2、転移
キーンコーンカーンコーン
3時間目の授業終了のチャイムがなり、お昼の時間になった。
僕は寝ぼけた顔をあげて目を擦っていると
「勇ぅ。お昼いこうぜー。」
淳が声をかけてくる。
「そうだな。早く行かないと席がなくなってしまう」
この学校には食堂があり、お弁当の生徒は教室で食べるが、僕たちのような食堂組は早く行って席を取るというミッションが課せられる。
階段を、急足で降り廊下を抜けると食堂に到着。
「どこか空いているかな?」
淳がキョロキョロしながら空席を探す。
僕も周りを見渡すと、友人と席に着いている姫乃先輩の姿があった。
「綺麗だなぁ。」
と数秒見惚れるが、姫乃先輩のところに誰かが来たことで我に帰り
「席を探さなきゃ」
と改めて席を探しだした。
すでに食堂にはかなりの生徒が来ており、僕はなかなか席を見つけることができなかった。
今日はお弁当を買って、教室の机で食べるかなどと考え始めていたその時だった。
「ふざけんなぁー!」
と怒鳴り声が聞こえた。
声の方を向くと姫乃先輩のところに近寄って行った男子生徒だった。
「あれは、二年の真壁先輩。。。」
真壁直人 強面の外見からもわかるとおり、素行が悪く、二年生のグループ(近寄りたくないグループ)のリーダー的存在だ。
「俺が付き合えっつったら、付き合えばいいんだよ!」
「何度も断ったはずだけど、もっとはっきり言った方がいいかな。私は思いやりのある尊敬できる人が好みなの。」
そう言うと姫乃先輩はちらっと僕を見たような気がした。
「真壁君。君は乱暴で何事にも暴力で解決しよとするよね。そこに思いやりはかけらも感じられない。私はそんな君を好きには
なれないよ。それに私にはすでに好きな人もいるしね。」
姫乃先輩がそういうと、やじ馬から
「えー!」
と悲鳴が上がった。
姫乃先輩に好きな人がいるということが衝撃的だったんだろう。
僕も姫乃先輩は手の届く存在ではないと承知をしているが、少なからずショックを受けた。
一方真壁先輩は顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。
そして。
「姫乃ぉ。お前よくも俺に恥をかかせてくれたなぁ!お前の周りにいるやつをみんなボコって言うことを聞かせてやるよ!」
「真壁君。君のその暴力で解決しようとする考え方が、好きになれないと言っているのだけど。もう私にまとわりつくのをやめてもらえないかな。」
姫乃先輩の言葉に真壁先輩の何かかが壊れたように見えた。
真壁先輩は
「てめぇーーーー」
と叫ぶと拳を大きく振り上げた。
「姫乃先輩ー!」
拳が振り下ろされる直前、僕は姫乃先輩の名前を呼ぶと体が自然と動き真壁先輩に体当たりをしていた。
真壁先輩は予期せぬ体当たりに抵抗もできず吹き飛んで倒れた。
「あわわわわ。。。」
倒れた真壁先輩を見下ろし、やってしまったことに後悔が溢れ出してくる。
即座に起き上がった真壁先輩が拳を握りながら僕を睨みつけてくる。
「てめぇ。なんなんだ?正義の味方のつもりか?」
「いえ。そんなつもりは・・・」
逆上した真壁先輩が隣のテーブルにあったナイフを持ち、僕へ向かってくる。
「ぶっ殺してやる!」
そう言うと真壁先輩は手に持ったナイフを振り上げた。
「殺されるっ」
とっさに手を前に出し顔を伏せて下を見た。
その時、足元から青白い光が円状に光だした。光はどんどん強くなり僕を飲み込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2023.09.04 誤字と改行を修正