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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第四章 出会
76/189

76、いざ洞窟へ

翌朝、僕たちは朝食を取ってから洞窟に向かう。

洞窟までの距離は遠くはなく、洞窟の中もそれほど深いわけでは無いようなので、多少の食料と水を持って出発した。


3時間ほど歩くと岩山に穴が空いている。

そこが洞窟の入口らしい。

「前にも言ったが、戦うのはお前たちだぞ」

とリクは言うので、僕はゴクリと唾を飲み込み気合いを入れ直した。


僕たちは洞窟に入っていく。

僕、姫乃先輩、マキ、リクの順番で進んだ。

「灯りは任せて」

と言ってマキが発光石というものを光らせてくれた。

この世界にもライトの代わりがあるようだ。


マキのおかげで洞窟の中でもかなりの明るさが保たれているが、それでも10m先は真っ暗で何も見えない。


元の地球にいた頃には様々なゲームで何百という洞窟をクリアしてきた。

新しい洞窟に入る時は、どんな仕掛けが待っているのか、どんな敵が待ち受けているのかワクワクしたものだが、現実は不安しかない。

いきなり魔獣が飛び出してこないかビクビクしながら進んだ。


洞窟の中は水気がなく、周りはゴツゴツした岩が連なっている。

「もう少し進めば道も広くなるはずだ」

と後ろからリクの声が聞こえてきた。


少し進むとリクの言うとおり道幅が少し広がった。

2人が余裕で並んで歩く事ができる程度だが、先ほどまでの道の狭さでは、何かが襲ってきてもかわしようがなかったので、少し安心する事ができた。


しばらく歩いても魔獣と遭遇する事は無かった。

「全然魔獣と遭遇しないですね」

と僕は姫乃先輩に言うと、

「勇くん。それはフラグだよ」

と笑いながら答えた。


その時、前方からドカドカと足音が聞こえた。

「何かくる」

と僕は刀に手をかける。

「あーあ。勇がフラグを引いたぜ」

とリクは余裕をかましていた。


足音がする前方を注視していると、少しずつ姿が見えてきた。

熊のような魔獣が二足歩行で向かってきていた。


「ひぇぇぇ」

と僕は相手が熊だったことに驚き体がすくむ。


「おっ。グリズリだな。勇がひとりで戦ってみろよ」

とリクは相変わらずの余裕っぷりだ。


「えぇぇ。僕ひとりぃ」

と僕は不満を露わにするが、誰も手伝おうとはしない。

僕は覚悟を決めて、グリズリを見るともう既に、右手を振り上げた状態で目の前に迫っていた。

そのままグリズリは右手を振り落とす。


「うわぁぁぁ」

と心の中で叫んだ僕だが、グリズリの振り下ろす右手はそれほど速さを感じる事はなく、易々と交わす事ができた。

そして、今まで打ち合ってきたリクと比べると、グリズリは隙だらけに見えて、振り下ろしたグリズリの右手に刀を向けた。


スパッ


一瞬のうちにグリズリの右手が切れて宙に舞う。

そのまま僕は刀を返して、グリズリの首を狙った。


スパッ


宙を舞っている右手が落ちる前に、今度はグリズリの首が宙を舞った。


ドサッ

ドサッ


少しの時間差で右手と首が地面に落ちた。


ブシャァァァァア


と首から血液を噴き出しながら、巨体も倒れていく。


ドゴン


僕は自分の力が信じられなかった。

「すごいよ!勇くん!」

と言って姫乃先輩が喜んでくれている。


「まぁなかなかだ」

とリクから見ても及第点だったようだ。


僕はホッとして刀を握っている手を見た。



さらに洞窟を進んでいくと、


キラッ


天井の方で何かが光った気がした。

なんだろう?と思い凝視すると、


キラッ

キラッ

キラッ


と光が一気に増えた。

天井には何十ものコウモリがいて、光はコウモリの目のようだ。

「げっ」

と僕が一歩引くと

「任せて!」

と姫乃先輩が言った。


バサバサバサ

そう言って姫乃先輩が一歩前に出ると、コウモリ達がこちらに目掛けて一斉に飛び立った。

「姫乃先輩!」

僕は心配して姫乃先輩に声をかける

姫乃先輩は僕の方を向いて、「大丈夫」と言わんばかりに頷いてから、


「マルチ!」

姫乃先輩は両手を前に出してスキルを発動した。

姫乃先輩の両方の手のひらから、多数の糸が飛び出す。


グサッ

グサッ

グサッ


その糸は意志を持ったかのように動き周り、次々とコウモリを突き刺していった。


グサッ

グサッ

グサッ


相当な数のコウモリを次々と突き刺さしていき、あっという間にこちらに向かってくるコウモリはいなくなった。

下には息絶えた多数のコウモリが落ちている。


「すっげー」

僕は唖然としてその光景を見ていた。


「どうだった?」

と姫乃先輩は満遍の笑みで僕に言ってきた。


「すごいです!あんなに沢山の糸を一度に操るなんて」

と僕がいうと、

「でしょー!あの糸はね、ほぼ自動なのよ。私が敵と認識したものを自動で攻撃するの。すごいでしょ」

姫乃先輩は褒めて褒めてとばかりに言ってくる。


「はい。本当に凄いです!」

と僕は本心から言った。


「ルー。いい感じだったわよ」

とマキも姫乃先輩を褒める。

「うん。うん」

と姫乃先輩は満足そうだ。



再び僕たちは洞窟の奥に進んでいく。

しばらく進むと少し開けた空間があるようだ。


「勇。気をつけろよ。こういう開けたところには魔獣がいる事が多い」

とリクは言った。


「そうなの?」

と僕が聞き返すと、


「ああ。この洞窟にいる魔獣は、当たり前だがここに生息しているわけだろ?」

「うん」

「だったら狭い通路なんかよりも、広いところに住みたいと思うのは当然だろ」

とリクは言った。


「確かに」

「そして開けた場所にいる魔獣は、この洞窟の中では強者の部類になる。強いものがいい場所を確保するのが当然だからな。だから、この開けた場所に魔獣がいるとすると、さっきのグリズリやコウモリよりも強い魔獣の可能性が高いってことだ」

とリクは説明してくれた。


「なるほどね。わかったよ」

と僕は気を引き締めた。


「ついでに言うと、こんな開けた場所があった場合は、いきなり入らずに、まずは中の様子を伺うのがセオリーだ。まぁ暗いから見える範囲は限られるけどな。それでも音などで魔獣がいるのかがわかる場合が多い」


「なるほど。そんな事思いもつかなかった。勉強になったよ」

おそらくこういう知識はいろいろと失敗を繰り返しながら身につけていく物なのだろう。

僕たちはリクに出会えた事で、事前に教えてもらうことができている。

本当にありがたい事だなと、改めて思った。

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