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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
三章 孤独な魔法使い
51/186

51、酸性雨

黒の組織は剣と魔法を混合して攻めてきた。

まずは剣を持つ内の3人が僕に斬りかかる。僕は武器を持っていないため、「跳躍」で距離を取った。すると、ジャンプの着地点を目掛けて火の玉が降り注いでくる。

飛んでくる火の玉を僕は「かまいたち」でかき消した。しかし、残りの剣を持つ2人が詰めてきており、着地と同時に斬りかかってくる。

「氷壁」

僕は氷の壁を作り攻撃を防ごうとするが、1人がイレイスを放ち、氷の壁が消失する。

残りの1人が僕に向けて剣を振り下ろすが、間一髪僕は剣を回避した。

距離を取るために「跳躍」を唱えて、ジャンプしようとしたところで、敵は振り下ろした剣を今度は切り上げた。


グザッ


剣は僕の右腹から左肩にかけて斬り裂く。僕はジャンプで距離を取るものの切口から血が吹き出した。


「ハイケア」


僕は即時に回復魔法を使って傷を治すが、流した血液は戻らない。

「クッ」

僕は敵を見た。剣を持つ5人は追撃をしようと僕に向かってくる。


「かまいたち」

僕は魔法で牽制するが、即座にイレイスでかき消された。


「鉛筆」

地面から突き出した石で1人を貫くも他の敵の勢いは止まらない。


「氷壁」

僕は敵の足元から氷の壁を出して2人を遮る。しかし残りの2人はそのまま突進してきて、僕に切り掛かってきた。


僕は最初の斬撃を交わす事には成功したが、2人は連続して突きを放ってきて、僕の腹と左腕を突き刺した。

「グフッ」

僕は痛みを堪えながらも、魔法を唱えた。

「かまいたち」

至近距離の魔法はイレイスされる事なく2人の体を切り裂いた。

その瞬間、魔法の部隊が放った火の玉が僕を捉える。


ドッカーーン!


僕は突かれた剣が体に刺さったまま、魔法の直撃を受け吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

「グググ」

体中に激しい痛みが走る。気を抜くと意識を失ってしまいそうなほどの痛みだ。

「意識を失っちゃだめだ」

と言いながら、体に刺さった剣を抜いて、ハイケアを唱える。

すると見る見るうちに傷口は塞がっていった。


「いたたたた。やばいなこれ」

と言いながら起き上がる。

かなりダメージを受けたが、相手の人数も減ってきてはいる。

黒の組織はリーダー1人、剣を持つ者が2人、魔法が5人だ。

「よしだいぶ減ってきたぞ。あと8人か」

僕が次の行動に出ようとした時に、リーダーが魔力を溜め始めた。

「大きいのがくるな」

と僕は呟いて構えた。


「アシッドレイン」

リーダーは魔法を唱えた。

ポツリ、ポツリ

僕の周りで雨が降り始めた。

ジュー

雨の雫が落ちたところから、何かが焼ける音が聞こえてうっすら煙が上がっている。

僕の肩に一粒の雫が落ちた。

ジュー

「あつっ」

雫が落ちたところの服が溶けて肌が焼けただれた。

「これは酸か」

と言うと次第に雨足が強くなってきた。

僕は何ヶ所かを焼かれながら、結界を張る。

「結界」

結界は酸の雨を完全に防いだ。

酸の雨とは考えたなぁ。

でもこの程度の魔法にこんなに溜めが必要なんて大したことないかな。などと悠長に考えていると、


「イレイス」


敵は結界を消失させてきた。

「わっちゃっちゃ」

僕は慌てて避けようとするが、雨を避ける事はできず至る所に酸を受ける。

「あちちちち」

僕の体から多数の焼けた煙が上がる。

「結界」

たまらず再度結界を張るが、


「イレイス」


たちまちかき消されてしまう。

イレイスは結界をかき消しているが、アシッドレインはかき消されていない。いや、正確にはかき消しているのは、イレイスの範囲の雨で全てをかき消していないというところか。

「ようしこうなったら」

と僕は言ってから、

「魔法創造」

僕の脳内で魔法が構築される。

「猿真似みたいでカッコ悪いけど仕方がない」

と言ってから構築した魔法を放つ。


「アシッドスコール」


「何っ」

とリーダーは驚く。

黒の組織がいる場所にポツリ、ポツリと酸の雨が降り始め、雨足は次第に強くなる。


「ギャァ」

雫が当たった者が悲鳴をあげ出した。

あっという間に本降りになるが、リーダーの放った魔法とは、範囲も雨量も酸の強さまでもが段違いだ。


「ギャァァァァ」

悲鳴の数が増えてくる。


「イレイス」

魔法の消去を唱える者もいるが、範囲内の雫を消すだけでさしたる効果はない。


「グワァァァァ」

もう黒の組織は立っていられる者もおらず、地面に倒れながら酸の雨を受けている。

いつの間にか僕の方に降っていた酸の雨が止んでいた。リーダーが魔法を維持できなくなったのだろう。


数分後、もう叫び声を上げるものはいない。

全ての者が事切れたのであろう。

酸の雨は未だに降り続いており、もう動かない物体を焼き続けている。

僕は魔法の発動を停止し、それと同時に雨も止んだ。


辺りを見渡すと焼けただれた黒の組織の人だった物が散らばっており、草や家屋にも影響が出ているという惨たらしい状態であった。

「うーん。この魔法は周りへの影響も大きいから、あまり使うべきではないね」

と僕は言って、自身の傷を回復した。

傷は魔法で治ったものの、衣服はボロボロだし体力はかなり落ちている。


「まだ敵はいるのかな?もうヘトヘトなんだよね僕」

と言ってさらに村の奥に進んだ。



周りの民家を見渡しながら進んでいるが、今のところ人がいる様子はない。

「しかし、本当にボロボロだなぁ」

家屋を見回しながら僕は言う。

使われていない村というのは本当のようだ。

「オウカワ村もあのまま魔獣に滅ぼされてしまったらこんな風になっちゃうのかな」

などと呟きながら散策する。

自分の育った村がこんな風になってしまうのはやはり寂しい。

こうならない為にも自分は頑張るんだと改めて思った。


新手はまだ現れてはいない。

しかし、村に依頼しにきたワットさんは、相手は魔導士と言っていた。さっき戦ったリーダーは魔導士っぽくはなかったので、ボスが他にいるはずだと僕は考えていた。

「念の為、結界を張っておくか」

と言いながら僕の周りに結界を張る。さっきの戦いでかなりの血を流している。傷は回復できるが、流した血液は戻らない。これ以上は血を流すとやばいので、用心に越した事はない。


しばらく歩くと村の最奥が見えてきた。

「村はここまでかぁ。本当にいないのかなぁ」

と僕は言った。


空を見上げるといつの間にか雨雲ができていた。

「天気も崩れそうだし早く帰りたいな」

と僕は言った。その時だった。


ドッカーーン


僕に向かって落雷があった。

僕は結界を張っていたのでダメージは無いが、横から声が聞こえた。

「ほう。今の魔法でも無傷とは恐れ入った」

声の方を向くと、家の後ろから年配の男が出てきた。いかにも魔導士というに相応しく、杖を持ち深緑のローブを纏っている。こいつが本丸かと思いつつも相手に聞いてみる。

「キミがこの村のボスでいいかな?」

「いかにも。わしがこの部隊の長、ハロルドじゃ」

とハロルドと名乗る魔導士は笑みを浮かべながら言った。

このお爺さん生理的に無理だと思いながら僕は構える。

この村での最後の戦いが始まった。

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