表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
81/187

81、青鰐

目の前に村をひと飲みしてしまうほどの大きな鰐の顔が地面から突き出ている。

僕たちは三大厄災の水災、青鰐を目の前にしてこれから戦いを挑む。


村を飲み込んで以降はその鰐が動く様子はない。

ただ、こんな大きな魔獣とこれから戦うのかと思うと、勝てるイメージが全く湧かない。

さっきリクに共に戦うと言ったばかりであるが、すでに逃げ出してしまいたい衝動に駆られている。

しかも相手は伝説にもなっている三大厄災だ。


「でかいだけで大したことないって事はないかな」

僕は都合の良い希望を言った。


「だといいんだけどな。まぁ見た感じは相当やばいな」

とリクは答える。

「ですよねぇ」


「でもあんなに大きいの倒せるかな?」

と姫乃先輩が言うと、


「まぁやってみるさ。みんな援護してくれ」

とリクは言ってから、剣を抜いて走り出した。


まだ青鰐は僕たちに気づいている様子はなく、先ほど食べた物を堪能しているようにも見える。

リクは青鰐との距離を詰めると、ジャンプして斬りかかった。


「爆剣!」

リクが声を上げながら剣を振り下ろす。


ドカーン!


剣は青鰐に命中すると、剣の当たった場所が爆発した。


「グォォォォォ」

青鰐が声を上げる。


すかさずリクは次の攻撃を仕掛けた。


ドカーン!


また剣の当たった場所が爆発する。


ドカーン!

ドカーン!


リクは次々と攻撃を仕掛け、その度に爆発を引き起こした。


「グォォォォォ」

青鰐が再び声を上げる。


「効いているのかな?」

と僕が言うと、

「リクのスキルは触れた物を爆発させるの。それを剣に纏わせて戦っているのよ。普通の人間くらいの大きさならば、かなりのダメージを与えることができるのだろうけど、あのサイズだとあまり期待はできないわね」

とマキは言った。


リクが攻撃を中断して、地面に着地する。

「くっそ。効いている気がしねぇ」

すると青鰐の目がギョロっと動きリクを捉えた。


「リク!攻撃がくるぞ」

青鰐の皮膚に付いている多数の鱗のような物が剥がれて、リクに向かって飛んでいく。

「やっべ」

と言って、迫ってくる鱗を剣で払うが、数が多く全てを捌ききれそうにない。

少しずつリクの擦り傷が増えていく。


「アイアンウォール」

とマキが魔法を唱えるとリクを守るように2枚の鉄の壁が出現

して、2方向からの鱗を防いだ。


「ありがてぇ」

と言って、リクは鱗を捌いていく。


鉄の壁に当たった鱗は、壁に突き刺さっていた。

鉄に突き刺さるくらいの威力はあると言うことか。

数も多いし、威力もある。

リクとマキのコンビでなければ、一瞬で終わっていたかもしれない。


リクが奮闘しているうちに僕は青鰐の死角に回る。

「月刀」

と言って、刀に力を流し込む。

発声した方が、スムーズに力が刀に流れるので、僕はこの力を使う時には発声をする。


月刀がほんのりと青白い光を放った。

刀に力が伝わった証拠だ。

青鰐はリクに気を取られて、僕には気づいていない。

僕は月刀を握る手に力を入れて、青鰐に向かって突きを放った。


グサァ


刀は青鰐の皮膚を貫き、奥に突き刺さっていく。

月刀の力を使った時は岩でも豆腐のような柔らかさであった。

しかし、青鰐の皮膚は貫く事はできたものの、岩よりも堅く感じた。

「この大きさで、岩より硬いとか反則だよ」

と僕は言ってから、刀を青鰐に刺したまま走り出す。


ズバババババッ


刀は青鰐の肉を切り裂きながら、横に移動していき切り傷から血が噴き出した。


「グォォォォォ」

と青鰐は再び声を上げた。


「どうですか!」

と僕は刀を引き抜いてから、姫乃先輩を見て言った。

姫乃先輩は顔を青ざめながら、何かを叫んでいる。


「勇くん。全力でこっちに向かって走って!早く!!」


「えっ?」

と何が何だかわからなかったが、僕は姫乃先輩が言うとおり全力で姫乃先輩に向かって走った。


ザクザクザクザク!


と僕が走り出してすぐ、元々僕のいた場所の地面に鱗が突き刺さる。


ザクザクザクザク!


鱗は走っている僕を目掛けてきていて、僕の走った後の地面を鱗が突き刺していく。


「うわぁぁぁぁ」

と僕は叫びながら、姫乃先輩の方に向かって必死に走った。


「勇くん!右に避けて!」

姫乃先輩に言われて、右に飛ぶ。

その直後、地面に鱗が刺さっていった。


「勇くん!私のところに向かって走って!」

ピンチの時の姫乃先輩の指示はいつも的確だ。

僕は指示通りに姫乃先輩に向かって走る。


鱗は次々に僕の元いた場所に突き刺さっていく。

このままでは逃げきれない。


そう思った時に、

「私の力じゃ防げない。リムちゃんガードをお願い」

と姫乃先輩がいうと、


「しかたがないのよ。やってあげるのよ」

とリムは言って、


「月魔法ムーンウォール」

と魔法を唱えた。


僕の背後に黄色の壁ができて、鱗を防いでいく。


ザクッ

ザクッ

ザクッ


と次々に鱗はムーンウォールに突き刺さって行くが、突き抜けるほどの威力は無さそうだ。

そうしているうちに、青鰐が諦めたのか鱗の攻撃は止んだ。


「姫乃先輩助かりました!」

と僕が言うと、


「ハァハァハァ。やっと乗り越えることができたわ」

と姫乃先輩はよほど集中してくれていたのか憔悴しきっていた。


「勇。リムにも感謝するのよ」

とリムはマイペースに言ってくる。


「リム助かったよ。お前は最高だな」

と僕が言うと、


「その通りなのよ」

とリムは胸を張って言った。


そうしている間もリクは鱗の攻撃を防ぎ続けている。

このままだとリクの体力が持たない。

対抗策は無いのか?と考えていると、鱗の攻撃がパタッと止んだ。


「ん?何があった?」

と青鰐を見る。


青鰐は今まで僕たちを追いかけていた目を瞑ると、ピクリ

とも動かなくなった。


「何か仕掛けてくるかもしれない。注意を怠るな」

とリクが叫ぶ。


僕はこの隙に攻撃を仕掛けた方がいいんじゃないかと思い、行動にでようとした。

その時だった。


ゴゴゴゴゴゴゴ


大地が音を立てて震えた。


「クッ」

少しでも気を抜くと、バランスを崩してしまいそうになるほどの揺れにより、僕は攻撃に出るどころではなくなった。

何とか立ちながら、青鰐の動向を見守ることしかできないでいると、


ゴゴゴゴゴゴゴ


青鰐は地面の中にゆっくりと沈んでいく。


「逃がすか!」

とリクは沈んでいく青鰐に攻撃を仕掛けようとするが、大地の揺れにより思うように追撃できず、その内に青鰐は完全に地中に潜ってしまった。

青鰐がいた場所にはどこまで続いているのかわからない大きな穴が残っている。


辺りはシーンと静まり返っている。

「にっ逃げたのかな?」

とは言ったものの、警戒は解いていない。


僕が辺りをキョロキョロと見回していると突然、


「危ない!」

と姫乃先輩が僕に抱きついてきた。

その勢いで僕は後方に倒れ込む。

その直後、


バチン!


と地面から鰐の頭が出てきて、元々僕がいた空間に噛みついた。

先程までのとてつもない大きさの鰐ではなく、大人の人間くらいの大きさの鰐だ。


「えっ?」

と僕が戸惑っていると、僕が尻餅をついている地面から、鰐の歯が生えてくる。

「勇くん逃げるよ!」

と言って僕の手を姫乃先輩は引っ張る。


「ええっ?」

と僕の思考は全く追いついていない。


姫乃先輩に引っ張られて、僕は走りだすと、


バチン!


とまたしても元々僕がいた場所に鰐の頭が出てきて噛みついた。


「なっ!?」

僕の頭も少しずつ現状を把握してきている。

多数の鰐が地面から攻撃を仕掛けてきているのだ。


再び僕の足元に鰐の牙が生えてくる。

「勇くん!ジャンプ」

僕は前に向かって跳躍する。


バチン!


「勇くん。今は避けることに専念して」

と姫乃先輩は言う。

そう言う姫乃先輩の顔は真っ青になっていた。


「わかりました」

僕は素直に姫乃先輩の言葉に従う。


バチン!

バチン!

バチン!


と次々に鰐が攻撃をしてくる。

ただし、一度牙を出してからでないと攻撃ができないようで、わかってしまえば回避する事はそれほど難しくは無かった。

4人ともに危なげなく攻撃をかわしていく。

ちなみにリムは早々に魔法で宙に浮かんで、攻撃が届かない所に退避していた。


しかし、この状態も長くは続かない。

今度は攻撃を仕掛けてきた鰐が地面に出てきた。

全長2mくらいになる鰐が多数。

それが一斉に僕たちに襲いかかってきたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ