27、王威
王威の指導を受け始めてから一月ほどが経過した。
今日も朝から特訓をしている。
俺たちはこの1ヶ月で基礎体力を含め戦闘能力は格段に上がっている。
しかし、俺は王威にはまだ1発も攻撃が当たった事はない。
トホホだ。
今日は朝から王威が出かけて行った。
たまに夜いなくなる事はあるが、訓練中に居なくなるのは初めてだ。
しかし午前中は基礎トレなので王威がいなくても問題ない。
昼頃に王威は荷物を持って帰ってきた。
「ほれ。プレゼントだ」
と王威は言うと俺たちの前に武器を出した。
「いつまでも素手ってわけにはいかんだろう。ほれ翁と野口は剣な。嬢ちゃんはロッドにしてみた。魔法の補助になるし敵を叩くこともできるからな」
と王威は言った。
「「「ありがとうございます」」」
とお礼を言ってそれぞれ武器を手に持った。
「それと練習はこれな」
と言って木刀をだした。
今日からは武器を使った特訓だ。
俺は今木刀を持って王威と向かい合っている。
俺は元いた地球では剣道部に入っていた事もある。
少しは剣を齧ったことがある俺としては、王威に一泡吹かせてやろうくらいの思いがあった。
さっきまでは。。。
王威の剣は俺がやっていた剣道とは段違いだった。
何をされたかもわからないうちに打たれて、痛みで打たれたことに気づく始末。
それでも食らいついていかなければならない。
俺があの2人を守るんだ。
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王威の特訓を受けてから4ヶ月が経った。
俺たちは順調に力をつけてきている。
と思う。。。
なぜこんなに自信がないかと言うと、王威が強すぎるのだ。
力がついてくれば、さらに王威の強さを感じてしまう。
「今日はベルンの冒険者ギルドに行くぞ」
と王威は言い出した。
「おい王威。冒険者ギルドに何をしにいくんだよ?」
と俺が聞くと、
「冒険者ギルドに行ったら依頼を受けるに決まってるだろ」
「「「はぁ?」」」
俺たちは今冒険者ギルドの扉の前についた。
ギィィィ ギルドの扉を開け中に入る。
すると周りの冒険者がみんなこちらを見てくる。
「なんか私たち見られていない?」
四宮も気がついたようだ。
周りのテーブルの話声が聞こえてくる。
「あれ?王威じゃねぇか?」
「俺王威を初めて見たよ」
「王威って誰ともつるまないんじゃなかったの?」
などの内容がほとんどだった。
知らなかったが王威は有名人のようだ。
頭からコートを被っていて顔もわからないのに、なぜこんなに有名なんだ?と思った。
王威は周りのことなんか気にせず、スタスタと掲示板に向かう。
掲示板の前に着くと依頼を確認しだした。
「どれにすっかな」
王威は少し依頼を眺めると
「よしこれにするか」
と指を差した。
オークロード討伐
ランク A
南の森を超えたところにオークの村が発生している。
オークの数は50を超え、特殊個体のオークロードも産まれているのが確認されている。甚大な被害が出る前に殲滅してほしい。
報酬 金貨30枚
「ぶっ」
俺は噴いた。
「なんでいきなりAランクなんだよ」
と俺がツッコミを入れる。
「なんだ?怖いのか?」
王威は言う。
「ちげーよ。俺たちはまだCランクなんだよ。Aランクの依頼はそもそも受けらんねーんだよ」
と俺が言うと
「そんなことか。それなら問題ない」
と言って依頼の紙を掲示板から外して受付に向かう。
そして
「この依頼受けるぞ」
と受付嬢に依頼の紙と冒険者カードを渡した。
俺たちは冒険者カードを覗き込む。
王威
冒険者ランク S
「「「Sランク!?」」」
俺たちは驚きのあまりまた噴いた。
野口は青ざめて今にも倒れそうだ。
受付嬢は
「王威様お久しぶりですね。依頼の受注ありがとうございます」
と言った。
「私たちってすごい人に教えてもらっていたんだね。。。」
四宮も若干引いていた。
「この世界に来て1番驚いたぜ」
と俺は言った。
俺たちは冒険者ギルドを出た。
「討伐は明日の朝にする。今夜はこの街の宿に泊まろう。今日の残りの時間は明日の準備とする。3日くらいはかかるかもしれないからそのつもりで準備しておけ」
と言った。
俺たちは今夜泊まる宿に来ている。
「ふかふかぁ。気持ちいい」
とベットで四宮がはしゃいでいる。
「ようやくゆっくり眠れる」
と野口もベットに倒れ込んだ。
そういえばこの世界に来てベットで寝るのは初めてだな。
外でねるのが当たり前になってきている。
俺たちも強くなったもんだなと俺は「ククク」と笑いながら思った。
笑っている俺を2人はきみが悪そうに見ていた。
翌朝俺たちはオークの村を目指して旅立った。
持っていくのは武器だけ、水は魔法で出して、食べ物はその場で何かを取って食べる予定だ。
向かっている最中に王威がオークについて説明してくれた。
「オークは豚が変化した魔獣だ。二足歩行をする。知恵もあり武器を使って襲ってくる。知恵があると言っても罠をはったり、姑息な手を使ったりは通常できないがな。ただし、今回はオークロードがいる。オークロードはあまり発見された数が少ないので、わからないことも多いが、魔法を使ってきたという話もある」
「あとは基本的にオークはタフだ。一度斬ったからと言って安心はするな。確実に一匹一匹無力化していけ」
王威は言った。
「あっそれと今回俺は見学だから。お前らで倒せ」
「「「えー」」」
と俺たちは不満をぶつける。
なにせAランクの依頼だ。
Cランクの俺たちだけで倒せるのだろうか。
「なんだ?怖いのか?」
王威が俺を挑発してくる。
「怖くなんかねーよ」
と俺は強がる。
「大丈夫だ。俺がお前たちを育てたんだ。俺はお前たちならできると思ってこの依頼を受けてるんだからな」
途中川があったので、魚を捕まえて昼にした。
俺も魚を捕まえるのが上手くなってきた。
イグニッションを腕だけに発動させる。
その分消費エネルギーが少なくて済む。
イグニッションを発動した状態で構えて魚を待つ。
魚が腕の範囲に入ったら一気に捕まえる。
今日も短時間で3匹捕まえた。
他の2人はもっと早く捕まえているけど、それはスキルの相性ということで。。。
昼食を終え、俺たちは再びオークの村に向かう。
途中で魔獣に遭遇することはなかった。
平原を歩いている分にはそれほど魔獣との遭遇率は高くないそうだ。
魔獣は森とか山とか洞窟とかそういった場所に生息していることが多いという事らしい。
しばらく歩いてようやくオークの村が見えた。
俺たちは近くの丘からオークの村を見下ろしている。
村と言っても柵のようなものがあるくらいで、建物はなく地べたに座っていたり。
歩いたりしているオークがざっと30ってところだ。
棍棒のような武器を持っている者が大半だが、人間から奪い取ったのか剣を持っている者もいる。
そして奥の方で粗末な椅子のようなものに座っている奴だけ雰囲気が違う。
「あれがオークロードか」
オークロードは槍のような武器を持っていた。
もう夕方でそろそろ日が沈む。
暗くなってから奇襲という手もあるが、俺たちは夜の戦いに慣れていない。
だから早朝に攻めることにした。
オークの村から少し離れた場所まで戻り、俺たちは野営をした。
今夜は景気付けだと言って、王威がイノシシを取ってきてくれた。
俺たちはイノシシを腹一杯食べて眠りについた。




