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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
三章 孤独な魔法使い
44/187

44、ジャイアントアーケロン

ドシーン 音と振動が近づいてくる。

僕は警戒しながら音のする森の方を見る。


ゴゴゴゴゴゴゴ

すると木々が押し倒され、大きな頭が木々の間からぬうっと顔を出した。

ドシーン この音と振動はこの巨大な生物が歩いた衝撃だったようだ。

ドシーン 巨大な生物はゆっくりではあるが、一歩一歩確実に村に近づいてきている。

ドシーン 巨大な生物が森から出てきて全容を確認することができた。

「あれは。ジャイアントアーケロン?」僕は呆然としながら言った。

全長は30mくらいだろうか。巨大な亀の魔獣だ。基本的には海やその近くに生息している。なぜこんなところに。。。

だが、このままでは村が破壊されてしまう。

「止めないと」僕は戦闘体勢に入った。


僕はジャイアントアーケロンに向かっていく。

ドシーン ジャイアントアーケロンは僕の存在など全く気づいていないのか、マイペースに進行している。

目算だが後7歩程度で村に入ってしまいそうだ。


「雷針」まずは様子見で魔法を放つ。雷撃の針はジャイアントアーケロンの足に命中。足に刺さってはいるものの、ジャイアントアーケロンは何の反応もない。効いているのかも定かでは無い。

ドシーン ジャイアントアーケロンは僕の攻撃を気にした様子もなく、一歩進んだ。後6歩


「氷弾」今度は顔に目掛けて氷の塊を放つ。大玉の氷の塊はジャイアントアーケロンの顔に命中し顔にめり込む。傷口から血は流れているものの、ジャイアントアーケロンは気にした様子もない。

「このままだと村に突っ込まれちゃうな」村に入られたら壊滅的な打撃を受けるだろう。村に入られたら負けだ。

「まずは足止めかな」と僕は魔法を放つ。

「沼」ジャイアントアーケロンの左前足の下を沼に変える。

ジャイアントアーケロンは沼に片足を突っ込みバランスを崩す。


しかし、すぐさまに沼から足を引き抜き一歩進んだ。

ドシーン 後5歩

「あまり効果はないか。まずいなぁ」

僕は「跳躍」を使いジャンプでジャイアントアーケロンの顔の前まで飛ぶ。

「火炎弾」大玉くらいの大きさの火球がジャイアントアーケロンの顔目掛けて飛んでいく。

ドカーン!

ジャイアントアーケロンの顔に命中して、火炎弾が大爆発を起こした。

「どうだ!」爆煙でジャイアントアーケロンは見えない。

煙が無くなってくるとジャイアントアーケロンの顔が姿を現す。

多少焦げついたところはあるが、あまり効いたようには見えない。

「倒せるとは思っていなかったけど、もうちょっと効いてくれてもいいんじゃないかな」と僕は呆れて言った。


ドシーン また一歩村に近づく。後4歩。

「そろそろやばいな。魔力温存なんて言っていられないや」


「結界」僕は魔法を唱えた。僕とジャイアントアーケロンを含めた広範囲に結界を張る。この結界は魔法や物理なども含めて外の空間と遮断される。通常は防御で使用しているが、今回は少し用途が違う。まぁこの結界でジャイアントアーケロンを止められるとは思っていないけど。

「絶対零度」僕はさらに魔法を使った。結界内の温度を急激に下げる。およそ-300℃。みるみる周りのものが凍りつく。僕は自身にプロテクトをかけたので凍りつかないが、寒いものは寒い。

ジャイアントアーケロンは氷つきはしないものの、動けなくなっている。

「やっぱり寒さへの耐性は低いか」さらに僕は魔法を放つ。

「吸血」文字通り血を吸い取る魔法だ。本来ならば離れたところでも吸い取れるのだが、血液が凍ってしまうことを考慮して、雷針で傷を付けた箇所に「吸血」を打ち込む。

次は「跳躍」でジャンプして、「氷弾」でつけた傷口に「吸血」を打ち込んだ。「吸血」はみるみるジャイアントアーケロンの血液を吸い込み膨れ上がる。

「これじゃあ時間がかかるな。僕の絶対零度は燃費悪いからな」

と言いながら、「氷弾」でジャイアントアーケロンに穴を開けては、「吸血」を打ち込んだ。


「あとは僕の魔力が持つか、ジャイアントアーケロンの体力が持つかだね」結界、絶対零度、吸血とそれぞれ維持するために魔力を消費する。あとは耐久だ。


15分くらい経ったかな。

そろそろ魔力がキツくなってきた。まだジャイアントアーケロンは倒れていない。やばいなーと思いまずは絶対零度を解除した。結界を維持していればまだ少しは温度を保てるだろう。


さらに10分が経過。

絶対零度の効果が無くなり、温度も戻ってきた。結界の意味も無くなったので、結界も解除した。

吸血だけは解除する訳にはいかない。これを解除してしまったら、もう僕にジャイアントアーケロンを倒す力は残っていない。

まだジャイアントアーケロンは動き出してはいないが、動き出して村に入られてもアウトだ。


僕は少しでも吸い取る血の量を増やそうと、持っているナイフで足を刺していく。吸血の魔法が傷口から血液を吸い取り始める。

「速く。速く」僕の限界も遠くはない。ジャイアントアーケロンがいつ動き出すかもわからない。僕は焦っていた。


さらに10分ほどが経過した。

ジャイアントアーケロンが動き出し始めた。

「くっ」僕は焦りながらジャイアントアーケロンに傷をつける。

「倒れろ。倒れろ。倒れろ。倒れろ。倒れろ。倒れろー」

しかし、僕の思いは虚しくジャイアントアーケロンは一歩を踏み出す。

ドシーン 後3歩

「倒れろ。行くな!頼むから倒れてくれ。このままだと村が無くなっちゃう。この村は僕を育ててくれたんだ。僕の大切な物を奪わないでくれ。止まれ。止まれ。止まれ。止まれー」僕は必死にナイフを突き立てる。いつの間にか涙が僕の瞳から溢れ出ていた。しかし、ジャイアントアーケロンはまた一歩踏み出す。

ドシーン 後2歩で村に入ってしまう。

僕はジャイアントアーケロンが踏み出した反動で吹き飛ばされて、背中を木に打ち付ける。

「グフッ」木に打ち付けられた衝撃で、僕の口から胃液が漏れる。

「何でだよ。何で僕はいつもこうなんだ。何でいつも最後までやりきれないんだ。何で僕はこんなに力が無いんだ。僕が村の人たちを守らなくちゃいけないのに」僕は泣きじゃくりながら言った。その時、


「ウィン。俺たちはお前に守られてばかりじゃないぞ」


と声が聞こえた。声の方を向くとハビロさんがたくさんの村人たちを引き連れて立っていた。

「全部1人で抱えるんじゃねえよ。お前はまだ子供なんだから、少しは俺たちに頼れ。俺たちだって自分たちの村ぐらい命をかけて守るぞ」そう言うと村人たちに指示をした。

「お前たちはロープを魔獣の足に巻いて足を上げた時に引っ張れ。先に進ませるな」

「おぅ」と村人たちは答える。

「手の空いているものは魔獣に傷をつけろ」とハビロさんが言うと

「任せろ」と他の村人たちが答える。

「いいか。絶対に村に入れるなよ。それと絶対に死ぬな。ウィンの戦いを無駄にするな」とハビロは言った。

「おーー」と全員が答えてそれぞれの役割に散っていった。


村人たちは手際良くジャイアントアーケロンの足にロープを巻きつけた。そして、そのロープを数十人で引っ張る体勢を取る。

ジャイアントアーケロンがまた一歩進もうと前足を上げる。村人たちは上げた足に巻いてあるロープを一斉に引っ張った。

「ウォォォォ」

と言う掛け声を上げながら村人たちは必死に引っ張る。ジャイアントアーケロンの足が止まる。

「ウォォォォ」さらに村人たちは必死に引っ張るが、ジャイアントアーケロンの力の方が優っており、徐々に引きづられていく。

僕は残った魔力で風の波動を放った。波動はジャイアントアーケロンの足に当たりその衝撃で一気に村人たちの引っ張る方へ足が流れた。

ズドーーーーン

足を引っ張られてバランスを崩したジャイアントアーケロンは斜めに倒れる。

「やったぞぉぉ」村人たちの歓声が聞こえる。

他の村人たちは他の足に取り憑いて、傷口を増やして血液の流れる量を増やしていく。

「よくやったぞ!!足を立たせないように引っ張れ。もう少しだぞみんな頑張れ!」

ハビロの声が響く。

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