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インテグレイション オブ ワールド  作者: アサム
第六章 砂漠の国 ラインドル
184/190

184、それぞれの休日

おタマさんに襲われた夜から3日が過ぎた。

僕たちは戦いの疲れを癒すため、ロエイの街に滞在をしている。


ランを亡くしてしまったリンは、ひとりで巫女としての責務を行っていた。

心の傷は癒えていないはずなのに、気丈に振る舞っている姿は立派だと思う。


僕は姫乃先輩と一緒にいる時間が多くなっていた。

あんな事があった後だ。

姫乃先輩の警護という建前はあったけれど、本心は一緒にいたいからだと思う。


このAEでは本当に死が身近だ。

いつ不幸な事が起きるかわからない。

しかも、それは突然目の前に現れるのだから。


僕たちは午前中をトレーニングに費やした。

基礎トレーニングを中心に行なっていたが、姫乃先輩が糸で攻撃してきたのを防御するなどの実践形式のトレーニングも行なった。


昼食後は足湯に行ったり、街を探索したりしてのんびりと過ごす。姫乃先輩と食事したり、買い物したりと言う時間はとても楽しかった。

元の地球でこれができれば最高なのだが、、、とも思うが、AEにこなければここまで姫乃先輩と仲良くはなれなかっただろう。


「勇ぅーーお腹すいたのよーーー」

姫乃先輩と街を散策していると、リムが駆け寄ってきた。

リムはこの前の戦いで少しだけ力を取り戻した。

リムは柱から力を受け取る事ができるみたいで、それを積み上げる事が元の地球に帰る道に繋がるそうだ。


「勇!あそこで売っているお肉が食べたいのよ」


「またぁ?さっきお昼を食べたばかりだろ?」


「リムは育ち盛りなのよ。お腹がすくのよ」

精霊に育ち盛りがあるのだろうか?


「食べてばかりいるとぽちゃぽちゃになるぞ」


「リムは精霊なのよ。体型が変わるわけないのよ」

育ち盛りとは。。。と心の中でツッコミを入れていると、


「いいんじゃない?みんなで食べましょうよ」

と姫乃先輩は言いながら、リムが指差している屋台に向かって歩き出した。


「姫乃は話がわかるのよぉ」

と言いながら、リムも姫乃先輩に付いて歩き出して、僕の方を振り向きあっかんべーをした。


「このやろぉ。。。」

と呟きながら、仕方がなく僕も屋台に向かっていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺はまた負けた。

ビナスに本気を出させる事もできずに負けた。


俺はこの3日をほとんどトレーニングに使っていた。

午前中に基礎トレーニングを行い、午後からはイグニッションの力配分の練習だ。


ビナス戦で思いついたイグニッションの力の配分。

咄嗟に拳に100%の力を集めたが、それは実践向きではない。

殴る時は拳に70%、そのほかの場所を30%くらいで賄うのが、通常の戦闘ではバランスが良さそうだ。

70%の力を集めた攻撃でもかなりの威力が出る事がわかった。

攻撃を受ける時はその場所に力を集める。

頭で考えながら時間をかければ、何とか今の俺でも実行する事は可能だった。


しかし、本当の戦闘ではそうはいかない。

反射的にできるようにならないと意味がなかった。

俺は反復してイグニッションを使用して、何度もぶっ倒れていた。


今も力が枯渇して、仰向けで倒れながら空を見上げている。

こうしているといろいろと考えてしまう。

俺は役に立っているのだろうか・・・と。


四宮は昔からの付き合いだ。

それに四宮がAEに来てしまったのは、俺の巻き添えだ。

だから俺には四宮を元地球に無事に帰す義務がある。


勇や姫乃もいい奴だ。信頼もできる。力もメキメキとつけてきている。

無事一緒に元地球に帰りたいと思っている。


ウィンもすごい奴だし、ミトも自分の役割をしっかりと理解して力を発揮している。


俺はこの仲間たちと旅する事が心地よかった。

ただ、自分だけ中途半端な気がした。

仲間に頼り過ぎている気がした。

それでも仲間たちは嫌な顔ひとつしないで、俺を受け入れてくれている。

それもいいかなと思ってしまう自分も嫌だった。


「俺は本当にこのままでいいのか?」

俺は空を見上げながら自問した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は今酒場に来ています。

昼間から酒を飲んでいい身分だと思われるかもしれませんが、これが私の役割だと思っています。


私は戦闘はからっきしできません。

でもこのAEを救いたいと言う、大層な志だけはあるつもりです。

その志を勇さんたちに掛けました。

だから、皆さんが体を休めている時こそが私の働きどき。

私は旅の資材の準備と情報収集を主に行なっています。


今も酒場には情報収集に来ています。

酒場にはいろいろな方が集まってきます。

特に夜ですと、仕事終わりの方も含めて多種多様な方が酒場で一日の疲れを癒しています。

それが昼だと何らしらの事情を抱えている方が多い。

そういった人の方が有益な話が聞ける事が多いと言うのが私の持論です。


「お兄さんはどちらからいらっしゃったのですか?」


「あぁ。俺はガサンドラから来たんだ」


「それはそれは。遠い道のりを。大変だったでしょう」


「あぁ。急いでこっちに向かってきたからな」


「それはそれは。こちらにはどんなご用件でいらしたのですか?」


「逃げてきたんだよ。今ガサンドラはガスドラ軍とサンドラ軍で対立しているんだよ。ガスドラはレイラ王女を擁立していて、サンドラはアリア王女が立てられているんだ。先代の王が亡くなって、後継者争いが勃発したってわけだ。いよいよ本格的な内乱になりそうなんで、巻き込まれないために逃げてきたんだよ」


「それは大変ですね。ささっ飲んでください。ここは私の奢りですから」


「わりぃな」


「いえいえ。困っている時はお互い様です。それで、後継者争いはどちらが優位なのですか?」


「姉のレイラ王女の方が優位だった」


「だった?」


「あぁ。先代の王には2人の娘がいて、姉がレイラ王女、妹がアリア王女だ。後継者には長女のレイラ王女がつくべきだと言う声が圧倒的だった。しかし、、、」


「しかし?」


「アリア王女に得体の知れないブレーンがついたようだ。そこから形成が逆転。ガサンドラ五剣聖のうち2人がアリア王女側についたって話だ」


「ガサンドラ五剣聖ですか。。。」


「あぁ。1人でも国を傾かせる事ができると言われている五剣聖が2人もな。そのうちの1人は五剣聖の中でもトップの実力と言われるレイハットだそうだ」


「なんと。あのレイハットが動いているのですか。。。。しかし、国が滅びそうになっても、気分が乗らなければ一切動こうとしないとも噂されるあの五剣聖が2人もですか」

ガサンドラで何が起きてるのでしょうか。。。

これはガサンドラにはしばらく近づかない方がいいかもしれませんね。


「ありがとうございます。面白いお話が聞けました」

そう言って私は席を立つことにしました。

このように昼の酒場は有力な情報を得られる事が多いのですが、いいことばかりではありません。

昼間から酒浸りの人の中にはタチの悪い人も多いのです。

今日も私が酒をご馳走した事を見ていた酔っ払いが私に酒を奢れと絡んできました。

私はこんな所で揉めたくないので、少し多めに酒代を渡して、この店を後にしました。


次に私は運び屋業を営むお店に向かいました。


ここではいろいろな場所に行って戻ってきた方々がたくさんおります。

他の地域の状況を聞くにはもってこいの場所です。

少しの銅貨を握らせると、大抵の方は口が滑らかになります。

私が欲しいのは砂漠の国ラインドルの情報です。

この国には橙柱があるそうです。

ガサンドラ王国にも柱があるそうですが、内戦に巻き込まれそうなので、ラインドルの柱に向かうのが良策ではと考えています。

ちょうどラインドルから戻ってきた方を見つけて、銅貨を3枚握らせました。


▪️ラインドルは首都を中心とした小さな国で、国土の大半が砂漠。

▪️砂漠という過酷な環境のため、日中は魔獣はあまり活動をしない。逆に夜は動きが活発になる。

 一番注意するべき魔獣はサンドワームだが、基本的に日中は地中にいるので遭遇する可能性は低い。しかし、ここ最近ではサンドワームと遭遇した件数が増加。

▪️小さい国で人口も多くないので、何度も行き来をしていると、ある程度人の顔を覚えてくるが、ここ最近知らない顔が増えた気がする。

▪️柱が光ったという噂がある。初めてのことで、対応方針が決まらず、国自体がバタバタしている様子。


銅貨3枚でこれだけの情報がもらえるのであれば安いものです。

次に目指す柱はラインドルの橙柱になりそうです。

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