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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
86/187

86、捜索

「大丈夫?」

僕たちはチンピラ風を追い払った後に女の子に声をかけた。

こんなに小さい子供が、あんな強面に囲まれていたらさぞや怖かっただろう。

取り乱して泣き出しても仕方がないくらいだよ。などと思っていたが、


「お姉ちゃん、お兄ちゃん、助けてくれてありがとうございました」

と予想外にしっかりとした子供で、僕たちにはっきりとお礼を言った。

しっかりした子供だ。僕がこのくらいの歳の頃は大人と話すことですらまともにできていなかった気がする。


そんな事を考えている間にも、姫乃先輩は状況の確認を進める。

「ねぇお名前は?」

と姫乃先輩が聞くと、女の子は

「アイナはねー。アイナと言います」

とそこは子供らしく答えた。


「アイナちゃんはどうして襲われていたのかな?」

と姫乃先輩が言う。


「あのね。私のママがいる場所を教えろって、、、私も探しているのに。。。」


「えっ?お母さんいなくなっちゃったの?」

と僕は驚いて聞いた。


「うん。昨日からママ帰ってきていないの」

とアイナは涙を浮かべながら言った。

このくらいの年頃の女の子を一人残して一晩帰らないなんて、よほどのことがあったのだろう。

アイナは今にも泣きそうな顔をしていたが当然だ。

僕だったら家で泣き喚くくらいしかできないだろう。

その点からしてもアイナはしっかりしていた。


アイナに詳しく話を聞いてみると、以下のような内容だった。

・昨日の朝に仕事に出掛けて行ってから帰ってきていない。

・仕事場に行ってみたが、誰もいない。

・今までも遅くなることはあったが、帰ってこなかったことはない。

・チンピラ風がママを探している理由はわからない。


今ある情報ではアイナの母親がどこに行ったのかはわからない。

しかし、このままアイナを放っておく訳にはいかないので、僕たちは母親探しを手伝う事にした。

「よし!早速出発しよう」

と僕は言って歩き始めようとした時、


「あのぉ」

と声がかけられた。

振り返ると男の人が立っていた。

アイナを庇って、チンピラ風に殴られた男の人だ。

男の人は殴られた頬を押さえながら、もうさわけなさそうに立っている。


やばい存在を忘れていた。。。


「すみません。勝手に話を進めてしまって。。。」

と僕はバツが悪そうに言った。


「いえ。気にしないでください。しかし、お二人ともお強いですね」

と気の良さそうな男の人は何も気にしていないかのように答えた。

男の人は何の抵抗もできずにチンピラ風に殴られていた。見るからに戦う事には向いていないように見える。


「そんなことはないです。でもアイナを庇ってくれてありがとうございます。その、、、」

と僕が言うと、


「あっ申し遅れました。私はウーラと言います。お恥ずかしい話ですが、腕っぷしは全くで。。。」

とウーラは言った。


「いや。それでも前に出る勇気はすごいですよ」

と僕は言った。


「それでウーラさんはアイナとはお知り合いですか?」

と僕が聞くと、


「いえいえ。たまたま通りかかったところで、女の子が絡まれているようだったので。。。」

とウーラは言った後に続けた。

「もしよろしければ、私もアイナさんのお母様探しを手伝わせてください」


「えっ悪いですよ」

と僕が言うと、


「いいんです。私は時間だけはあるので」

とウーラは笑いながら言った。


ウーラの好意を無碍にする事もできず、僕たちは一緒にアイナの母親探しをする事になった。

ウーラはすぐ近くのお店で働いているそうだが、街にはきたばかりでそれほど詳しくはないそうだ。

それでも何も知らない僕たちよりはこの街に詳しいだろう。

その分捜索も捗るだろうと思った。


とりあえず僕たちはアイナのお母さんが働いている職場に行くことにした。

「アイナのお母さんは何のお仕事をしているの?」

と僕が聞くと、


「んー。けんきゅう」

とアイナは答えた。


「研究?なんの?」

と聞くと、


「んー。アイナはわかんない」

と言う回答だった。


アイナの道案内があったので、スムーズに仕事場に到着した。

研究所なので、立派な建物を想像していたが、実際の仕事場は木造の掘立小屋みたいなものだった。


ノックをして返事がない事を確認してからドアを開けると、鍵はかかっておらず、ドアは簡単に開いた


「失礼しまぁーす」

と少し小声で言いながら、僕は小屋の中に入って行った。


小屋の中は確かに研究所かなと言えるくらいに、顕微鏡やフラスコのような学生が馴染み深い器具から見たことのない器具まで様々な器具が置いてあった。

中に人は誰もおらず、誰かに荒らされたかのように、引き出しなどが乱雑に開かれていた。


「何の研究だろうか」

周りを見渡しても、何の研究なのかは僕には見当もつかない。


「アイナちゃんが言うとおり誰もいないね。とりあえず何か情報がないか見てみましょう」

と姫乃先輩は言って、手がかりを探し始めた。

勝手に小屋の中を調べる事に抵抗はあったが、状況が状況なので仕方がないと割り切り、みんなで手分けして手がかりを探す。

リムは全く興味がなさそうに、椅子に座り床に届かない足をぶらぶらさせていた。


「何も手掛かりはないですね」

しばらく捜索してから、ウーラが言った。

確かに色々調べて見ても、アイナのお母さんがどこに行ったのか全くわからなかった。

それに何の研究をしているのかも全くわからなかった。

研究に関する資料が全くと言っていいほど残っていないのだ。


「少しおかしいわ」

と姫乃先輩は怪訝そうに言う。


「ここは研究所なのだから、何かしらの研究をしている訳よね。でも研究に関する資料が全くないって言うのはおかしいと思わない?」

姫乃先輩もこの状況の不自然さに気がついたようだ。


「確かにそうですね」


「研究所の人が持ち出したのか、第三者が持ち出したのかはわからないけど、アイナちゃんのお母さんがいなくなったのと無関係とは思えないわ」


「もしかしたら、アイナのお母さんの研究内容を何者かが奪おうとしていて、アイナのお母さんはその何者かから逃げている可能性があると言う事ですか?」

と僕は姫乃先輩に言った。


「その可能性は高いと思うの」


「じゃああのチンピラ風は研究の成果を奪おうとしている何者かの人間って事か」

と僕は状況整理をした。


「でもアイナちゃんに説明もなくいなくなった事や、この研究所の状況からいくと、突発的なトラブルの可能性が高いと思う。急に襲われたとかね」


「なるほど。確かにそうですね」

とウーラも姫乃先輩の分析に同意した。


「急なトラブルであれば、足取りを完全に消す事は難しいと思うの。例えば目撃者とかね」

と姫乃先輩は言った。


「じゃあ目撃者探しが次の手ですかね?」

と僕は言った。


「そうね。やってみる価値はあると思う」

と姫乃先輩は言って、僕たちは聞き込みをする事にした。



僕たちは研究所の近くにお店を構えている人や住んでいる人に聞き込みをした。

すると、目撃情報は思っていた以上に多かった。

聞くことのできた情報としては、次のような内容だ。

・昨日の昼過ぎに研究所の人が大きな荷物を抱えながら、慌てて走っていた。

・昨日の昼過ぎに研究所に10人くらいの男の人が入っていった。

 その後男の人たちは慌てた様子で別れて走っていった。

・研究所の人たちは鉱山の方に向かって走っていった。


「姫乃先輩が言ったとおり、目撃者は沢山いましたね」

と僕が言うと、


「そうね。集まった情報から予測すると、研究内容を目的とした集団が来たので、研究内容を持ち出して鉱山の方に逃げたってところかしら」

と姫乃先輩がまとめてくれた。

情報についても、ほとんどの人が同じ事を言っていたので間違いはないだろう。


「だとすると、次は鉱山ですかね?」

と僕が言うと、


「そうなるわよね」

と姫乃先輩は言ったが、腑に落ちていなさそうだった。


「どうしました?」

と僕は姫乃先輩の様子を見て聞いてみると、


「うん。追われて逃げる人が鉱山みたいに追い込まれそうな場所に逃げるのかな?って思って。。。でも手掛かりがそれしかない以上、鉱山に向かうしかないわよね」

と姫乃先輩は答えた。


こうして僕たちは腑に落ちないところはあるにしても、鉱山に向かってみる事になった。

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