71、同郷
「俺はリクだ。勇者リクと呼ばれている。」
と言った。
「勇者!?」
「そうだ。そしてこいつはマキ」
と言って女性の名前を言った。
「マキです。よろしくね」
とマキも笑顔で挨拶をした。
マキさん美人だなぁと思いながら、ニヤけていると
「勇くん」
と姫乃先輩のドスの効いた声が聞こえて、僕は背筋が凍りつきながら、
「はひっ。よろしくお願いします」
と僕は答えた。
「この村に何のようできたんだ?」
とリクは言った。
「僕たち戦う力をつけたくて、何でもこの村の近くにすごい刀があると聞いたので」
と僕は答えた。
「あぁ。あの刀か。近くの洞窟の奥にあるぜ。持って行きたいのならば持っていけばいい」
とリクは言う。
「そうなんですね!こんなに早く見つかって良かった!」
と僕は言ったものの、すぐにひとつの疑問が浮かんだ。
「あのぉ。そんなに有名なのになんで刀は誰も持っていかないのですか?」
と僕が聞くと
「持っていかないんじゃない。持っていけないんだよ」
とリクは答えた。
「洞窟に強い魔獣がいるとかですか?」
「洞窟には確かに魔獣はいるが、そこまで強いわけではない。刀は特別な力で封印されているんだ。解除方法がわからないから誰も持っていけないんだよ」
とリクは説明してくれる。
「そんなぁ。せっかくここまで来たのに、、、」
と僕が落胆すると、
「まぁせっかく来たんだから刀を見に行ってもいいんじゃないか?」
とリクは言う。
「ただ洞窟の魔獣も弱くはないから、お前らで辿り着けるかはわからないけどな」
とも言った。
「リクさんは強いんですよね。良ければ私達に同行していただけませんか?」
と姫乃先輩が言うと。
リクは左手を顎に当てながら、
「んー」
と少し考えると、
「よし。お前らの洞窟探索に俺とマキも同行してやろう」
と答えた。
「やった!」
と僕が言ったところで、
「ただし、同行するだけで戦うのはお前たちだ。本当に危なくなったら助けてやるけどな。洞窟で戦える力をつけるために、少しの間ここで修行しろ。それが条件だ」
とリクは言った。
願ってもない事だった。どのみち今の力では何処かでつまづく。
早くアシリアに行きたいという気持ちはあるが、弱いままでは行っても意味がないかもしれない。
「わかりました。よろしくお願いします」
と僕は答えた。
「よし。じゃあ今日はこの村に泊まるか。出会った記念に飯を奢ってやる」
とリクは言った。
僕たちはリクの後に続いて街に入った。
「リク。そいつは誰だ?まぁリクが連れているなら怪しい奴ではないのだろうが、、、」
「リク。この前はありがとう。助かったよ」
「リク。今度家に飯食いにこいよ」
など村の人がひっきりなしに声をかけてくる。
リクは丁寧に返事をしながら進み、食堂と思われる建物についた。
「よぉリク。いらっしゃい」
店主と思われる男が、店に入ったリクに声をかける。
「おぅ。おやじさん4名大丈夫かい?」
とリクが聞くと
「おいおい。この店がそんなに混んでいるわけねぇだろ。好きなところに座りな」
と笑いながら言った。
「この店はこの村で唯一の食堂だ。もっと夜中になってくれば酒呑たちで少しは賑わうんだが、まぁ村人が相手だから客はそれほど多くはない。だが味はそんなに悪くないぜ」
とリクは言うと、
「おいおい。味は絶品だろ」
と店主からツッコミが入った。
リクは笑いながら返事している。
「適当に頼んでいいか?」
とリクが聞いてくる。
「はい。お任せします」
と姫乃先輩は答えた。
早速料理が運ばれてきた。
焼き魚、煮物、焼きそばみたいな物など、日本人の僕には馴染み深い料理が多かった。
「さぁどんどん食ってくれ」
とリクが言ってくれたので、
「「いただきます!」」
と言って僕たちは食べ始めた。
久しぶりのまともな食事に幸せを感じた。
お腹の減りが少し落ち着いた頃にリクが言った。
「お前たち日本人だろ」
「そうなんです。少し前に転移してきました」
と僕が答えると、
「俺たちもなんだよ」
とリクは言った。
「俺たちは兄妹でな、家にいる時に青白い光に2人で巻き込まれたんだ」
「なっ。そうなのですか?」
「そうなのよ。その時の兄さんの慌てようったら。ウフフ」
マキが笑う。
「うっせーな。仕方ないだろ。家の中からいきなりファンタジーの世界だぜ」
とリクが慌てて言う。
「まぁ俺たちは運がいい方だ。俺たちは街の近くに転移したので、魔獣に襲われる事もなかった。転移直後に魔獣に襲われて殺されるなんってのもザラにあるらしいしな」
僕たちもそうだったな。と思いながら話を聞く。
「それに最初に行った街で師匠に出会ってな。この世界での生き方や戦い方を教えてくれた。そのおかげで俺たちは今日まで生きていられているんだ。だから俺もお前に少しでも教えてやろうと思ってな」
ありがたい話だ。僕たちもこの世界で生き抜く力を身につけなくてはならない。
「「よろしくお願いします」」
と僕と姫乃先輩は言った。
「おぅ。でも修行は明日からだ。今日はよく食って、よく休め」
「「はい」」
「あのぁリクさん」
と僕は質問しようとすると、
「リクでいいよ」
と言ってくれた。
「じゃあリク。リクは勇者って言っていたけど、、、」
「あぁそれな。俺はこの村も含めて何度か魔獣の襲撃から村を守ったことがあるんだよ。そしたら村の人達が、やれ勇者だ、やれ救世主だと囃し立てて、そのまま噂が広がって勇者リクってのが定着しちまったんだ。はずいんだけどな」
「でもさっきは自分で勇者って名乗ってたじゃん」
と僕がツッコミを入れると、
「勇者って言った方が、強そうでお前たちも俺に教えをこう気になるだろ」
と言った。
確かにいきなり修行してやると言われても、はいお願いしますとは言わないかも知れない。
勇者って言う言葉は強さをアピールするにはもってこいかも知れない。
「リクはこの村へは何をしに来たの?」
と僕は聞いた。
「最近この近くで三大厄災のひとつが出没すると聞いてな。討伐をたのまれたのだが、情報が少なくてな。この前も他の村が襲われたんだが、誰一人として生き残りはいなかったそうだ」
「三大厄災!?怖そうな名前だね」
と僕が言うと、
「何か知っていることはないか?」
と聞いてきた。
「何も私達はしらないわ。ごめんなさい」
と姫乃先輩は言った。
「三大厄災って何なの?」
と僕は聞いた。
「昔この世界を滅ぼそうとした魔獣のしもべって話だが、詳しいことは知らん」
とリクは言った。
「三大って言うくらいだから、3体はいるってことだよね?」
と僕は聞いた。
「あぁ。虎型の魔獣と鰐型の魔獣がいるそうだ。あと1体はわからないな。それで、この近辺に鰐型の魔獣が出るそうだ」
とリクは答えた。
「遭遇しないことを切に願うよ。。。」
と僕が言うと、
「まぁ俺たちはそれを倒しに来たんだけどな」
とリクは笑いながら言った。
「リクも洞窟に行ったみたいだけど、刀を持って帰ろうとしたの?」
と僕は話を変えた。
「まぁな。別に欲しかったわけじゃないが、興味本意で取りに行ったんだ。でも抜けなかった」
「抜けなかった?」
「何が興味本意よ。めちゃくちゃ悔しがっていたでしょ」
とマキがツッコミを入れると
「うっせーよ」
と笑いながらマキのツッコミに答えた後、話し始めた。
「刀はな、壁に突き刺さっているんだよ。その壁には魔法陣のような紋様が描かれていてな、刀を抜こうとしても抜けないし、壁を破壊しようとしてもできないんだよ」
「だから封印って言ったんだね」
「あぁ。どこの誰の仕業かはわからないけどな」
とリクは言った。
「刀には名前はあるのかな?」
「しらねーなぁ。まぁ自分の目で確かめろよ。まずは明日から修行だ」
とリクは言って食事は終了となった。
この夜はリクの伝手で村の空いている家屋に泊めさせてもらった。
リクと僕、マキと姫乃先輩で分かれてだったが。。。




