔を出した。
「おおみみずの討伐に来ました」
僕が言うとお爺さんの顔が明るくなり、
「そうか!お前たちがギルドからの冒険者か。ここまで来てくれてありがとう。では家に上がっておくれ」
そう言いながらドアを開けてくれた。
「遠いところすまんのう。」
「いえ。早速ですが依頼を確認させてください」
僕が言うと
「おおみみずを倒せばいいのですよね?」
姫乃先輩が確認した。
「そうじゃ。村にいるおおみみずを倒してくれ。ここに来るまでに見たと思うがあの穴がおおみみずが開けた穴じゃ。もう野菜はほとんど残っとらん。」
「じゃあもうおおみみずはもう出てこないのでは?」
僕が聞くと
「野菜をいくつか畑に置けば必ずで出てくるじゃろう」
と村長は返答する。
「わかりました。では早速準備をお願いできますか?」
僕は言った。
1時間後、畑に大量の野菜を置いてもらい、村の人には避難してもらった。
野菜置きすぎじゃないかなと思いながらも、僕たちはおおみみずが出てくるのを待っている。
「本当にくるのかなぁ」
堪え性のない僕はすぐに愚痴を言ってしまう。
姫乃先輩は「待ちましょう。」と大人の対応だ。
1時間ほど待った時、野菜の近くの土が急に盛り上がるとそこからおおみみずが飛び出してきた。
おおみみずは太さが30cm程度で土から出ている部分だけの長さで2mほどだった。
僕は驚いて固まってしまったが、姫乃先輩は持っていた小刀をおおみみずに向け走り出した。
おおみみずは大きな口を開けて野菜を食べようとしている。
「グレイシア!」
芽衣が魔法を唱えると、おおみみずの口が凍った。
口がこおり、野菜を食べることができないおおみみずは長い体を揺さぶりもがいている。
そこへ姫乃先輩が切り掛かった。
「はぁぁぁ!」
と言う掛け声とともに小刀を振り抜きおおみみずをふたつに切り裂いた。
ブシャァァァァ
切られたおおみみずから青色の血が噴き出る。
「やった!」
僕は言った。
正直言って何もしていないが、簡単に依頼達成できるのであればそれに越したことはない。
僕はホッとして、早速村長に報告をに行こうとした時、姫乃先輩は、
「ちょっと待って」
と言って手で制した。
数秒間静寂が続いた後。
ゴゴゴゴゴゴゴ
突然地面が揺れた。
僕達のまわりの土がいくつも盛り上がると一気に何10匹ものおおみみずが飛び出してきた。
「あわわわわ」
僕は焦った。
話が違うじゃないか。
ん?話が違う?僕は村長の言った言葉を思い出した。
「村にいるおおみみずを倒してくれ。」・・・・
一匹って言ってないじゃないか!あのたぬきじじぃめ!
と僕は村長に上手くやられたことを悟った。
しかし、後の祭りである。
なんとか現状を乗り切らねばならない。
「いくよ!勇くん」
姫乃先輩は頭の切り替えが早く既に臨戦体制だ。
「はいっ」
僕は返事をして刀を構えた。
おおみみずは大きな口を開けて、僕に噛みつこうと向かってくる。
落ち着いてよく見ればそれほど速いわけではない。
僕はバックステップで交わした後、刀で斬りつけた。
見事にヒットしおおみみずを両断した。
「ハッ」
という掛け声とともに姫乃先輩は左手の人差し指から糸を出す。
糸はおおみみず3匹を輪っかで囲むように伸びていき、姫乃先輩が引っ張る素振りをすると輪っかが縮まり、一気に3匹を縛り上げた。
そして「勇くん!」と姫乃先輩は僕に合図を送り、僕は
「はいっ」と返事をして刀で3匹纏めて両断した。
おおみみずは大量の青い血を噴き出しながら沈んでいく。
芽衣も「アイスランス」を唱える。
多数の氷の槍が出現しおおみみずに向かって飛んでいく。
1匹に3本ずつ4匹の計12本のアイスランスが突き刺さる。
「どんなもんだ!」
芽衣も順調のようだ。
「火球」
姫乃先輩は魔法を発動する。
ソフトボールくらいの火の玉がおおみみずに命中する。
すかさず怯んだおおみみずに小刀でとどめを刺した。
僕も2人に負けずに切れ味の良い刀でおおみみずを両断していく。
僕たちは順調におおみみずの数を減らしていった。
そして最後の1匹を芽衣がグレイシアで動けなくしたところを僕がとどめを刺した。
「もう終わりかな。。。」
僕は周りを確認する。
大量のおおみみずの亡骸が転がっている。
既におおみみずは事切れているようで動くものはない。
「なんとかなったぁ」
僕は地面にへたり込んだ。すると
「お疲れ様!」
と姫乃先輩が手を差し伸べてくれた。
「お疲れ様でした」
僕は先輩の手を取った。
「討伐完了しました。」
僕は村長に報告した。
「ありがとう。本当に助かったよ」
村長は言う。
「村長さん。あんなにたくさんのおおみみずがいるなら先に言ってくださいよ」
僕が言うと
「すまんかったのう。たくさんのおおみみず討伐だと、その分報酬も高くしないと依頼を受けてもらえないんじゃ。このとおり貧しい村だから、高い報酬を出す余裕もないのでな。」
と村長は申し訳なさそうに言った。
姫乃先輩はふぅとため息をつきながら
「そういうことでしたか。事情はわかりました。依頼は達成でよろしいですよね」
と言うと。
「もちろんじゃ。本当に助かったよ
」と依頼完了のサインをもらった。
「でも今度はちゃんと事前に説明してよねー」
と芽衣が最後に締めた。
僕たちは冒険者ギルドに戻ってきた。
依頼完了の報告のためカウンターに向かう。
カウンターにつくと、僕は村長のサインの入った紙を提出した。
「確かに依頼完了のサインを確認しました。こちらが報酬の銀貨1枚です。お疲れ様でした」
と受付の方は言った。
これで銀貨1枚か。銀貨1枚はだいたい10,000円程度。
怖い思いしたのにこんなものなのか。
でも初めての依頼達成だ。
僕たちは声を揃えて
「依頼達成!やったー」
とガッツポーズをした。