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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第二章 快男児
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39、野口 光雄

僕は野口 光雄。高校2年生だ。

小さい頃から学校でもあまり目立たなかった。

同じクラスになっても気づいてもらえないこともよくある。


休み時間に僕は廊下を歩いていた。

前から澤口くんと四宮さんが歩いてくる。澤口くんと四宮さんは中学2年生の時に同じクラスだった。向こうは覚えていないかもしれないけれど、、、

中学生の頃に一度上級生に絡まれたことがあった。

その時に助けてくれたのが澤口くんだ。

その時僕は助けてもらったのにお礼を言うこともできなかった。

それからというもの僕は澤口くんを目で追うようになった。

いつかしっかりとお礼を言おうと思っていたが、勇気が無くてなかなか実行できなかった。

澤口くんは乱暴者で怖いと言う人もいたけれど、澤口くんが暴力を振るったのは必ず誰かを助ける時だけだった。そんな澤口くんを僕はヒーローだと思っていた。


僕が澤口くんとすれ違った直後、青白い光に包まれた。僕は意識を失い気づいた時には、澤口くんと四宮さんと3人で草原にいた。


僕たちは人のいるところを探すべく、まずは川を探すことにした。

川を探していると近くに森があった。森の中を覗きながら歩いていると、突如森の中からオーガが出てきた。

僕はびっくりして尻餅をついてしまった。

このままでは殺されると思った。

僕がようやく起き上がると、澤口くんが

「2人とも逃げろ!」と言った。僕はその言葉を聞いてホッとした。逃げていいんだ。僕は全力で走って逃げた。息が切れて、心臓が止まるかと思うくらい必死に逃げた。

ふと気づくと四宮さんはついてきていなかった。逃げたのは僕だけだった。

周りを見渡すと川があった。

「良かった。川があった。川を見つけたのだから逃げたのを帳消しにできるかな」と言って恐る恐るさっきの場所に戻っていった。途中で倒れているオーガを見つけた。良かった澤口くんは勝ったんだ。もうしばらく進むと澤口くんと四宮さんが見えた。

「おーい」と叫びながら僕は2人のところに走っていった。

2人はボロボロだった。僕は居た堪れない気持ちになった。

「四宮さんも澤口くんも無事だったのかい。よかったー」と僕は言った。

「あぁなんとかな。野口はどうしていたんだ?」と澤口くんは聞いてきた。

「僕は恥ずかしながら夢中で走って逃げたんだ。そうしたら川を見つけたんだよ。君たちに報告しようと恐る恐る戻ってきたら、オーガが倒れていたから、君たちが勝ったんだと思ったんだ。戦いには参加できなかったけど、川を見つけて役に立ったでしょ」と僕は答えた。役に立ったことをアピールしたかった。しかし、そううまくはいかない。

「あぁ俺たちも川は見つけたよ。戦いながらな」と澤口くんは呆れた顔で言っていた。

「・・・まぁなんだ。本当に無事で良かったよ。アハハ」

僕はまた居た堪れなくなった。

「とりあえず川に沿って街を目指そう」四宮さんが言って川に向かうことにした。


川を歩いていると澤口くんと四宮さんはオーガのことで話し合っていた。能力がどうのこうのと言っているが、僕は会話に入ることができなかった。


僕たちは丸一日歩いた。

僕は本当にしんどくて泣き言を言いそうになっていた。でもここで泣き言を言ったら見捨てられてしまうのではないかと思い必死についていった。僕の体力は相当低い方なんだ。


僕たちはようやく街に到着した。

だがここは村だそうだ。

村長の話を聞くと、どうやら僕たちは転移してきてしまったらしい?

僕たちは村長の話を聞いてから、ベルンの街に向かった。

村長はベルンにある転移者保護施設の世話になることを勧めてきたが、澤口くんはあまり積極的では無かった。

澤口くんがそうするなら僕もついていこうと思った。澤口くんは僕のヒーローだから。

僕たちはベルンの街に着くと冒険者ギルドに向かった。


僕たちは冒険者の登録をしてすぐにウサギ狩りの依頼を受注した。

僕たちは北の草原でウサギを探すが見つけることすらできなかった。

帰り道でコートを頭からすっぽりと被り、顔を見せない王威さんとであった。

王威さんはこの世界のことを教えてくれて、さらに僕たちに戦い方を教えてくれるらしい。


僕たちは王威さんに戦い方を教えてもらう前に、準備のため一度街に戻った。

オーガを倒した報酬が貰えた僕たちは服を買うことにした。

このお金も澤口くんと四宮さんがオーガを倒して得たお金だ。

僕は何もやってはいない。僕は悔しかった。なんであの時逃げ出したのだろう。なんで澤口くんと一緒に戦わなかったのだろう。もうこんな悔しい思いはしたくない。もう逃げない。と心に誓い、その証としてバンダナを購入した。逃げたくなったらバンダナを見て勇気を出そうと思った。


王威さんの訓練が始まった。

僕は水の属性が得意らしい。

また自分と何かの場所を交換できるスキルを持っていた。

王威さんの訓練は厳しかったが、少しでも役に立てるようになりたくって、夜みんなが寝静まったあとにも1人で訓練をしていた。王威さんは気づいていたようだったけど、何も言わなかった。


しばらくして僕たちはオークロードを倒しにいった。

僕たちは順調にオークを倒して行くと、オークロードが姿を現した。澤口くんは

「俺がオークロードをやる。残りのオークをお前にたのめるか?」

と言った。

「・・・もちろんだよ!任せてくれ!」と僕は返したが、少し寂しかった。一緒にオークロードを倒そうと言って欲しかった。

それでも僕はオークを順調に倒して行った。澤口くんはオークロードに苦戦している。早くオークを片付けて助けに行かないとと思っていた。

「あと3匹か。早く倒して澤口くんの助っ人にいかないと」言った時、入口の方から音がした。

入口を見ると20体くらいのオークが入口に集まっていた。

20体のオークは僕に向かって走り出している。

僕は澤口くんのところまでは行かせない。僕が食い止めるんだと思って頭のバンダナを掴んだ。

その時澤口くんは「野口今いくぞ!」と言った。

僕は正直ふざけるなと思った。そんなに僕は頼りないのか?僕は仲間だ。お荷物じゃない!と思った。

「くるな!」僕は叫んだ。

「澤口くんはオークロードに集中しろ!こっちのオークは僕にまかせておけ!」と僕は続けて言った。

「澤口くん。僕はお荷物じゃない。仲間だ!仲間をもっと信頼しろ!もっと頼れ!」と言ってやった。

僕の気持ちが通じたのか澤口くんは、

「ありがとう。野口!後ろは任せた!絶対に死ぬなよ!」

と言ってくれた。

僕は嬉しかった。少しでも認めて貰えたような気がしたんだ。

僕はこんなに厳しい状況なのに、ニヤけるのを止められなかった。


「絶対にここは抜かせない。澤口くんのところには行かせるものか」と僕は20体のオークを必死で止めた。

四宮さんのフォローをもらいながら、アイスカッターを中心にオークを倒して行く。囲まれたらチェンジでオークと変わり脱出する。

深夜の自主練でチェンジの発動時間はかなり短縮された。また、使い所のイメトレも充分に積んできたつもりだ。


僕はボロボロになりながらもオークを半数以上倒した。

「野口ーーー」澤口くんがオークロードを倒してきてくれた。

「澤口くん!」

「遅くなって悪い」と澤口くんは言った。

「いや信じていたよ。さぁ最後の仕上げだ」

と僕は言って剣を澤口くんに渡した。


そして、ようやく最後の1体を澤口くんが斬り倒した。

周りに動くものはない。

「終わった」と四宮さんはその場にへたり込んだ。

「どうにかなったな!」と澤口くんは僕に拳を向ける。

「そうだね。やったね」と僕は澤口くんの拳に拳をぶつけた。

その途端に力が抜けて、僕は尻もちをついた。

「ハハハ。しまらないね」と言うと

「いや。お前は最高だよ」と返してくれた。


僕はようやく澤口くん(ヒーロー)と本当の仲間になれた気がした。

バンダナに誓ったんだ。僕はもう逃げない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


澤口くんが危ない。

僕は僕を縛っている根っこをウォーターカッターで切った。

間に合え!


「チェンジ」


グサァ 


桜のトリアイナは僕の体を貫いた。


「野口ぃーーーーー」澤口くんの叫び声が聞こえる。


澤口くん。僕はキミの仲間になれたかな?


澤口くん。ぼくはキミの役に立てたかな?

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