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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第六章 砂漠の国 ラインドル
188/190

188、首都ラインドル

僕たちは、無事に首都ラインドルについた。

ラインドルは想像していたよりも人が多く、ガヤガヤと様々な人の声が入り乱れており、みんな忙しなく動いているように見えた。

街の真ん中にオアシスがあって、オアシスを中心に建物が広がっている。建物は基本的に平屋だが、オアシスのほとりにお城が立っていた。そのお城は砂漠の中に立っているとは思えないほどに真っ白な壁で、えんじ色の屋根を引き立てていた。

おそらくそのお城の中にラインドルの王様がいるのだろう。


僕たちはとりあえず宿を探した。

いつものように、ミトが手配してくれている間に、僕たちは街を見物することにした。

街の中と言っても高い建物はなく日差しを遮るものがないため、焼け付くような日差しが肌を刺すように暑い。

地面も若干舗装されている所もあるが大半は砂だ。

靴の中に砂が入ってきて気持ちが悪い。


砂漠には殆ど植物が生えていなかったが、流石にオアシスの周りになると植物も生えてくるようだ。

ヤシの様な高木も生えており、ヤシの木の葉は風に揺れてカラカラと音を立てていた。

そういえば、さっきヤシの実のジュースを売っていたな。

ここら辺の名物なのかな?後で買ってみようと思いながら街を歩く。


ふと、気づいた事がある。

サボテンが生えていない。

「サボテンって砂漠に生えるんじゃないのかな?」

と独り言を言うと、姫乃先輩が拾ってくれて、

「サボテンは砂漠というより、荒野ってイメージの方が強いかも」

と答えてくれた。

確かに砂漠っていうよりも、西部劇に出てきそうな荒野の方がサボテンにしっくりくる気がした。


しかし、暑い。

街の探索という名目ではあるが、ちょくちょく休憩を取る必要があった。

ヤシの実のジュースを飲みながら、日影で休憩を取る。


ヤシの実のジュースは実を半分に割って中にある水分をストローで飲むものだった。ヤシの実が割れた瞬間、微かな青臭い匂いが漂う。

見た目はとても美味しそうにみえたのだが、実際飲んでみると甘さは控えめで薄味。もっと甘いジュースを想像していた僕には少しがっかりな味だった。


そうこうしているうちに、ミトが宿を確保ができたと呼びにきてくれた。

ラクダを預ける場所を探していて遅くなったそうだ。


「荷物を置いたら夕食を食べに行きましょうか」

とミトは言って、僕たちは食堂に向かった。


食堂に着くと、お店は空いていてすぐにテーブルに案内してもらえた。

メニューを見ると、普段よく食べている豚肉などは高級品のようだ。

代わりに大衆的な肉料理を見てみると、ラクダ、コウモリ、、、ミミズ!?

ラクダはこの旅でお世話になっている手前申し訳ない気持ちになるし、コウモリも抵抗がある。それに、、、ミミズ?ミミズって肉って部類でいいの?そもそもミミズって食べる事ができるの?


「肉を食べるのよぉ」

と言って値段を気にせずに注文をするリム。


「おっコウモリだ。村にいた頃はよく食べたなぁ」

と言ってウィンはコウモリを注文した。


他のみんなは地元の主食と言われている物を注文したので、僕も同じものを注文した。

出てきたのはマカロニのような物に餡がかかっている料理。

いろいろな野菜を刻んで作られた餡は思いの外美味しかった。


僕はウィンにコウモリの肉を少しもらって食べた。

コウモリは鶏肉っぽい感じで、食べられないものでは無かったが、いかんせん肉が少ない。

これじゃあお腹いっぱいになるには何羽?注文することになるのだろうか。


食事を終えると、宿に向かった。

しばらくはこの街に滞在する。

情報収集と砂漠の気候に慣れるためだ。


僕は旅の疲れもあり、久しぶりのベッドの心地よさにあっという間に眠りについた。



翌朝、みんなで集まって朝食をとる。

ミトの元気がなさそうだったので、声をかけた。


「ミト。顔色悪いけどどうかした?」


「はい。昨日あれから情報収集のために酒場に行ったのですが、女性にたかられまして一緒に飲んでいたのです。その女性の飲むこと飲むこと。私としたことが潰されてしまいまして、二日酔いなのです。うぷっ」

と答えながら、ミトは口を抑えて慌てて席をたった。

お酒のことはよくわからないが、ミトはそれほどお酒に弱いわけでもなく、無茶な飲み方をするタイプでもない。

無理矢理勧められてもうまく立ち回るタイプだと思うが、何があったのだろうか。。。

ミトは今日は休暇だな。と思いながら朝食をとった。


朝食後は自由時間となった。

僕は姫乃先輩とリムに模擬戦を付き合ってもらった。

砂漠での戦闘になれるためだ。

今のメンバーは中・長距離を得意とする人がほとんどだ。

翁くんが抜けた今、前面に出て戦うのは僕の役目だ。そのためにも、俊敏な動きは必要不可欠だった。


姫乃先輩とリムに攻撃をしてもらって僕がかわす。

これを繰り返し行った。頭の中では避けるイメージがあっても、砂に足を取られて避け損なう場面が多い。今は威力を落としてもらっているが、実戦では即座にアウトになるだろう。


理解はしているものの、実際に行動に移すのは難しい。

砂に足を取られないように意識をしていても、攻撃への対応に夢中になると、どうしても疎かになってしまう。


訓練あるのみだ。と思って何度も繰り返した。

休憩中に3人で雑談をしていた。

「姫乃先輩。雪の時の草履みたいなもの作れますか?」


「もちろん作れるけど、あれは足が沈まないようにするだけだから効果あるかなぁ?問題点としては、足を取られる事がある事や踏ん張りが効かない時がある事、あとは靴の中に砂がたまることだよね」


「そうですね。砂が溜まる事については踵つきのサンダルみたいな物を履いてみようと思っています。まぁ元の地球のク○ックスみたいな感じですかね」


「あとは足場がもう少ししっかりとできれば解決できそうね」

そう姫乃先輩が言った時に閃く物があった。


「リム。ちょっと相談があるんだけど」


「何なのよ。この串焼きはあげないのよ」

とこの暑さでも肉をがっついているリムが言う。

僕は閃いた案を話すと、リムはできるかも知れないと言ってくれた。

毎回は無理でも勝負どころで使えればいい。

僕たちは残りの時間をその練習に当てた。


日が暮れてきた。

今日はここまでと言って、僕たちは練習を切り上げる。

このまま夕食を取ろうと言うことになり、食堂に向かって歩いていた。


「しつけぇんだよ!」

ある建物の前で、男性が突き飛ばされて尻餅をついた。


「そこを何とか助けてくださいっす」

突き飛ばされた男性は突き飛ばした男性のズボンをつかみ何かを懇願している。


「だから無理だって言ってんだろ」

と言いながら、懇願する男を再び突き飛ばした。


建物を見ると冒険者ギルドのようだ。

僕たちはとりあえず駆け寄って、尻餅をついたまま

の男性を立たせた。


「大丈夫ですか?」

と姫乃先輩が声をかけた。


「ありがとうっす」

とお礼を言う男性。怪我は無さそうだ。


「ちょっと酷いんじゃないですか?」

と姫乃先輩が突き飛ばした男性を睨む。


「こっこいつがしつけぇんだよ。できねぇって言ってるのによ」

と男性は少し気圧されながら答えると、早速さにギルドの中に入っていった。


「何があったのですか?」

と姫乃先輩が聞くと、


「すみませんっす。おいらが悪いんです。おいらが無理なお願いをしたから。。。」


「お願いって?」

と僕が聞いた。


「砂漠の花を取ってきて欲しいっす」


「砂漠の花?」


「はいっす。砂漠の花は病を治すと言われているっす。おいらの妹はずっと前から病にかかっていて、砂漠の花がないと治せないと言われていたっす。でも砂漠の花はそう簡単には手に入らないっす。だから誤魔化し誤魔化しやってきたっす。でも、、、一昨日から妹の容態が悪化したっす。このままでは長くは持たないと、医者にも言われたっす」


「そぅ。それで砂漠の花を、、、」

と姫乃先輩は居た堪れ無さそうに言った。


「砂漠の花はどこに咲いているの?」

と僕は聞いてみた。

こんな話を聞いてしまったら、可能であれば助けてあげたい。


「それは、、、砂漠の花は夜にしか咲かないみたいっす。それも砂漠のどこかにポツンっと、、、」


「えっ?この広い砂漠のどこかってこと?」


「はいっす、、、」

そりゃあ無理な話だ。

その広大な砂漠で一輪の花を探すという絶望的な状況に、先ほどの冒険者が諦めて立ち去った気持ちが痛いほど理解できた。

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