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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第六章 砂漠の国 ラインドル
185/190

185、翁の決意

「俺は一旦このパーティーを抜けるぜ」

突然翁くんがみんなを集めて言った。

あまりにも唐突で理解が追いつかない。


「なっなんで、、、」

と聞こうとした時、


「なんでよ!翁くん!」

と四宮さんが驚いた声を上げた。

四宮さんも知らなかったようだ。


「何でなの!?何の不満があるのよ?」

と四宮さんは続けた。


「不満なんかねぇよ。ただ、このままじゃ俺はダメになる気がするんだ」


「俺は元の地球では何でもそれなりにはできた。このAEに来てからも俺は自分ならできると思っていたんだ。でも桜に負けて、ビナスにも相手にならなかった。。。」

翁くんはふぅと息を吐いてから続けた。


「勇がどんどん成長している中、俺は成長できていない。このパーティーはみんないい奴だし、俺のことを邪険にする奴もいない。居心地は最高だ」


「でも、、、それに甘えたままだと俺はダメになる。。。」


「だから、一度修行をやり直したいんだ」


「なんで、、、なんで相談してくれないの?なんで全部ひとりで決めちゃうのよ!」

と四宮さんが声を荒げた。

四宮さんの目からは涙が流れる。

普段落ち着いている四宮さんからは想像できない口調に驚く。


「わっわりぃ」

とバツが悪そうに頭を掻きながら謝る翁くん。


「わっ私も着いて行くから」

と言う四宮さんに


「それはダメだ」

と翁くんはキッパリと断った。


「なんで?私がいると迷惑?」


「俺は今までも四宮に頼りっぱなしだった。お前といるとどうしても甘えてしまう。それに、、、俺はお前を元の地球に帰す義務があると思っている。でも今の俺じゃあお前を守りきれない」


「これは俺の我儘だ。本当にすまん」

と言って翁くんは頭を下げた。


「そんな、、、義務だなんて、、、」

言葉に詰まる四宮さん。

翁くんは頭を下げたままだ。


「杏奈」

その時、四宮さんの肩にポンと手を置いて、姫乃先輩が言った。


「男の子ってほんっとにどうしようもないよね。私たちにはわからない理屈で、勝手に納得しちゃって。。。でも、翁くんが杏奈の事を大切に思っているのは本当だよ。杏奈もそんな翁くんだから大切に思っているんでしょ?」


「うっ、、、うん」

四宮さんは目を擦りながら返答する。


「だったら翁くんのやりたいようにやってもらうのもいいんじゃないかな」

と姫乃先輩は言った。


「でもね翁くん。必ず強くなって戻ってきてよ。杏奈を守れるくらいに」


「あぁ。約束する」


「翁くん。。。私は今でも完全に納得していないし、翁くんに着いていきたい。でも、それが私のエゴなのもわかってる。だから、(ルナ)が言うように必ず戻ってきて。そして、今回は翁くんの我儘をきくんだから、戻ってきたら、ひとつだけ私の我儘を聞いてよね」

と四宮さんは言った。


「おっ、、、おう。我儘を聞くってのは怖いがわかったぜ」

という流れで、翁くんがパーティーから一時的に抜ける話はまとまった。

僕たちはもう少しこの街に滞在する予定だが、翁くんはすぐにでも出発すると言って旅立っていった。


街の入口まで翁くんを見送ると、翁くんは僕の肩に手を置いて、

「勇。四宮のこと頼んだぜ」

と言った。


「うん。任せてくれ」

と答えると、満足したような笑みを見せて街の外に出ていった。


四宮さんが涙を堪えながら、翁くんを見送っていたのが印象的だった。


翁くんを見送った後、僕たちはもう一度集まった。

ミトから得た情報の共有があった上で、次の目的地はラインドルにしようという提案があった。

僕たちに反対する理由はなく、次の目的地はラインドルに決まった。


出発は三日後となり、各自準備をする。

ラインドルは砂漠の国だそうだ。

ついこの前までは雪の中を凍えそうになりながら歩いていたのに次は砂漠だ。

極端な気候の変化についていけるのだろうか。


僕は姫乃先輩と買い出しに来ている。

とは言っても食料品などはミトが準備してくれるので、個人的に必要なものを買いにきた。


まずは帽子。

太陽の光を反射しやすい色の帽子を選んだ。


姫乃先輩もつばの大きな帽子を選んで、白と黄色のどちらが良いかなどを聞かれた。

どっちもめちゃくちゃ似合っていて甲乙付け難い。

僕が決められずに5分以上帽子と睨めっこしていると、

「こっ、、、こっちにしようかな」

と白の帽子を姫乃先輩は選んだ。


次に服だ。

暑いから半袖、、、というのは間違いらしい。

肌の露出が多いと太陽の光に焼けてしまう。

砂漠の旅には風通しの良い長袖が良いらしい。


服の購入を終えて、店を出ると四宮さんがひとりで歩いていた。

翁くんがいなくなったショックからか元気がない様子だ。


「杏奈ー」

姫乃先輩もそれを察して、四宮さんに声をかけた。


「あっ(ルナ)。。。」

いつの間にかこの2人は名前で呼び合う仲になっている。

2人の間に何があったのかは知らないけれど、仲が良いことはいいことだ。


「買い物は終わったの?」


「んーん。なんか気が進まなくて」


「何言ってるの。翁くんは杏奈のために強くなろうとして、修行の旅に出ていったのよ。杏奈がそんな様子じゃ翁くんが可哀想よ」


「うん。それはわかっているんだけど。。。」


「愛されているっていいわねーーー」

と姫乃先輩が茶化しながら言うと、


「そっ、、、そんなんじゃないよ。まだ告白もしていないし、、、あっ。。。」

と大胆な発言をしたところで、僕の存在に気づき気まずそうな顔をした。


「いいじゃん。バレバレだし」

と言う姫乃先輩に対抗して、


「それを言ったら月だって、、、」

と言いながら四宮さんが僕を見る。


「それは私だって、、、」

と言いながら姫乃先輩も僕を見る。


「えっ、、、?えっ?、、、」

僕は話に着いていけず、姫乃先輩と四宮さんの顔を交互に見た。


「はぁぁ」

と姫乃先輩が項垂れながらため息をつくと、


「お互い大変だねぇ」

と四宮さんが言った。


「ぷぷぷぷぷ」

「ふふふふふ」


「「あははははははははは」」

2人で笑いを堪えていたかと思うと、いきなり大笑いをし始めた。


「えっ、、、?えっ?、、、」


僕は訳がわからずにキョドッていると、僕を置いて2人は笑いながら並んで歩いていく。


「えっ、、、?えっ?、、、」

僕は訳がわからずに、少しずつ遠くなっていく2人の背中を見ながら佇んでいた。



翌日、

「おっはよー!」

と元気な四宮さんの挨拶が聞こえた。

翁くんの事が吹っ切れたようだ。

若干複雑ではあるが、元気になって良かったなと思った。

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