56、師匠
僕たちは食事を終えて食堂を出た。
2人は転移者保護施設に住んでいるそうで、施設に帰るそうだ。
「じゃあまたね。必ず会いに行くから」
と僕は手を振って2人を見送った。
僕は名残惜しく、2人を見送る。
2人との距離が離れた時、後ろから声をかけられた。
「ウィン。久しぶりだな」
僕は振り向くと
「師匠!!」
そこには師匠が立っていた。
「あの2人は?」
と師匠が聞いてくる。
「友達です!さっき友達になったばかりですが・・・」
と僕は答えた。
「そうかウィンに友達ができたか」
と師匠は喜びながら僕の頭を撫でて、歩いていく2人を見た。
「ん?あいつは・・・」
師匠の目つきが厳しくなった。
「師匠どうしました?」
僕は聞いた。
「いや。何でもない」
と師匠は言った。
「そうかあいつも来たか・・・」
と師匠は笑みを浮かべながら呟いたが、僕はこれ以上聞く事はできなかった。
その後僕は街から出て、久しぶりに師匠との時間を過ごした。
師匠はあっという間にウサギを捕まえてきて、捌いた後焚き火でウサギの肉を焼いている。
昔もよくこうしていたなぁと僕は思った。
僕も師匠に教えて貰って、ウサギをつかまえることはできるようになったが、捌くことはどうしても苦手だった。
ウサギが焼ける間、僕はいろんな話をした。
「師匠!僕もSランク冒険者になったんだよ!」
「そうか。その年でSランクはすげーな」
と師匠は言った。
「てへへ。でも冒険者ギルドに行くと、みんな異物を見るような目で見てくるから嫌だな」
と僕は言った。
「まぁそういう奴らはそうさせておけばいいさ」
と師匠は言った。
「この前村が魔獣に襲われたの。かなり厳しい戦いだったんだけど、最後は村の人も協力してくれて、何とか勝つことができたんだよ」
「そうか。大変だったな。でもウィンよく村を守ったな。すごいぞ」
と師匠は僕の頭を撫でながら褒めてくれた。
「うん。ピンチに村の人が来てくれた時は嬉しかったなぁ」
と僕がいうと
「そうか。ウィンもそのうち大切な仲間ができる。仲間ってのはお互いに信頼し合っているもんだ。仲間は絶対に裏切るなよ」
と師匠は言う。
僕はさっき別れたイサミンたちを思い出しながら、
「わかったよ」
と僕は答えた。
ウサギが焼けたようだ。
師匠はナイフで肉を剥いで食べる。
僕にも勧めてくれたが、僕はさっき食べたばかりでお腹いっぱいだったので断った。
「あのね昨日は盗賊討伐の依頼を受けて、盗賊を退治してきたの。そしたらその依頼は僕を殺す罠だったんだよ。ひどくない?」
「黒の組織は僕が邪魔みたい。。。」
と僕が言うと
「そうか。黒の組織がとうとう動き出したか。ウィンの力を知れば対応してくるだろうな」
と師匠は言った後に
「あいつらはとんでもなく強いぞ。ウィンはこれから黒の組織と関わらずにはいられないだろう。絶対に死ぬなよ。危なくなったら逃げるんだ。命さえあればまた次の機会がある」
と言った。
「うん。わかったよ。あいつらは柱の解放を目指しているみたい」
と僕は言うと
「そこまで知っているのか。実は俺は柱の解放を防ぐために動いている。今は柱を封印できる力を持っている者を探しているんだ」
と師匠は言った。
「ウィンももう大人だ。自分で考えて正しいと思うことをしろよ」と師匠は続けて言った。
「はい。師匠、柱を封印する力を持っている者って、探すあてはあるの?」
と僕は聞くと
「リンドムーンという物らしいが、それ以上はまだわからん」
と師匠は答えた。
「そっか。僕は村の役目が落ち着いたら、友達を助けに行くんだ。そのついでにそのリンドムーンも探してみるよ」
と言った。
「さっきの友達か?」
と師匠は聞いてくる。
「うん。始めて友達ができたんだ。高梨勇くんと姫乃さんって言うんだ。2人とも師匠と同じ転移者だって。師匠の言っていたドラ○もんも知っていたよ」
と答えた。
「姫乃・・・そうかあの子が」
と師匠はボソッと言った。
「姫姉がどうかした?」
と聞くと
「いや。何でもない。そうかウィンに同年代の友達ができたか。良かったなウィン」
と師匠は言った。
「うん。とっても楽しい時間だった」
「俺もウィンと同じくらいの歳の奴らと会ったな。面白い奴らだった。今度紹介してやるよ。きっといい友達になれる」
と師匠は言った。
「えっ!ほんと!?やったぁ!友達たくさんだ」
と僕は嬉しくなった。
その後も師匠といろいろな話をした。
僕は盗賊討伐や新しい友達などいろいろなことがあって疲れていたのか、そのうちに寝てしまった。
チュンチュン
鳥の囀りが聞こえて僕は目を覚ました。
焚き火は消えていたが、師匠はもう起きていた。
「おはようございます」
と僕は言うと
「よう。よく寝てたな」
と師匠は言った。
僕たちは簡単な朝食をとった。その後、
「ウィン。俺はまたリンドムーンを探しに行く。ウィンは自分のやりたいことをやりたいようにやれ」
と師匠は言った。
そして、
「また会おうな」
と言って去っていった。
僕は師匠を見送った後にベルンの街に戻り、村の人へのお土産を買うことにした。
「何がいいかなぁ」
と呟きながら街を歩く。
「やっぱり食べ物かな。普段食べることがない美味しいものを買っていこう」
と言って僕は美味しい食べ物を探す。
「んー。よし、この牛肉の串焼がいいかな」
僕は牛肉のお店を見つけて、これにしようと思った。
牛肉はなかなか食べる機会がないし、何より美味しい。
串焼ならみんなに配れるからね。
「おじさーん。この牛肉の串焼をあるだけくださーい」
と僕は店の人に言った。
「おー。全部買ってくれるのかい。ありがとうよ」
と言ってから袋に入れてくれた。お代を払って品物を受け取った僕は村に向かうことにした。
「みんな喜んでくれるかなー」




