62、精度
柱が青白く光出した。
柱の周りには何人もの魔術師のような人たちが囲み、何やら、詠唱をしているようだ。
「なっ何が始まったの?」
と僕は星に聞いた。
「柱の力を解放するんだよ。それには大きな魔力が必要だ。だから今詠唱して魔力を柱に溜めてるんだ。魔力が溜まりきって発動すれば、俺っちたちの目的は達成ってわけだ」
と星は言った。
「あとどれくらい?」
と僕は聞いた。
「さぁな。教える義理もねぇことだが、これは本当にわからない。なにせ俺っちたちも初めてだからな」
と星は答えた後に続けた。
「まぁそういうわけだから急いだほうがいいぜ。ひょっとすると5分もかからねぇかもしれねぇからな。ハハハ」
と笑っている。
「それじゃあ急がないとだね」
と僕は言って構えた。
「ハッ」
僕は手を前に出して魔法を発動させた。
星の足元から石の針が飛び出る。
頭の中で「鉛筆」を唱えたのだ。
星はジャンプして石の針を難なくかわす。
宙にいる星に向けて僕は「氷弾」を放つが魔法が発動された頃には星はすでに地面に着地していた。
「クッ」
発動のスピードが遅い。
「ワハハ。さすがのおめぇも魔法名を言わないと精度が落ちるなぁ」
星の言うとおり発動スピードも精度もかなり落ちている。
星を捉えることはできない。
でも泣き言は言っていられない。
やりながら精度を上げて行くしかない。
僕は手を前に出して、「氷弾」を放った。
星は軽く避ける。
「ハッ」と言う掛け声と共に僕は、続けて「鉛筆」を唱えて、星の足元から石の針が飛び出す。
星は後ろにジャンプして「鉛筆」をかわす。
僕は星の着地場所を見越して「金平糖」を唱えるが、発動が遅く、発動前に星は着地した。
「発」
とそれでも僕は「金平糖」の針を出すが、星は難なくかわしてきた。
かわされてはいるが、星は今までのような余裕は無さそうだ。
「もっと早く、精度を高く」
と僕は呟きながら、次の魔法を放つ。
僕が右手を星の足元に向けて「氷山」を唱える。
星の足元から氷の針が突き出す。
それを星が横にかわしたところに「かまいたち」を放つ。
「かまいたち」は範囲が広い魔法なので、星は防御して、真っ向から受けた。
しかし、星にダメージは見られない。
僕も「かまいたち」は足止め用だと思っている。
防御で足が止まったところで、「氷弾×3」を頭の中で唱える。
大きな氷の塊が星の3方向に発生して、星に向かって飛んでいく。
「チッ」
と星は舌打ちをして、上に飛んで逃げようとした。
しかし、僕は「沼」を星の足元に発生させた。
足元が泥沼になり踏ん張りが効かず、星は飛ぶことができない。
「くそっ」
と言う星。
3つの氷の塊が星に命中した。
ドッガーン!
大きな破壊音と土煙が上がる。
「どうだ!?」
僕は星を見る。
すると星は拳に纏っていた炎を全身に纏い防御していた。
「あれだけの攻撃でもほぼダメージ無しか」
と僕は少し落胆したが、すぐに気持ちを切り替えた。
「でも少しずつ魔法を唱えないことにも慣れてきた。集中だ。もっと精度を上げるんだ」
「もっと早く、精度を高く」
「もっと早く、精度を高く」
「危ねぇ危ねぇ。魔法の発声無しを会得してきていやがる。炎を纏ってガードしなかったらヤバかったぜ」
と星は言った後に
「なかなかやるじゃねーか。でもまだまだ俺っちを倒すには足りねぇな」
と言ってきたが僕は
「もっと早く、精度を高く」
「もっと早く、精度を高く」
と呟きながら集中しており、星の声は耳に入ってこなかった。
「なっ。こいつ、、、」
と星は僕の異様な雰囲気を見て驚き、気を引き締めたようだ。
緑柱の放つ光が徐々に強くなってきている。
しかし、集中している僕の目には入っていない。
「もっと早く、精度を高く」
「もっと早く、精度を高く」
僕は手を星に向けて「水龍」を唱える。
手の平から龍を形取った水が放出されて、星を目指して飛んでいく。
星は斜めにジャンプして「水龍」を交わすが、交わした先にはすでに唱えた「金平糖」のエネルギー体が発生していた。
「発」と僕が発声するとエネルギー体から針が飛び出した。
星は「金平糖」をかわしきれず体に数箇所の傷を負ったが、大したダメージはない。
そのまま地面に着地してこちらに突進してくる。
僕は「氷山」を唱えて牽制するも、星はジャンプでかわしこちらに向かってくる。
僕は星の目の前に「氷壁」を作った。
ドン!
いきなり目の前に現れた氷の壁に星は止まることはできずに激突した。
しかし、もともとの身体能力で氷の壁をぶち破り星は突っ込んでくる。
僕は「跳躍」を唱えて後方にジャンプして距離を取るが、星もジャンプして追いかけようと腰を落とした。
僕は星に向かって「氷弾」を飛ばす。
「うぉぉぉ」
と叫びながら構わずジャンプした星は両手をクロスさせて氷弾に真っ向から突っ込んだ。
ガシャーン!
と氷の塊は星に砕かれて、そのまま星はこちらに向かってくる。
空中にいる僕は真上に目掛けて「炎弾」を放ち、その発射した勢いで星の軌道から外れた。
そのまま僕は地面に着地して、星も身体能力で強引に軌道を変え地面に着地した。
「ヘルファイア」
星はすかさず右手を振るって、先程倒木を瞬時に炭に変えた炎を僕に放つ。
「氷壁×3」
と僕は氷の壁を作り、すかさず「跳躍」で距離を取る。
氷の壁は少しの間炎を防いだが、炎の熱量が勝りもともと僕がいた場所を炎が飲み込んだ。
僕がジャンプから着地した時には、すでに星は僕に向かって突進してきていた。
僕は「氷弾」で牽制するが止まらない。
「沼」を唱えるも今度は星が気づいてかわしてくる。
星は僕との距離をかなり縮めてからジャンプし
「しねや!」
と言って上空から燃え盛る拳を振りかぶり、僕に向けて振り下ろしてくる。
僕はこの時を待っていた。
威力のある魔法を星に当てることは至難の業だ。
だが今星は上空で身動きが取りにくい。
また、攻撃する態勢で防御も取りにくいし、しかも近距離。
このタイミングしかない。
僕は両手を前に出して魔法を唱えた。
「雷神」
ゴォォォォ
僕の両掌から高密度の電撃が直線上に放出された。
「うぉぉぉ」
と叫ぶ星を電撃は飲み込んだ。
電撃はそのまま天に向かって走り、天まで伸びる一本の柱となった。




