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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
79/186

79、月の精霊

僕の目の前に幼女がいる。

それは金髪ツインテール巻き巻きの女の子だった。

服装は真っ黒の洋風のドレスを着ていて、真っ黒な日傘を持っていた。

目はクリッと大きく、瞳は黄色く三日月型をしていた。

可愛らしい顔立ちで、頬を膨らませている。

頬を膨らませた顔もまた可愛いと僕は思った。


えっ?頬を膨らませている?

と僕が我に帰ると


「何なのよ!お前は!!男の子だったら世界の一つや二つ救うって言うものなのよ!」

といきなり可愛い声で怒鳴り散らした。


「そんなこと言われても。。。」

と僕が煮え切らない態度を取る。

実際にそんな事を言われても僕に世界を救う力なんかない。

姫乃先輩や自分のことすら、まともに守ることのできない自分には。


僕の思いを全く汲まずに幼女は続ける。

「お前は月刀に選ばれたのよ。月刀は本来星を切り裂くほどの力を秘めた刀なのよ。それをお前ときたら、、、ブツブツ」

と小言を続けている。


このままでは収集がつかない。

あれこれと幼女を落ち着かせる言葉を考えていると、


「それでお嬢さん。あなたのお名前は?」

と姫乃先輩が状況を打破しようと話題を変えた。


「はっ?何なのよお前は。関係のない奴がでしゃばるんじゃないのよ」

と幼女は不快な表情を浮かべる。


ピキッ

という音が聞こえてくるような、引き攣った笑顔を姫乃先輩は浮かべながら言った。

「ごめんね・・・でもお名前だけでも教えてくれるかな?」


幼女は少し考えてから

「まぁいいのよ。じゃあ名乗ってあげるのよ」

と言うと


「妾は月の精霊、リンドムーンなのよ。此度はこの男が月刀の所有者として認められたのよ。妾は所有者を補佐する為に数百年の眠りから目覚めたのよ」

と腕を腰につけて、胸を張り、ドヤ顔で言った。


「リンスムーン?」

と僕が言うと、


「リンドムーンなのよ!髪に潤いを与える物じゃないのよ!」

と言った。


「リンダムーン?」

と僕が言うと、


「リンドムーンなのよ!ジャンプしながら歌う歌じゃないのよ!」

と言った。


「パンダムーン?」


「ムキキ!もう原型がほとんど無いのよ。わざとやっているとしか思えないのよ」

とリンドムーンは言った。

リンドムーンは元の地球の知識も持っているようだ。

それにリンドムーンは精霊と言った。三日月型の瞳も精霊ならではなのだろう。


「面倒臭いからリムでいいや」

と僕が言うと、


「面倒臭いってなんなのよ。もう勝手にするのよ。」

とリムは諦めながら言った。


「リムは精霊なのか?そのへんちくりんな瞳も精霊だから?」

と僕が聞くと、


「ムキキ。へんちくりんってなんなのよ。瞳はチャームポイントなのよ」

とリムは言う。

いちいち反応が可愛らしい。


「しかし可愛いなぁ」

と言って僕は手をリムの脇下に入れて持ち上げた。

僕は一人っ子だ。妹がいたらこんな感じなのだろうか。


「ふわぁ!!!何するのよ!」

とリムは慌ててもがく。


「あはは」

と想像以上に可愛く、軽いリムに調子に乗った僕は、リムを持ち上げながらぐるぐると回った。


「あわわわ」

と慌てるリムも可愛い。

と思っていると、


ゴチン!


とリムのゲンコツが降ってきた。

「いてててて」

と頭を抱える僕。

「調子に乗るからなのよ」

とリムは言った。


「コホン。もういいかしら?」

と今度は姫乃先輩が咳払いをした。


「それでリムちゃんは勇くんの補佐をしてくれるってことなのかな?」

と姫乃先輩は仕切り直して聞いた。


「その通りなのよ。感謝しなさいなのよ」

とリムは言う。


「私の旅にリムちゃんも一緒に来てくれるってことかな?」

と姫乃先輩は改めて聞くと、


「お前たちの旅にこのリムが付いていってあげると言っているのよ。そして、お前を世界を救える男にするのよ」

あー。自分でリムって言いだしたよ。

何気に気に入っているなと僕は思った。

しかし、世界を救う男にするっていうのは勘弁だ。そんなことに巻き込まれたくはない。

それに僕たちの旅にこんな幼女を連れて行けるわけがない。

早めに諦めてもらった方がいい。


「それでリムは何ができるんだ?旅は危険で危ないんだぞ」

と僕が諭すように言った。


「はぁ。お前は何を言っているのよ。何でもできるに決まっているのよ」

とリムは言う。


「いい機会なのよ。リムの力を見せてあげるのよ」

と言った後に、僕に向かって指を刺しながら、

「おいお前。リムと戦うのよ」

と言い出した。


「なっ。幼女と戦えるわけないだろ!」

何か話が変な方向に進んでいると思いながら僕は言った。


「ムキキ。幼女って言うななのよ」

と言うとリムは急に手を広げてこちらに向けた。


「月魔法ムーンライト」

するとリムの手のひらから黄色い光が放たれた。

黄色い光は僕の頬を掠めて後ろの壁に命中する。


ドッゴーーーーン


大きな破壊音と土煙を上げて、壁が崩壊していく。


「なっ」

僕はあまりの威力に冷や汗をかいた。

まともに当たっていたら即死じゃないか。。。



「ふふん。久しぶりに唱えたから狙いがそれたのよ」

とリムは言う。


「はっ?当たったら死んでるじゃないか!」

と僕がツッコミを入れると、


「ふん。その時はその時なのよ。甘く見ていると本当に死ぬのよ」

とリムは顔を逸らしながら言った。

リムは次の魔法を唱える準備に入る。


「くそっ。」

と言いながら僕は刀を構えた。

幼女に向かって斬りかかる訳にはいかないが、その素振りさえ見せればと思い、僕がリムに向かって走り出した。

すると、


「月魔法インビジブル」

と魔法を唱えた。

途端にリムの姿が見えなくなった。


「消えた?」

と僕は相手を見失って立ち止まる。


「はりゃあ」

と突然リムが僕の目の前に現れて殴りかかってきた。


「ぶおっ」

僕はいきなり現れたリムに対処できず、拳をまともに受けた。

しかし、リムの拳はあまりにも軽く、全く効かなかった。

そのまま僕はリムの服の背中の部分を掴む。


「何するのよ!」

とリムは言いながらバタバタしていた。


「はぁ。何なんだ。。。」

と僕はため息をついた。

その時、


ゴゴゴゴゴゴゴ


洞窟が大きく揺れ始めた。


「やばい!崩れるぞ」

とリクが叫ぶ。

先程リムが放った魔法の衝撃で洞窟が崩れ始めたようだ。


僕はリムを見た。

「リムは知らないのよ」

と言いながらプイッとしている。


このぉと思いながらも、

「とりあえず逃げよう!」

と言って僕は片手でリムを抱えて走り出した。

次々と落ちてくる、石を掻い潜りながらみんなで必死に走る。


「あわわわ。おろすのよぉぉぉぉ」

と洞窟の崩れる音とリムの悲鳴が洞窟内に響き渡った。


ドッゴーーーーン!


何とか通路に逃げ込むと、さっきいた開けた空間は崩れた壁で埋まっていた。


「ふぅ。危なかった」

と僕は汗を拭いながら言った。


「・・・もう降ろすのよ」

とぐったりとしたリムが言う。

僕はリムを降ろした。


「ううう。もう散々なのよ」

とリムは言った。


「でもリムが原因でこうなったんだから、仕方がないだろ」

と僕が言うと、


「そんなこと知らないのよ」

とそっぽを向いた。

このやろぉ。ここはしっかりと教育しておかないといい大人になれないと僕は思った。

人生の先輩として物申してやろうと思った時、


姫乃先輩が、

「リムちゃんめっ!!」

と言った。


「ひゃん」

リムは驚きのあまり、ビクッとした。


「リムちゃん。悪いことをしたらごめんなさいでしょ。ちゃんと謝らないと めっ!よ」


と姫乃先輩が言うと、またリムはビクッとしてから、

「ごっごめんなさいなのよ。。。」

とリムは素直に謝った。

「それでよし」

と姫乃先輩は満足そうに言った。


謝った後にリムがボソボソと言っているのが聞こえた。

「何故かあの人には逆らってはいけない気がするのよ。あの人の前ではいい子にした方がいいのよ」


その後、洞窟が崩れてくることを心配しながら、またきた道を辿り洞窟の外を目指す。

リムを置いていく訳にはいかず、とりあえずは一緒に連れていくことになった。

洞窟の外に出るとすでに夜になっていたようだ。


こうして僕たちの初の洞窟探索は無事に終わった。

目的の刀も手に入れたし、リムも仲間?に加わった。

初めての洞窟にしては十分な結果だろう。

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