26、狩り
「今日の晩飯はウサギだ。今から取りに行くぞ。」
と王威は言った。
「おい王威。取れなかったらどうするんだよ」
と俺は言う。
「取れなかったら晩飯は無しだな」
王威は楽しそうに言った。
こいつ絶対楽しんでやがる。
王威が言うにはウサギは夕方に動きが活発になるらしい。
ただ、敵に敏感なので危険を感じるとすぐに隠れてしまう。
耳、目、鼻などが人間より数百倍優れているので、気づかれないように注意が必要だそうだ。
「まず俺が手本を見せてやる」
と王威が言った。
王威は大きな石の上に立ち当たりを見回す。
「おっいたな」
王威の目線の数十m先にウサギがいた。
王威は膝を落とし構えると
「電光石火」
と発声した。
一瞬にして王威が消え、数十m先でウサギを捕まえていた。
王威がウサギを持って戻ってきて言った。
「どうだ。参考になったか?」
「「「なるか!!」」」
「次は私がやろっかな」
と四宮が言った。
四宮は大きな石に登ってウサギを探す。
「いたっ」
四宮がウサギを見つけた。
両手の手のひらをウサギに向ける。
「グラビティ」
四宮はスキルを発動させる。
するとウサギはその場で動けなくなった。
四宮はゆっくり近づきウサギを捕獲した。
四宮はウサギを持ってこちらに帰ってきた。
「えへへ。成功」
「やるじゃねぇか」
王威は言う。
「四宮さんすごい!」
と野口がほめる。
俺もすげぇと思って拍手をした。
「じゃあ次は僕にやらせて。ちょっと考えがあるんだ」
野口は言った。
野口は穴を掘る直径50cm、深さ50cmくらいの穴だ。
その穴の中に野口は入ってからウサギを探す。
「いたっ」
野口がウサギを見つける。
「チェンジ」
と野口はスキルを発動させた。
一瞬のうちに野口は消えて、穴の中にウサギが入っていた。
野口が戻ってきて言った。
「うまくいったかな?」
と穴の中のウサギを見て言った。
「なかなか考えたな」
と王威は言う。
「野口くんやったね!」
と四宮も喜んだ。
最後に俺だ。
2人ともできたんだ。
俺にもできるはず。
俺は石の上に登ってウサギを探す。
「いた」
俺はウサギを見つけた。
「イグニッション」
俺はスキルを発動した。
その瞬間ウサギは逃げ出していなくなった。。。
王威はあっちゃーという感じで手のひらを額に当てている。
四宮と野口も顔が引き攣っていた。
「今のは練習」
と俺は言って再度ウサギを探す。
「いたっ」
俺はウサギを見つけた。
「ファイアボール」
と俺は魔法を放った。
その瞬間ウサギは逃げ出した。
「あれ?」
と俺が言うと、3人は気不味い顔をしている。
パチパチパチパチ
俺の後ろでさっき放ったファイアボールが森を燃やし始めた。
「やべっ」
俺たちは慌てて、四宮と野口が水魔法で鎮火した。
その後、俺はウサギを見つけることは無かった。。。
「よし。ではウサギの捌き方を教えてやる」
と王威は言った。
ウサギをしめて、皮を剥ぎ、内臓を取る手慣れたものだった。
四宮と野口も慣れないながらも一生懸命捌いた。
実際捌くという行為は、慣れない者からしてみれば、精神的にも体力的にもきついものだ。
四宮にはかなりきつそうだったが、
「生きて行くためには慣れないと」
と言いながら根を上げることはしなかった。
薪を集め一箇所にまとめる。
「翁。魔法で火をつけろ」
と王威がいう。
俺は弱めのファイアボールを発動して火をつけた。
火の周りに串を刺したウサギを立てて火を通していく。
パチパチパチパチ
肉が焼ける香ばしい匂いがしてきて、涎が出そうになる。
「焼けたところからナイフで剥いで食え。塩と胡椒は俺が持っているから貸してやるよ」
と王威は言った。
四宮と野口が自分で取ったウサギの肉を剥いで食べる。
「おいしぃ」「うんまっ」
と2人で絶賛している。
ギュルルルル
俺のお腹が鳴る。
俺はウサギを取ることができなかったので食べるものがない。
王威は「うまいぞぉ」とか言って、俺に見せびらかせながら食べている。
「王威てめぇ。。。」
「勇くん。私の少し上げるよ」「澤口くん。僕のもあげるよ」と2人は言ってくれた。
しかし意地っ張りの俺は「いらねーよ」と答えてしまった。
俺は心中で泣いていた。
しばらく俺以外の3人で食事を取っていた。
すると四宮が
「翁くん。私お腹いっぱいになっちゃった。残したらウサギさんに申し訳ないから、悪いんだけど食べてもらえないかな」
と言ってきた。
野口も
「僕もお腹いっぱいになったからお願いできないかな」
と言ってきた。
俺は
「しょうがねぇなぁ」
と言って2人のウサギを食べさせてもらった。
2人の優しさに触れて、心の中で何度もありがとうと言った。
満腹になった俺たちは、訓練の疲れもありその後すぐに眠りについた。
時折王威が石を投げてきた。
熟睡している俺たちは避ける事もできずに石に当たる。
王威曰くこれも訓練らしい。
寝ている時に襲われた時に反応するため、寝ていても警戒を解かないようにしないといけないそうだ。
しかし、これがかなり難しい。
俺たち3人は王威の投げた石に全く反応できなかった。
翌日もみんなで訓練に励んだ。
夕方になり訓練が終わると王威が言った。
「今日は魚をとりにいくぞ」
俺たちは近くの川に来た。
川を覗くと夕方だからかあまり魚はいないようだったが、今日も四宮と野口はうまく魚を取っている。
四宮は魚を見つけると、弱めのハリケーンで魚を浮かせて取っていた。
野口はチェンジを使っていた。
自分が濡れてしまうが確実に取れる方法だ。
2人とも大漁だが、俺はイグニッションで必死に捕まえた1匹だけだった。
「最後に俺だな」
と言って王威は川に向けて
「稲妻」
と雷の魔法を唱えた。
かなり弱めに放っているので、近くにいた魚だけが気絶して浮かんできた。
王威は一瞬で大量の魚を手に入れた。
「今日は魚の捌き方だな」
と王威は言って捌き始めた。
鱗を取って、ヒレや内臓を取る。
それを串に刺して焼くみたいだ。
食べきれないものについては、開いて塩を振り干物にする。
俺は今日食べる分の1匹だけだ。
トホホ。
パチパチパチパチ
焚き火の周りに刺している魚が焼けてきた。
「そろそろ食えるぞ」
と王威が言ったので、俺たちは串を持って魚にかぶりついた。
うまかった。
「「おいしい」」
と他の2人も言っている。
元いた地球ではこんなことはできなかった。
俺はこの生活が楽しいと感じてきていた。




