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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第二章 快男児
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21、 覚醒

俺と四宮は追ってくるオーガから必死に逃げている。

野口はもう近くにはいない。

うまく逃げることができたのだろうかなどと、他人を気にしている余裕はない。


オーガは確実に俺と四宮との距離を縮めてきている。

その時だった。

「あっ」

と言って俺と四宮が走るのを止めた。


目の前には川があった。

俺たちの探していた川だ。

だけどこんな時に見つからなくても。。。しかもかなり大きな川で向こう岸に渡るのは容易ではなさそうだ。


「追い詰められたか」

俺はオーガと向かい合いながら言った。


オーガは追い詰めた獲物を逃さないようにとでも考えているのか、慎重に俺たちとの距離を詰めてきている。


重圧に耐えきれず、四宮が叫んだ。

「こないで!もう許して!」

両手を伸ばしながら命乞いをする。

すると再びオーガの動きが鈍くなった。


俺ははっと気づいて四宮に言った。

「まさか四宮がやっているのか?」


「私にもわからないの。ただ、私の体の中から力が出ていっている感じがする」

と四宮が答える。


「今しかチャンスは無い」

と言って俺はオーガに向かっていった。

オーガに手が届く距離まで近づいてから、俺はオーガの太ももに蹴りを放つ。


もともと身長差が大きく、上半身には届かない。

また、最終的に逃げ出すためにもオーガの足にダメージを与えたかった。


しかし、何度かローキックを放つがオーガに効いている様子はない。

先にこちらの足が潰れてしまいそうだった。

再度蹴りを放とうとした時だった。


「翁くん。もうだめ。抑えきれない」

と四宮が言った。


少しずつオーガの動きが元に戻って行く。

オーガが拳を振り上げ俺に照準を合わせる。


「やばいっ」

俺は危険を感じバックステップをする。


ドッカーン!


オーガの拳が振り下ろされた。

直撃こそは免れたものの。

俺は衝撃で四宮の近くまで吹き飛ばされる。

ダメージはそれほどではないが、対抗策が全く浮かばない。


オーガがこちらへゆっくり向かってくる。

四宮は力をつかい果たしたのか地面にへたり込んでいる。


「翁くん。逃げて。私は動けそうもないよ。」


「ばかやろう!お前を置いて逃げる事なんてできるわけねーだろ!」

と俺は怒鳴った。


「でもこのままだと2人とも殺されちゃうよ。翁くんだけでも助かって」

四宮は涙を溜めながらそう言う。


四宮を置いて逃げる事なんてできない。

どうすればいいんだよ。

いつも偉そうにしていてこれかよ。

こんな時になんで俺は何もできないんだよ。

俺にオーガを打ち倒す力があれば。

俺にオーガの顔面に届くくらいのジャンプ力があれば。

俺にオーガを翻弄できるくらいの速さがあれば。

俺に・・・・・・


その時俺の体が金色に光出した。光はどんどん強くなる。

「翁くん。。。」

四宮が驚いて俺を見てくる。


何だこれ?体が軽い?力が湧いてくる。

これなら戦えるかもしれない。

状況を挽回するチャンスかもしれない。


行くしかない!


「うぉぉぉ」

俺はオーガに向かって走り出した。

想像を絶するスピードに戸惑うもオーガに手が届く少し手前でジャンプし、オーガの腹を思いっきり殴った。


ドーン! 


俺の拳は見事オーガに命中した。

オーガの巨体がは殴られた衝撃で何十mも吹っ飛ぶ。

途中何度も地面に打ちつけられて、ようやくオーガの巨体が止まった。

オーガはぴくりとも動かない。


「すっげぇ力だ。信じらんねぇ」

今も俺の体から金色の光は出続けている。


「すげぇ力だが、やべぇな。体力がどんどん減っていっているのがわかる。このままだとあまり長い時間は戦えないな」

と言っているとオーガが意識を取り戻して起きあがろうとしている。


「短期決戦だな」

俺はオーガに向かって走り出す。

オーガはまだ完全に起き上がれていない。

俺は中腰になっているオーガの顎に下から蹴りを入れた。

オーガの巨体が上に飛ぶ。

俺もオーガに合わせてジャンプし、オーガの顔面を今度は下に撃ち下ろすように殴った。


ドカーン。


地面に叩きつけられるオーガ。

そのままオーガの首を目掛けて、俺は膝を立てて落下した。


ボキッ!


俺の膝はオーガの首に命中し、オーガの首の骨を砕く音が響いた。

オーガの全身から力が抜けて、二度と動くことは無かった。


「ふうっ」

と息を吐くと金色の光が消えた。

全身から力が抜けて俺は尻餅をついた。


「翁くん」

四宮がゆっくりとこちらに駆け寄ってくる。

あぁ四宮もぼろぼろだなぁなどと俺は考えていた。


「翁くん。大丈夫?」


「あぁ俺は大丈夫だ。ちょっと疲れたけどな。四宮は大丈夫か?」

「うん。なんともないよ。私も少し疲れたけど。。。」

四宮はその後の言葉をもじもじしながら言い難そうに言った。


「翁くん。助けてくれてありがとう。その、、、お前を置いて逃げることなんてできないって言ってくれたのは、とってもうれしかった、、、です。」

四宮は顔を赤くしながら言った。


俺もつられて顔を赤くしながら、

「ばーか。あんな状況で1人で逃げられるわけねぇだろ」

と言った。



「おーい」

遠くから声が聞こえる。見ると野口が走ってきていた。


「四宮さんも澤口くんも無事だったのかい。よかったー」

野口が言う。


「あぁなんとかな。野口はどうしていたんだ?」

俺は聞いた。


「僕は恥ずかしながら夢中で走って逃げたんだ。そうしたら川を見つけたんだよ。君たちに報告しようと恐る恐る戻ってきたら、オーガが倒れていたから、君たちが勝ったんだと思ったんだ。戦いには参加できなかったけど、川を見つけて役に立ったでしょ」


「あぁ俺たちも川は見つけたよ。戦いながらな」


「・・・まぁなんだ。本当に無事で良かったよ。アハハ」

野口はバツが悪そうに言った。


「とりあえず川に沿って街を目指そう」四宮が言って立ち上がった。

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