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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
77/187

77、デッドタイガー

僕はリクに言われたとおり、開けた場所に入る入口から中の様子を伺う。

当たり前だが、中は真っ暗でよく見えない。


「うーん。暗くてよくわからないな」

と僕が言った時だった。


ガサッ


と中で何かが動く音がした。

「!!」

僕はびっくりして、息を潜める。


しかし、その後も物音はするものの、それ以上中の様子を把握する術がなかった。

もう出たとこ勝負で行くかなと思っていると、


「私に任せて」

と姫乃先輩が言った。


「私の糸で中の様子を確認してみるわ」

姫乃先輩は地面に両手を向けると、何十もの糸を出した。

糸は地面に沿ってゆっくりと開けた空間に向かって進んだ。

糸の先はすぐに見えなくなったが、まだまだ先に伸ばしているようだ。

姫乃先輩は集中して糸を操っていた。


しばらく経つと姫乃先輩の手から糸を離して言った。

「何となくだけど中の様子がわかったわ」

「えっ」

と僕は驚く。


「糸を伸ばして中の様子を調べてみたの。中には3体はいると思う。その3体は二足歩行かな。左側の方に2体、右側の方に1体かな。かなりの重さを感じたから、私達よりも大きいと思う。まぁ地面を這わせただけだから、飛んでいたり、壁に張り付いていたりしていたらわからないけどね」

「それと中の広さはテニスコート2つ分くらいはあると思う」


「凄っ」

僕は言った。


「大したもんだな」

とリクも褒めていた。


「じゃあお前たちで倒してこい」

とリクが言った。


「こんなに暗いと戦いにくいな」

と僕が言うと、


「灯りは任せて」

と姫乃先輩は言った。


「私が中を明るくするから、勇くんは敵を確認できたら攻撃してくれるかな」

と姫乃先輩は続けた。


「りょっ。了解です」

と僕は答えると戦闘の構えをとった。


姫乃先輩は右手を斜め上に向けて伸ばして魔法を唱える。

「ライトボール」

姫乃先輩の手のひらからバスケットボールくらいの光の玉が生まれて、放たれる。

放たれた光の玉は、ある程度の高さで停止して、中を照らした。


光の玉のおかげで、中の様子が見れるようになった。

さっき姫乃先輩が言ったとおり左前方に2体、右前方に1体の魔獣がいる。

3体共に虎が二足歩行をしているような魔獣だった。


「おっ。デッドタイガーか。なかなか強いから気をつけろよ」

とリクは気楽に言う。


魔獣たちはいきなり現れた光の玉に意識を奪われており、こちらに気づく様子はない。

僕は1体の方に狙いを定めた。


僕は通路から中に入り、1体のデッドタイガーを目指して駆け出した。

当然デッドタイガーは僕の突進に気づくが、体は反応していない。


「うぉぉぉ」

と叫びながら、デッドタイガーに向けて刀を横に振り抜いた。


ズバッ


振り抜いた刃はデッドタイガーの腹を切り裂いた。

デッドタイガーは腹から大量の血液を噴き出しながら倒れた。


「まず1体倒した」

と言って僕は2体のデッドタイガーを見る。

2体は敵の存在を認識して戦闘態勢に入っていた。


2体は同時に僕に向かって走り出す。

「速い」

僕が思っていた以上にデッドタイガーの動きは速い。


「よし」

と僕は2体のデッドタイガーを迎え撃つため、気合いを入れる。


その時、1体のデッドタイガーの動きが鈍くなった。

姫乃先輩の糸が1体のデッドタイガーに巻き付いて動きを封じている。

「1体は任せて」

と姫乃先輩は僕の方を見て言った。


「電撃」

姫乃先輩は手から電撃を放つ。


バリバリバリバリ


電撃は糸を伝わり、デッドタイガーの全身に電撃が流れていく。


「グォォォォォ」


とデッドタイガーが叫び声をあげた後に倒れた。


一瞬でデッドタイガーを倒した姫乃先輩を見て

「次は僕の番だ」

と言って向かってくるデッドタイガーを見る。


デッドタイガーは僕との距離を縮めながら、右手を振りかぶった。

鋭い爪で切り裂くつもりなのだろう。


「グォォォォォ」

と叫びながら、右手を振り下ろしてくる。

グリズリよりは数段速いが、対応できない速さではない。

僕は振り下ろされた右手を横にかわしてから刀を斬り下ろした。


デッドタイガーに刀は命中して、切り口から血液が噴き出す。

しかし、

「浅い」


僕はそのまま刀を切返して、再度デッドタイガーを攻撃するが、デッドタイガーは後ろに飛んで斬撃をかわした。


すかさず僕はデッドタイガーとの距離を詰めて、斬撃を放つが野生の身のこなしでこれもかわす。


「かわすのが上手いな」

と僕が言っている間に、デッドタイガーは僕に飛びかかってきた。


デッドタイガーは爪を立てて、僕を切り刻もうと何度も攻撃をしてくるが、僕は冷静に刀で防ぐ。

デッドタイガーは焦れてきて、牙の生えた大きな口で噛みつこうとしてきた。

チャンス!と思い、僕は後ろにジャンプする。


ガキン!


とデッドタイガーの噛みつきは空振りに終わる。


タッ

と僕は着地すると同時に

「飛神!」

と発生して足を蹴り出した。

一瞬にして刀を振り抜き、デッドタイガーの後方に移動する。


ブシャァァァァア


少し遅れて、デッドタイガーの腹が半分ほど切れて、血液が噴き出した。

そしてそのままデッドタイガーは倒れた。


「ふぅ。何とかなった」

と言いながら姫乃先輩の元に歩いていく。


「2人とも良くやったな。デッドタイガー相手に全く危なげない勝ち方。俺が教えた甲斐があったな」

とリクが言うと、

「俺じゃなくて、俺()()でしょ」

とマキが突っ込んだ。


「勇くん凄かったよ」

と姫乃先輩も褒めてくれた。

姫乃先輩の方がもっと凄かったけど。。。


僕たちはデッドタイガーを倒した所で休憩をとった。

持ってきていた腰を下ろしながら干し肉を食べる。


僕と姫乃先輩は戦いの興奮が冷めずに、デッドタイガーとの戦いの話をしていた。

戦いを経て、僕たちにも少しゆとりが生まれてきたようだ。


1時間ほど休憩をした後、僕たちは洞窟の奥に向かって出発した。

リクが言うには刀がある場所は、そんなに遠くないそうだ。

再び僕が先頭となり洞窟を進んだ。

グリズリや蜘蛛の魔獣などが襲ってきたが、僕と姫乃先輩で難なく対処する事ができた。


そして、また開けた空間が広がっていた。

僕は通路の入り口から、中の様子を伺う。

広さはさっきデッドタイガーと戦った場所とおなじくらいだが、この空間には、灯りがついていた。

ランタンの中に発光石が入っており、光を放っている。

それがいくつも設置されていて、視界は充分だった。


奥の方には大きな模様が見える。

「あれが刀を封印している物かな?」

刀はここからははっきりとは見る事ができない。


とりあえず魔獣の気配は無さそうだ。

「大丈夫そうなので、中に入ってみましょう」

と僕は3人に言った。

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