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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第一章 目覚め
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3、最初の試練

真っ暗な闇の中を幼い3人は手を取って走っている。僕は真ん中で、左側には男の子。右側には髪の長い女の子。

遥か先に小さな光が見える。3人は光に向かって必死に走っていく。

その光は少しずつ大きくなってくる。

そして光のもとにたどり着くと、3人は闇から抜け出し光に包まれていく・・・


「・・・むくん」

「勇くん」

はっと僕は目を覚ますと、目の前には真剣な眼差しの姫乃先輩がいた。

まだ意識が覚醒しきれず、あぁやっぱり姫乃先輩はアップでも綺麗だなぁなどと考えていると、


「勇くん。大丈夫?」

と心配そうに声をかけてくれた。


「ひ・め・の先輩?ここは?」

僕はようやく覚醒して状況を確認する。


あたりを見ると、見渡す限り木が生えており、どこかの森の中のようだ。安易に歩き回るともう二度と出れないような、言いようもない不安を感じる。


「私にもわからないわ。青白い光に包まれて気づいたらここにいたの。」


周りには姫乃先輩の他にも数名の生徒がいた。

食堂で姫乃先輩と一緒のテーブルにいた花巻先輩、クラスメートの芽衣そして

「真壁せん。。。」


「おいっ1年!おまえ俺に何をした!」

「ここはどこだ?早く元の場所にもどせ!」

真壁先輩は取り乱しながら僕に問いかける。


「そんなこといわれても。。。僕にも何が何だか。。。」

僕がしどろもどろで答えに窮していた時、急に姫乃先輩が言った。


「何かいるわ。気をつけて!」

僕が振り向くと姫乃先輩は顔面蒼白で目には涙を浮かべていた。

「ひめのせんぱ・・・」

姫乃先輩の豹変ぶりに驚き、声をかけようとしたその時、


「勇くん!よけて!」

と姫乃先輩は叫ぶと同時に僕に飛びつき、押し倒した。


その瞬間もともと僕のいた空間に何かが飛び込み通り過ぎて行った。


「えっ?」

僕は状況についていけず、姫乃先輩に押し倒されたまま何かが通り過ぎて行った先を見る。

そこにはセントバーナードよりも一回りほど大きな、オオカミのような生き物がこちらを睨みつけていた。


「グルルルルルゥ」

低い声でうめきながら、僕たちの品定めをしているかのようだ。

僕は見たこともない大きさの生き物を見て、呆然と立ちすくんでいた。


「みんな逃げて!!」

皆呆然としているところに姫乃先輩の声が響く。

みんなハッと我に返り一斉に走り出す。


僕たちは必死に走る。花巻先輩を筆頭に僕と姫乃先輩が並び、その後ろに真壁先輩、芽衣と続いている。


「なんなんだよぅ」

と文句を言いながら真壁先輩も必死に走っている。

後ろを振り返るとオオカミは僕たちを獲物と認識したのか、追いかけだした。


やばい!と思い、走るスピードが上がる。

「このままだと追いつかれるよ」

いつのまにか隣に来ていた芽衣が言った。


その時だった。

「はははー。俺はこっちに逃げるぜ!」

真壁先輩はそういうと左に方向を変え、森の中に入って行ってしまった。


「なっ」

僕は真壁先輩の行動に驚いたが、止めようにもそんな余裕があるはずがない。オオカミは真壁先輩の逃げた方向ではなく、僕たちを追ってきている。


「こないでっ!」

姫乃先輩が手に持っていた石を投げつける。オオカミの顔に命中し、一瞬は怯むものの追いかけてくるのはやめない。

だんだんオオカミとの距離が短くなってきている。


「やばい。やばい。やばい。やばい。」

「こわい。こわい。こわい。こわい。」


僕は必死に逃げていたが、体力もそろそろ限界に近く、オオカミもすぐ後ろに迫ってきていた。


もう限界と根をあげそうな時、斜め前を走っていた花巻先輩が何かにつまづきよろける。

そのまま花巻先輩は前のめりに倒れた。


「花巻先輩!」

花巻先輩を通り越した僕は振り返り、花巻先輩に駆け寄ろうとした時、オオカミは花巻先輩の背中に飛び乗り、肩に噛み付いた。


「あ”あ”あ”ぁぁぁ」

花巻先輩が痛みに耐えきれず、苦痛の声を漏らす。

オオカミは花巻先輩の悲鳴も気にせず、肩の肉を食いちぎる。


「ぎゃああああぁぁぁぁ」

「花巻先輩ー!」

僕は歯を食いしばり、花巻先輩に駆け寄ろうとするが、駆け出そうとする僕の腰に姫乃先輩がしがみついた。


「だめ。行っちゃだめ。」

姫乃先輩の顔を見ると、涙でぐちゃぐちゃだった。

いつも凛としていて、涙なんか流さないのでは無いかと思う姫乃先輩からは想像できない顔に僕は困惑するも、

「助けに行かないと」

と姫乃先輩の手を外そうとしながら言った。


しかし、姫乃先輩は華奢な体からは想像できないような力でしがみついており、僕はなかなか引き剥がすことができない。


「ぎゃぁぁぁぁぁ」

そうこうしている間にも、オオカミは花巻先輩の左腕を引きちぎり、咀嚼をしていた。


花巻の絶叫が聞こえる中、姫乃先輩は

「お願い行かないで。」

と懇願してくる。

「姫乃先輩。。。」

僕はそれでも助けに行く決意を固め、姫乃先輩の腕を剥がし、助けに向かおうとした時、今度は左腕を引っ張られた。


見ると青白い顔をした芽衣が僕の腕を掴み

「もう無理だよ。逃げよう」

と言うと、姫乃先輩と2人で僕を引っ張った。


「なんでだよ!まだ助かるかもしれないだろ!」

「頼むよ!手を離してくれ!」

涙を流しながら懇願するも2人は手を離さず僕を引っ張った。


遠くでまた花巻先輩の悲鳴が聞こえた。


もうオオカミは追ってこなかった。


森を抜けてすぐに芽衣が湖を見つけた。

3人は湖のほとりで座り込んでいる。

姫乃先輩は「ごめんね。ごめんね。」と僕に繰り返し謝っている。

僕は何も答えることができず黙ったまま、花巻先輩のことを思い出して涙を流した。


芽衣は何も言わず近くに座っていた。


僕は涙を流しながらいつの間にか眠りについた。

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