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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
三章 孤独な魔法使い
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47、夢

村への魔獣の襲来から数ヶ月が経った。

村の人たちは家屋の修復をほぼ終えて、今は田畑などの修復が主な作業となっている。

そうなると僕の出番はあまりない。たまに水が必要だから魔法で水を出す程度だった。

僕は愛用のハンモックでのんびりお昼寝をしていた。

「やっぱり昼間からゴロゴロできるのって気持ちがいいなぁ」


すると神父様が、僕のところにやってきた。

「ウィンよ。お客様が来ておるぞ」

「僕にお客様?珍しいですね」と僕は返すと

「ベルンの冒険者ギルドの方じゃ」と神父様は教えてくれた。

「あっなるほど。そういうことですか」と僕は合点がいったように答えた。こう見えても僕はSランク冒険者だ。えっへん。

Sランクになると指名の依頼が入るようになる。ベルンのような大きな街の冒険者ギルドの方が僕のところに来る用事なんて決まっている。指名の依頼だ。


僕はお客様のところへ向かった。

教会の客室につくと、ひとりの男性が座っていた。

「お待たせして申し訳ございません」と僕は言った。

「いえいえ。お忙しいところすみません。私は冒険者ギルドのワットと申します。Sランクのウィン様に指名の依頼がありましたので伺わせていただきました」とワットさんは言った。

やっぱりなぁ。読みどおりだね。と言ってもギルドからの用事なんて他には考えられないけどね。 

「実はウィン様には討伐依頼をお願いしたいのです」とワットさんは言う。

「何で僕に指名なのかな?」と聞くと

「討伐対象は魔導士だそうです。魔法を巧みに扱うため、依頼主は魔導士のウィン様に」

「魔法創生士。僕は魔導士じゃなくて魔法創生士だよ。間違えないでくださいね」と僕は話を遮って言った。

「その魔法創生士のウィン様ならば、魔法に対抗できるのではと考えたそうです」ワットさんは言い直してくれた。

「詳細は冒険者ギルドにて説明をさせていただきたいと考えております」

「そうですか。少し考えさせていただけますか」と僕は答えた。

「えっ。あっはい。明日まではこの村に滞在させていただきますので、それまでにご回答をお願いいたします」ワットさんは、僕が考えると言ったので驚いたようだ。

僕は今までこの手の話を断ったことがない。基本的には即O.K.をしている。その僕が考えると言ったので面食らったようだ。


僕は少し考え事をしようと教会を出た。

アリサさんとすれ違うと、アリサさんは

「冒険者ギルドの人が来てるんでしょう。また依頼を受けるのね」と言った。

「はい。でも依頼を受けるかどうかは、これから考えようと思います」と僕は返した。

「えっ。あっ。そうなのかい?」とアリサさんは言った。

「はい。どうかしましたか?」アリサさんの様子がおかしいかったので聞いてみた。

「いや。なんでもないわよ」と言って去って行った。


僕は村の外れまで歩いて行った。

座りながら木に背を持たれて、少し考え事をした。

今まではあまり考えもせずに依頼を受けたり、村を離れたりしていた。

でもこの前の魔獣の襲撃。

僕が村を離れていなければ、もっと被害は少なかったかもしれない。

今回の依頼で村を離れた時にまた魔獣が襲撃してくるかもしれない。今度はもっと大勢の被害者が出る可能性もある。僕は村を離れるべきではないのではないだろうか。

そう考えると依頼を承諾することができなかった。

「んー。でもなー。依頼者は困っているだろうしなー」僕は空を見上げながら言った。


「ウィンや。」しばらく僕はボーっとしながら考えていると、横から声をかけられた。声の方を振り向くと神父様がいた。

「神父様。どうしてここに?」と聞くと

「アリサがなお前の様子が変だと言っててな。見に来たんじゃ。ウィン何か考え事か?」と神父様は言った。僕は依頼を受けるか受けないかで悩んでいることやその理由を神父様に話をした。

「ウィン。お前は本当に優しい子じゃな」神父様は言った。

「ウィンよ。お前は将来の夢などはあるか?」と神父様は聞いてくる。

「夢。。。」夢か。将来。。考えたことがなかったな。やりたいこと。なにかあるかな?

「んー。正直言って今は無いです。でもいつかは外の世界をたくさん見て、自分のやりたい事を見つけたい。そんな気はします」と僕は答えた。

「そうか」神父様は続けて言う。

「そうであれば依頼は受けるんじゃな。わしたちもいつまでもウィンに頼ってばかりはいられん。ウィンがいなくても村を守れるようにしていかんとな」

「ウィンや。わしたちの事は気にするな。自分のやりたい事をやりなさい。村のみんなもそう思っておるよ」

「神父様、、、」僕は少し考えてから言った。

「ありがとうございます。僕、依頼を受けます」


僕は早速ワットさんのところに行った。

「ワットさん。僕この依頼受けます」と言った。

「そうですか。ありがとうございます。では近日中にベルンの冒険者ギルドまでお越しください」とワットさんは言った。

「これで私も肩の荷がおります」とも言ってホッとした顔をしていた。


翌日僕はベルンの街に向けて出発する。

ワットさんは昨日ひと足先にベルンに戻って行った。

「では行ってきます!依頼が終わったらもどってきますね」僕は神父様に挨拶をした。

「ウィンよ。気をつけるのじゃぞ。Sランクの依頼なのじゃ。相当危険な依頼じゃろうて」神父様は言う。

「はい。心して臨みます」と僕は言って出発した。


オウカワ村からベルンの街までは歩いて1日程度の距離だ。

魔法「跳躍」を使えば数時間で到着するだろう。久しぶりの遠出なのでのんびり歩いて行きたい気持ちはあるが、依頼主も困るだろうと思い僕は魔法を使って行く事にした。

「跳躍」と魔法を唱えてジャンプする。ひと飛びで数百mを進んだ。そして数時間後、、、僕は道に迷っていた。。。

「まっまぁ。依頼主は急いでいるわけではないかもしれないしいいよね」と僕は誰にでもなくいい訳をしていた。


ようやく街が見えるところまで来ることができた。

しかし、道に迷っているうちに辺りは暗くなってしまっていた。

「だいぶ暗くなってしまったな。これじゃあもう街には入れないかな」

と言って僕は一晩野宿をして、早朝に街に入る事にした。

焚き火をつけて持ってきた干し肉を炙る。空を見上げると満開の星空が広がっている。

「僕のやりたいことか。見つかるのかな」と呟くが当然返事は返ってこなかった。

たくさんの星を見ながら、「僕はどこの星に向かうのかな」と呟いた。

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