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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第六章 砂漠の国 ラインドル
186/190

186、いざ、ラインドルへ

三日後、僕たちはロエイの街を出発する。

砂漠に入る手前の街までは、馬車で向かう予定になっている。


昨日のうちにミトが馬車に荷物を積んでくれていたため、後は乗り込むだけだ。


僕たちが街を出ることを知った街の人が集まって見送りをしてくれた。僕たちは街を救った英雄のようになっている。街の人たちは僕たちにお礼の言葉を述べてくれる。

その中にはリンもいた。


「勇様。街を救ってくれて、ありがとうございました。是非また来てくださいね」


「うん。必ず来るよ。リンさんも大変だと思うけど頑張って」


「はい。姉さんの分も頑張ります」

リンは力強く言った。


リンは強い。

無理をしている事は重々承知しているが、リンなら大丈夫だろう。

また、この街にくる事を心に決めて、僕たちはこの街を後にした。



「あぁ。もっと温泉に入っておけばよかったなー」

馬車に揺られながら姫乃先輩が言った。


いやいや。

あなたは毎日何回も温泉に行っていたよね?

と心の中でツッコミを入れた。


「ミトさん。今は砂漠の手前の街、ブルクに向かっているんですよね?」

四宮さんが聞くと、


「そうですよ。馬車では砂漠は進めませんので、別のものに乗り換えます」


「別のもの?」

と僕が聞くと、


「はい。楽しみにしておいてください」

とミトは笑みを浮かべて言った。


まぁ。ラクダかな。。。

と僕は思った。


しばらく馬車で進んだがブルクの街までは、まだ少しかかるので今日は野営となった。

これから砂漠に入っていくと思うように食材が取れないかも知れない。

今のうちに食べておこうと思って、うさぎと魚を獲ってきて食べた。


ミトは川で獲った貝を使ったスープを作ってくれた。

貝の出汁が効いていて、めちゃくちゃうまい。


「おいしぃ!ミトさんこれはどんな風に味付けしたの?」

と姫乃先輩が聞くと、


「よくぞ聞いてくれました。私はロエイの街で、この魔法の粉の作り方を教えていただいたのです」

と言いながら、ミトは鞄から袋を出した。


「これは?」

と改めて姫乃先輩が聞くと、


「塩に海藻やキノコや魚の干したものをすり潰して混ぜたものです。どんな料理も一振りで格段に美味しくなるのです」


「へー」

と言って、僕はその粉を少し手の上に出してもらいペロッと舐めた。


あっ!

これは味○素だ!!

確かにこれがあれば、どんな料理でも格段に美味しくなる。


僕はウサギの肉に少しかけて食べてみた。

「うんまぁーーい」

と言うと、


「どれどれなのよ」

と言ってリムも一口。


「うんまぁーーいのよ」


みんな私もと言って、魔法の粉(僕の中では味○素)を取り合った。


「ちょっと、、、皆さん、、、沢山は作れないものなので大事に使ってください、、、」

とミトが止めるがみんな止まらない。


「ちょっと、、、? みなさん、、、?」


みんな止まらない。


「皆さん。ストーーップしてくださーーい」

と普段冷静なミトの慌てる姿を見て、夕食はお開きになった。



数日後、僕たちはブルクの街に到着した。

今日は宿に泊まって、明日砂漠地帯に向かって出発する。

ブルクの街の中には案の定、ラクダが沢山いた。


「まぁそうだよね」

目の前には馬車を手放して、購入したラクダが3頭いる。

「そうよね。ラクダよね」

「うん。ラクダだと思っていたよね」

姫乃先輩と四宮さんもラクダだと思っていたみたいだ。


「どおです?テンション上がりますよね?」


「・・・・・」

とミトは自信満々に言うが、想像していたので僕も姫乃先輩も驚きは無かった。


「えっ?なんです皆さん。その反応は。。。テンション上がりますよね?」

と僕たちの反応を見て焦ったミトがウィンに聞いた。


「・・・・・」

しかし、ウィンの反応も微妙だ。

ミトの顔が引き攣る。

とその時、


「ほっほおーー。かわいいのよぉ」

とリムだけはめちゃくちゃ喜んで、ラクダにペタペタと手を触れていた。


「リムさんだけです。わかってくれるのは。。。」

と目頭を抑えながら、ミトはホッとしたように言った。



翌日。

僕たちはラクダに乗って街を出た。

ラクダは3頭。僕たちは6人。

1頭に2人ずつ乗ることになる。


僕と姫乃先輩。

ウィンと四宮さん。

心を通じ合わせたミトとリム。


姫乃先輩とウィンとリムの三者間で、僕と誰が乗るかという戦いが勃発したが、姫乃先輩の必殺冷たい視線でウィンとリムは渋々折れた。

ウィンとリムがブーブー言っているのが聞こえるが、僕はパタッと耳を閉じた。


「いざ、ラインドルへ。出発です」

ラクダに乗って何故かテンションの高いミトが号令をかけると、それぞれのラクダが進みはじめた。


こうして、姫乃先輩と2人でラクダに乗ることになったのだが・・・これは何かの修行ですか?


ラクダには僕が前で手綱を持ち、姫乃先輩が後ろに座っている。

ラクダは歩くスピードはそれほど早くはないが思っていた以上に揺れた。

油断していると振り落とされてしまいそうなので、しっかりと掴まっていなければならない。

僕は手綱を握っているので大丈夫なのだが、問題は後ろの姫乃先輩だ。


後ろには掴む所が無かった。

必然的に姫乃先輩は僕に掴まるしかない。

姫乃先輩は腕を僕の腰に回して、ガッチリと掴んでいる。

そうなると、どうしても体を密着せざるを得ない。

結果、姫乃先輩の柔らかいものが、僕の背中に押し付けられる体勢となっていた。


僕の意識が背中に集中してしまう。

まずいまずい。いろいろとまずい。

僕は背中に当たっている柔らかさを意識しないように努めた。


そうだ!

食べ物の事を考えよう。

次の街に着いたら食べたいもの・・・

僕の頭の中には2つの肉まんが浮かび上がってきた。。。

違う違う。

僕は頭を振って邪念を払う。


デザートだデザートを考えるんだ・・・

僕の頭の中には2つの桃の饅頭が浮かび上がってきた。。。

違う違う。

僕は頭を振って邪念を払う。


などと、僕が強力な邪念と戦っていると、

「勇くん」

と急に姫乃先輩が声をかけてきた。


「はひっ」

僕は焦って変な返事をする。


「はひっ?」

僕の変な返事に姫乃先輩の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。


「ちゃっ、、、ちゃうんです」

と慌てて取り繕い、コホンと咳払いをしてから、


「どうかしましたか?」

と聞いてみた。


「うっうん。暑いねーーと思って」

ふと気がつくといつの間にか砂漠地帯に突入していた。

僕はどれだけの時間邪念と戦い続けていたのだろうか。

砂漠地帯だけのことはあり日差しが強い。


「本当に暑いですねー」


「でもこういうのも何だかいいね」

確かにこんな風にのんびりと移動するのも楽しいものだ。

いつ何時命の危険に晒されるかわからないこの世界ではあるが、少しくらいこんな時間を過ごしてもいいだろう。


「そうですねー」

と僕は答えた。

ラクダはのんびりと歩く。

少しでもこの時間が長く続けばいいなぁと思った。

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