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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
三章 孤独な魔法使い
53/186

53、IOW

風虎を完全に封じて、戦いは次の局面だ。

「疲れたからそろそろ終わりにさせてもらうよ」

と僕は言った。


「勝つのはわしじゃがな。お前さんももう体力の限界は近いじゃろ」

とハロルドは言う。

そのとおり僕の体力は限界に近いし、このお爺さんとやり取りするのも限界に近い。


「炎熱じゃ」

ハロルドは広範囲の炎魔法を放った。

僕は「跳躍」でジャンプして炎をかわし、上空で魔法を放つ。


「雷針」

電撃の針がハロルドに向かって飛んでいく。


「なんの。水玉」

ハロルドは水の玉を放って雷針を防ぐ。


僕は地面に着地して、すかさず魔法を唱える。

「かまいたち」

今度は風の刃がハロルドを襲う。


「イレイス」

ハロルドは魔法をかき消してから、次の魔法を放つ。


「雷」

雨雲が急速に集まっていく。

その魔法は一度見ている。

僕は雨雲に向けて魔法を放つ。


「水龍」

僕の手の平から龍を形取った水が放出されて、雨雲を雲散させた。


「氷山」

続けて僕は魔法を放つ。

ハロルドの足元からツララのような氷の針が突き出す。

「ぐぉぉ」

ハロルドはバックステップでかわすものの、腕を掠める。


「火炎弾」

僕は間髪を入れず、次の魔法を放つ。

大玉の火の玉がハロルドに向かって飛んでいく。


「おおお。イレイス」

ハロルドは焦りながらも魔法をかき消した。


「氷弾」

と僕は追い討ちをかける。

氷の塊がハロルド目掛けて飛んでいく。

ハロルドは必死にかわそうとするが、完全にはかわすことができず、氷の塊はハロルドの左肩を抉り取った。


ブシャァァァァア


ハロルドの左肩から血が噴き出す。

「ギャアア」

ハロルドは左肩を抑えながら叫ぶ。


「鉛筆」

僕はさらに追い討ちをかける。

地面から尖った石がハロルドの体を目掛けて飛び出す。

ハロルドは痛みからか体勢を崩してよろけ、「鉛筆」はハロルドの体ではなく左腕に直撃し、ハロルドの左腕を吹き飛ばした。


「ギャアアァァァ」

左腕は宙を舞い、ハロルドは絶叫する。


とどめだ!と思い僕は次の魔法を唱えようとした時にハロルドは言った。

「まっ待ってくれ」

「ん?」

僕は次の魔法を唱えるのを一旦停止して、ハロルドの次の言葉を待った。

「わしは左腕を失ってしまったしもう戦えん。助けてくれんか」

とハロルドは言い出した。

そう言っている間もちゃっかりと魔法で左腕の応急処置をしているところは見逃さない。

ハロルドの魔法では傷口を塞いで止血する程度で精一杯で無くなった腕を戻す事はできなさそうだ。


「んー。どうしようかなー。僕にとってはお爺さんを殺す理由も無いけど、殺さない理由も無いしなー」

と僕は考えながら口に出した。


「わしには家族もおるんじゃ」

とハロルドは言う。


「だから?」と僕は聞き返した。


「・・・。わしがいなくなったら家族も路頭に迷ってしまうんじゃ」

とハロルドは続ける。


「それで?」

とまた聞き返す。


「・・・。だから。その。助けてくれんか?」

とハロルドは言った。


「それは僕には関係ないしなー。でもまた襲ってきたら面倒だし、やっぱりここでころ、、、」

と僕が言いかけているところを遮ってハロルドは言った。


「まーった。まった。待つのじゃ」

と言った後に

「わしにできる事なら何でもするからこのとおりじゃ」

と続けて言った。


「んー。お爺さんにやってもらいたい事かー」

と言って少し考えた後に僕は言った。


「・・・。特にないねー」


「・・・」

ハロルドは青ざめて絶句したが、


「そこを何とか。このとおりじゃ」

とまだ諦めない。


「んー。どおしようかなー」

僕はこのやり取りが面倒くさくなってきた。


「じゃあさ。何で僕を狙ったのかな?」

僕は聞いた。

「それは言えんのう」


「・・・」僕は手を挙げて掌に魔力を溜めた。


「言う言う言う!言うから待つのじゃ!」

とハロルドが言うので、僕は手を下ろした。


「これを言ってしまうと今度は組織に命を狙われかねんのじゃが」とハロルドは言いながら理由を話し始めた。


「実は組織はお前さんが邪魔なのじゃ。正確にはあの村を守るお前さんがじゃがな」


「あの村で組織は何をしたいのかな?」

とさらに僕は聞いた。


「それは言えんのう」


「・・・」僕は手を挙げて掌に魔力を溜めた。


「待った待った待った。言うから言うから。その手を下げてくれ」とハロルドは言う。僕は本当に疲れてきた。


「お前さんの村には柱があるじゃろ?」

ハロルドは僕に問いかけてくる。

「うん」


「その柱の力を解放したいのじゃ。解放するのにはそれを守るお前さんたちが邪魔ということじゃ」

とハロルドは言った。


「解放するとどうなるのかな?」

とさらに聞くと。


「それは言・・・」

僕は手を挙げて掌に魔力を溜めた。


「わかったわかったわかった。早まるな。それは言うと言おうと思ったんじゃ」

とハロルドは言う。

いい加減に早く終わりにしたい。


「お前さんもこのAEは元はひとつだった地球から別れたものだと知っておるじゃろ?」

「うん」


「その別れた状態をどうやって維持されているか知っておるか?」とハロルドは聞いてきた。

「いや。知らないよ」

と僕は答えた。


「別れた地球は元のひとつに戻ろうとしておる。それを7本の柱の力で2つの地球がひとつに戻らないように維持しておると言うわけじゃ。じゃから7本の柱の力を解放すると」


「地球が元に戻る?」

僕が言う。


「そうじゃ。2つの地球が統合される。わしら黒の組織は地球の統合を目指しておる」

「組織の中ではインテグレイション オブ ワールド。IOW計画と呼んでおるがな」

とハロルドは言った。


「地球の統合・・・」

僕には壮大すぎて理解が追いつかない。


「地球が統合されるとどうなるのかな?」

と僕は聞いた。


「わしにはよくわからんのう。ただ人々は只ではすまんじゃろうのう。地形は大幅に変わって、人類は滅びるかもしれんのう」

とハロルドは言った。


「そんな・・・何でそんなことを・・・」

と僕は動揺して膝をついた。


「じゃっ。わしは話すことを話したから帰らせてもらおうかのう」とハロルドは言ってそそくさと逃げて行った。


ハロルドが見えなくなって、僕はそのまま仰向けに倒れて空を見上げた。雲がゆっくりと流れている。


「僕たちの村はこのAEのために代々柱を守っていたのかな」

「神父様はこのことを知っているのかな」

「この前襲ってきた魔獣も黒の組織が関係しているのかな」

「また黒の組織は襲ってくるんだろうな」

「また僕が戦わなきゃいけないのかな」

「何度も何度も戦わなきゃいけないのかな」

「これからも僕は村と柱を守り続けなくてはいけないのかな」

「いつまで守りきれるのかな」

「僕は一生あの村から出る事はできないのかな」

「僕には一生同年代の友達はできないのかな」


考える事は沢山あった。どれも答えが出る事はなかった。僕は空を見ながら考えていた。

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