49、仲間
「跳躍」僕はジャンプで砦に向かう事にした。
歩いていけば2、3時間で行く事はできるが、ここは一気に飛んで行っちゃおう。
僕ジャンプで砦の近くまで行った。
残りの距離は歩いていこうと思って、のんびり歩いていると遠くから声がした。
誰かが戦闘をしているようだ。
「巻き添えは喰らいたくないからね」と僕は言って岩陰に隠れた。
岩陰から覗いてみると、朝にベルンの街で冒険者ギルドまでの道を教えてくれた人たちだった。
「やっばぁい。どおしよぉ」僕はまたドキドキしてきた。
「助けた方がいいのかなぁ。余計なお世話かなぁ」と僕はどうしていいかわからず迷っていた。
その時男の人の足元から光が発生した。
「いくぞっ!飛神!」と男の人が発生すると同時に、男の人は数十mを一瞬で移動して刀を振り抜いていた。
「ぐわぁぁぁあ」と相手の男の人はは声をあげながら吹き飛んでいた。
「あれ?斬らなかったんだ。やさしいんだなー」と僕は独り言を言う。
「でも助ける必要はなかったなー。いきなり出て行ったら何だこいつは?と思われていたかもしれない。あぶない。あぶない」
戦いに勝って男の人ととても綺麗な女の人が喜び合っている。
僕はドキドキが取まらず、何とかお話しする事はできないかななんて考えていた。その時だった。
グザッ
綺麗な女の人のお腹が氷の槍に貫かれた。
「えっ?もうひとりの女の人が綺麗な女の人を攻撃した?なんで?なんで?」状況がわからず僕は困惑する。僕がマゴマゴしている間に男の人たちが何か話をしてから、女の人が倒れている男の人を抱えてこの場からいなくなった。
「なんでこんなことするんだよぉー」と男の人が叫ぶ。
僕はいまだにどうすれば良いか迷っている。
男の人と綺麗な女の人が話をしているが、女の人は長く持ちそうにない。僕が行って治してあげる事もできるが、真剣な話をしている所に入って行く勇気がなかった。でもこのままでは綺麗な女の人が死んでしまう。
「どうしよう。どうしよう」僕は非常に困っている。
僕が戸惑っているうちにも綺麗な女の人の命が燃え尽きようとしている。
「やっばいよ。どぉしよぉ」と未だにマゴマゴしていた。
「えぇい。もうどうとでもなれ」と言って僕は魔法を唱えた。
「フルケア」
僕の使える最上位の回復魔法だ。
綺麗な女の人の腹を貫いている氷の槍が無くなり、傷口を癒していく。
「ふぅ。良かったぁ。でもこれはかなりの魔力を使うんだよなぁ」と魔力が減っているのを感じながら呟いた。
急に女の人の傷が癒えたため、男の人は何が起きたのかわかっていない様子。当然だよねぇ。
男の人は誰かいるのかと思って、周りをキョロキョロしている。
やばい。今見つかったら何で答えればいいんだろう。ギリギリまでもじもじしてましたとでも答えるのだろうか。しかも今は心臓もバクバクしていてうまくお話しできそうにない。
「どうしようー」と僕はオロオロしている。このままだと何れは見つかってしまう。
「うー」僕は考えたがいい案は思いつかなかった。
「もういいや。どうにでもなれ」と言って魔法を唱えた。
「転送」
男の人と女の人が光に包まれて消えた。転送は物質を任意の場所に瞬間移動させる魔法だ。僕の行ったことのある場所に限定されるのと、距離もそこまで遠くには移動させる事はできない。魔力消費も半端ないので、戦闘などで使うのも難しい。今回はベルンの街に送り届けた。
「あそこなら大丈夫でしょ」と僕は言った。
「あーあ。でもお話ししたかったなぁ。心の準備が全くできていなかったからなぁ」
僕はその後砦の跡地に行った。
「ふぁぁ。やっぱりここの景色は綺麗だなあ」
僕は瓦礫の上に座って、辺りを眺めながら言った。
僕はその後はのんびりとした時間を過ごした。
夜になって干し肉を食べながらふと昼間の3人組の事を思い出した。何があってあんなことになったのかはわからないけれど、男の人は本気で傷ついた女の人を心配していた。自分の無力さに涙を流しながら。僕が傷ついた時にそばで涙を流してくれる人はいるだろうか。僕はその女の人が羨ましいと思った。
「ひとりは寂しいな」
僕はそのまま眠りについた。
翌朝僕は冒険者ギルドに向かった。
もう道には迷わなかった。えへん。
冒険者ギルドに着くと、すぐに奥の部屋にとおされた。
奥の部屋ではすでにハルマンさんと案内人の方が待っていた。
「すみません。遅くなりました」と僕は言った。
「いえいえ。ご足労ありがとうございます」とアルマンさんは言ってから案内人を紹介してくれた。
「こちらが案内人のシードさんだ。戦闘はできないので道案内のみとなります」
「シードです。よろしくお願いします」とシードさんは言った。
僕とシードさんは2人で街を出て目的地に向かっている。
僕は久しぶりにひとりじゃない事に少しウキウキしていた。
仲間と旅ってこんな感じかなぁなんて思いながら。
そんな時にシードさんは話しかけてきた。
「ウィンさん。最初に言っておくけど、俺は戦いは全くダメだからな。今回もたまたま俺が場所を知っているから抜擢されただけだ。途中で魔獣が出てきたら俺を守ってくれよ。場所だけ教えたら俺はすぐに退散するから巻き込まないでくれよ」と言った。
「わかりました」と僕は答えた。なんだかなぁ。
僕のウキウキ気分は一瞬にして崩れ去った。
途中で魔獣と遭遇する事もなく順調に道中は進んだ。
そして盗賊たちが住み着いていると言う村の手前までたどり着いた。
「あそこが目的の村だ。じゃあ俺は案内したからな。じゃあな」と言ってシードさんはすぐに帰ってしまった。
「ふぅ」と僕はため息をついた。
またひとりか。。。
「まぁ。いつものことだね」と言った。




