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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
三章 孤独な魔法使い
45/186

45、ハビロ

「くっ。持ち堪えることができない」

俺は今魔獣と戦っている。

村に魔獣が攻めてきているのだ。今までも魔獣が村を襲ってくることはあったが、こんなに大々的に襲ってきたのは初めてのことだ。

戦える者は各方面に回って魔獣を抑えているが、村の入口は残すところ俺だけ。まずい。増援まで何とか持ち堪えなければ。

「くっそ。ウィンのいない時に限ってこんなことが起きるなんて」と言いながらサーペントを斬り倒す。返す刃でもう一体の魔獣も斬った。

「ウィンがいてくれれば」と言った後に

「ダメだ。いつも俺たちはウィンに頼りすぎだ。あんなに強くてもアイツはまだ子供なんだ」と言いながらまた1体の魔獣を斬り倒す。

「はぁはぁはぁ」もう限界が近い。早く増援よ来てくれと思った時だった。

ストン

目の前にウィンが降り立った。

「炎弾」ウィンは魔法で魔獣を一掃する。

「ウィン助かったよ」と俺は言った。またウィンに助けられてしまったと自分の不甲斐なさを痛感しながら。

「ハビロさん。状況は?」とウィンが聞いてくる。

「かなり悪い。だいぶ村にも入ってきちまっている」と俺は答えた。

「ハビロさん。ここは任せました。僕は村の中の魔獣を倒します」

と言ってウィンは村の中へ走っていった。

「任せろ」と強がったが、ウィンには聞こえなかったかもしれない。

しばらくすると増援が来た。俺はホッとした。まだ、新手は来ていないが油断はできない。

「ウィンはどうした」俺は増援の1人に聞いた。

「村の中の敵を倒しながら、教会に向かっているようだ」と答えが返ってきた。


そうこうしているうちに、10体のストロングウルフが現れた。

「グルルル」ストロングウルフは俺たちを攻撃対象と認識したようだ。ストロングウルフは上位の魔獣だ。これが10体は正直きつい。村人の中でもすでにビビってしまっている者もいた。

「入口を死守するぞ」と言って俺は飛び出した。

村人たちも俺に続く。

俺はストロングウルフに斬りかかるが、交わされてしまう。ストロングウルフはすぐさまに俺に噛みつこうと飛びかかってくるが、俺は何とか剣で防ぎ、足でストロングウルフを蹴って距離を取った。

ストロングウルフは再度飛びかかってきたが、俺はかわしながら剣を振り下ろし、ストロングウルフの首を斬った。ストロングウルフはその場に倒れた。

周りを見渡すと、かなりの数の村人が倒れていた。

俺はストロングウルフにマウントを取られて、肩を噛みつかれている村人のところに駆け寄り、ストロングウルフの首を剣で斬った。

「ううう」噛まれていた村人はもう戦えそうに無い。

「下がっていろ」と俺は言って他の村人を助けるべく向かう。

そして村人と向かい合っているストロングウルフに俺は斬りかかった。しかし、俺の攻撃はかわされてしまう。

俺の攻撃をかわしたストロングウルフは爪を立てて村人に飛びかかった。村人は反応できていない。

「危ない!」と俺はいいながらストロングウルフと村人の間に割り込む。

グザッ

「くっ」ストロングウルフの爪が俺の腹に突き刺さる。

「ハビロさん!」村人は心配して声をかけてくる。

「大丈夫だ」と俺は言って爪が腹に刺さったまま、剣をストロングウルフの首に突き刺した。

ストロングウルフが果てたことで腹に刺さった爪が抜ける。

俺の脇腹の服が大量に赤く染まる。

俺は膝をついて、痛みを堪えるが次の瞬間、他のストロングウルフが俺の顔を打ち払った。俺は吹っ飛び意識を失った。


ふと俺は意識を取り戻した。

俺は村人の背中に担がれていた。

「ここは?」俺が聞くと

「ハビロさん気がついたか。今俺たちは教会に向かっている」と答えた。

「ストロングウルフはどうした?」とさらに聞いた。

「ウィンが来て全て倒してくれたよ」と村人は答えた。

「そうか。またウィンに助けられたちまったか」と俺は言った。

「そのウィンはどうした?」俺が聞くと

「・・・」村人は答えない。

「どうしたんだ?」と再び聞いた。すると

「ストロングウルフを倒した後に、地響きのような音が近づいてきて、ウィンは俺たちに教会に逃げるように指示して、ウィンはその場に残った」と村人は言った。

「ひとりでか?」と聞くと。

村人はコクンと頷いた。

「なっ。誰も残らなかったのか」と言うと

「少し見えたがあれはおそらくジャイアントアーケロンだ。俺たちが残っても何もできない」と村人は言った。

「ウィンひとりに任せると言うのか?まだウィンは子供だぞ」と俺は言った。村人は何も答えなかった。

「降ろせ」と言って俺は地面に立つ。

「うっ」腹の傷が痛む。出血もひどいようだ。

「おい。無理するな。すぐに治療を受けないと」と村人が言うが

「うるせぇ。ウィンひとりに戦わせるものか」と俺は言った。


俺は大声で周りに呼びかけた。

「みんな聞いてくれ!」腹が痛むがそんなことは言っていられない。

「今ウィンがジャイアントアーケロンとひとりで戦っている。ウィンは強い。俺たちの中で誰よりも強い。いつも俺たちはウィンに頼ってばかりだ」

周りがザワザワしている。

「でもそれでいいのか?いつまでもウィンひとりに任せっきりでいいのか?ウィンは仲間だいつも俺たちの事を第一に体を張ってくれている大切な仲間だ。大切な仲間をひとりで戦わせたいのか?いつまでもウィンに頼ってばかりで仲間と言えるのか?」

「でも俺たちが言っても何もできないだろ」とひとりの村人が言った。

「確かに俺たちひとりひとりの力は弱い。ウィンの足元にも及ばない。ジャイアントアーケロンと戦っても勝てないだろう」

「でもやれることはあるはずだ。少しでも力になれることはあるはずだ。ウィンはひとりで戦っている。あんな子供がひとりで村の命運を背負わされて戦っているんだぞ。近くにいて勇気づけることもできるかもしれない。少しでも心の負担が軽くなるかもしれない」

「俺たちの村を俺たちで守らなくてどうするんだ!」と俺は思いの全てを村人たちに訴えた。

「そうだな。俺たちでも何かできるかもな」「ウィンはいつも笑顔で何でも引き受けてくれた。俺たちは頼りすぎたな」「ウィンがひとりで苦しんでいる可能性もある。助けてあげないと」村人たちから声が聞こえる。

「それじゃあまずは行けるものを集めよう。少数で行くより大勢の方がいい。10分後に人を集めてここに集合だ!」と俺が言うと

「おー」と言って散らばっていった。


俺はその場に座り込んだ。傷口が痛む。立っているのも辛い。でも頑張りどころだ。村人たちの意識を変えるんだ。これからの未来のために。ウィンのために。


10分後。

村人たちはウィンを助けに行く人を集めて戻ってきた。

50名以上はいるだろうか。俺は嬉しかった。こんなに村のために体を張れる奴がいるんだ。まだまだ村の人間も捨てたものじゃ無い。

「ウィン待っていろよ」


ようやくウィンが戦っているのが見えてきた。

ウィンは泣きながら必死にジャイアントアーケロンと戦っていた。

俺たちを守るために。

ウィンがジャイアントアーケロンに吹き飛ばされた。

俺たちはようやくウィンの元に辿り着いて俺は言った。

「ウィン。俺たちはお前に守られてばかりじゃないぞ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ズドーーーーン

足を引っ張られてバランスを崩したジャイアントアーケロンは斜めに倒れる。

「やったぞぉぉ」村人たちの歓声が聞こえる。

他の村人たちは他の足に取り憑いて、傷口を増やして血液の流れる量を増やしていく。

やったぞ!俺たちだってやればできるんだ!俺はみんなに言った。

「よくやったぞ!!足を立たせないように引っ張れ。もう少しだぞみんな頑張れ!」


俺は嬉しかった。村がひとつになれた。そんな気がした。


ふらっと目眩がした。下を見ると足元に血溜まりができていた。

「これ全部俺の血か」

俺は立っていられずその場に座り込んだ。

目の前で村人たちが必死に戦っている。

もう大丈夫だろう。俺は笑顔でみんなの戦いを見つめた。


全身から力が抜けていくのがわかる。

俺は少し疲れたな。先に休ませてもらおう。


ウィン。俺は少しでもお前の力になれたかな。


俺は意識を手放した。


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