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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
87/187

87、母の行方

僕たちは鉱山を目指して歩いている。

すると、姫乃先輩が急に立ち止まった。


「やっぱり何かおかしいわ」


「姫乃先輩。。。」


「周りの人の目撃者が多すぎることも気になるの。確かに咄嗟のことだから、誰にも見られないってことは難しいと思うけど、聞いた人のほとんどが目撃していた。それに目撃者の情報もみんなほとんど同じ内容。。。少しくらい違う事を言う人がいそうなものじゃない?なんだかあらかじめ口裏を合わせていたみたい。。。」

姫乃先輩はそう言うと、


「アイナちゃん。本当は他にお母さんが行きそうなところ知っているんじゃない?

と姫乃先輩はアイナに聞いた。


「・・・・・」

アイナは、どう受け答えをしていいのかわからず戸惑っていると、


「アイナちゃん。私達はあなたのお母さんを助けたいの。このままでは遅かれ早かれ、他の人に見つかってしまうわ。そうなると、お母さんも無事ではすまないかもしれない」

と姫乃先輩は言った。


「お願いアイナちゃん。私達を信じて」

と真剣に話をする姫乃先輩の言葉をアイナは目を見開きながら聞いていた。


「・・・あのね」

と少し考えてから、アイナは話し始めた。


「ママからはいつも何かあったらここにいると言われている場所があるの。でもそこにはアイナは絶対に来ないようにとも言われているし、誰にも言わないようにとも言われているの。しばらくしたら必ず帰ってくるから、その時までは家に保存してある食べ物を食べて過ごしてって」


おそらくアイナのお母さんは、襲撃を受ける事を想定して準備していたのだろう。

周りの人にも事前に口裏を合わせるようにお願いしておいて、アイナも危険に晒されないようにできる限りの準備をしていたのだろう。

それほどヤバイ研究内容なのだろうか。


「アイナちゃん。話をしてくれてありがとうね。その場所を教えてくれるかな?」

と姫乃先輩は言った。


アイナはまた少し悩んでから答えた。

「うん。鉱山とは反対にある森の中の小屋だよ」


「アイナちゃん。ありがとう。お母さんは必ず助けるわ」

と姫乃先輩はアイナに言った後に、

「すぐに向かいましょう。アイナちゃんはお家で待っていてくれるかな?」

と姫乃先輩は言ったが、


「アイナも行く!」

とアイナは言った。


姫乃先輩はアイナの言葉を聞いて、アイナの顔を見ながら考える。

アイナは強い意志を持って、姫乃先輩を見つめ返していた。

アイナの気持ちはわかるが危険な事は間違いない。

僕はどうしようか判断ができず迷っていると、


「わかったわ。アイナちゃんは私が守る。だけど危険なことはしちゃダメよ」

と姫乃先輩はアイナの同行を認めた。


「うん。お姉ちゃんありがとう」

とアイナは答えた。



僕たちはアイナの道案内で小屋に向かっている。

街を抜けて森に入り、道がないところも進んだ。

アイナがいなければ辿り着かなかったかもしれない。


「姫乃先輩はどうして、アイナがお母さんの居場所を知っているとわかったのですか?」

と僕は姫乃先輩に聞いた。


「そうねぇ。アイナちゃんが落ち着きすぎていたからかな。あのくらいの年代の子で急にお母さんがいなくなったら、もっと泣きじゃくったりすると思うの。それがあまりにも落ち着いていたから」


「それに母親だったら、急に逃げる事になったとしても、子供の心配はするはずだと思ったの。何が何でも子供に連絡するだろうと、、、それも無かったから、こうなる事を想定して親子間でも準備をしていたのかもしれないと思ったの」


「なるほど。言われてみればそのとおりですね」


などと話をしていると小屋が見えてきた。


「あそこだよ」

とアイナは指を指して言った。


その小屋は森の中にひっそりと建っていた。

僕たちは小屋に近づいていくが、小屋の中からは物音ひとつしない。


小屋の扉の前まで進み、僕は扉をノックする。


トントントン


少し待つが、中から返事はない。


トントントン


再度ノックをしてみる。


「だっ誰?」

と中から女性の声がした。


「あっママだ。ママ!アイナだよ!」

とアイナは言った。


「アイナ!?どうしてここに。。。」

と中から驚いた声がした。


「あのねお兄ちゃんやお姉ちゃんとママを助けにきたの」

とアイナは答えた。


しばらく沈黙があってから、


カチャ


と鍵が外れる音がして、ゆっくりと扉が開いた。

そして、中からスレンダーな女性が顔を出す。


「アイナ。。。」


「ママー」

と言ってその女性にアイナが飛びついた。

この女性がアイナのお母さんなのだろう。


「あのね。アイナね怖い人たちにママはどこにいるんだって囲まれていたの。それをこのお兄ちゃんたちが助けてくれたの」

とアイナは僕たちの説明をしてくれた。


「アイナを助けてくださってありがとうございました。私はアイナの母親のミザリと言います」

とミザリはお礼を言った。


「しかし、ここは危険です。アイナを連れて街に戻っていただけませんか?」

とミザリは言う。


「ママ大丈夫だよ。このお兄ちゃんたちすっごく強いの。怖い人たちをおいはらってくれたんだよ」

とアイナは言う。


「でも、、、」


「ミザリさん。大丈夫です。私たちが守ります」

と姫乃先輩は言った。


「とりあえず中へお入りください」

とミザリは言って中に入れてくれた。


中に入ると、ミザリ以外に2人の女性がいた。

ミザリと同じ研究者なのだろう。


「どうぞ」

とミザリは僕たちに椅子を用意してくれた。


「ありがとうございます」

と言って僕たちは椅子に座った。


「アイナを助けていただきまして、改めてありがとうございます」

とミザリは改めてお礼を言った。


「いえいえ。当然のことをしたまでです。それでミザリさん。ここまで逃げる準備をしているほどの研究って何なのですか?」

と姫乃先輩は単刀直入に聞いた。


「それは、、、申し訳ないのですが言えません。私たちは王国の命令で極秘にこの研究をしておりますので、、、」

とミザリは言った後に


「ただ、、、この研究内容が世に出ると大変な事になるのは間違いありません」

とミザリは申し訳なさそうに言った。


「そうですか。では襲ってきている人に心当たりはありますか?」

と続けて姫乃先輩は聞いた。


「隣国や悪の組織など心当たりは多すぎてわかりません。この研究のことを知れば、誰でも奪うか、阻止に動くと思います」

とミザリは答えた。


相当ヤバイ研究のようだ。

こんなのに関わっちゃってもいいものか、僕はと戸惑った。


「それで、無事研究内容は持ち出すことはできたのですか?」

とウーラが聞いた。


「ええ。何とか運び出すことができまして、ここにあります」

とミザリは大きな鞄を指差した。


「そうですか。とりあえずはよかったですね」

とウーラは言った。


その時だった。


ドンドンドンドン


と激しくドアをノックする音がした。


「おい。居るんだろ!出てきやがれ!」

と荒々しい声が聞こえる。


この場所が見つかってしまった事を僕たちは咄嗟に悟った。

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