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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
80/187

80、旅立

僕たちは洞窟を出て村に向かった。

もちろん置いていく訳にもいかないので、リムも一緒だ。


「わぁー。星が見えるのよー」

「川にお魚が泳いでいるのよー」

「この花はなんて名前なのよ。かわいいのよ」

リムは周りをキョロキョロしながら、見かける物ひとつひとつに感動しているようだった。


リムは何百年もの間、封印されていたらしい。

数百年ぶりに外に出たのだそうだから無理はないと思う。

浦島太郎状態ってやつに近いのだろう。


それにリムの中では、僕たちの旅についてくることは決定事項のようだった。

「お前たちが何と言おうと、リムはついていくのよ。それがリムの存在意義なのよ」

などと言っている。


まぁこの幼女をひとりで置いていく訳にもいかないし、確実に僕よりは強い。

一緒に旅をする事については大丈夫だろうと思う。

ただ、世界を救う男にするっていうことについては、旅をしながら徐々に諦めてもらおう。


それよりもリムはあの暗い洞窟の中で、長い間封印が解かれるのを待っていたのだ。それはそれは気の遠くなるような長い時間だっただろう。

それを僕は不憫に思った。

ようやく封印から出てこられたのだから、これからは今までの時間を取り戻すように楽しい思いをさせてあげたい。

これからの旅でリムにはいろんな物を見て、楽しんでもらおうと思った。


村についてから僕たちはいつものお店で食事をとる。

「うわぁーーなのよ」

と感動した声を上げながら、リムは美味しそうに食べていた。


そもそも月の精霊は体を維持する程度であれば、大気中のエネルギーを取り込むことができるため、食事をとる必要はないらしい。

食べ物を口に運ぶのは初めてだそうだ。

しかし、人間と同じで味覚はあるし、食べればちゃんとエネルギーに変換されるそうだ。


リム曰く、

「リムは大気中のエネルギーを取り込むなんて味気ないのはもうこりごりなのよ。これからは勇たちと一緒に食べるのよ」

と言いながらご満悦だ。


リムは勇、姫乃、リク、マキとみんなを呼び捨てで読んでいた。

幼女のくせに偉そうな話し方だがみんなから可愛がられていた。

確かに幼女でツンデレ、ゴスロリスタイル。間違いないなと思う。


そして寝る時間となったが、リムは姫乃先輩とマキと一緒ではなく、僕と一緒に寝ると言い張っている。


まぁ幼女だから問題ないと僕が言うと、

「レディに対して幼女とは失礼なのよ」

とリムはプンスカと怒っていた。

しかし、寝室に行ってベッドを見た途端に、

「ふかふかなのよぉ」

と言って大はしゃぎだった。

そのままリムは、はしゃぎ疲れたのか寝てしまった。

精霊も寝るのかと考えつつも、リムの寝顔は天使のように可愛かった。


翌朝、僕たちはいつもの修行の場所に来ていた。

月刀の力を確認する為だ。

リムは月刀には星を切り裂くほどの力があると言っていた。

まぁそれは大袈裟かもしれないが、相当な力を秘めているのだろう。

僕は期待を胸に刀を振るった。



ガキィン


リムが岩を斬ってみろと言うので、岩を斬ってみた。

しかし、岩は斬れず刀は弾かれてしまった。


「イテテテテ」


「勇は全然ダメなのよ」

とリムは言ってきた。


「そんな事を言われても。。。」

僕は月刀を見た。

岩に弾かれたのに傷ひとつ付いていない。

並の刀であれば刃こぼれしてもおかしくはなかった。

それだけでも特別な刀である事は確かであるが、


「体内のエネルギーを月刀に流すのよ」

とリムは言う。


「ふうん」

僕はエネルギーを月刀に流そうと試してみたが、感覚がわからず上手くいかなかった。


「はぁん。勇は本当にダメなやつなのよ」

と僕の様子を見て呆れたリムは、


「じゃあ今回はリムが力を流してあげるのよ」

と言うと刀の柄に触れて力を流し始めた。

漆黒の刀はほのかに光を放ち出した。

その光は青白く、漆黒の刀と合わさると何とも神秘的に感じる。


「これくらいで十分なのよ。もう一度岩を斬ってみるのよ」

と言っているので、もう一度岩を斬ってみた。


スー


と岩は何の抵抗もなく、豆腐に包丁を入れるよりも簡単に真っ二つに斬れた。


「うぉっ」

驚いて変な声を上げる僕。


「他にも月刀の秘められた力はあるのよ。でもまずは月刀に力を流す事を覚えるのよ」

とリムは言った。


僕はしばらく月刀に力流す練習をした。

さっきリムがやってくれたのを見ていたので、コツはすぐに覚えることができた。

月刀はほんの少し力を流すだけで、凄まじい効果が発揮される。

燃費も抜群の力だった。

「これならやれる」

と僕は洞窟を攻略した事もあって、これから旅を続ける自信を持つことができた。


言い過ぎではなく僕たちはこの村に来て、この世界で生き抜くための力を身につけることができた。

それもリクとマキのおかげだ。

リクたちにはいつか恩返しをしたいと思う。

それとあのコートの男のおかげでもあるかな。。。なんか悔しいけど。


僕たちは今日は村に泊まって、明日村を出て北に向かうことにした。

夜にはいつものお店でリクたちが、壮行会を開いてくれた。

「むほほぉぉ。おいしいのよぉぉ」

と言いながら、リムは今日もご満悦だ。


「おぅ。兄ちゃんたちは旅に出るんだってな。また近くに来たらよってくれよ」

この気のいい店主ともお別れだ。


リクは引き続き三大厄災を探すそうだ。

僕たちの修行に付き合ってくれた分の遅れを取り戻さないとと冗談混じりで言っていた。



翌朝、僕と姫乃先輩とリムの3人?は北に向けて出発した。

村から少し離れたところまでリクとマキが見送りに来てくれた。


「よし。俺たちはここまでかな」

とリクは言った。


「リクもマキも本当にありがとう。何か手伝えることがあったら言って。できることなら全力で手伝うから」

と僕は言った。


「リクさんとマキさんには本当にお世話になりました。私達これからも経験を積んでもっと強くなりますね」

と姫乃先輩は言った。


「ルーも頑張ったよね。もう私の妹のようなものだから、いつでも頼ってね」

とマキは言った。


「そうだな。勇と俺も兄弟みたいなもんだ。これからもよろしくやろうぜ」

とリクも言ってくれる。


本当にこの2人にはお世話になった。

感謝してもし足りない。

それでも、

「「ありがとうございます」」

と2人で答えた。


「ふん。いちおうお前たちには世話になったのよ」

と少しいじけた感じでリムが言うと、


「ふふふ。リムちゃんもまた遊びましょうね」

とマキが答えた。


「ふぬぬ!子供扱いするんじゃないのよ」

とリムは怒りながらも満更ではなさそうだった。


「じゃあまたな」

「じゃあまた」

と言って僕たちは歩き出した。



少し歩いて見送るリクたちの方を振り向き手を振った。

その時だった。


バサバサバサ!


近くにある木々から鳥たちが一斉に飛び立った。


ドドドドド!


どこかに潜んでいた獣たちも一斉に駆け出す。


「何だ?」

と僕が言った時に


ゴゴゴゴゴゴゴ


と音を立てて大地が震えた。


「何が起きてるんだ?」

「何?すごい揺れ」

「あわわわ。立っていられないのよ」


と僕たちは動揺する。


リクたちも戸惑っているようだ。


ゴゴゴゴゴゴゴ


音が近くなってきた気がする。


その時だった。

村の近く地面から村を囲むように、牙のようなものが生えてくる。


「ん?何だあれ?」


と思った時、


バクン!!


村の周りに生えていた牙が閉じて村を飲み込んだ。


「えっ?」

僕は状況がわからない。


もともと村があった場所には、地面から大きなワニの顔が空に向かって突き出ている。

大きなワニが村を飲み込んだのだ。

あの気のいい店主も気軽に声をかけてくれた村の人もまとめて。。。

僕は唖然とした。


「あわわわ。青鰐なのよ。三大厄災の水災、青鰐なのよ」

とリムが言った。


「あれが三大厄災?」

村をひと飲みする程の大きさだ。

今は顔しか出ていないが、体の部分もあるとすれば、どれほど大きいのだろうか。


「村の人たちを助けないと!」

僕はすぐにリクの元に駆け寄った。

「リク!三大厄災だ」


「わかってる。しかし、これほどとは思っていなかった」

とリクは言った。


「村の人たちは。。。」

と姫乃先輩が言うが、


「おそらく手遅れだろう」

とリクは悔しそうに言った。


「ねぇリクどうする?」

とマキも不安そうにリクに聞く。


「戦うしかないだろ。村の人たちの敵討ちだ。それにせっかく向こうから来てくれたんだ。探す手間が省けたってもんだ」

とリクは言った後に、

「勇。早速で悪いんだが手伝ってくれるか?」

と言った。


僕はゴクリと唾を飲み込んでから深く頷いた。

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